「ミルたんを魔法少女にして欲しいにょぉぉぉぉ!!」
「「「にょ!?」」」
もはや日曜の恒例になりつつある巨漢の来襲。未だ慣れない三子と遊びに来ていた一子と二子は三人仲良くひっくり返した玩具箱の中に隠れる。
「………また来たな」
「うむ。信心深くはあるのだがなぁ……」
ふう、と煙を吐き出し白い犬と兎に変えると、玩具箱と床の隙間から辺りを見回す一子、二子、三子が追いかけ始める。
「というか何あれ、せめて魔法少女になった夢でも見れるようにと高天原に頼んだけど弾かれたらしいのだが」
「………少なくとも三子が怯える存在であるのは間違いないな」
煙の動物を追いかける三子達を見る柳。三子が、世界で二番目に強い龍がビビるってどんな存在なのだろうかアレ。グレートレッド?いや、あれならグレートレッドにすら勝てるのでは無いだろうか?
「捕まえた」
「モフモフ……あれ?」
「消えた」
「煙だからな」
檎から暇つぶしに習った術だ。狐ほどではないが子供をあやすぐらいなら出来る。
「柳様~、パチモンの映画連れてって~」
「連れてって~」
「連れてって~」
煙の動物を見て思い出したのか映画のチラシを見せてくる三人。一子と二子は普通の人間には見えないし、天井にでも座って見る気だろう。
「んー。ま、いっか暇だし………」
「センセー。お客様よー」
と、柳が立ち上がろうとした時、巫女服姿の桐生が入ってくる。その後ろには如何にもなお嬢様と言ったいでたちの少女。見覚えがある、三年の安部清芽だ。
「彼氏役?」
「はい。悪魔の兵藤君と契約しようと思いましたが、日本での契約行為は既に禁止されたと聞いたので」
「俺を通して契約の許可をもらいに来たが、いっそってことか……」
柳は地獄所属だ。裏の事情を知る安部は当然その事も知っており、地獄に住まう獣達と共に力を貸して欲しいそうだ。
「私はまだ結婚したくありませんの。どうか、頼まれていただけませんか?」
「これって現世の過干渉にならねー?」
「寿命に関係するわけでもなし。それに、日の本の民だ……何より柳は生者。問題はないと思うぞ?」
となると後は柳の意思次第。こういう家族関係は柳にはさっぱりだ。何せ元の家族が暴力親父に薬中母、変態ブラコン逃避ヤンデレの姉。姉だけキャラの濃さが群を抜いてるな。
「よしこうしよう。俺は彼氏ではなく、単なる魔獣使いで、お前の教師。娘さんを結婚させたくば俺を倒してからにしろ、って感じで」
「まあ、最終的に結婚させられずに済むのでしたら………それと、おそらく魔獣勝負になるかと」
「魔獣勝負!」
「パチモンバトルみたいに!?」
「我見たい」
「「私も見たい。連れてって~」」
『さあ始まりました安部清芽の自由恋愛をかけた勝負。実況・解説は座敷ツインズこと座敷童子の一子と』
『二子でお送りします』
最近妙なスキルが増えてきたな、と実況席の座敷ツインズを見る柳。目の前には馬に乗った世紀末覇者………ではなく安部父がいた。
「一つ聞こう。貴様は、本当に我が娘の恋人ではないのだな?」
「ええ」
「では、何故邪魔をするか!」
「担任でなくとも、私は教師ですので。生徒が夢を見たいと憧れるならそれを叶えるまでです」
「ふっ。良かろう!では、第一試合だ!ステファニィィィィ!」
「ホキョオオオオオオ!!」
ドラミングしながら現れたのは白いゴリラだった。一子と二子が安部から借りた魔物図鑑を開く。
『あれは雪女。イエティの雌ですね。人に惚れる程度の、人に近い知能と冷凍ブレスが武器です』
『対する柳選手。いったいどんな獣を用意したのか』
「…………この子達ノリノリね」
審判役の桐生は座敷ツインズを見て呆れたように呟くのだった。
「よし、芥子ちゃん。頼む」
「はいはーい。頑張るでーすよ」
『柳選手、出したのはニホンノウサギ芥子ちゃん。地獄屈指の実力派兎ですね』
『かちかち山の狸を倒したその実力や如何に……』
フスーと息を吐く芥子を見てフフン、と馬鹿にしたように笑うステファニー。桐生は片手上げ叫ぶ。
「はじめ!」
「ステファニー!まずはドラミングだ!」
「ホッキョオオオオオ!!」
ドンドンドン!と胸をたたくステファニー。ちなみにゴリラのドラミングはパーで行いポコポコとなる。
『雪女のドラミングには攻撃力を、高める……』
「効果だよ二子ちゃん」
『高める効果があるそうです』
………和む。が、今は放置。
「芥子ちゃん!影分身!」
「フス!フスフスフス!」
ダダダダダダ!とステファニーの周りを高速で回転し始める芥子。心なしか増えた気がする。
「ステファニー!冷凍撲殺棒だ!」
ステファニーは身につけていたバッグからバナナを取り出し凍らせると空高く投げる。首を傾げる柳。芥子は無視して回り続ける。
「………芥子ちゃん!タヌキアタック!」
「おのれ狸ぃぃぃぃ!」
技名を聞いた瞬間芥子の目が充血し赤く染まると全身から黒いオーラを放ち、ステファニーに体当たりする。ステファニーは吹っ飛び気絶した。
「ステファニー、戦闘不能!勝者、柳先生!」
『芥子ちゃんは狸という単語を聞くと興奮状態になりステータスが大幅に上昇するそうです』
『相手を一時的に狸と思いこみ、しかしすぐに平静を取り戻す。主人との信頼を深く感じさせられる技でしたね』
「この子たちの解説スキルは何なのかな?」
続いて海の魔物対決。
柳は転移用魔法陣を開く。
「こい!弥泥魚!」
「…………?」
「あ、普通の水温だと凍死するんだったコイツ」
「えー………えっと、勝者安部先輩のお父さん」
最後は空中戦。お互い魔物の背に乗り戦うと言うものだ。
安部父は巨大な怪鳥に乗る。柳は、黒い蛇のような巨大なドラゴン。途轍もない力を、最近神社の外でも女の霊のスリーサイズがぼんやり見える程度に霊力が上がってきた桐生も感じる。
「え、えっと……最終試合、始め!」
「勘弁してください」
桐生の開戦の合図と同時に安部父は怪鳥の上の馬の上で土下座した。
「我、サイキョー!」
「「…………………」」
無表情でビシッと決めポーズを取る三子と拍手を送る一子と二子。何あの人形の館じみた空間怖い。
「正体は分からぬが、まさかあれほど強大なドラゴンを連れてくるとは。それだけ娘のことを考えているという事か」
「それは貴方もでしょう?安部、この人も、お前に幸せになって欲しくて相手を捜したんだ。結婚はしなくても、せめて会ってやれ」
「…………はい。わがままばかりで申し訳ありませんが、面会をセッティングしてもらっても?」
「うむ!ではな、先生………いや、我が友よ!また会おう!」
「所でなんで三子ちゃん私サイキョー!とか言ってたの?」
「あの黒いドラゴン三子だから。相手が戦わずしてビビったからじゃないか?」