花屋喰種   作:みぞれアイス

1 / 117
書いていたJAIL編のデータがまるまる消し飛んだので初投稿です。
ハーメルンにはまだ不慣れなので、少しずつ慣れていければと思います。



花屋喰種【THE CANNIBAL】
第1話 プロローグ


 人間とコーヒー(珈琲豆と水)しか摂取することのできない人間の亜種、近くて遠い敵対者。それは喰種(グール)と呼ばれた。

 喰種(グール)の姿は人間と変わらないが、興奮時などに目の虹彩が真紅に変わり、結膜が漆黒に変化する。これを『赫眼(かくがん)』といい、最も簡単なヒトと喰種(グール)の見分け方である。

 

 喰種は人間の4倍以上の強さを持ち、感覚器官も鋭敏である。その上、『赫包(かくほう)』という人間には無い器官を持っている。

 

 赫包(かくほう)が発達すると、それを特定の部位から自在に放出することができ、これを『赫子(かぐね)』と言う。

 赫子(かぐね)は肩から出る『羽赫(うかく)』。肩甲骨付近から出る『甲赫(こうかく)』。腰の辺りから出る『鱗赫(りんかく)』。尾骶骨(びていこつ)付近から出る『尾赫(びかく)』の4つがあり、基本的な喰種(グール)はどれか1つの赫子(かぐね)が使える。中には2種類以上の赫子(かぐね)を扱うことのできる者もいる。

 

 喰種(グール)の危険度はSSSからCの6段階(±もあるが割愛)で表され、その中でもレートAの喰種(グール)は、ざっくりと言えば喰種(グール)の中でもそこそこ上位に位置する。

 

 

 

「糞が糞が糞がッ!! なんで死なねぇんだ!!」

 

 そんなレートA喰種(グール)の男は、悪態をつきながら『170センチ前後の植物』に向かって攻撃を続ける。

 しかし『植物』は傷一つ付かない。無傷の『植物』は人の歩行と同じくらいの速さで、ゆったりと男へ迫る。

 

 喰種(グール)は数メートルの高さを軽々と跳び、短距離走の世界記録すら置き去りにする。そんな喰種にとって『植物』の迫る速度はあまりにも遅く、逃げることは容易い。

 しかし、自由気ままに人間を喰らい、楯突(たてつ)喰種(どうぞく)は皆殺しにしてきたその喰種(グール)にとって、逃げるという選択肢はなかった。

 逃げない理由はそれだけではない。レートAという高レートである事の自負。そして赫包(かくほう)から派生した喰種の捕食器官にして武器たる『赫子(かぐね)』の中でも、攻撃力に特化した鱗赫(りんかく)を持っており、正面から突破できると思っていた。

 

 しかし本当は……後ろを見せたらその瞬間に死ぬような予感がしていた。

 

 植物の射程圏外から鱗赫で攻撃を続けること数分、強者を自負していた男は、やがて赫子(かぐね)を使うエネルギーが尽き、逃げようとしたところを……。

 

 ─────蔓の先端から牙が生え、根の先端から牙が生え、そして茎から牙が生えた植物に、生きたまま捕食された。

 

 哀れな男の悲痛な断末魔と、(おぞ)ましい咀嚼音(そしゃくおん)が夜の街に木霊(こだま)した場所には、赤黒い植物が一輪。

 

 

「ごちそうさま。あなたの骨、血肉、絶望の全てが、いつかは花になるから」

 

 植物の中から現れるは一人の少女。少女もまた喰種(グール)である。

 

「……東京にきて5年。もうレートAくらいなら余裕だね……赫包(かくほう)もだいぶ増えたし、もうちょっとかな? とはいっても、そんなに良い喰種(グール)も居ないし、捜査官も厄介……それに、なんか最近フクロウとかいうのが暴れ回ってるみたいだし……しょうがない。またしばらく『24区』に潜ってよう……3年前みたいに『青メガネ』がまた不意打ちしてきたら嫌だなぁ……赫包損傷は痛いんだよねぇ……」

 誰もいない裏通りで少女は独りつぶやき、マンホールの中へと入っていった。

 

──────────

 

 東京15区のとある廃ビルの大広間にて、喰種達が集会を開いていた。

 

「ボス! 花狂いのヤツがようやく来ました! おい、さっさと入れ。お前が最後だぞ」

 

 会場のドアが開き、若い女が入ってくる。

 

「遅れてしまいごめんなさーい。そしてさようならー」

 若い女はそう呟き、女を会場に連れてきた喰種の首を()ねた。

 

「は? ……あっ」

 

 目の前の惨劇に呆然とする喰種達。若い女は赫子を展開し、近くに居た喰種達の首を次々と刎ねていく。

 

「……てめェッ!! なにやってんの分かッ……」

 

 仲間を殺され激昂する男も、即座に首を刎ねられ、自らが作った血溜まりへ沈む。首のない喰種達が次々と量産され、廃ビルの黄ばんだカーペットは、真紅のカーペットへと色を変えていく。

