花屋喰種   作:みぞれアイス

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Re:第24話 Dying Light

 二つの動画を投稿後、あっという間に情報が拡散した。

 ネット上にはキジマ達を讃える声もあれば、非難する声もある。

 だが非難する声には発言者を喰種認定するコメントがいくつも付き、最終的にはキジマ達を讃える者と恐怖する者の二つに分かれた。

 

 ニムラのページから動画は削除されたが、その手の愛好家達は消される前に動画を保存しており、既に各所へ転載されている。

 

「キジマ特等、貴方どういうつもりですか。こんな動画……一般の人も観れるというのに」

 

 特等捜査官であり、対ロゼの最高責任者である宇井(うい)が、キジマへ詰問する。

 

「はい、おかげでかなりのアクセスがありました。ロゼにもメッセージが届いたと思いますので、動画は非公開にしておきました」

 

 堂々と語るキジマに、宇井は深く溜め息を吐いた。

 

「仲間を痛めつけることでロゼを誘き出す……餌は貴方達キジマ班ですか……常人なら危険過ぎて実行できませんが、命知らずの15区担当といったところですね? ですが、これはいくらなんでも対策法に抵触します。貴方達の言う『最低限』がいつまでも通用するとは思わない方が良いかと」

 

 宇井は忠告するが、キジマは平然とした態度を崩さない。

 彼にとって対策法13条の抵触など恐れるに値しない。

 

「ええ。これから班の皆と『その査問会』に出席予定でしてね。これにて失礼いたしますよ? チームから外されてなければ、また後程」

 

 キジマはゆっくりとお辞儀し、宇井の元から去っていく。

 その後ろ姿は査問会に呼び出されているとは思えないほど堂々としたものだった。

 

「……イカレ野郎」

 

 クインケ鋼輸送作戦とオークション掃討作戦で多数の殉職者を出し、15区支部は更に不人気の勤務地になった。

 人工喰種にされた子供や老人を殺した事が今もなお捜査官達の精神に傷を残しており、15区の喰種と戦いたがらない者が殆どだ。

 そんな中でキジマ班の存在がどれほど大きなものか宇井は知っているし、当然キジマを含めた他の者達も知っている。

 

 ゆえに査問会といえど、キジマ達を強く叱責する事はないだろう。

 

 

──────────

 

 

 査問会を終えたキジマ班は、空いている会議室でのんびりしていた。

 

「よし、盗聴器の類は無しっと……いや~本当茶番。赫子不可避ですねぇ」

 

 ニムラは査問会に居た面々の顔を思い出して嗤う。和修本家の喰種(ひと)ばかりで構成された査問会は、(ヴィー)の構成員であるニムラが居たことで茶番劇に成り下がった。

 

「まー私達のやり方に文句は言えないよねー? ニムちゃんに裏切られたらって思ったら怖くて強く出れないよねー」

 

 ニムラは和修本家が喰種であることを知っている。そんなニムラがキジマ達に本当の事を言えば、キジマ達が自分達を殺しにくるかもしれない。それは和修家にとって恐ろしいものであった。かといってキジマ達を消せば15区を止める者が有馬しかおらず、有馬一人だけで何とかなるとは思っていない。

 

「そもそも僕らを暗殺でもしようものなら、間違い無くCCGは揺らぎます。それだけ今のキジマ班は大きな存在になってますからね。佐々木上等や白日庭(はくびてい)、身内出身者の重用(ちょうよう)が裏目って、非エリートの皆さんは和修家アンチのキジマ班ラブなので。まぁ後は自分で言うのもアレですが僕らはキジマさんを除いて美男美女揃いですし、そこらへんの票も貰ってますね」

 

 喰種に恨みを持つ捜査官は多い。ゆえに喰種へ容赦しないキジマ達を支持する者もいる。

 他にも、キジマ達の強さに惹かれる者、嗜虐性に惹かれる者……和修家を嫌う者、ニムラの人柄に惹かれる者、カオルやシーナの美貌に惹かれる者……そんな捜査官達によってキジマ班の立場は築かれ、(ニムラ)の存在によって確立していた。

 

「まぁ査問会も茶番でしたが、にむらじの茶番っぷりも酷いですよね。何せユウマくんってば()()()()()()()()()()んですから」

 

「私とシーナちゃんで一緒に粉売りに行ってた時に、シーナちゃんが執事さん達の事情を粗方把握してくれたおかげだねー」

 

 ユウマは()()()()何も語らなかった。それは並の精神力では不可能な芸当だ。その忠誠心は褒め称えるべきだろう。

 しかし、カオルとシーナが月山家の内情を知っていたゆえに、ユウマの努力は全て徒労に終わっていた。

 

「アリザって子はユウマさんが大好きな子だったから、一人でもキジマ特等を殺しに来るんじゃないかしら?」

 

