冒険者兼破壊者の復讐劇。   作:TTY

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結局一月ブランクが出来てしまいましたが、とりあえず当日にこの回の半分書ききったので置きます。
次回も一月空きそうでこわいな。


Ep35 悲劇の召雷、再び。

 今いる村は銀世界の中にあり、夜中も月明かりが反射して明るい様を見せてくれる。

しかし、雲が日差しを遮り、遠くからは紫のローブを着た村人が押し寄せてくる。

 

「・・・・・・ランサー、今ここにいる観客全員を避難させるんだ。」

「天気が悪くなるのは珍しい事じゃないけど、それに加えてただならぬ雰囲気なのはわかっているよ。」

「とにかく屋根のある場所へ避難させるんだ!

今すぐにやって欲しい!!」

「わ、わかった。」

 

ランサーは走って大声で指示を出していく。

人望のある彼なら、誘導もきっと上手く行くだろう。

 

「スティーブ、今度は・・・・・・そのっ・・・・・・ちゃんと村を守りきれるようにね。

頑張って!!」

「アレージ、今度はポーションについて分かっているから安心してくれ。

これ以上の被害はくい止めないとな。」

 

 ウィッチ達がやってくる前に、観客達は小屋の中にほとんどが逃げ込んだようだ。

迅速な対応だったので、前にあった雷による変異は未然に防がれるだろう。

あとはこのウィッチらを素早く倒しきればこちらの勝ちだ。

いよいよコースのすぐ側までやってきた。

・・・・・・しかし、遠目から見た時よりも少ないのは気のせいだろうか。

そんな疑問を抱えつつも、やってきたウィッチを相手にする。

 これまでに倒し倒されを繰り返したからだろうか、相手の動きをある程度予測できるようになった気がする。

初めて戦った時はポーションなんて知らなかったので、慌てたり防具を汚したりと散々だった。

シャベルで地中にこもってみたり、奇襲で一人一人倒していった事さえ、もう懐かしく感じる。

ポーション主体で戦い、物量もあるが・・・・・・それだけの存在だ。

戦いなんてやった事の無いただの村人が、雷に打たれて武装して攻めてみたところで、結果はたかが知れているだろう。

3人を同時に相手してみてもつくづくそう思ってしまうものだ。

投げてくるポーションを見てから避け、1人を倒す。

もう一方から投げてきたポーションを義手でキャッチして投げ返したり、そこら辺にいたウィッチを捕まえて盾にもした。

そうこうしている内に、ウィッチ達は次々と材料を遺して消えていく。

しかし・・・・・・さすがに物量攻めで来る以上疲れる。

ウィッチは見ただけで10人はいる。

一旦隠れて休憩を挟まないとやられてしまうだろう。

ジョンソンにアレックスを呼んできてもらうよう頼むか。

ちょうど隣の村にいる事だ、すぐに飛んできてくれるだろう。

早速ジョンソンに無線をかけることにした。

 

「ジョンソン、助けてくれ。」

「アレックス・・・・・・後・・・・・・。」

「・・・・・・ジョンソン?」

「あくまで・・・・・・・・・・・・忘れるな・・・・・・。」

「ジョンソン、聞いてるのか?

アレックスを呼んできてくれ、一人じゃ厳しそうだ。」

「あ、あぁそうだなスティーブ。

今ちょうどアレックスを呼んでいたところだ。」

「さっき遠くで話してたが、それの事か?」

「そうだともそうだとも!」

「・・・・・・?」

 

 

そんな時、向こうから矢が次々と飛んでくる光景を目にした。

まだ敵が向こうにいるのか。

・・・・・・いや、違うな。

頭を正確に撃ち抜くその矢は、もはや疑いようのないものだった。

 

「あ、スティーブ!

お待たせー!!」

「良い所に来たな、アレックス!

助かったぞ。」

 

一流の狙撃手と一流の矢師のコンビは負けなんて言葉を知らない。

こうして喋っている間にも矢の一閃は止まらず、棒立ちの中、ポーションは飛ばずに矢だけが一方的に襲いかかった果てに、ついに誰もいなくなってしまった。

 

「いつの間に腕を上げたな。」

「いえいえそれほどでも。

ところで、レースどうなったの?

ジョンソンから今日だって聞いてたけど?」

「・・・・・・。」

「や、やっぱり聞かなかった事にするね!」

 

別に負けたことに関しては仕方の無いことだとは思っていたが、そんなふうに装われると複雑な気分だ。

 談笑していると、近場で何かが爆発するような音と光が降りかかる。

ごろごろという音のお陰で雷と分かったのは数秒後の事だ。

そこから感覚的にもはっきり分かるほどに、雷が近くに狭まってきていることに気が付く。

それに加え、何かが刺さったような音も微かに聴こえる。

ウィッチの群れはどうも前哨戦に過ぎないようだ。

奇妙な現象は当然終わるはずもなく、今度は雨の中から人影が見える。

サングラスのズーム機能を通して見たが、単に村人だろう、鼻が大きくて青いローブの・・・・・・。

・・・・・・青いローブ?

