鬼灯の冷徹かと思ったが………   作:超高校級の切望

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猫親子の再会

 兵藤一誠の頭のおかしな変態性を目の当たりにして、さらに同等の変態が二名いると柳に聞いた鬼灯は、その学園の教師として監視役を担っている柳に、現世に戻る前の3日間休みを与えた。

 よって柳は昼近くまで眠るつもりだったが、不意に気配を感じて目を覚ます。

 ボンヤリとした思考で三子が起きたのかと思ったが重い。一子と二子も交じって遊んでいるのだろうか?あの二人の気配は読みにくいし。

 とりあえずまだ寝ていたい柳は薄目をあけ布団をめくる。

 裸の女がいた。

 

「…………」

「にゃん?起きたの?じゃあこっちもおっきしちゃうかしら?」

 

 獲物を前にした猫のように目を細めペロリと唇を嘗める美女。プチン、と何かが切れる音が聞こえた。

 

 

 

「キャラメル~、天国~、フフフーン♪」

 

 閻魔殿の廊下を歩く三匹の影。犬猿雉、何を隠そう桃太郎のお供だった三匹である。

 

「柳様もう起きてるかな~?毛繕いしてくれるかな?」

「さあなー。つーか今更だけどあの人寝起き大丈夫なのか?」

 

 お供の猿、名を柿助が本当に今更だが呟くと、お供の雉、ルリオがふむ、と顎に手を当て考える。

 柳は基本的に、目上には敬語、礼儀を弁えその他は基本的に新米だろうと動物だろうと同じように親しげに接する。人当たりは良いと言えよう。

 ただ、時折鬼灯の影を幻視することがあるし私怨100%地獄を作ったりしていることから鬼灯に似ているとも言える。

 

「まああの人動物好きだし怒っても酷いことはされないでしょ!」

 

 と、お供の犬、脳天気なシロが言った瞬間柳の部屋の扉が勢い良く開き、黒い着物を慌てて着ながら美女が飛び出してきた。そして柳が追うように飛び出してきて拳を振るう。

 ギリギリで避けた美女は吹き飛んだ壁を見て顔を青くして、蝙蝠のような羽根を広げ空へと逃げる。

 

「ロケット───」

「へ?」

「──ランチャー!」

「「ルリオォォォォォ!?」」

「うおお!?うぐ!」

「にゃ!?」

 

 ぶん投げられたルリオが美女の腰に見事にヒットし女性が落ちてくる。獄卒としてこういった仕事になれていたルリオは多少ふらつくも何とか持ちこたえた。

 

「柳様、こいつは?」

「殺す」

 

 ルリオが尋ねるもそれを無視して美女に迫る柳。美女がビクリと怯えるように腕で顔を守ろうとすると、寸前で止まる。

 

「……………で、誰だっけお前」

 

 ショボショボした眠そうな目で美女を睨む柳。どうやら柳の寝起きは相当悪かったようだ。 

 

「どうしたの?」

「テロ?」

「禍の団?」

 

 と、騒ぎを聞きつけたのか一子と二子と三子がやってくる。

 

 

 

「私は黒歌、猫魈にゃん。柳様の子が欲しくて」

「帰れ」

 

 黒歌の求愛をバッサリ切り捨てる柳。三子と一緒に特大サイズの豚カツ丼を食べ始め、黒歌の存在を完全に無視し始めた。

 

「んにゃ!?こんな美人に迫られてそれはないにゃ!ねえねえ良いでしょー?子供なら私が育てるから!子育てしなくて良いから!」

「断る。つーか俺は薬でおかしくなったクソババアにクソオヤジと勘違いされて犯されそうになってから、女の裸見ても興奮しなくなったんだよな」

「柳様の過去って知れば知るほど暗いのが出るな……」

 

 柳の言葉にルリオが呆れながら言う。

 

「つーか何でお前地獄に居てオマケに俺の部屋に侵入しやがった」

「司法取引したにゃん。今は日本地獄の預かりで、柳様の事はリゼヴィム様から……」

「何処だあのおっさん!」

「我が揚げた」

「皿と食材を運んだ」

「盛り付けした」

 

 と、三子、二子、一子の順番で手を挙げる。そう言えばなんか人型の揚げ物があったような。というか昨日三子がリゼヴィムボコボコにしてた。

 

「偉いな三子、二子、一子。ほら、飴ちゃん」

「「「わーい」」」

「え、偉いですむの?」

「魔王の息子なんだ。揚げたぐらいじゃ死なねーしここは地獄だぜ?」

「………あー。納得………していいのかにゃぁ?」

 

 結局まあ地獄だし、ということで納得した。

 

「そういや藤舞さんにはあったのか?」

「…………まだ。心の整理がつかなくてね、あの人、あれでもあの男の事を愛してたし、あの男も地獄にいるんでしょ?」

「……………………」

 

 

 

 

「ニャハハハー!飛ばすよー!」

「が、ぎ!ぐげご!?」

「あはは!がぎぐげごだってー♪」

 

 炎に燃えた荒野を疾走する骨のバイク。それに楽しそうに跨がる母と引きずり回されるうろ覚えだが父親だと思う男。

 

「………誰?」

「藤舞さん。お前の母親だろ?ほら、一応親父もいるぞ」

「私知らないよあんな人!絶対人違いにゃ!」

「ところがどっこい本人なんだなこれが。ついでによくぶつぶつ呟くので超越者の作り方を隠した髪飾りがあることを知ってさ。妖怪達に盗ませた。まあこれが一番の証拠かな?これ知ってるの本人だけだろうし」

