虚月館殺人事件アフター   作:神宮藍

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 この小説は先日FGOにて開催された「虚月館殺人事件」の後日譚を書いたものになります。
 内容が面白く、続きが気になるなぁと思ったのが元です。
 まだサーヴァントとして召喚されていない人物(ネフェルタリ)が登場しています。どうしてもオジマンディアスと彼女のやり取りを書きたかったもので……。すみません。
 そこも含め、この話を温かい目で楽しんで頂ければ幸いです。それではFGOの世界へようこそ!

お詫び:5/23(水)に内容を一部差し替えさせていただきました。
作者の不手際により設定にズレが出る文章を掲載してしまったためです。読んで下さった方にはお詫び申し上げます。差し替えた部分は最初の12行の内容のみです。ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。




虚月館殺人事件アフター その①

「うん、上手く出来ました」

 マシュは笑顔でそう言うと、先程自分で作ったチョコレートブラウニーを調理室の冷蔵庫に仕舞う。

「よし、7本。私のが1本、頼光さんのが1本、ブーディカさんのが1本、清姫さんのが1本、ネフェルタリさんのが1本、エミヤさんのが2本。よし」

 きちん復唱もして確認し、扉を閉める。

 今日は5月12日。藤丸立香が虚月館から戻って来てから4日後。8日に戻って来てから昨日までの3日間、藤丸は拘束されていた。突然他者とパスがつながった事を重要視したカルデア職員による緊急健康診断に参加していたからだ。

 職員の拘束から解放された翌日、マシュは意識だけとはいえ、見覚えのない洋館に飛ばされ、殺人事件も起こった3泊4日を2日で駆け抜けた己がマスターの疲れを癒すため、他のサーヴァントに相談し、スイーツを作ったのだった。作るに至った経緯はこうだ。

 

 時は3時間前に遡る。

 マシュは事件の詳細は伏せつつ、先輩が疲れているらしい、と言った内容を話し、何か元気付けられるものは無いかとブーディカに相談したのだ。すると相談の途中に話を聞きつけたのか、色んな英霊が集まり、色んな提案が出た。

・クーフーリンによる狩りへの同行

・ドレイクによる大海原のクルージング(但し荒海限定)

・イスカンダルによる王の軍勢同伴の神牛車による世界一周

・オジマンディアスによるスフィンクスの背に乗っての宇宙疾走

…etc

 と、規格外の提案が出た。どの英霊も譲らず、聖杯大戦ならぬ英霊大戦にまで発展しそうになったが、突如ネロが「我がマスターを元気づけるのは余だ!」とリサイタルの開催を宣言。その時、ネロとエリザベートを除く英霊の心が1つになり、黄金劇場召喚を中止と2人の退場を経て、クールダウンとなった。

「皆さんの気持ちは嬉しいです……でも、そんな事をしたらカルデアの職員の方々にも迷惑をかけてしまいます。でも、どうすればいいのか……」

 皆の気持ちは嬉しい、でもどうすればいいか分からない。笑顔がありつつも困った、そんな複雑な表情で言うマシュを見て、ブーディカが口を開く。

「だったらそうだね、マシュの手作りスイーツなんてどうかな。スイーツは美味しいし、一口食べればたちどころに元気が湧いてくるものさ。そして何よりさ、マシュが作ってくれるというのが一番の特効薬じゃない?」

 マシュは照れ、ブーディカは「アタシ恥ずかしい事言った……」と顔を赤くする。まるで2人とも林檎が首に乗っているようだ。ブーディカはクールダウンすると、ふと何か言いたげなクーフーリンに顔を向ける。