 

「あの村人、気をつけた方がいいな。」

 

今まで見た事のないローブという要素だけでも怪しいが、それだけにとどまらない。

村人はこちらに向けて武器を投げてきたのだ。

咄嗟に避けて地面に刺さった瞬間、近場に雷が落ちてきた。

ファンの1人が言ったように、敵は向こうからやってきたのだ。

刺さった武器は、しばらくすると村人の手まで引き寄せられるように戻っていく。

青いローブの村人は、他の村人と格好が違うこちらの存在に気がついたのか、まっすぐとこちらに向かってくる。

そして大声でこちらに向けて問いかける。

 

「テメェが噂のスティーブか?」

「なぜ俺の名前を知っている?」

「スロービレッジでは散々やってくれたじゃねえかよ、クソッタレがァ!」

「お前か、雷を落として村人をウィッチに変えるような真似をしたのは!!」

 

あの青ローブが間違いなく悲劇の元凶だろう。

彼は近づきながら大声で詰めてくる。

ズーム機能が無くとも姿がわかる程度には距離が近くなってきているようだ。

 

「早速だがテメェをぶっ殺してやる!!

あの方に似てるだのなんだのほざいてやがるが、んなもん関係ねぇ!!

邪魔だから潰す!! それだけだ!!」

「お前のせいで何人死んだと思っている!!」

「テメェのせいでどれだけの仲間が殺されてんだって言ってんのかよ!?

テメェの胸にでも聞きやがれ!!」

 

お互いが邪魔しあっている事は事実だが、それを棚に上げて批判出来るほどではないのも事実。

しかし、立ち止まっていられるほどの時間は無いし、ここで死ぬようでは例のモンスターに勝てる訳も無いだろう。

 

「止めるようならお前を倒すだけだ!」

「俺だって最初からそうする気に決まってんだろ!

テメェがくたばっときゃこんな事にはならねぇんだよ!!」

 

 青ローブは初手から武器を投げつけてくる。

1本だけなのかペースは遅い。

しかし、後から雷が落ちてくるようで、実質同じ箇所に2回の攻撃が入る。

そして手元に戻ってはまた投げるの繰り返しだ。

少しずつ向こうから近づいてくるが、これでは戦況が動かないだろう。

そろそろ射程距離に入ったので、アレックスにクロスボウで迎撃を頼んで、こちらは回避に専念する。

指示を出す為に横を向いていた時だった。

相手の武器が飛び出すタイミングと重なってしまった。

結果、足に突き刺さり、雷が頭を貫く。

声にならないような声が出たが、致命傷になるほどではないらしい。

こうしてなんとか立っているので、どうにかなった。

しかし、アレージが前に言ったような洗脳は起こらず、特にローブを身にまとったり帽子をかぶったり、鼻が大きくなったり・・・・・・そんな事は無かった。

クラフターはウィッチにはならないようだ。

 雷に打たれた事をカメラ越しに見ていたのか、アレージから無線が入った。

 

「スティーブさん、雷に打たれたんですか!?」

「あ、あぁ・・・・・・まあ死んだりはしていない。」

「打たれた時に変わった事は起きたりしませんでしたか?

私は見ている事しか出来なかったので、実際どうこう言える立場ではありませんが・・・・・・。」

「大丈夫だ、君が言っているような事は何も起こらなかった。

しかし、やはりあの轟音と痛みは勘弁願いたい。

無線中も頭がクラクラしてくる。」

「そう・・・・・・。

困ったらポーションで力をつけましょう、今は絶対倒されない事に専念してください!!」

「了解・・・・・・。」

 

 しばらくは避けたりしつつ、にんじんや肉をかじってどうにか体力を回復していく。

その間にも青ローブは距離を詰めてくる。

そして今いる村のコース内に足を踏み入れてきた。

自分が今いる位置はスタートライン付近で、やつはちょうど真反対のストレートにいる。

 

「お前もこれやるんだな、へぇ・・・・・・。

こいつで潰してやるのも楽しそうじゃねえか。」

 

青ローブはのそのそと、そこら辺に放置されていたボートを氷の上に置いて滑り出す。

相手もボート乗りなのか、短距離でランサーに負けない走りを見せる。

しかし今回は見惚れている場合ではない。

相手はこちらを本気で殺しに来ているのだから。

 

「いいか! 今からお前をボートで追い詰めてぶっ殺してやる!!

どちらかが倒れるまで永遠にレースでも楽しもうじゃねえか!!

そのツレも道連れだ!!」

「本気で言ってるのか・・・・・・?

アレックス、無理して着いてくる必要は」

「いいよ、あいつを倒せばいいんでしょ?

任せなさい。」

「・・・・・・お互い正気じゃないな。」

 

 アレックスを連れて、かまどが吹き飛んだステージ3のボートに2人で乗り込む。

かまど分のウェイトで、ステージ3の乗り心地をある程度再現できそうだ。

ただ、今回は人を乗せるのでクラッシュは許されない。

アレックスには、青ローブを撃ち落としてもらう事に専念してもらう。

両手でボートを動かすので、弓なんて使っている暇がないのだ。

彼が1人でどうするのかは知らないが、自分以外乗り気なので、もうどうにでもなれって気持ちでいっぱいだ。

 

「はははっ!! いいじゃねえか、狙撃対決ってやつもよっ!!

笑いが止まらねえぜ!!」

 

 ルールは言わずもがな、どちらかが死ぬまでこのレースは終わらない!!

飛び道具あり、破壊あり、何でもありの無法地帯がこの氷の上に形成される!!

生き残りをかけた、正気も何も意味をなさない地獄のレースが始まってしまうのであった・・・・・・!!




ちなみに遅れた原因の8割は、どうやって青ローブの村人をボートに乗せるかでした。
繋ぎの話、難しい。
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