デモンゾーア
カミーラとガタノゾーアの残留エネルギーが融合して誕生した暗黒魔超獣。巨体と黒霧で世界を覆い、闇で染めつくす最強の邪神。
邪神が消滅し、一か月が経った。
マドカの周りには様々な変化が起き、それもようやく落ち着いてきたところだ。
ミズオ・ユリカは警察官の仕事を今も続けている。邪神との決戦のあと、ウルトラマンネクサスの力はいつの間にか失われていたようだ。しかし、彼女の心は以前より輝きを増していた。マドカは時々連絡を取っているが、活躍の機会が増え、昇進も近いということだ。
クレナイ ガイはあの後、再び放浪の旅に出た。別の宇宙に向かうといっていたが、また逢う日は来るだろうか。
高山我夢と藤宮博也は、巨大な時空移動マシン・アドベンチャーで元の世界へと戻っていった。彼らがいなければ世界を救うことはできなかったとマドカは思う。
そして、ランドルフ・カーター。彼もまた、別の星へと向かっていった。今回のような異形による事件は別の星でも起きているという。それを解決するため、今も奔走しているのだろう。
当のマドカはというと、普段通りの生活に戻っていた。というのも、ウルトラマンであることは誰にも言っていないのである。メディアは世界を救った巨人の正体を追い続けているが、未だ真相には至れていないようだ。このまま、元通りの日常へと戻っていくのだろう…
結局、邪神を裏で操り、今回の事件を主導した黒幕・ニャルラトホテプを捉えることはできなかった。デモンゾーアを倒した後、敵の動きは全く無かった。諦めて別の世界へ行ったのだろうか。それとも、まだこの世界にいるのだろうか。だが、この星にはウルトラマンティガがいる。多くの戦いを経て、彼も一人前の戦士になった。たとえ強大な敵が来たとしても、彼と人々によってこの世界は守られていくことだろう…
『緊急ニュースをお伝えします。先ほどモンゴル平原に巨大な生物が出現しました。巨大生物は地中を移動しているとみられ、モンゴル政府は怪獣の呼称をゴ…』
ニュースを聞き、マドカは駆けだした。無貌の神がいなくなっても、この世界にはまだ巨人の力が必要なようだ。スパークレンスを掲げ、彼の体は巨大な戦士へと変化する。
銀色の巨人が、今日も大空を翔ける。
The end
宇宙空間。小惑星のうえで、彼は遠く光る地球をにらんでいた。その姿は、影のようになっており正体を捉えられない。無貌の神、ニャルラトホテプだ。邪神による地球の制圧を阻止され、彼は憤慨していた。無言の怒りが彼の周囲を影で染める。
そんな彼のもとに、ひとりの巨人がやってきた。
銀色の全身。神々しい銀色の翼。伝説の巨人、ウルトラマンノアだ。
彼はウルトラマンネクサスが力を取り戻した真の姿である。レンジやユリカとの一体化を通してノアの姿へと戻ることができたのだ。
数々の宇宙で語り継がれる伝説の存在、ノア。そんな彼でも目の前の影に対して今までに感じたことのない危険を感じとった。
影が実体としての姿を現そうとするが、その前にノアは先手を打つ。
ノア・ザ・ファイナル。
敵を次元の狭間へと封印する最強技だ。しかし、それを受けた影は揺らぐだけで、変化がない。一方、ノアの姿はどんどんと力が失われて小さくなっていく。羽が消滅し、その肉体も痩せこけていってしまう。大技を使った反動を受けてしまったのだ。
ノアの技を受けても倒れないその奇怪極まる影。それが実体化し、その正体を現す。
その姿は、かつてノアが死闘を繰り広げた敵・ダークザギによく似ていた。
一瞬の思考で彼は察知する。
その敵はダークルシフェル。原初の悪魔。
この悪魔がどこから来たのか、それは並行世界である。ノアがもし闇の存在に敗北した世界があったとしたら。ダークザギ以上の邪悪な存在があったとしたら。
それは、クトゥルフ神話に語られるニャルラトホテプ。地獄におけるルシファー。
それは、別の世界をも破壊しうる、この世すべてを闇に染める悪魔に間違いないだろう…
しかし、その事実が分かったところで彼には成すすべはない。
異形の姿を現したダークルシフェルは、先ほどまでノアであった、ネクサスと呼ばれた存在、ザ・ネクストを宇宙の彼方へと吹き飛ばした。
抵抗することもかなわず、彼の意識も、記憶も、力とともに抜け落ちていった…
to be continued
ウルトラマンティガ、そしてマドカのお話はこれにて完結です。一年間ありがとうございました。
初めての小説作品でしたが、それなりのものはできたかと思います。
さて、次は力を失ったノアの話へと移るのですが、クトゥルフ神話要素が無くなり、主人公も変わるので別作品として投稿します。そちらもよろしくお願いします!