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はじめまして。僕の名前は佐々木琲世と言います。2年程前、この地に来て訳の分からいままで途方に暮れかけていた所を幻想郷の管理者、八雲紫様に拾われ、その紫様の式、藍様の手伝いをしながら何とか生活しています。
そのままなし崩し的に式っぽい事…まあ、付き人の様な事をしています。そして僕は今…
「こんにちは。」
博麗神社に来ています。
-博麗神社-
琲世が長い階段を登り、目的の博麗神社に向かっている頃、大きな赤いリボンを着け、袖が服から分離して肩やら脇を晒した変わった赤い巫女服を着た少女が神社の境内の掃除をしていた。
(そろそろお昼ね…もうしばらくしたら来るかしら?)
巫女服の少女は箒で落ち葉を集めながらこの後来る客人…佐々木琲世の事を考えていた。
掃除をしながら琲世の事を妄想しているうちに、腰に一振りの刀を差し、根元が黒で毛先が白い癖のある髪、黒地に縦ストライプの入ったシャツにネクタイを締めてスラックスを着たやや幼さの残る顔立ちの青年…佐々木琲世が博麗神社の階段を登りきり、境内に入ってきた。
「こんにちは。」
(あ、琲世さんの事考えてたからかしら?琲世さんの声が聞こえた気がするわ…)
妄想の世界に旅立っていた事もあり、巫女服の少女は琲世の声を幻聴と捉えて再び妄想に耽る。
「こんにちは。霊夢ちゃん。」
「へ?え?!あっ!!は、琲世さん?!」
もう一度琲世は巫女服の少女…博麗霊夢に声をかける。今度は幻聴ではないと分かると慌てて返事をする。そして琲世の姿を確認すると、すぐに琲世に背を向け、髪を手櫛で髪を整える。ざっくりと整え終わると琲世の方に向き直る。
「は、早かったわね。確かお昼過ぎに来るって聞いてたけど?」
少し顔を赤くした霊夢が冷静を装い、予定より早く着いた琲世に話しかけるが、視線が泳いでいたりとどうにも落ち着きがなくソワソワしている様だった。
「そのつもりだったんだけどね。荷物多いから遅れるかもって思って早めに出たんだけど…結局いつもと変わらない時間で来れちゃった。」
『迷惑だったかな?』と琲世は困った様な顔で霊夢に尋ねる。
「い、いえ!!大丈夫です!!」
『迷惑だなんてとんでもない。』と言いたげに霊夢は手と頭をブンブンと横に振って答える。
その最中、霊夢はふと琲世の背中が気になった。琲世の背中には山登りでもするかの様な大きいバッグがチラチラと見えていて、更には大きめのスーツケースも持ってきていた。霊夢が気にするのも当然だろう。
「それにしても本当に荷物多いわね。まるで泊まっていくみたい…」
「え?紫様から聞いてない?僕今日からここで生活するように言われてるんだけど…?」
「…え?」
琲世からとんでもない一言が飛んできてわ霊夢は思わず固まった。
「えぇぇぇええぇええぇぇぇえ?!」
一瞬の間の後、霊夢の絶叫が辺りに響き渡った。
「その反応から察するに…知らなかったみたいだね。」
「とととと当然でしょ?!今初めて聞いたわよ!?」
先よりも顔を赤くした霊夢がしどろもどろになりながら初耳だと答える。完全に寝耳に水、しかも男と暮らせと紫から言われているのだから少女である霊夢が慌てるのも当然だろう。
「紫様…厄介になるのに霊夢ちゃんに肝心な事を教えてないなんて…」
『面白がって伝えなかったな…』と琲世は頭が痛いと言いたげな仕草で頭に手を当てる。
大妖怪八雲紫、その名の通り強大な力と器の持ち主ではあるが、それに比例して気まぐれでイタズラ好きのトラブルメーカーでもある。
この2年間、紫の元で生活してたため、紫なら面白いからと言う理由でやりかねないと考えていた。
「どうしよう…霊夢ちゃんも突然男が上がり込むなんて嫌だろうし…近くで野宿でもするか…?」
「い、いやっ!!琲世さんと一緒に暮らすのが嫌って訳じゃなくて…わ、私にも心の準備と言うものが…」
琲世が共に生活すると分かってて招いたのではないと分かると、流石にこの状態で上がり込む訳にはいかないと思い、琲世はここを出ていく事にした。しかし妖怪達が闊歩する幻想郷で、人間が安全に暮らせるのはここを降りてしばらく進んだ先にある人里だけだ。