 あれほどまでに残酷な動画を作ったのだ。アリザが恋人を助けるために単身キジマへ特攻するであろうことは容易に想像がつく。

 

「そだねー。そのときが来たらアリザさんを殺して、妖精さんのおうちを終わらせよっ! 妖精さん家の花畑が欲しかったんだよねー」

 

「私は月山家の蔵書に興味があるわね。珍しい本とかもありそうだし」

 

 カオル達は邪悪に嗤う。カオル達は月山家の何が欲しいかを楽しそうに語り合っていた。

 

──────────

 

 美食家(グルメ)はハイセの肉を食べたことにより、カネキが生きていた事を知る。

 

 美食家はハイセとなった元カネキと二人っきりで会おうと画策するが、ハイセの側にはクインクスが常に居るため、二人っきりになれるチャンスがやってこない。

 

 そんな主を不憫に思ったのか、男装執事のカナエはアオギリを雇うことにする。

 前金として100万円、クインクスを一人殺す毎に追加報酬。この条件でカナエは『白スーツ』をクインクスに差し向けた。

 

 結果として、クインクスは誰一人欠けることなく白スーツを撃退したが、ハイセ達はロゼがアオギリと繋がりのある喰種集団だと思い込んでしまう。

 

 

─────そして、宇井特等を中心とするロゼ対策会議にて、その議題があがる。

 

 

「ロゼとアオギリの繋がりか……てことは15区じゃなさそうだな」

 

 上等捜査官の富良はどこかホッとしたかの様に息を吐いた。アオギリと繋がっているのなら、15区とは繋がっていない事の証明になる。

 

「白スーツとロゼと思わしき赫子を持つ喰種は、捜査中の我々クインクスを待ち伏せ、複数体での襲撃を実行しました。憶測ではありますが、キジマ特等の動画の件で報復活動に出ている可能性もあります」

 

 ハイセは苦い顔で告げる。ハイセにとって、キジマ達のやり方は許せるモノではない。

 

「おやおや? 思わぬ形で動画の『功績』が現れましたな」

 

 しかし、キジマはニヤリと笑う。ハイセに何を思われようと、キジマ達には関係ないのだから。

 

 だが、そんなキジマに対し、宇井の厳しい視線が飛ぶ。

 

「功績? これは明らかに『飛び火』ですよ」

「おや、そうでしょうか? ロゼがアオギリと手を組み、報復行為を始めた。つまり、我々が万全の体制で迎え撃てば、ロゼとアオギリ双方の手掛かりを得ることが可能です。これを功績と呼ばずして何と呼ぶのです?」

 

 しかし、キジマはにこやかに語る。宇井はどこか納得しそうになったが、慌てて頭を振った。

 

「……いつものように言いくるめようとしても無駄ですよ。それは『誘いにのってきた』という点のみを評価すればの話でしょう。規模感が不透明すぎる。不用意な捜査線の拡大は好ましくありません。アオギリの極一部と協力関係にあるのか、アオギリ全体との協力関係にあるのかで布陣は大幅に変わります。もしアオギリ全体と協力関係にあるのなら、いくら今はキジマ班が一時的に入ってきているとはいえ、我々S1班だけで対処する事はできません」

 

 S1班……優秀な人材を集めた部署であり、捜査官達はまずここに入る事を目指して努力する。いわば精鋭部隊だ。

 なお、他にもS2班やS3班などがあり、S2、S3と上がるにつれ危険だが功績の大きい仕事が回ってくる。

 例を出すのであれば、鈴屋班はS2班に常駐しており、有馬班はS3班に常駐している。

 

 ちなみに、キジマ班は普段この中に所属していない。15区に出没する喰種は極めて稀であり、普段はパトロールしか仕事が無い。だが有事の時は誰よりも危険なため人気がない。15区担当とはそんな特殊すぎる立ち位置にある。

 15区はしいて言うのならS2やS3に近い立ち位置の者がやるべき案件なのだが、S2はアオギリの対処に追われ、S3は東京の地下に群生するマンドラゴラのような生命体『自立型グールイーター』の対処に追われている関係上、神出鬼没な15区の喰種は後回しにされている。

 

「すみません、実態が分かれば……相手の戦力が分かれば良いんですよね? 宇井特等、()()()()()()()を再度ご考慮下さい」

 

 ハイセの提案に宇井は悩む。ハイセの作戦とは、ハイセとクインクスが喰種になりすまし、捕まっていない喰種達から情報を集めるというものだ。

 

 駆逐すべき喰種を意図的に見過ごす形となるため、一度は宇井が却下した作戦だが……。

 

「……佐々木上等、皆さんに説明を」

 

 ここにいるメンバーから賛否をとることにした。

 

 

