おのれマイクロソフト。
朝を迎えた。
考えているうちに自然と寝ていたので、あまり寝たような気にはなれなかったが、ついにネザーへ足を踏み入れる時が来た。
が、その前に大事な事をまだしていない。
ネザーゲートが建てられていないのだ。
まだジョンソンと話し合っていないので、どこに建てるかの検討がついていない。
早速彼のもとへ行きその事を伝えると、早速立地を用意すると準備を始めた。
候補としては、周りを囲む壁の近くが良いようだ。
1周回ってみると、ちょうど良さげな平たい土地を見つけた。
元々ここには半壊した家があったと思ったが、依頼をこなしている間に撤去したのだろう。
見渡せば、かつて黒いモンスターによって破壊し尽くされた村はどこにも見当たらない。
ずっと外を見ていたので、内側の事情にあまり目を向けられなかった事が少し気にかかった。
だが、後悔をしていてもしょうがない。
彼らの死角を補う役目を背負っている、それで十分役に立っているだろう。
ひとまず土地の確保は出来たので、早速黒曜石の設置を始めよう。
まずはゲートを置くために、草ブロックを4つ削り取った。
段差を無くすためである。
ゲートの形は下に書くようなものだ。
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■ ■ ■=黒曜石
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そして削った部分を黒曜石で埋め、今度は左右に4ブロック積み上げ、最後に1番上の間を仕切る。
これでゲート自体は完成した。
だが、これだけではネザーに行けない。
本によれば、ゲートに火をつけて初めて完成になるとのこと。
⋯⋯火をつける道具は持っていない。
何か火をつける物があったはずだと脳内をこねくり回したところ、1つあった。
矢じりだ、アレの素材は火打石だ。
早速手持ちにあった矢を1本取り出し、勢いよく引きちぎった。
引きちぎったは良いが、火をおこす為の鉄が無い。
⋯⋯いや、あるな。
というより今着ている防具が鉄製だ。
これを使おう。
すぐにでも外せる鉄製のヘルメットをまずは脱ぎ、そこらに生えている雑草を引きちぎってこれを火種にでもしよう。
それから、黒曜石のゲート内に先程の雑草を積み上げ、その近くでヘルメットと火打石を思い切りぶつける。
当然火花が散るので、何度も何度もぶつけていくと⋯⋯。
雑草から火の手があがる。
これを媒体に、着火に成功した。
するとどうだろう。
炎はゲート内を覆い尽くし、しばらくすると紫色の渦が大量にある不気味な模様が浮かび上がった。
本に書かれた通り、ゲートが開通したのだ。
その証拠に、大量にある紫の渦の先には、こちらとは違う世界が見えている。
この先がネザーだろうか⋯⋯。
緊張なのか恐怖なのかはわからないが、全身が軽く震えた。
震えが終わった辺りで、覚悟を決めて勢いよく飛び込んだ。
ネザーは⋯⋯暑かった。
暑かったどころじゃない、かなり暑い。
それに加え、おぞましい景色までついてくるのだ。
全体が暗く、地面は赤く、所々火が燃え盛っている。
しかも消える気配が無い。
空には、白い立方体に触手でもぶら下がっているような気味の悪い生物が、これまた気味の悪い声を出して漂っている。
あまりの光景に目を背けたくなり、自然と足はネザーゲートへ進んでいた。
そして気がつけば⋯⋯いつもの知っている世界に戻ってきた。
ネザーゲートが完成した様子を見に来たらしいジョンソンが、こちらに心配そうな顔をしている。
「スティーブ⋯⋯どうしたんだ?
顔は真っ青で、今にも膝から崩れ落ちそうだぞ。」
「⋯⋯悪い夢でも見たような気分だ。」
「そうか、あまり⋯⋯無理はするんじゃないぞ。」
ジョンソンに心配された事を、少しだけ恥ずかしくも感じたが⋯⋯。
ネザーは実際恐ろしい世界だ。
見た事も無いような物ばかり見せられれば、恐怖の1つ2つあったっておかしくないだろう。
だが、調べれば何か手がかりが掴めるとわかっている以上、怖気付いていてもしょうがない。
もう一度、踏み出そう。