感想をしてくださった2名の方もありがとうございます。
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これからも興味を持ってもらえるような物語を書けるよう頑張ります。
修正を少しだけ行いました。
今は日も沈んだ午後7時。
部隊との戦いが終わった後に待っていたのは条件の確認と契約。そして今後に関する話し合いだった。その結果出発日は明日の午前9時に決定、それまでに世話になった人には話をしておくようにということになった。近衛騎士が大した用もなく勝手に出てきたことがばれるのは不味い、らしい。ファウストさんは紳士な見た目、口調に反して戦闘狂なようで今までにも何度か注意されているらしい。また、彼の実力でも近衛騎士の中では5番目と言っていたことには驚かされた。
話が終わるとこれまでお世話になった警備兵団の人たちに報告したり、喫茶店、鍛冶屋などへ出向き感謝の言葉を伝えてきた。どの人たちもいい人で少し目じりが熱くなったのは仕方がないだろう。家に着くころには両手にはたくさんの荷物で埋め尽くされていた。
「帰りました。すみません両手がふさがっているので開けてもらえますか」
「今日はいつもに比べて遅かったじゃねえか。どうし・・・うわぁ、なんだよその荷物」
扉を開けてくれたタイガさんは俺の荷物に驚いている。それに俺が王都へ行くことはまだ聞いていないらしい。俺自身の口から言いたかったからありがたい。
「ありがとうございます。ちょっと話があるのでこの後時間をもらえますか」
タイガさんは俺の手から荷物を半分とってくれる。
「おう、いいぜ「もう、御飯よ。早くこっちに来て」・・・今から飯だし食いながらでもいいぜ。ハチマンの荷物を片付けたら行く!」
俺はうなずくと手に持っていた荷物を冷蔵庫や戸棚に入れてダイニングへと急ぐ。
机にはすでに3人が座っている。先に食べていてもいいのに彼らは待っていてくれた。そんな家族の温かさに本日何度目かの目じりが熱くなる。
「ハチマンどうしたの?なんで泣いてるの」
マユが立ち上がり俺に近づいてくる。
「大丈夫?」
そういってマユは俺に近づき、ハンカチを頬にあてる。
どうやら俺の中でこの家族の存在はとても大きくなっていたようだ。騎士団の近衛騎士になってしまえばいつ帰ってこれるかわからないらしい。それが俺には耐えられないようだ。
タイガさんとミユキさんも心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫だよ、マユ。ありがとう」
そういって涙を無理やりこらえて席に着き口を開ける。
「ご飯を食べながら聞いてほしい話があります」
それから俺は今日の出来事、そして明日からのことを話した。マユは泣きながら悲しみ、ミユキさんは悲しそうな表情で俺におめでとう、と言ってくれた。タイガさんは難しい顔をしたまま何も言わずに飯を食べ続け、俺が食べ終わったと同時に
「ハチマン。ちょっとこっちへ来い」
その言葉に隠された意図を考えながらタイガさんの後をついていくと初めて出会ったあの鉱山へと向かっていることに気が付いた。どうやら腹を割った話をしたいらしい。俺は腹をくくり、覚悟を決める。
「ハチマン、俺は謝らんからな」
そういったタイガさんは獣人の姿に戻ると俺の鳩尾部分を思いっきり殴り飛ばした。やっぱりそうなるよな。
「今のも避けられないようなお前を俺は認めない。俺を納得させたけりゃ俺を倒してみろ」
吹っ飛ばされた俺は腹部の状況を確認する。ダメージこそあるが問題はない。立ち上がり、構え、手招きする。挑発だ。
「なめた真似しやがって」
彼は足に力をこめ、地面を陥没させながらこちらへと跳んでくる。当たればただでは済まないだろう。当たれば、だ。俺は避けて、避けて、避ける。何度続いただろうか、タイガさんは無意味な突撃をやめる。
「なんで避けられる。お前には俺の攻撃が見えていないはずだ。現に今だって目を閉じていた」
そう。俺は彼が跳びかかってくると同時に目を閉じ、耳にのみ神経を集中していたのだ。カウンターを決めるなら目は開けておくべきだろう。だが、今の俺の目的はタイガさんを『倒す』ことではなく『納得』させることなのだ。彼は獣だ。力の差をわかってもらうだけでいい。
「答えるつもりはない、か。次は本気だ。死にたくなけりゃちゃんと躱せよ」
そういって先ほどまでよりも足に力を籠める。きっとこれまでよりも速い攻撃が来るだろう。だからこそ、今の俺に速さなど関係ない。俺は今まで通り意識を目と耳に集中させる。目はタイガさんの視線の動きを、耳は筋肉の軋み、そして陥没する地面の音を聞き分けるために。