 

「私以外全員賛成ですか……」

 

 出席していたメンバーは宇井を除き賛成票を投じる。これによってクインクスによる『喰種なりすまし作戦』が開始された。

 

 

──────────

 

 

「それにしてもアリザ嬢。まさかたった一人でノコノコやって来るとは驚きだ」

 

 とある場所にあるキジマの個人倉庫にて、アリザはキジマに捕らえられていた。

 アリザは既にいくつもの傷ができており、拷問にかけられた後であることが分かる。

 

「しかし……いじらしいですなぁ。仲間を助けに単身で私を襲撃するとは……その単純さ、実にいじらしい。それに、キミがお喋りでとても助かった。答え合わせの必要も無いほどにねぇ?」

 

 キジマはゆっくりとチェーンソー型クインケ『リジェイル』を手に取る。リジェイルのスイッチを押すことで、チェーンソーの刃は大きな音を立てながら回り始めた。

 

「私もお喋りが大好きだ。しかしキミは使用人でありながら、些か口が軽すぎるのではと……少々心配になってしまうよ」

 

 アリザの下半身から黄色の液体が漏れる。回転する刃はアリザの首筋にゆっくりと近付き……。

 

「─────だから、私がキミを月山家に代わって『クビ』にしよう」

 

 アリザの首が飛ぶ。弱い喰種であるアリザは、頭が再生することなく死んだ。

 

「……少し考えて分からなかったのだろうか? ユウマ氏は動画を投稿した時点で既に死んでいたと……アリザ嬢のその純真さは、月山家の滅亡を招くだろうね」

 

 キジマは死体を片付け、ゆっくりと部屋を後にした。

 

──────────

「カナエ、アリザから月山家の事がバレたわ」

 

「シウ……サマ……」

 

 とある路地裏にて、松前はカナエに告げる。しかし、カナエの様子がおかしい。

 目や口を雑に縫い合わせたその顔は、一目見ただけで正気を失っている事が分かる。

 

「……だからといって、なにも『隻眼の梟の赫子』を移植する必要なんて……カナエ、貴女もう助からないわよ」

 

 喰種への赫包移植の危険性をレザーフェイスから聞いている松前は、カナエがもう助からない段階であることを理解していた。

 

「シウサマの……ため……」

 

 カナエは力を欲した。だがその願いに応えたのはエトであった。エトは自身の赫子をカナエに埋め込む事で、カナエを強化する。

 

 しかし、代償は命そのもの。消えゆく命の灯火を花火へと変える業。

 だがカナエに後悔はない。敬愛する主を救うためなら、その身を犠牲にする覚悟はできているのだから。

 

「……そうね。月山家のため、私達は最期まで戦いましょう。その姿じゃみんなの元には行きにくいわよね? みんなには私から言っておくから、貴女は貴女のやりたいようにね」

 

 

──────────

 

 

「ねぇ妖精さん? 月山家の全てをちょうだい? そしたら捜査官さん達を皆殺しにしてあげるし、妖精さんも助けてあげる」

 

 月山家の一室に、顔の貼り付いたホッケーマスクを被ったカオリが問いかける。

 

「ご冗談を。その『全て』とは習くんや執事達、それに月山グループの皆も入っているでしょう? その提案はのめません。例え約束の人間を半分しか納品できておらず、契約不履行だと(そし)られようとも、これは変わりません」

 

 しかし、ミルモは即座にこれを拒否。月山家はミルモ一人で成り立ってるわけではないため、全てを犠牲にする選択は取れない。

 

「ふふっ、やっぱり駄目かー。残り半分は月山家が再興できたらまた取り立てるね? それじゃ妖精さん、ならお花をちょうだい? 月山家に咲いてるお花を、庭園ごと。それと図書室の本全部。バァルちゃんが欲しがってるんだよねー」

 

 ミルモが断る事はカオリも分かっていたため、次は比較的優しい提案をする。

 

「その見返りは?」

 

「妖精さんの味方として参加してあげる。私が出るだけでそこそこの人数をこっちに引きつけられるはずだよー? とはいっても、積極的に戦ったりはしないからね? ちょっとだけ足止めするくらいかな?」

 

 ミルモは何か裏が無いかを考えるが、裏は無さそうだと結論付けた。

 

oui(ウィ)。ではその条件で契約しましょう」

 

「はーい。それじゃあ明日ペニーワイズをトラックで来させるから、本を受け渡してねー。お花はそのままでいいよ? 全てが終わった後に私が勝手に貰っとくから」

 

 

──────────

 

「諸君、非常に残念な知らせがある。事前に配布した資料は確認済みだと思うが、此度の作戦は15区の喰種が出張ってくる可能性が極めて高いことが判明した」

 

 キジマが配布した資料には、『アリザから聞き出した情報』がリスト化されている。

 

