現在進行形で書いてますが、このままだとまた1年放置しかねないので上げます。
Ep28 銀世界に向かう準備。
太陽が何周したかも分からない地獄の探索から1週間が経っていた。
自分の世界をここまで涼しいと思ったのは初めてだ。
感覚が麻痺している。
義手は外され、持ち帰った荷物は、欲しがる村人がほとんどを持っていった。
元々そういう話で探索してたとはいえ、こんなに手荷物が軽くなるのはどこかショックに思えてしまう。
それに重たすぎる黄金の鎧は、部屋の端に置くにしても目立つ。
ロードストーンだって、お守りとするにはでかい。
置物としては1級品なのが惜しいところだ。
ベッドの上で、残った手荷物を眺めていたところジョンソンが入ってきた。
「スティーブ、だいぶ楽になったか?」
「あぁ、どうにか。
未だにここが涼しく感じてしょうがない。」
「そうか・・・・・・あんたはともかく、俺は少し暑いと思うんだが・・・・・・。
まぁいい、依頼が来た。」
「もう地上のリハビリは終わりか、案外早かったな。」
「そうだな、もう終わらせないといけない。
一刻も早く俺達で真実を見つけようじゃないか!!
・・・・・・と、言いたいところなんだが・・・・・・これもどうやら遊びみたいだ。」
「ほんとか!?
まだ遊んでもいいのか!!?」
「あ、あぁ・・・・・・他の依頼はアレックスに投げてしまったから、今あるのはこれだけだ。
依頼者曰くボート遊びに付き合えと。」
一見すれば本当に遊びだが、こうして依頼を飛ばして来る事は・・・・・・何か物騒な事が起きるのかと、遊びたい本心とは別に不安になる気持ちもあった。
これまでも依頼で向かった先で、待っていましたと言わんばかりに襲われてきた。
今回も例によってそうなる可能性があると体が訴えてくる。
それでも行くしかないだろう、あくまでも仕事であり、真実を探る1歩になるのなら。
「ところで、そのボート遊びの場はどこだ?
海か? それとも川なのか?」
「驚かないで欲しいが、凍った川の上・・・・・・だそうだ。」
「・・・・・・???」
とんでもない事をジョンソンが口にしたので、しばらく呆然としていた。
ボートは水に浮かべて、シャベルで水をかいて前に進んだり、方向転換をする。
そういう便利な乗り物として認知していた。
だが、氷の上とは・・・・・・???
「これ以上情報は無い。
現地に言って、実際に確かめるしかないだろう。
今度は寒いところだ、体調を崩すんじゃないぞ。」
「それはわかってるが・・・・・・本当に聞き間違えじゃ無いんだな、その情報?」
「実際にそう書いてあったんだ、仕方ないじゃないか。
それにこれは仕事としての依頼だ、あんたに嘘はつかないぞ?」
ジョンソンの態度が変わらないので、どうも嘘じゃないようだ。
依頼を始める前に、外した義手がどこへ行ったか聞くと、例の3つ子の工房にあるらしい。
義手を取りに行くついでに、無口なハベルにとびっきりの防具も作ってもらおう。
装備が一通り外れたまま行くのは危険すぎる。
そんな訳でジョンソンに礼を言って別れ、村の端にある、3つ子らの工房を尋ねた。
「お、久しぶりだな。」
「あぁ、クレイモア。
かなり久しぶりにあったような気がするな。
早速だが、防具を作って欲しい。」
「それはハベルに言ってくれ、俺は武器専門だからな!!」
誰が何をやってたかも覚えてないのをツッコまれてしまった。
彼らに武器防具を作ってもらってはいるが、関わる機会がこういう時以外無いからな・・・・・・。
そんな事をよそに、ちょうど隣にいたハベルは、手にした本につらつらと書き始める。
素早い手つきで書き終えたと同時に、見せつけるようにこちらへ突き出すので、それを黙読する。
・・・・・・この村を導くあなたに着て欲しい逸品があります。
あなたの作った、あのバケツ頭に汚い染み付きの防具より、確実に良いものですから。
まだけなしてくるのか、あれは1品物なんだぞ。
(クオリティはそこらの物より酷いので、文句を言える立場でも無いが)
「わかったから、もうその事は忘れてくれ。
何回も作った訳じゃないんだ。」
「いやー、俺から見たら十分だよあれだけ出来てりゃさ。」
文句を垂れつつも、着ないでクレームを投げるのは失礼だ。
ハベルがこっちに来いと手招きをするのでついていくと、工房の奥に防具はあった。
背後に炎が照らついてるのもあり、よくは見えなかった。
ハベルがよいしょとこちらに持ってきてくれて正体が明らかになる。
・・・・・・水色で、鉄よりも明るく、更に防具の向こう側がうっすらと見える。
これにはクレイモアもビックリときた。
「うほぁーっ!?