 

 と、黒猫の髪飾りを取り出す柳。

 

「中身はリゼヴィムが面白がって完成させようとしてたから消去した」

「それ白音のじゃ………」

「白音!?」

 

 黒歌が呟くとバイクで疾走していた藤舞が前輪だけブレーキをかけると後輪が浮かび、激しく回転する後輪が亡者を巻き込みミンチに変える。

 

「うわぁ、うわぁぁ………」

 

 顔を青くする黒歌に対し、藤舞はキョロキョロ周囲をみた後黒歌に気づく。

 

「黒歌!?黒歌なの!?」

「え、あ、うん」

「黒歌ー!」

「あ痛ったー!」

 

 バイクから降り黒歌に飛び付く藤舞。すっころんだ黒歌は岩に頭をぶつけた。

 

「ごめんねー。ダメなお母さんでごめんねー!」

「わ、解った!解ったから離れて母様!恥ずかしい!そこ、ほっこり見るなお供共!」

 

 シロ、柿助、ルリオに向かってがー!と叫ぶ黒歌。

 

「さてお前等。親子水入らずだ、邪魔者は去るぞ」

 

 柳がパンパン手を叩くと三子が頭に、一子と二子が背中にくっつき歩き出す。その後をついて行くのは犬猿雉。

 

 

 

「藤舞さんって柳様がスカウトしたんでしたっけ?」

「ああ。現世でたまたま、夫の魂に心当たりがあったんで。ボコボコにして良い代わりに雇われないか尋ねてな」

「心眼あるな~」

「どうせ呪術のせいで記憶とか壊れて扱いにくい魂だったしな。まあ、良いかなぁって……」

 

 柳はそこまで言って不意に振り返る。ここからは見えないが、あの親子は仲良くやっているのだろうか?

 

「そう言えば柳様。あの人の匂い強いですけど交尾したんですか?」

「してねーよ」

「柳様や鬼灯様ってそういう話聞きませんよね。モテるのに」

 

 シロの言葉に疲れたように応える柳。と、不意にルリオが思い出したように言う。

 

「ていうかさ、裸って人間や鬼にとって交尾の準備できてますよって事なんでしょ?柳様何で無視したの?嫌いなの?」

「まあ今日初めて会ったし好きでも嫌いでも。つーか俺の中の理想の女性像って樒さんだし」

「それ恋愛じゃなくて母親に向ける親愛じゃ」

「これがそうなのか。初めて知った」

 

 そういやこの人家族に恵まれていなかったな、と心の中でつぶやくルリオ。柳は途中、大きな皿の上に転がっている人型の揚げ物を土に埋めてから閻魔殿に戻った。

 

「そういや好き云々で思い出したけど、鬼灯様にもタイプがあるらしいぞ。知ってるか?」

「はい。動物や昆虫に臆しない人でしたよね。あとアナコンダに締め上げられても笑ってる人」

「俺、これに該当する鬼一人知ってるんだよ」

「え?」

「お香さん……」

「…………あー」

 

 確かに彼女はゴキブリ以外の虫は平気だ。それに毎日蛇を腰に巻き付けている。

 

「柳様のタイプはどんなんですか?」

「んー。気が強くて、かつ交際経験のある人かな」

「意外ですね。柳様Sなのに」

「誰がSだ失礼な。ただ、そういう女の方が屈伏させてみたくなるし」

「……………」

「ああ、あと鬼や人間じゃなくて野干や化け猫みたいに獣の姿があると良いな。毎日撫でてやりたい」

「なる程………」

 

 

 

 人間界に帰ってきたが。俺の心にはずっとあることが頭の中から離れなかった。

 負けた。それも、殴り合いで。不死身でもない男と。

 部長や朱乃さんは禁手に目覚めた時にはボロボロになってたからだと言ってくれたけど、正直言うと俺は最初から禁手だったとしてもあの人に勝てたとは思えない。

 魔力で拳を硬化して、身体能力を上げてただ殴ることだけに特化させた戦い方ってドライグは言っていた。数発で俺の鎧を砕く威力だ。でも俺の攻撃はあまり通じなかった。

 避けるのと防ぐのに異様になれているらしい。きっとそれだけキツい修行をしたんだろう。

 そう言えば俺が禁手になったらキレてたけど、何でだろ?

 

「ん?」

 

 もうすぐ家が見えてくると言うところで、魔法陣が地面に現れる。

 

「アスタロト家の紋章?」

 

 部長が首を傾げると同時に魔法陣から一人の男が現れ───

 

「てめぇ日本の領地に何アポもなく入ってやがる!」

 

 突如現れた鬼火先生に蹴りつけられアスファルトを滑る。アスタロトが、アスファルト………。うん、無いな。

 

「よお、お帰り兵藤。本当は帰ってきたお前に変態行為をしないよう改めて注意したり、そこの白猫に伝える事があって来たんだが、無断侵入したこいつをしょっぴいてからな」

「くっ!離せ、下等な人間が!僕を誰だと思っている!」

「はいはい知らんよ。日本であんまりデカい顔出来ると思うな」

「僕は現ベルゼブブを輩出した名家、アスタロトの者だぞ!」

「アスタロト?若手のか………それがこんな堂々と条約違反。レーティングゲームの参加資格は失うと思え………いや、そうすると北欧がうるせーか。仕方ない、取り敢えずはレーティングゲーム時以外監禁するよう言っとくか」

 

 鬼火先生は暴れる男を引きずりながら去っていった。

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