冒険者兼破壊者の復讐劇。   作:TTY

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Ep33 流氷ツインサイド。

 ランサーが司会を務める開会式だが、この時点で今まで見たことの無いような数の村人が来ている。

派遣村の人全員の3倍はくだらないだろう。

というよりそんな数がどこから・・・・・・?

 

「あれ、スティーブじゃん!」

「クレイモア!?

お前どうしてここに!?」

 

派遣村をイメージに出したが、本当に来ているなんて聞いてないぞ。

それに、サングラスまでつけている。

 

「そうだな、お前の活躍を直接見たくって来ちまった。」

「ここ結構距離あるんだが・・・・・・。」

「ジョンソンから、このサングラスと地図をもらったんで、ボートを漕いでやってきたってわけよ。」

「そうか。

・・・・・・頑張ってみようじゃないか。」

「きっちり勝ってこいよ!」

 

思わぬ来客からの応援をありがたく受けとり、練習走行の為にコースへ行こうとしたが、クレイモアはまだ言う事があるらしい。

 

「そういやその義手、調子どう?」

「だいぶ馴染んできた。

慣れは恐ろしいもんだ。」

「そりゃよかったぜ。

で、その義手にとにかく面白そうな機能あってさ、ついでに言っとくぜ。」

 

クレイモアは義手を触って説明をする。

 

「今まで慣らす目的であえて言わなかったんだけどよ、この指、伸びるんだわ。」

「そうなのか!?」

「そそ、腕1本ぐらい伸びる。」

「・・・・・・それだけか?」

「それだけだ!!

でも、生身じゃ出来ない事が出来るって凄くね!?」

「え、まぁそうだな。

・・・・・・使い道があるのかは分からないが、ありがとう。」

 

イマイチ使えるかも分からない機能を知った所で何になるんだか・・・・・・。

 時間が来たので練習走行を始める。

ボートに乗り込み、ランサーの後ろをついていく形で走り出した。

今回は自分とランサー以外いないので、ほぼ貸切の状態だ。

練習時もそこまでいなかった(練習の時間帯がどうも違うらしく、ランサー曰く夜中に走る輩が多い)が、ここまで遠慮なく外から中まで贅沢に使えるのは初めてだ。

胸が高鳴る。

お互い5割のペースで数周分走ったが、この時は特に変わったことも無く、見栄えのあるものでは無かった。

肝心のボートとの対話は良好だ、一緒に本気の走りがしたいという声が聞こえる。

 レースはいよいよ本番を迎えた。

ルールは単純、練習用コースを5周して次に本番用レイアウトで3周を先に完走した方の勝利だ。

走りを露骨に邪魔するような行為は当然許されない。

2つのボートがスタートラインに立つ。

氷の上は酷く寂しいが、観客が盛り上がって暑苦しいほどだ。

 

「なんだよ、2人だけかよ・・・・・・。」

「シラケるよな、俺たちこんなぽっとでのやつの走り、見に来た訳じゃないんだぜ?」

 

観客席の前の方から愚痴がちらっと聞こえた。

2人だけなのはこっちだってビックリしている。

 

「そんな事は無いらしいぞ!?」

「んだよ、てかお前誰だよ。」

「そんな事はいいじゃないか。

あの人、ランサーと最近ずっと走ってたらしいよ。」

「マジで!?

あの伝説のランサーと走ってたァ!?

そんな凄いやつなのか?」

「そうっぽいよ。

あの装備もランサーが譲ったって噂もあるし。」

「へぇ・・・・・・じゃ、どんなやつか見ておくか。」

 

勝手にプレッシャーを感じる流れにされてしまった。

依頼で来ただけだというのに、とんでもない体験をするとは、自分の巻き込まれ体質も捨てたものではないな。

 

「それじゃあ、カウントを始めるよ。

僕が仕込んだテクを見せてくれ!!」

 

 村人が横に立ち、腕を上げる。

5、4、3、2、1・・・・・・

 

GO!!