 

「分かってますよー? 今日はこの組織が出来た記念日ですよねー? そして、この組織が終わる日でもあるんですよー?」

 

 仲間の突然の裏切り。女の凶行を止めようと立ち向かう喰種達。されど、女が展開する赫子の間合いは大きく、近接攻撃を仕掛ける前に死体へと変わっていく。

 

「もう私は飽きちゃったんですよー? 貴方達の決めたルールに従うのも、貴方達にバレないように遠くへ捕食しに行くのも」

 

 逃げようとする喰種もいたが、会場に窓は無く、唯一の出口には裏切り者の女。逃げるには女へ近付かねばならず、結果は明らかであった。

 

「かといって、15区の暮らしは快適なので、ここから去るのも嫌ですし、人間社会で生きる私の正体を一方的に知ってる存在も目障りです。だから、この組織はもう邪魔なんですよー」

 

 残ったのは遠距離攻撃を得意とする羽赫の喰種達。しかし、狭い室内ではヒット&アウェイで戦うには狭すぎる。少しずつ女は距離を詰めていき、やがては首なし死体の仲間入りを果たした。

 

 会場にいた喰種は全て首なし死体へと変わり、女は控室の扉をこじ開けた。

 

「ひぃっ……ねぇ、なんで!? あたし達は仲間なのにっ!!」

「やめてくれ……殺さないでくれ! 嫁のお腹には俺達の子供がいるんだ!! 頼むっ!」

 

 男女の喰種が命乞いをする。今回の集会の最後には、二人の結婚と妊娠を大々的に祝福する予定であった。その準備のために会場の裏手で待機していた結果、最後まで生き残る事ができた。しかし、女に見つかってしまった今、その運命は決まった。

 

「結婚、おめでとうございまーす。私は貴方達を祝福してますよー」

「本当か! じゃあ助け……」

「ばいばい」

 

 女は夫婦の首を刎ねた。

 

「よーし、これで15区の喰種は全員殺せたかなー。さてと……」

 

 

 後日、廃ビルから異臭がすると通報を受けた警察及び喰種捜査官がその廃ビルを調査したところ、夥しい量の血痕こそ見つかったが、肝心の死体がどこにもないという不思議な事件が発生した。

 

 

──────────

 

 若い女がかつて少女だったころ、花屋になることを夢見ていたが、少女の父は言った。

 

喰種(グール)に人間の生活はできない。人間のような生活を夢見ても、お前が生まれてすぐ死んでしまった母さんのように喰種捜査官に殺されるだけだ」

 

 やがて、自らが二種類の赫子(かぐね)を持つ希少種であることを知った時、あることに気が付いた。

 私の甲赫(こうかく)は葉や蔓に似ていて、尾赫(びかく)は根っこに似ていると……。

 

 肩甲骨から生える甲赫を上半身に纏い、尾骶骨から生える尾赫を下半身に纏うと、そこにはまるで植物のような自分がいることに気付いた。

 お花屋さんになれないなら、私が花になればいい。そう父に告げると苦笑いしながらこう言った。

 

「じゃあ『赫者(かくじゃ)』を目指さないとな。喰種(グール)をたくさん食べると、喰種(グール)赫子(かぐね)が進化するらしい。まぁ、喰種(グール)なんて食べれたモンじゃないけどな」

 

 赫者、それは喰種(グール)による共食いを続けた先にある変異種である。通常の喰種(グール)より強く、またその赫子(かぐね)はより異形の様相となる。少女はその『異形の様相』を、『花が咲く』と考えた。

 

 その日から、少女の主食は人間から喰種(グール)になった。甲赫で守りを固めつつ、尾赫で攻撃するスタイルは、喰種(グール)の攻撃を寄せ付けること無く仕留める事ができた。捕食した喰種(グール)は人間に比べると遥かに不味かったが、強くなって花が咲くと思えば、食べれない事はなかった。

 

 父が狩った人間をおかずにしつつ、少女は自分が狩った喰種(グール)を食べる生活が続いた。

 

 しかし、少女は喰種(グール)を狩ることで他の喰種(グール)の怒りを買い、やがて喰種(グール)の集団に自宅を襲撃された。

 いつもの戦闘スタイルで相手を殺し終わった時、父は死んでいた。

 

 人間しか食べなかった通常種の父と、喰種(グール)を主食にしていた希少種の少女。力関係はいつの間にか逆転していたのだ。

 

 少女は哀しみに嘆きつつも、襲撃者と父を食べた。父の肉は喰種なれど、どこか優しい味がした。

 

「お父さん……いままで愛してくれてありがとう。私は立派な花になるから!!」

 

 そして、少女は火葬代わりに家へ火を放ち、その場を後にした。

 

 目指すは東京。人も喰種(グール)も集う地へ。

 新幹線に揺られて東京6区、上野駅。ここより少女の生活が始まる。




 1 5 区 完 塞 
次話からは15区の喰種を皆殺しにしてから数年後の2012年、原作本編に関わっていきます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。