しかも宿屋はないし新しく家を買う金もない。しばらく野宿しながら紫の元に帰ろうと考えていると、霊夢が慌ててそれを止める。
「けど…」
「と、とにかくっ!!琲世さんはウチに住むこと!!いいわね?!」
「う、うん。分かったよ、」
強い口調で家主の霊夢から許可が下りた。対する琲世はまだ少し渋っていたが、家主が良いと言うなら厚意に甘えようと思い、神社に戻る霊夢を追いかけていった。
-博麗神社、居間-
「…それでね、魔理沙ったら私が話している間に図書館の本を持って先に帰っちゃったのよ?お陰で私もグルだと思われて…説得するの大変だったんだから。」
琲世が神社に荷物を置き、居間で一緒にお茶をのみながら寛いでいると、いつの間にか霊夢が少し前にあった苦労話を聞いていた。
「そりゃなんと言うか…災難だったね。」
「ほんとよ。今度会ったら何か奢らせようかしら?」
霊夢はお茶を啜りながら魔理沙と呼ばれた人物に罰ゲームの様なものをやらせてやろうかと考えていると…
「呼ばれた気がしたぜ!!」
と言う元気な声と共に縁側に続く居間の障子が『スパンッ!!』と勢い良く開いた。そこにはウェーブのかかった金髪に黒のエプロンドレス、リボンの着いた黒い三角帽子といかにも魔女と言った風貌の少女が箒を持って立っていた。
「…魔理沙。」
しかし霊夢は遠慮なしに家に入ってきた客人…『霧雨魔理沙』を恨めしげに睨んでいた。
「こんにちは、魔理沙ちゃん。」
流石にここまで堂々と入ってくれば琲世も気付かないなんて事はなく、琲世は自然に挨拶をする。
「よう琲世。元気そうだな。それからちゃん付けは止めてくれ。」
「あはは…ごめんごめん。なんと言うか、ついポロッと出ちゃうんだよね。」
『気を付けるよ。』と言いつつ琲世は頬をポリポリと掻く。
「ちょっと、いつまで家主を無視すんのよ?」
しかし霊夢はお茶を啜りながら不機嫌そうに魔理沙を睨み、『早く出てけ』と言いたげな口調と目線を送る。
「おう霊夢。なんかあったか?機嫌悪そうだぜ?」
「アンタのせいよっ!!」
『ガンッ!!』と短い音と共に、霊夢が湯呑みをちゃぶ台に叩き付けて魔理沙を威嚇する。
「にしてもこんな時間まで居るなんて珍しいな。いつもは紫や藍から門限設定されてんだろ?反抗期か?」
霊夢が怒っているにも関わらず、魔理沙は特に気にした様子もなく琲世に話しかける。すると霊夢は『話逸らすな!!』と言ってさらに怒りをヒートアップさせた。
「違うよ。普段霊夢ちゃんがやってる結界の調整と維持の手伝いをする様に言われてるんだ。それで今日から住み込みで勉強する様に言われてる。」
「ほぉぅ…それはそれは…」
琲世が住み込みで結界管理の手伝いと勉強をすると聞くと、魔理沙はニヤニヤと笑いながら霊夢を見る。
「な、何よ…?」
にやけ顔を向けてきた魔理沙に戸惑いつつも、霊夢は何とか返事を返す。
「良いのか霊夢ぅ~?琲世と1つ屋根の下で生活だなんて…」
「い、良いわよ。琲世さんなら信用出来るし…今から追い出す訳にもいかないでしょ…」
うら若き男女が一つ屋根の下…ともなれば何かと『色々』と起こるだろうと魔理沙がからかう。霊夢は顔を赤くし、琲世は信用できるから大丈夫と言い切る。それに今から琲世を追い出すのも酷だと言って、神社に残る事を認めたと言う。
もっとも霊夢はある事件がきっかけで琲世に気があるため、間違いが起こっても構わないと思っていた。
しかし琲世は魔理沙と霊夢が尾籠な話をしているとは気が付いていない様で、信用されているとハッキリと霊夢の口から語られた事を気恥ずかしく思っていた。
「あ、もうこんな時間か。晩御飯作るよ。台所借りるね。」
気恥ずかしさを紛らわそうと外を見ると、既に日が沈み始めていた。琲世は夕飯を作ろうと思い、立ち上がると台所に向かう。
「魔理沙ちゃんも食べてく?」
居間から出ていく直前で琲世は振り返り、魔理沙にも夕飯を食べていくかを尋ねる。すると魔理沙は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「お?!マジ?!やったぁ!!食べてくぜ!!」