「何か言いたそうだね、クーフーリン」

「あ、いや……男は甘いの苦手じゃねぇかなって思ってな」

 クーフーリンは焦ったように言う。

「確かに。クーフーリンの言い分も分かるわ」

 ブーディカも肯定する。マシュは「困りました……」と可愛げのある困り顔をする。その表情を見て少なくない英霊がほっこりしたかどうかは定かではない。

 困り顔から数秒おいて、ドアの近くの壁に背もたれていた男が口を開いた。

「では、甘みを調節できる菓子はどうだ? そうだな、チョコレート系ならば結構味の調整は容易いと思うが」

「エミヤさん!」

 マシュにそう呼ばれた男は紅い外套を揺らしながらマシュに近づいて行く。

「チョコレート系は使用するチョコレートやカカオ、砂糖の量を調整できるからな。チョコケーキやブラウニーが良いかもしれないな」

「オイオイ、オカンかよ」

「何か言ったかな、クーフーリン?」

「イヤ、ただの茶々さ。続けてくれ」

 その時、椅子に座っていた黒衣の女がエミヤとマシュを見て言った。

「ほう。ならばその材料、妾が用意してやろう」

「ほ、本当ですか! セミラミスさん!」

「うむ。まぁ、我が城に2月の遺物があるからな」

「2月の遺物……?」

 マシュが少し分からないと言った顔をする。そこに清姫が助け船を出す。

「ああ、カカオの事ですね。バレンタインの時に集めた」

「ああ!」

 マシュが理解した、と手を打つ。エミヤが言葉を引き継ぐ。

「しかし、残っていたのかね? 空中神殿に残ったカカオはカルナが焼き払ったと言っていなかったか?」

「それは本当じゃが、あの大広場とは別に倉庫がある。そこにも貯蔵されている。もちろん、大広間にあった量とは比べ物にはならぬが、それでも十分にあるだろう」

 それを聞いてマシュは目を輝かせる。

「有難うございます! セミラミスさん!」

 そしてセミラミスはエミヤに向けて右手の人差し指を指す。

「じゃが、条件がある。エミヤよ、主の作った菓子を食わせよ。妾は以前から主の作る菓子に興味があった。マスターから主の作る料理は美味いといつも聞かされているのでな」

「なんで私が……」

 エミヤは少々嫌そうな顔をした。だが、その顔はマシュを見るまでだった。マシュがエミヤに対して目を輝かせ、懇願して来たからだ。

「お願いします! エミヤさん! 私、エミヤさんにお菓子作りを習いたいです! エミヤさんに見てもらって、マスターにより美味しいお菓子をあげたいんです!」

 それを見ると、エミヤは観念したように目を閉じる。

「はぁ……分かった、分かった。教えよう。セミラミス、貴女に作る分もついでに作れるしな」

 その答えを聞き、セミラミスは満足そうな顔をして部屋を出て行った。

「よし。ではマシュよ、後で我が部屋に来るがいい。用意しておくのでな」

 そう言い残して。

 それから後は作るスイーツ決め、指導役決定、一緒に作る者の参加を経てマスターを元気付けよう会議は解散したのだった。

 ちなみに指導役はエミヤとブーディカ、源頼光となった。参加者はマシュ、清姫、ネフェルタリの3人である。ネフェルタリは「夫にカカオを使ったお菓子を食べさせたいので……」との事である。

 それを聞いたオジマンディアスが感激し、ネフェルタリと2人の世界に入り、自分の妻の良い所を語り、ネフェルタリはそれを聞いて、「ふふ」と微笑むというのろけサイクルが繰り返され、いつまで経ってもお菓子作りが始められないという事でニトクリスとメジェド、スフィンクスに手伝ってもらって太陽王を部屋から追い出す、という一幕があった。

 それはさておき。作るお菓子はチョコレートブラウニーに決まった。エミヤ曰く、「失敗のリスクが少なく、ナッツを入れたりとアレンジで個性を出しやすいから」だそうである。

 色々とごたごたがあったが無事に調理が始まった。マシュとネフェルタリは料理の経験が少なく、苦戦していたが、エミヤとブーディカの献身的な教授で素晴らしいものが完成した。

 だが2人は教える傍らでマシュとネフェルタリを上回るチョコレートブラウニーを鮮やかな手つきで作ったのである。その事実にマシュとネフェルタリが自信を失い、異口同音に「出せません! 捨てます!」と訴えたため、後に2人は「料理を教えるより発言を撤回するよう説得する方が大変だった」とこの料理教室での出来事をそう回想する事になる。

 その一方でカルデアの検知器が異様な魔力濃度を計測するほどのチョコレートブラウニーが完成されていた。作ったのはもちろん、清姫である。そしてその清姫に教授していたのは源頼光。危険な相乗効果が発揮され、カルデア史、いや魔術史に残る物質を作り出したことになる事をこの時は誰も知る由は無かった。

 

 そして冒頭に至る……と言う訳である。マシュは足取り軽く調理室を出て行く。自分の作ったブラウニーを食べてくれる先輩の顔を想いながら。

 

つづく

 




短い字数で続いてしまって申し訳ありません。楽しんで頂けましたでしょうか。
出来るだけ近いうちに続きを載せたいと思いますので、お待ち頂ければ幸いです。
最後に一言書いて終わらせて頂きます。

貴方のFGOライフが豊かなものになりますように!
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