二年前。その日から、世界は緩やかに滅亡への道をたどり始めていた。地中から出現した巨大生物、ツァトゥグア。あれは、危険を知らせるサインに過ぎなかったのだ。
わたしは、その頃にはもう、警察として働いていた。厳しい訓練や試験を乗り越え、一人前になったと思い込んでいた。まさか、この国が怪獣に襲われることになるなんて、そんなこと考えてもいなかった。しかし、怪奇な事件が次々と発生し、そして…
現れた怪獣。それを前に、わたしは何もできやしなかった。
絶望。恐怖。そして、無力感。
市民を、街の平和を、守りたいって。そう思って、これまで頑張ってきた。つらいことも、苦しいことも、たくさんの経験があった。そのすべてが、この世界の常識とともに、壊された。
わたしは、もう立ち直れないかもしれない…そう思った。怪獣のもとへ向かうレンジを引き止めることもせず、自分は怪獣から逃げることに必死で。
何が「市民を守りたい」だ。何が「街の平和を守りたい」だ…
彼は無事だろうか…それを確かめるのが怖い。
警察官として、人として…
そんなわたしの脳裏に、ひとりの姿がちらつく。
こんな情けないわたしを救ってくれた、クレナイ ガイさん。怪獣の襲来の翌日も、無心になって働くことができたのは、彼に希望をもらったからだ。
警察官ではない、そんな彼でも、人を救う。だったら、わたしにも、わたしにだってできることがあるはず…そう思うことができた。
――――最近、夢を見た。不思議な夢だった――――
午前八時。東京湾に怪獣が出現した。
わたしの心はガイさんに救われたけど、こっちはそうはいかない。警官としてのミズオ・ユリカは、相変わらず自分への不満を抱えているのだ。
巨大な怪獣を前に、何もできない警察や自衛隊。わたしが何もできないのは変わらないのであった。
大きな地響き。
あの日わたしの前に現れた巨人が、大地を揺らして顕現し、怪獣と相対する。
巨人と怪獣が戦っている間、ニュースや警察の無線がそろって伝えるのは、別のニュースだった。大阪…そこに、別の怪獣が現れているというもの。
でも、以前ニュースで見た別の巨人は現れない。このままじゃ…
わたしも、大切なものを、そしてみんなを守りたい――――
あの巨人のように!
その強い思いが届いたのかもしれない。哀れで無力なわたしに情けをくれたのかもしれない。それでいい。
光がわたしを包む。
見えたのは、夢の風景。
そして、浮かぶ言葉。
――――それは受け継がれてゆく魂の絆――――
「頼んだ、次のウルトラマンネクサス…!」
この声は、レンジさん…!?
その考えは、光の衝動と共に霧散した。手には何かが握られている。それを、無意識に振り上げる。体が、変わる。
巨人へと、変身――――
一瞬。そこは大阪。大阪城が見える。
そして、街を襲う怪獣。4、5匹がいるのが見える。大きさはそれほどでもない…いや、わたしが大きくなっているからそう感じるのだろう。
飛び魚のようなその体の長さは、車よりもはるかに大きい。
しかし、それを小さく感じるほどに、わたしは大きくなっているみたいだ。
銀色の腕。銀色の体。ビルに映し出される銀色の巨人。
ウルトラマンネクサス アンファンス。
――――わたしも、ガイさんみたいに、誰かを救えるかな――――