予定ではあと4話位で終わる予定です。面白いと思って貰える話をお届けしたいと思います。それではお楽しみください。
タッタッタッ。
2人が転送室の前に来ると、教授、ダ・ヴィンチ、ブーディカ、アストルフォ、源頼光、ガウェイン、ベディヴィエール、ランスロット、クーフーリン、オジマンディアス、ネフェルタリ、オリオン、アルテミス、イシュタル、メディア、エミヤ、イスカンダル、諸葛孔明などといった数名のサーヴァントが集まっていた。
「あれ、皆さんどうしたのですか?」
サーヴァント達に気付いたマシュが声をかける。その場を代表して諸葛孔明が長髪をたなびかせて説明する。
「いや、そこにいる胡散臭いおじさんに声を掛けられてな。まとめると『マスターの危機だ、君たちの力を借りたい。転送室の前で待つ』とカルデア中に連絡が回ってね。大体のメンバーは発信主が教授という事で様子見だが、今ここに居るのはとりあえず念のために……と集まったメンバーさ」
教授の顔は平静さを保っているが、左右の足が忙しなく入れ替えられている。胡散臭いと言われた事に対してショックを受けているようだ。そこにダ・ヴィンチが転送室から出てくる。
「教授、やっぱり無理だよ。私だってマスターの助けになるなら協力したいけど、魔力が足りない。電力はなんとかなるけどね」
それを聞いたマシュは露骨に表情を暗くする。ダ・ヴィンチが協力的だったのは喜ばしかったが。だが、そこに教授が助け船を出す。
「ミス・ヴィンチ。先ほどの連絡は正にその為だよ。考えてもみたまえ、ここには何人のサーヴァントが集まっている? そのサーヴァントの魔力はどの位あるだろうか? サーヴァントの魔力を転送魔力に転用することは可能ではないかな?」
さすがにダ・ヴィンチも絶句する。
「いやいや、確かにサーヴァントの魔力を転送魔力に変換することは可能だ。だが、変換効率が悪い。100%送り込んだとして転送魔力として使えるのは良くて50%。普通に40%位しか使えないと考えた方が良いだろうね。ロスが大きすぎる」
ダ・ヴィンチの後ろから異議を唱える声が出る。その人物は人類史に燦然とその名を発明王として刻む人物。アメリカが誇る英霊、トーマス・アルバ・エジソン。またの名を訴訟王。
「待ちたまえ。その変換装置を先程見せてもらったが、あれでは効率が悪いのも無理も無い。魔力採取機と転送機の間にある変換機の精度が悪い。あれを通さないと転送魔力に変換できないから装置自体は必要だが。また、魔力転送コードの内側を保護する物質が魔力の通りを邪魔している。此処を改善することが出来れば今の40%から65%までは上げる事が出来るのではないかな」
エジソンがそう言うと隣の人物が言葉を繋ぐ。エジソンの仇敵と言って差し支えないニコラ・テスラその人である。こちらも間違いなくアメリカが誇る科学者。
「こいつの言う事は間違っていない。コードの中身は魔力を染み込ませた繊維で編まれた布を一番内側にし、外を厚み0.5cmの魔鋼で被うと良いのではなかろうか」
ダ・ヴィンチは驚いた。現状で最善の素材、構造をしていると思ったからだ。まさか布を使う事までは考えていなかった。
「そこまでは考えていなかったよ。よし、さっそく取り掛かろう。そうだな、変更にかかるあれこれで5時間はかかるかな。手伝ってくれるかな、エジソンくん、テスラくん?」
テスラが笑顔で応える。
「もちろんだ。こいつと一緒に作業すると言うのが気に食わんが、技術力はあるからな」
「フフ、テスラ、相変わらず貴様は素直でないな。言っても良いのだぞ? 私こそが全米一、いや世界一の技術者だと」
「ふっ、エジソン、貴様こそ何を言っている。私に決まっておろうが?」
「何を!」
「反論があるようだな!?」
