数ヶ月前 中国
怪物駆除隊。
軍の内部でも極秘の計画として、そのチームは編成された。
頭部は大きな脳。体は甲殻類を思わせる鎧と、大きなハサミ。おまけに空を飛ぶ。そんな怪物が数十体も現れるのだ。鍛え抜かれた軍人たちも、見たことのないその異形に恐怖を隠せない。
森の中を知りつくし、連携して襲いかかる怪物に、駆除隊のメンバーも歯が立たなかった。
彼が現れなければ。
黒いコートに身を包んだ東洋系の顔立ちの男。駆除隊の面々は、その男が腕から光を放つのを確かに見た。駆除隊が怪物を殲滅したとニュースで伝えられているが、彼らは一体だって倒せていない。その男がすべて倒したのだ。
同時期 フランス
フランスの情報部隊には極秘の情報が入っていた。黒のコートの何者かによって、ティンダロスの猟犬らしきものが倒された、と。
中国もフランスも、怪物の情報は公開したが、この謎の人物については厳しく情報を規制した。怪物ならまだ対抗できるかもしれない。しかし、怪物を苦もなく倒してしまうような者が実在するならば、いったいどうすればいいというのか。
現在 日本
マドカは、インターネット上でオカルトマニアに接触を試みた。もしかしたら、一連の怪物騒ぎについて何か情報が得られるかもしれない。不安な気持ちも晴れるかもしれない…そう考えたのだ。
某日、雑居ビルの一室に4人の人物が集まった。
大学生、ゴダイ・マドカ。男性、19歳。彼の持つ象牙の書には、怪物の情報が載っている。
探偵、ナギ・レンジ。男性、25歳。
警官、ミズオ・ユリカ。女性、22歳。
宗教学者、ナイトウ。男性、30歳。
年齢も性別もバラバラな四人の日本人。
マドカは、挨拶を済ませた面々にさっそく本題を切り出す。
「これを見てください。いままでに報道された奇怪な怪物の情報が予言されていた本です」
宗教学者のナイトウが興味深そうに観察する。そして、何かを確信したのか、マドカに質問する。
「君。これは、『エイボンの書』ではないかね?どこで手に入れたんだ?」
「『エイボンの書』?バオーンは、『象牙の書』といってましたが…僕は、バオーン…いや、ツァトゥグアからこれをもらったんです」
この発言に、三人は動揺を隠せない。
「ツァトゥグアって、あの怪物!?いったいどうやって会ったっていうの!?」
「かの怪物はこのような本を記す知性があったのか…!?」
マドカは三人に過去の出来事を説明した。
「なるほど…」
ひとしきりうなずいたナイトウと、突飛すぎる内容に頭の整理が追い付かないレンジやユリカ。
ナイトウは本を眺めながら言った。
「この本の言語…おそらくラテン語だが…私には読めないが、絵を見るだけでわかる。この本に書かれている怪物たちは私の研究しているおぞましい宗教の神々と酷似しているな。そして…」
「三種類も確認されたことだ。この本の怪物はおおかた実在していてもおかしくないだろう」