異世界で生きるだけの物語(仮タイトル)   作:毛利 綾斗

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始まり

どれくらいの時間が経っただろうか。暗闇に包まれてからずっと俺の行動の理由を考えていた。

出た結論は雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣、二人と一緒に入れたあの時間が大切だったということ。だから俺は動いたんだ。

 

これからどうすべきか・・・。一人よがりかもしれない。だが、俺はあの二人と話をしたい。これまでのこと、そしてこれからのこと。拒絶されたっていい、それも俺たち3人が選んだ結果だ。これは俺の我儘なのかもしれない、だが今の状態は誰も何も選ばず・・・、情報が少なすぎて選べない状態にいる。そんなまま自然消滅するのだけは嫌だ。

俺は決めた。だから早く行動に移したいんだけど、今自分自身がどこにいるかもわからない。というより、自分自身が生きているかすらもわかっていない。考えることはできているから存在していることは確かだろう。それが意識だけなのか、肉体もあるのかまではわからない。

 

ガンッ、ガンッ、ガンッ

 

またこの音だ。何かを砕くような音はだんだんと大きくなってきている気がする。

そういえば音が聞こえるってことはそれを感じるための器官である耳はあるということだろう。

どんどんと大きくなる音はこちらに近づいてきているように感じる。といっても俺から何か行動を起こすことはできない。

あぁ、眠たくなってきた。

朦朧としていく意識の中、何か光が見えた気がした。

 

 

 

「見たことない天井だ」

 

 

天井、というか岩肌が見える。

 

 

「おう、起きたか坊主」

 

 

突然の声に体がビクッとなったが俺は悪くないだろう。声がした方向を見てみると長い髪をくくった男性が岩の上に座っている。どこか見たことがあるような気がする。

 

 

「あー、どちら様でしょうか。ていうかここどこ?」

 

 

「俺はタイガで、ここは鉱石の発掘場だ。坊主は岩の中から出てきやがったんだ。自分のことわかるか?」

 

 

「俺は比企谷八幡・・・です。歳は16です。なぜここにいるのかはわからないです。俺は駅にいて・・・」

 

 

駅で何があったんだっけ。駅で考え事をしていて、後ろから押された・・・のか。それから強い衝撃がきたんだっけ。ってことは電車にはねられらのか?もしそうなら俺は死んだ?死んじまったのか。ようやく答えも決まって動こうって思ってたのに。

 

 

「岩の中だったってことは地獄なのか」

 

 

「地獄ってどういうことだよ・・・ハチマンだったか」

 

 

「俺、電車にはねられたんですよ・・・」

 

 

「電車?なんだそりゃ。はねられたってことは乗り物か何かか?それに見ない格好だな。どこから来たんだ」

 

 

「千葉から」

 

 

「チバ、だぁ?聞いた事ねえな一体どこにあるんだ、その千葉ってのは」

 

 

どうやら千葉を知らないらしい。というより、電車のことも知らないしここはかなり田舎なのだろうか。

 

 

「日本っていう極東にある島国の地名の一つです」

 

 

「極東の島国、だぁ?極東には島なんてないぞ。俺の住んでる村が一番東にあるんだ。西からの客は来ても東から客が来たことなんて一度もねぇよ」

 

 

今までの話からどうやらここは俺が生きていた世界とは違うようだ。言葉は通じるが電車はない。極東に島がない理由が東から客が来たことがないからと調べていない。恐らくだが文明レベルは低めなのだろう。

 

 

「まぁいい。よかったらウチに来ねえか。お前みたいなガキはほっぽり出せねえよ。たとえお前が岩の中から出てきたんだとしてもな」

 

 

「いいんですか。・・・タイガさん」

 

 

岩の中から出てきた俺をウチに招待しようというのだ。何かあるかもしれない、と疑ってはいるもののここで一人にされたら生きていられる自身もない。ここは危険も承知でついていくのが最善だろう・

 

 

「おう、ウチにカミさんと娘がいるんだがどちらも俺の宝でねぇ。手を出したら殺すからな」

 

 

と豪快に笑いながら告げる。だが、俺は気が付いていた。タイガさんの目が全然笑っていなかったことに。

 