「…ホントに遠慮ってものを知らないわね。アンタ。」
琲世が夕飯を作ってくれると分かると魔理沙はすぐさまご馳走になると決めて無邪気にはしゃぐ。そしてそれを見て呆れる霊夢だった。
「琲世の料理が旨いのが悪いんだぜ。あんなの目の前にぶら下げられたら食い付くに決まってるぜ!!」
「まあ…分からなくもないけど…」
実際琲世の作る料理は美味しいのだ。琲世が夕飯を作ってくれると言うのだからご馳走になろうと思うのはある意味当然とも言える。
「だろ?それに琲世が良いって言ってるんだから問題ないんだぜ!!」
『家主は私なんだけど…』と霊夢はツッコミをいれる。実際琲世は居候の身であるため、霊夢の許可も必要なのが筋であり、霊夢は魔理沙の(ちょっと迷惑な)自由っぷりに呆れる他なかった。
-1時間後-
「さあさあ召し上がれ!!佐々木琲世特性『和風・琲世スペシャル』だよ!!」
夕飯を作り終えた琲世が配膳してきたのは白米、ほうれん草のおひたしと卵焼きを添えた鮭の塩焼き、肉じゃが、豆腐と椎茸のお吸い物…シンプルではあるがどれも綺麗に出来上がっており、味も大抵の人は美味しいと答える様な出来だった。
「おっしゃぁ!!いっただきまーす!!」
すると魔理沙が勢い良く箸を取り、白米や鮭、肉じゃが等を頬張り始める。対して霊夢は手を合わせて『いただきます。』と言うと落ち着いた様子で食べ始めた。
「うめぇー!!また腕を上げたんじゃないか琲世?!」
掻き込んだ料理を呑み込むと魔理沙は琲世の料理が美味しいと喜んで食べていく。
「魔理沙がっつきすぎ。落ち着いて食べなさいよ。」
「そう言う霊夢こそいつもよりペース早いぜ?」
大人しく食べていた霊夢だったが、既に卵焼きと肉じゃがを食べきっており、白米も半分程なくなっていた。いつもはゆっくりと食べる霊夢にとってはかなりのハイペースな食べ方だった。
「い、良いのよ私は!!大人しく食べてるんだから!!」
まるで美味しいご飯にがっついている様にも見え、顔を真っ赤にしてそっぽ向く。
その様子を琲世がニッコリと笑いながら見ていた。
「何笑ってるだよ琲世?!」
「いや、美味しそうに食べてくれると作った甲斐があったあったなって。」
そう言うと琲世もまた箸を取り、晩御飯を食べ始めた。そんなこんなで3人で夕飯を食べ終わる頃にはすっかり日も暮れ、辺りは暗くなっていた。
「「御馳走様でした。」」
「はい、お粗末様でした。」
夕飯が終わると『片付けは私がやるわ』と言って霊夢が食器を手早く片付け、台所に向かう。
その後魔理沙が『あ、そうだ。』と何かを思い出した様に琲世に話しかける。
「そんなに大事な話って訳でも無いんだけどさ、琲世って幻想郷の連中とは粗方顔見知りなんだよな?」
本当にふとした思いつき、『そう言えば何時から居たっけ?』と言った感じの特に意味はないが気になった事を魔理沙は聞いてみた。
「そうだね。僕は紫様の使いでもあるから、大きな勢力への挨拶回りをしつつ知り合いに…て感じだね。本来は藍さんがやってた事なんだけど藍さんは普段紫様のお世話に結界の発動と管理で忙しいから…僕が手伝える様になるまでは休む間もない位に忙しかったみたい。」
『お世話になってばかりだなぁ』と琲世は思った。右も左も分からない自分を拾って、式擬きとして使う代わりに生活の拠点を与えてくれた紫、自身も忙しいにも関わらず、一人前の式擬きになるまで嫌々ながらも最後まで面倒を見てくれた藍、叱られて落ち込んだ時に慰めてくれた橙…マヨヒガで過ごした時の事を思い出し、彼女たちに助けられてばかりだで感謝の念しかないと感じ、『どうにか恩返しが出来たら…』と考えていると、魔理沙が話を進める。
「そっか…じゃあ、霊夢とはいつ知り合ったんだ?何か気が付いたら霊夢と一緒に宴会で料理運んだりしてたよな?」
魔理沙の質問に、琲世は『そうだね…』と顎に手を当てて、霊夢との出会いを思い出すべく考え込む。
「霊夢ちゃんと初めて会ったのは確か…こっちに来て1年後位だったかな…」
色々と思い出し、記憶の整理が着いた琲世が、霊夢との出会いを話していく。