「伊東班と真戸班(クインクス)の調査結果によって、ロゼとアオギリの関係は稀薄であり、極一部の構成員が手を貸していることが分かった。しかし、我々キジマ班が個体名・アリザから入手した情報を見て欲しい。まず、ロゼの正体は旧月山財閥にして現月山グループのトップである月山家だ」

 

 かの超大手企業のトップが喰種。S1班がキジマから報告書を受け取ったとき、我が目を疑う程の衝撃を受けた。

 

「ここで問題となるのは3ページ目の項目だ。月山家の一人息子、月山習の交友関係についての供述を読んでいただきたい。そこに書かれているのは『ガスマスクの愉快なバンジョイ』『花屋の姉を持つリオ』。本当は後二体要るのだが、その情報は准特等以上の権限を持つものにのみ限定されているため、ここには書かれていないことをご了承願いたい」

 

 書かれていないもう二人は『リトル・ヒナミ』『主と慕うカネキ』……つまりハイセに関係する事である。

 

「ここで重要なのは『花屋の姉を持つリオ』という個体だ。さて、覚えてる者はいるだろうか? 私が『ジェイル』を追っていた時、7区にあった喰種レストランで起きた事件を……」

 

 キジマの問いに富良が手を挙げる。

 

「覚えてます。あの事件の主立った赫子痕はランサー、ジェイル、美食家(グルメ)、大喰いでした」

「その通り。このグルメこそが月山家の一人息子、月山習。そしてグルメとジェイルもといフレディは交友関係にある」

 

 数年前に世間を騒がせていた美食家の正体があっさり割れた。法寺や滝澤が居たらなんて言うのだろうかと富良は思った。

 

「アリザの証言はまだまだある。月山家当主の月山ミルモだが、ヤツの元へ『フラワーショップ西荻窪』の従業員が月山ミルモ本人へ直接花を届けに来ていた。フラワーショップ西荻窪とは、レザーフェイスがかつて勤務していたとされる花屋であり、この事から月山ミルモはレザーフェイスと直接の交流があると判断できる。その他の項目は各自目を通しておいて欲しい……結論として、月山家はレザーフェイス、フレディと深い交友関係にあることが分かっている。場合によっては大喰い改めバァルと交友関係を築いているかもしれない。つまり月山家を叩こうとした際、15区の喰種と交戦する可能性が極めて高いことを念頭に置いて貰いたい。勿論我々キジマ班が先陣切って相対するが、諸君等も手伝っていただきたい」

 

 去年と違いキジマ班がいる上での戦闘とはいえ、去年よりも装備も人員も不足した状態で15区の喰種と再戦する可能性がある……捜査官の中に不安が広がっていった。




 サ ク サ ク 進 む よ !
原作と同じ部分はバッサリカット。
喰種なりすまし作戦やカナエの変貌、美食家の健気な頑張りなどは原作を読みましょうっ!

喰種なりすまし作戦でアオギリとの繋がりは薄い事が分かったものの、アリザが喋ったという名目で身内情報を流したので、15区陣営が出張ってくる事が判明。捜査官の人員が増加されます。


■原作未読の人のための原作ロゼ編
1.グルメがカネキロスで暴食化
2.食材集めのために人を誘拐しまくる
3.捜査官に捕捉されユウマ捕縛
4.ホリチエ(本作未登場)の活躍によってグルメが正気に戻る
5.キジマさんのユウマくん実況プレイ動画うp
6.ユウマを助けるためにグルメはハイセに接近
7.クインクスが邪魔で接近できないのでカナエさんがアオギリ雇ってクインクスを襲うも敗走
8.喰種なりすまし作戦開始。一定の成果を出す。
9.無力さを嘆くカナエ、隻眼の梟から赫包を移植してもらう。力を得るも死の宣告状態
10.単身ノコノコキジマの元にやってきたアリザ、キジマに情報を抜かれ無事死亡
11.アリザ情報が元で月山家喰種バレ。殲滅開始。
12.キジマと下口上等が死ぬ。ついでにシラズとハイルも死ぬ
13.隻眼の梟。何故か身バレする
14.ハイセが記憶を取り戻す
15.カナエがビルから飛び降る。鱗赫だから死んだ。

●作成裏話
原作の時系列を把握し切れておらず、『まぁ一年間あるやろ!』と思っていたため、2000人全員納品が完了するスケジュール。納品完了後に月山家バレ。として話を書いていたのですが、ロゼ編書き終わって流島編書くために漫画読み返してたら、ロゼ編がオークションから半年後の事だったことに気付き、納品終わらんやん!となり、納品数を倍にするのはいくら月山家でも無理そう……となったため、納品は半分で契約不履行。という文言を後からちょこっと追記しました。
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