記憶の断片   作:じゅるじゅるアクメビッチ

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欠片 〜虞〜
#1 レリック


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以下は、ある男の7歳頃の記憶の一部である。

 

 

 

 

   ◇◆◇◆◇

 

 

今日も誘拐なりの襲撃が来て、消した。

 

これは彼女を狙っての襲撃もあるが、今のところ多いのは俺をターゲットにしたものが多いようだ。

 

脱走した動物を捕えるために齷齪働く者のような襲撃犯を滑稽に思っていた感情はなくなり、今はただの作業のように感じつつある。

 

だが代わりに現れたのは……。

 

──目の前の小さな少女は俺のことを迷惑な存在と思ってはいないだろうか

 

という不安感である。

 

小さなウサギのぬいぐるみを大切な物として抱え、俺の袖を小さいが強く掴んでいる。

 

己の名前と年齢位しか把握していない無垢な金髪幼女。特徴としては赤と緑という虹彩異色(オッドアイ)か。

 

「ヴィヴィ。少し休憩しよっか」

 

「うん。どこですわるの?」

 

「あの段にしよう」

 

俺は、袖を握る少女の手を握って座り場所へと移動する。

 

「あ、飲物……ジュースでいいかな」

 

「いいよー、ヴィヴィオはお兄ちゃんがくれたものなら飲めるもん」

 

その信頼と無償で見れる微笑みに、先の悩みは霧散する。

 

「あぁ、ありがと」

 

 

 

   ────

 

 

 

「んっ…………」

 

自販機の缶コーヒーは当たり外れがあるが、今回のこれは自分にとっては良いほうかもしれない。

 

ただ、この苦味として感じてしまう味覚がもう少し慣れてくれれば良いが……。

 

「………………」

 

「…………ん?」

 

嗜みつつ飲用していれば、ヴィヴィがこの缶を凝視していることに気がついた。

 

「気になる……?」

 

「……うん」

 

どうやら彼女は、俺の手にある缶コーヒーに御興味があるようだ。

 

「少し飲んでみる?」

 

「少し……」

 

首肯した彼女の手の下に、俺はそれを渡した。

 

ほんのりと暖かく、金属製の少し硬い感触が俺から離れていく。

 

「…………ん」

 

彼女の口へ、舌へ、と流れ込んでいく苦味の缶飲料。

一口しただけで、渋い顔をした彼女は、どうやら口には合わなかったようだ。

 

「に、苦い……ね」

 

「まぁ、そういうモノだからね」

 

スッと、返してくれる缶を受け取りながら、彼女の言葉に苦笑する。

 

コーヒーというものは苦いものではある。今の俺たちは子供だから、という理由が通るかもしれないが大人でも砂糖を入れて嗜む者もいる。

 

だから、彼女は少しそのような顔をするのは致し方ないことなのだ。

 

「お兄ちゃんは……、これが……好きなの?」

 

「んー…………好きというか、飲みたい気分なったから……かな」

 

コーヒーの類が特筆して好物であるかというと、否と俺は答えてしまうだろう。

だからといって苦手な類でもない。

微妙なラインではあるが、落ち着きたい時とか、眠気覚ましとかには、よく使用してしまうのはままある。

 

「そうなんだ」

 

「そう、多分ヴィヴィにとっての水道水とかと一緒かな……?」

 

「……多分?」

 

少し例えが悪かったかもしれない。

水道水自体そんなに俺たちが飲むことは少ないし、頻繁に自由に取れるかというと難しいものではある。

 

前の時の自国では、安全かつ清潔でありいつでも飲めてしまう“水”であった。そんな国が、あの頃は2,3ヶ国ぐらいしか存在しておらず、幸運なことに俺はそこに前は生まれたという訳だ。

 

…………まぁ、生き柄は決して幸運とは言えない。むしろ、その真反対そのものだったが。

 

「そろそろ動こうか」

 

「うん」

 

飲み干した飲料を捨てて、俺たちはこの場から動き出す。

 

そして、赤い結晶体の光が俺たちに眩く映った。


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