なんなんだよハベル、こんなすげーの作っちまって!!
てかこれ、もしかしてダイヤモンド?」
ハベルは黙って1度頷く。
見たかよこれと言うように、クレイモアがこちらを向いて頷いた。
確かに見たと言って、途端に彼がはしゃぎだす。
それは俺が着る防具じゃなかったのか?
「スティーブ、お前最高についてるぜ。
頑丈なダイヤモンドで全身を囲むんだ、今までのような死に様も減るぞ?」
「あ、あぁ・・・・・・。
・・・・・・確かに何度も死にはしたが、言い方もっと無かったのか?」
「それはともかく早く着てくれよ!
なんだかんだハベルも楽しみにしてるみたいだからさ?」
一向に黙ってみているだけのハベルが、果たして楽しみなのかどうかは分からないが、ダイヤモンドの贅沢装備に身を包んでみた。
実際に着た感想としては、鉄よりもかなり軽い事が頭に思い浮かんだ。
その分もあって動きやすい。
走り回ったりしているだけでも、ここまでは鉄製じゃ難しいと思える。
着心地に関しては・・・・・・鉄と五分五分だ、どちらも硬いもの故に仕方の無いことだ。
工房の中を動き回った後、近くの鏡で今の状態を見てみる事にした。
防具立てで静かに飾られている姿とは打って変わって、戦闘を心待ちにするような気持ちの現れが見えた気がした。
美しさは勿論だが、鉄製には無い・・・・・・言葉にするのは難しいが、とにかく特別感のある雰囲気は別格だ。
自分の顔が違って見えるまですらある。
「スティーブ、黙ったまま飛んだり跳ねたり鏡見たりしてないで、感想聞きてーよー。」
「いや、すごいなコレ。」
「普通すぎるぜ、俺でももっと良い感想出るぞ?」
「言葉で表すとひたすら長くなりそうだから、ここはすごいで済ませたい。」
「お、おう・・・・・・そりゃすごいんだな、あはは・・・・・・。」
ハベルは相変わらずむすっとしているが、どこか嬉しそうな気持ちが滲み出ていた。
義手を返してもらい、ダイヤ装備はしばらく使ってみて欲しいと言われ、着たまま次に食料調達の為にアレージの家まで来た。
現状畑の整備や食料生産は彼女が専門で行っているようで、狩りに赴かない限り、これからは彼女に頼めとジョンソンから言われている。
「あらスティーブさん、こんにちは。
また任務で外を出る事は聞いたよ。」
「そうか、話が早くて助かる。
食料を分けてもらいに来た。」
「そう言うと思って、今回は趣向を変えてポーションを作ってみたんです。
行く前にどうですか?」
ポーションか・・・・・・。
関連は無いが、前のスープの件が脳裏をよぎる。
また何か実験でもされるのだろうか。
嫌悪感が顔に出たらしく、アレージは大丈夫だからと慌てふためく。
そして目の前で、自身が抱えていたポーションの1つに口をつける。
「毒味はしたので大丈夫です、あなたも1口どうですか?」
「・・・・・・。」
口の付いた瓶を回し飲みするのは、中々抵抗があるが・・・・・・断ったら断ったで今後に関わりそうだ。
仕方なしに、静かに1口飲んでみることにした。
するとどうだろう。
とてつもない吐き気・・・・・・がする訳が無く、それどころか力が湧いてくるのだ。
実際、力んでみると腕が痛くなるほど筋肉が唸る。
「このポーションは、いわゆる体のリミッターを少しだけ外す効果があるんです。
ネザー探索でもらったあの棒、ブレイズロッドを粉にしたものを入れました。」
「そんなものを入れて大丈夫なのか?