 

 シャベルを通して緊張と興奮が伝わる。

これが災いして、一瞬ランサーのスタートに遅れた。

彼は恐れを知らない、いや、恐れを封じ込めることに成功している。

皆から一挙手一投足を注目されても、そんな事で怯みはしないと背中が語る。

こちらも負けはしないさ。

 最初のコーナーを抜け、軽めのS字を含んだストレートもあっという間に飛び出す。

ステージ2と同じ機体とは思えないほど軽快だ。

シャベルをグッと氷に当てて後方に流せば、その分だけ前に進む。

そんな当たり前な事が、ここまで気持ちがいいと思ったのは初めてだ。

重たいかまどを降ろしたのも大きいだろう。

しかし、抜く抜かないといった攻防にすらならないままコーナーの攻略は続き、2周、3周と周回数だけを重ねていく。

最初の1歩の違いが、大きなズレとなって返ってくる。

しかし・・・・・・腕力に関して言えばそうでも無いらしい。

シャベルを押し込む力はこちらの方が上なのか、ストレートでは距離が近づいている。

これを利用しない手は無いだろう。

コーナーで勝てない分をここで稼ぐのだ。

 4週目手前、コーナーの先でついにランサーの横に張り付いた。

観客のテンションは興奮冷めやまぬ状況だ。

次のコーナーでまた距離が少し取れてしまったが、もはやテクニックでは抑えられない。

そのままランサーの横から一気に抜かした。

 

「いいね、その調子だよ!!

僕も負けてられないね、次の周からが楽しみだ!!」

 

抜かしたはいいが、それで黙ってるほど彼は弱くない。

誰もが伝説を付けるような、生粋のレーサーだ。

彼はこちらが抜かしてからすぐ、コーナーで詰めにかかってくる。

既に後ろを捉えて、もう一度抜きにかかるようだ。

今こそかまどの出番だろうか。

しかし、前にも言ったようにストレート以外で使用するのはリスキーだ。

今回貰った火薬は手のひらサイズの塊が2つだ。

どう使うもこちらの自由との事だ。

火薬をちぎってちびちび使う事も出来る。

これでいこう。

 次のコーナーで4周目は終わる。

このストレートで火薬を潰し、ざっくり半分をチューブに投げ込む。

かまどは火を吹き、煙を吐き出してボートを跳ね飛ばす。

勢いそのままに次の右コーナーの準備に入る。

スタートラインを真横になったまま過ぎ、勢いが落ちてきたところで前へ進むようシャベルを当てる。

コツンコツンと叩いて更に減速し、握っていたもう半分を全てチューブに叩き込んだ。

猛烈な勢いで第1コーナーを攻略したが、果たして。

・・・・・・ランサーはついてきた。

こちらが夢中になって火薬を吹かしていたが、そんな事は気にもせず、後ろに同じ距離でくっついていた。

だが、ここまで瞬間的速さを出したと言うのに、彼はどうしてこの速さについてきたというのか。

真横を向いている時にランサーを見たが、火薬なんて使っている気配は無かった。

いよいよ理解が追いつかなくなってきた。

 

「すげーよランサー!

ブランクがあるとはいえ、アレ決めちゃうなんてよ!!」

「さすがだ、ランサー。」

 

観客の歓声に混じって、何か引っかかる言葉が聞こえた。

アレとはなんだろうか・・・・・・?

彼しか知らない必殺技だろうか。

答えは次に迫る練習レイアウト最後のコーナーで判明した。

この本番に至るまで一切見せてこなかった、いや・・・・・・練習故にやる必要が無かったんだ。

ランサーはこのコーナーを持って自分の右横から抜かしていく。

ふざけたコーナリングだった。

次の周から違うレイアウトを走るが、ストレートで抜かしきれず、コーナーでは勝てない。

俺は一体どう勝てばいいのだろうか・・・・・・。




のんびり書いてたらあと1、2時間で投稿時間になるので、キリのいいとこで出します。
来週出せるのかも不安です。
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