 

「あとはまあ、歩きながらだな。正直に話せねえし、お前のことは俺に任せとけ。その代わり口裏は合わせてくれよな」

 

 

それから家までの30分間話しながら歩き続けた。結果、家に着くころには口裏を合わせるには十分な設定を作ることが出来た。また、他にも困ったときはタイガさんに任せるということで決まっている。そして、タイガさんに注意されているのは娘さんのことだ。どうやら娘さんは人見知りが激しいらしく距離感を気を付けてほしいそうだ。

 

 

 

 

「ということでこいつは俺の遠い親戚なんだ。少し世間知らずなところもあるが文化の違いだと思ってくれればいい。こいつの力になってほしい、ほらお前も何か言えよ」

 

 

そういわれてやっと我に返る。

俺は今町の端にあるタイガさんの家に連れてこられていた。彼の家は立派な木造建築だった。入り口は土間になっていて広く、調理場もついている。中はシンプルな内装になっていて、外見通り広々としている。そんなリビングで俺は紹介されていた。

 

 

「ハチマンです。至らぬところもありますがよろしくお願いいたします」

 

 

「こっちこそよろしくねハチマン君。私はミユキよ、ここではミユキさんでもお母さんとでも好きな方で呼んでね。何か困ったことがあったら言ってね、力になるわ。ほら、あなたも自己紹介しなさい」

 

 

そういって後ろに隠れていた女の子を少し前に出す。

まただ・・・。俺は変な顔をしていないだろうか。一体なんのドッキリだろう。そう、これはドッキリなんだろ。そう言ってくれよ。

 

 

「私の名前はマユ、12歳です。よろしく、お願いします」

 

 

「こちらこそよろしくお願いします。タイガさん、ミユキさん」

 

 

しゃがみ、目線の高さを合わせる。

 

 

「こっちこそよろしく、マユちゃん」

 

 

俺が自己紹介で噛まなかった理由。簡単だ、今目の前にいる人たちは初対面じゃないから。いや、むしろ親しいといってもいいだろう。最近は顔を合わすことも少なくなっていたから、髪型が違ったから、だから気が付けなかった。

そう。俺の目の前にいるのは髪型や体形が少し異なった俺の家族だ。

特にマユちゃんはそっくりである。それこそ、昔の小町にそっくりなのだ。違うところは瞳孔が猫のように細くなっているところくらいだろう。

・・・これがドッキリじゃなかったら一体何なのだろう。生き返ってたまたま出会った人が自分の家族にそっくりなんてありえない。

 

 

「ハチマンさんはどんな力があるの?」

 

 

こま・・・マユちゃんが俺に話しかけてくる。彼女は人見知りで初対面の人とは話せないんじゃなかったのか。

 

 

「ハチマンでいいよ。それより力ってどういうことだ」

 

 

「じゃあ私もマユでいいよ」

 

 

この世界では魔法のようなものを使えるのだろうか。

 

 

「夫は獣化、私は治癒、マユは感覚強化が得意なの」

 

 

そういうとミユキさんはタイガさんへ目配せする。それにうなずくと彼の体が一回り大きくなり、体毛が濃くなっていく。口は長く横に裂け、犬歯が伸びて牙になる

体毛は黄色と黒が入り混じった肉食獣。彼は2足歩行のトラになったのだ。

変化が終わると彼はこちらを一瞥し再び変化を始める。先ほどとは全く逆の変化だ。それを終えるとタイガさんは口を開く。

 

 

「これが俺の力『強化』だ。俺はこれで獣になることが出来る。このようにここに住む人は何かしらの力を持っている。

ここで生きている人は何かしらの力を必ず1つ持っている。その力はその人にとって一番得意な力となり、あとから手に入れた力はそれ以上にうまく使うことはできない」

 

 

そのまま手を前に出すと手のひらを上に向ける。すると、手の上にかすかに緑色の渦が起こる。

 

 

「今、俺は風を起こしている。他の奴に教えてもらった力だ。そいつは全身にまとって飛び道具を無効にしたりできるが俺ができるのはせいぜい手に纏ったり、放出する程度だ。こいつは火を出したり、水を出したりもできるが俺にはできない。人には向き、不向きがあるってことだ」