俺は目を瞑り少し右に動きしゃがむ。それだけでタイガさんの渾身の一撃を回避する。そして着地した位置を耳で判断し構える。
「これを避けられるとは。しかもあんな最小限の動きで、ときた。負けたよ、ハチマン。たった半年でここまで差をつけられたとはな。参考程度にどうしたか教えてくれよ」
避けた方法。とても簡単な方法だ。手品と同様で知ってしまえばそれでおしまいだ。対策も簡単にされてしまうだろう。でも、だからこそ俺はタイガさんに種を明かす。俺はこの町からいなくなる。タイガさんの弱点を知ったまま教えないのは今後この町の壊滅につながるかもしれないからだ。
「これはタイガさんだから言うんです。怒らないで聞いてくださいね。タイガさんの攻撃は本当に速かったです。でもそれだけなんですよ」
「どういう意味だ」
「速いというのは使う側に有利なように見えて実は受けて側も対処しやすくなるんです。速く動くということは攻撃側も動きを変える暇が短いことを意味します。動きが速ければ速いほど人は事前に行動を計画することになるんです」
「そうだろうな。実際俺も跳びかかる前に攻撃の手段、場所を決めていた」
「そうです。そこなんです。だから俺はそれを利用したんですよ」
「どういうことだ」
「行動を計画する際、人は何かしらのアクションを起こします。今回の場合は目の動きです。俺は相手の目の動きを見て攻撃の来る場所を予測しました。そして筋肉のきしむ音、陥没する地面の音を聞き分けることで方向を確かめていたわけです」
納得したような顔をするタイガさん。
「そうだったのか。でもいいのか、それを教えたら俺は対策するぞ」
「俺がいなくなったらこの町を、そして家族を守るのは親父なんだ。教えるのは当たり前だろ」
「・・・ハチマン、お前。今なんて、もういち」
すると急に笑い出すタイガさん。しばらくの間笑い続け落ち着いたのだろう。
「それもそうだ。そうだよ、そうだよな。お前が留守の間は俺が家族を、そしてこの町を守っててやる。だからお前は安心して行ってこいよ。お前が帰ってくる場所は俺が守ってやるよ」
「そういえば親父、その弱体化の力なんだが部分的にできることは知ってるか」
「は?」
実に八幡らしい。いい話で終わりそうだったところにわざわざ一言多く告げるのだ。
「どういう意味だよ。ハチマン」
タイガは焦り半分、興味半分で聞いている。
「いつも全身戻してるだろ。でも別にその力って手だけとか足だけに使えるんだよ」
「それも気にはなるが・・・いつ俺の力が『弱体化』だと知ったんだ」
あー、と何かに納得した表情の八幡は
「最初はその力が俺に不向きなだけだと思ってたんだ。でもこの半年間俺に不向きな力はなかった。だから考えたんだ。実は親父の力は『強化』じゃなく『弱体化』なんじゃないかって。んでほら」
そういうと八幡は急に話すのをやめる。すると八幡の姿が少しだけ変化する。肌の色が少し白くなり、眼は赤く、額からは2本の角が反りながら生えてきた。その長さはおよそ5センチ程度。それに、といい彼は口を開ける。そこには通常時とは違い少し長くなった犬歯が見える。
「どうやら俺は鬼らしい。恐らくだが岩から出してもらったとき、意識を失う前に無意識で力を使っていたのかもしれない」
そういうと八幡は力を使い人間の姿に戻る。
「そんな大事なことを俺に教えていいのか」
「家族だからな。それに俺だけ親父の秘密を知ってるのはフェアじゃないだろ。その代わり俺たち男だけの約束にしてほしい」
八幡は頬を掻きながら恥ずかしそうに言う。
それからはタイガの力のこと、八幡のこれからのことなどを話しあった。家に帰ると時間はすでに深夜を少し回る頃になっていてマユはすでに眠りについていた。
ミユキはというと帰ってきた時こそ心配そうな表情をしていたが二人の顔を見て、事情(力のこと以外)を聞くと態度は一変。タイガに説教を始めた。八幡は最初は笑ってみていたがそれが癪に障ったのだろう。八幡はその場で正座させられ説教が開始された。その説教は八幡がミユキに
「母さん、心配かけてごめん」
という言葉を言うまで続いた。
その言葉にミユキが泣き始め、なだめ終わる頃には日が昇る頃になって居た。
「じゃあハチマン、気を付けていってくるのよ。あなたの家はここなんだから遠慮せずにいつでも帰ってきなさい」
「そうだぞ八幡。いつでも待ってるからな」
「お兄ちゃん、頑張ってきてねー」
騎士団の団員に見守られながら最後の別れを告げる俺。
今日は恥ずかしがらずに言えそうだ。そんな思いで俺は告げる。
「行ってきましゅ・・・す」
・・・。
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