お腹を壊したりしないだろうな!?」
「そこは安心してください。
レシピにのっていますから!」
アレージは、手書きの本を開いた。
なるほど、確かに書いてある。
今更ながら仲間を疑う気持ちばかりはしていられないので、全て貰うことにした。
全部で3つ、どれも同じ効果のものだ。
非常時には頼りにさせてもらおう。
・・・・・・しかし案外かさばるものだな、インベントリ1個を占有してしまう。
移動用のボートや食料、道具一式で1列を軽く超えてしまう。
空きの心配はいらないとは思うが、持ち帰るものが多すぎたら、何かしら捨てる他ないのだ。
ポーションとにんじん、ステーキをそれなりに貰ったので、最後に爺さんの所へ行こう。
今日は弓に用事はないが、何となく顔を見ておきたい。
彼の家でもある自分の拠点に戻る際、モデストに会った。
「やぁスティーブ、久しぶりだね。
また依頼が入ったのかい?」
「ああそうだ、またしばらく会えないな。
とはいっても、無線で度々話すから言うほど久々でもないが。」
「顔を見れるだけでも嬉しいさ。
またカメラで君の活躍を見せてもらうよ。」
「次も見苦しい所ばかりになると思うが、それで良ければ見ていてくれ。」
軽く話だけをして、拠点に戻った。
最後にストレートアローの爺さんへ会いに、重い鉄の扉を開けた。
今日も元気そうでなによりだ、今回は新しい弓用意したらしい。
「おぉ、ちょうどいいところに来おったのう。
あの光る弓はどうじゃ、この前の戦いでほとんどが治ったはずじゃ。」
「あっ!!」
完全に忘れていた、というより毎回忘れている。
懐から出てきたそれは、前よりも鮮やかに光っていた。
「今回のネザー探索で、こいつも元気になったという訳じゃ。
たまには使ってやっても良かったと思うんじゃが・・・・・・。」
「弓はあっても矢を持ってなかったからな。」
「ああそうか、矢が無ければ撃つものも撃てないわな、ガハハ!」
「そこは笑うところじゃない。
卑怯だが、あの骨達を遠くから倒す事も出来たかもしれないんだ。」
「さっきの様子を見るに、忘れていたんじゃろう。
やはり撃てないんじゃよ。」
「・・・・・・。」
しばらくの沈黙のあと、たくさんの経験値を得た光る弓を渡して、代わりに新しい弓を貰った。
「見た目はゴテゴテしておるが、使いやすいぞ。
滑車をつけて引きやすくしたんじゃ。」
「確かに軽くなった、これでしばらく引き続けても安心だな。
ありがとう。」
「いやいや、わしがむしろ礼を言いたいくらいだわい。
スティーブ、お主はわしの希望じゃ。」
「希望なんて大げさな。」
「お主がいなければ、この村もとうに終わってたんじゃ。
誇るべきなんじゃよ。」
頑張るのじゃとエールも貰い、拠点を後にした。
準備は整った。
あとはジョンソンから依頼本を受け取って、目的地に向かおう。
「スティーブ、準備は出来たか?
カメラもしっかり回してくれよ、俺だって楽しみたいんだ。」
「依頼だからな、切る訳がないじゃないか。
今回の目的地のマークを頼む。」
「あぁそうだな、すっかり忘れていた。」
地図にマークされた場所は、今いる村から少し遠い。
アレックスと出会った村を経由し、西へ抜けて雪の平原を進めば良さそうである。
まだ太陽は真上にも行っていない、今からでも間に合いそうだ。
自分は村の門を抜けた。