ライオン顔で咆哮する大男と電気の輪を作り出して空中に浮かぶ男。今にも喧嘩が始まりそうだ。そこにブシューと蒸気機関のような音を立て、誰かが近づいて来る。
「エジソン、テスラ、止めるがいい。その元気は後でマスターの転送に使ってくれ。それよりも、微力ながら私も力になろう」
蒸気王、チャールズ・バベッジはそう言い、男2人(?)を引きずって転送室の奥にある変換機へ向かう。
「やれやれ、助かったよ。でもこれなら5時間と言ったのが短縮されそうだ。さて、マスター、今の内に飛んで行きたい時代を考えておいてくれ。ただし、このカルデアスで飛べるのは2017年の12月まででしかない。しかも未来という事になるので、それが本当に私達が存在する時間軸がその未来を辿るかは分からない。あくまで霊子演算装置トリスメギストスが計算した、実現の可能性が高い世界に飛ぶだけだ。それだけは承知しておいてくれ。それと転送回数は2回までなら可能性はあるけど、まずは1度きりだけだと考えて決めてくれ」
ダ・ヴィンチはそう言い残すと転送室の中へ戻って行った。部屋の前に居たサーヴァント達は装置の改良が終わるのを待って再集合ということで解散となった。後には藤丸とマシュが残った。マシュが藤丸を覗き込んで口を開く。
「先輩、大丈夫ですか? 今回はいつものレイシフトとは違いますから、そこまで入念な準備は必要ないかもしれませんが、仮眠は取っておいた方が良いかもしれません。さ、先輩、マイルームに戻りましょう!」
マシュは藤丸の手を引く。藤丸は引かれるままに歩き出す。エレベータの中で藤丸がやっと声を発した。
「いやぁ……俺って本当に恵まれてるなぁ。ダ・ヴィンチもだけど、エジソンさん、テスラさん、ベバッジさん、諸葛孔明さんとか色んな英雄が集まって、俺のわがままなんかの為に……」
「……先輩。確かにそうかもしれないです。でも、皆を動かしたのは先輩の人徳です。今まで積み重ねてきた信頼です。あの教授の連絡でも先輩が絡んでいると知ればあれだけ多くの人たちが来てくれるのがその証拠です」
「人徳って……ただ、俺は人類を絶滅させたくない、いや、自分が生き延びてきたいだけで足掻いてきただけだよ」
「その足掻き方が人を惹きつけるんです。私もそうです」
「え? マシュ、今なんて?」
「私も先輩に惹かれた1人だと言ったんです。先輩には感謝しきれない程です。先輩と旅を始めるきっかけになった転送室の爆発。本当なら私は此処に居ないはずです。多分、あの場で絶命していたはずです。そこに先輩が来てくれて……そのお陰で今、私は此処に居ます」
「そんな風に思ってくれてたのか、マシュ。いつ、如何なる時も少しは人の言う事は疑ってかかれってホームズに言われているけど、マシュのその言葉は素直に受け取るよ」
マシュは『ぺかー』という擬音が飛び出すんじゃないかと言う位明るい笑顔を藤丸に見せてくれた。そして2人は藤丸のマイルームの前で別れた。後で会う約束をして。
マイルームに入ると藤丸は仰向けでベッドに倒れ込む。天井で光るLED電球の灯り位しか景色がない。
(転送できるのは1回だけか……何時に行きたいんだろう、俺は。事件の直後? お葬式? それとも2017年の内のどこかにして、アメリカの都市に行きたいのかな?ジュリエット……君はどんな道を選ぶ? そして、俺が憑依していた人物はどんな人物だったんだろう……?)
そんな事を考えていると疲れていた為か、眠りに落ちそうになった。だが、誰かが自分の部屋に入って来たので、眠気が吹っ飛んでしまった。入って来たのは艶やかな紫色の髪をした女神、ステンノだった。
次話は出来るだけ時間を空けずに投稿したいと思います。
残りの話にもお付き合い下されば幸いです。必ず完結させます。