 

 

そういってミユキさんを親指で指す。それに微笑みながら右手人差し指から赤い炎を、左手の掌状に水の球体を生み出す。

 

 

「俺は自分にどんな力があるのかわかりません」

 

 

そういうと三人は俺に自分たちが使える力を教えてくれる。

例えば火を出す力は出したいところで物体を摩擦するイメージ。風を出す力は空気という線を渦巻かせるイメージ。どうやら大体のことはイメージで行うらしい。

俺は手を突き出し、風を放出するモノをイメージする。俺の腕は『扇風機』だと。そして空気を前に送り出すとイメージする。

すると薄緑色の空気が前に放出される。それもかなりの勢いでだ。予想外の勢いに俺は吹き飛ばされる。そのまま後頭部を強打し、激痛に悶える。がすぐに起き上がり、周りを確認するとほっと息をつく。

 

 

「誰にもあたってなくてよかった」

 

 

一応誰もいない方を向いていたが万が一ということもあったかもしれない。また、何かモノを壊していたかもしれない。心配していた周りへの被害がなかったことで安堵していたのだ。

そして、周りが無事だったことから考察に入る。

この力というのはイメージしている間のみ行使できるのだろうか。それとも慣れれば最初のイメージだけでもっと力を行使できるのだろうか。

まあ、今回はイメージと同時に切れてくれたことで周りへの被害がなかったんだが・・・。

 

 

「大丈夫、ハチマン」

 

 

考え事をしていると急に揺さぶられそんな言葉が聞こえてくる。

さっきまで痛みを訴えていた後頭部も今では落ち着いている。どうやらミユキさんが治療してくれたらしい。

 

 

「ありがとうございます。おかげで痛みも引きました」

 

 

「それと心配してくれてありがとう、マユ」

 

 

次回実験するときは威力をコントロールできるかも試さないといけないな。

 

 

「ハチマンすごいね、初めてであんなに強い風を出せるなんて。私の『感覚強化』もできるかな」

 

 

そういって感覚強化の時のイメージを教えてくれる。

 

 

「私が力を使うときは『疑う』の。遠くを見るときは遠くを、聞くときは一言一句を聞き漏らさないように、匂いや味、他も全部。慣れれば強化したい部分を考えればできるようになるよ」

 

 

元気に笑いながら教えてくれる彼女なりのイメージ。ただ、それには似合わない単語『疑う』。一体彼女はどんなことからこの力を身に付けたのだろうか。

 

 

「早くやってみてよハチマン」

 

 

その声に合わせて俺は目を閉じる。今回強化するのは耳だ。俺は自分の耳を収音機だとイメージする。音を集め、漏らさない。そうイメージしているうちに呼吸の音、衣擦れの音、そして心音が聞こえてくる。それはどんどんと大きくなり、そしてどんどんといろいろな音が集まってくる。

これ以上は不味い、そう思った俺はイメージをかき消す。

俺の顔色はかなり悪かったのかもしれない。これ以上は明日にしなさいと止められた。

その後はこのあたりのこと、これからのことを話し合った。タイガさんとミユキさんは何もしなくてもいいと言ってくれたが、俺はそれを断った。ただでさえ助けてもらったのに負担になるのは嫌だったからだ。だからだろう、俺は俺に似合わない言葉を発していた。

 

 

「俺、この町の警備兵団に入ります。そこで得たお金でここに泊めさせてください」

 

 

そう、先ほどの会話の中にこの世界には魔物や妖怪といった生き物がおり時々襲ってくるということ。だからこの町にも警備兵団があるということ。そしてタイガさんはその助っ人だということがでてきたのだ。

俺がそういうと2人は固まる。

 

 

「今日はもう終わりだ。ハチマンも疲れただろう。もう寝なさい」

 

 

と言って俺を部屋に案内してくれる。疲れていたのだろう、寝床に入るとすぐに瞼が重くなり意識を失っていた。

 




八幡の力、皆さんはわかるでしょうか?
私自体、力は決めているのですが名称を考えている途中です。
というか名称つけなきゃダメですかね?
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