花屋喰種   作:みぞれアイス

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Re:第26話 Pop Goes The Weasel

 ルナ・エクリプス入口でフレディの襲撃を受けた宇井達は、S1班の全員が到着するのを待つ。ほどなくして、キジマ班やクインクスを始めとした者達が集まり、S1班が揃った。

 

「キジマ班を先頭に突入だ!」

 

 宇井の号令と共に、ルナ・エクリプスへ捜査官達がなだれ込む。先程まで1階にいたフレディはどこかに行ったのか、いなくなっていた。

 

「ヤツは居ないか……各員、不意打ちに気を付けて進め!」

 

 捜査官達は柱の陰や曲がり角に注意を払いつつ、速やかに進んでいく。

 結果として喰種はおらず、何も無く非常階段についたが、そこでキジマが静止を告げる。

 

「待ちたまえ。非常扉の向こうには待ち伏せがいると考える。カオルさん、扉を壊してくれるかい?」

「……」

 

 カオルは無言で巨大な大剣『ツジドウ改ニ甲』を構え、振るう。

 轟音と共に周囲の壁ごと扉を吹き飛ばし、月山グループの社員と思わしき喰種達が姿を見せた。

 

「喰種発見! 殲滅する!」

 

 相手が15区の喰種で無いのなら、功績を稼ぐチャンスである。すかさず捜査官達がなだれ込んだ。

 

 その後も順調に月山グループの喰種達を討伐していくものの、ルナ・エクリプスの広さに対し、討伐速度があまりにも遅い。15区の喰種が居る事が分かっている以上仕方ない事かもしれないが、このままでは月山グループの喰種を殲滅できない。

 

「やむを得ないか……総員、散開して喰種を殲滅せよッ!」

 

 宇井の号令と共に、捜査官達は別行動を開始する。

 

 

「……カオルさん、別行動を開始しました」

「……」

 

 キジマは小さく告げる。だが、隣りにいるカオルは何も喋らない。

 

『ふふふっ、じゃあそろそろ始めちゃうよー』

 

 

 

 無線機から、声がした。

 

 

 

「よし、ウタさんと神父さんから貰った能力は、どれくらい役に立つかなー?」

 

 ルナ・エクリプス上層階の一角で、レザーフェイスの仮装をしたカオリが呟く。

 

「んー、しゅーちゃんの強さはこれくらいだったかな? それじゃあ木遁・分身変化の術! なーんてねっ」

 

 カオリの赫子から次々と人の形をしたモノが生み出され、その形を変えていく。

 

─────その姿は、全て月山習(グルメ)の見た目をしていた。

 

──────────

 

 最初に異変に気付いたのは、五里美郷(ごりミサト)の率いていた班だ。通路の先に一体の喰種を発見。半月のマスクをつけた派手なスーツ姿。紛れもなく美食家(グルメ)だ。

 

「こちら五里班、グルメを発見した。敵は単独。これより討伐に移る」

 

 亜門から受け継いだ甲赫のクインケ『クラ』を構え、走り出す。

 

「せぇいッ!!」

 

 グルメは甲赫を腕に巻き付け、螺旋の槍を纏った。

 ミサトによるクラの一撃は螺旋の槍とぶつかり合うが、グルメの甲赫を破壊するには至らない。ミサトは大きく距離を取ってクラを仕舞い、羽赫のクインケ『エメリオ』を取り出す。

 

「ならば羽赫はどうだっ! 相性が悪くとも、この連射の前にはどうしようもあるまい!」

 

 グルメの足や顔等に狙いをつけてエメリオを放つ。だが……。

 

「馬鹿な! 効いていないだと!? なら鱗赫所持者は前へ!」

 

 グルメはそれらを防ぐ動作すら無かった。弾かれ、無傷……!

 羽赫は意味が無いことを悟ったミサトは、部下達へ鱗赫のクインケで突撃する指示を出す。

 鱗赫持ちの部下は二人。左右からそれぞれ接近し、袈裟斬りを放つ。

 

 グルメはすぐさま甲赫を前に突き出し、斬撃を甲赫で防いだ。

 

「なんて堅い赫子だ! 切り落とせない!」

 

 刀型のクインケは甲赫に半分ほど食い込み、切り落とすには至らない。

 

 だがそれでいい。グルメの赫子をクインケで封じ込めたのだから。

 

 ミサトは再度クラを担ぎ、グルメへと走る。

 

「トドメは任せろッ!!」

 

 グルメの脳天に、大剣の一撃が繰り出された。

 顔を真っ二つにされたグルメはゆっくりと倒れ……。

 

─────べしゃりと音をたてて溶けた。

 

「……どういうことだ? こちら五里班、グルメと思わしき喰種を討伐したが、溶けて消えたぞ」

『こちら宇井班。こちらもグルメと交戦した。同じく溶けて消えたが……』

『こちら真戸班及びクインクス。CRc狙撃銃で一撃だったが、こちらもグルメが溶けて消えている』

『こちらキジマ班。こちらには30体のグルメが仕掛けてきた。全て駆除したが、分断されてしまったようだ。私の他には旧多君、カオルさん、シーナしかいない』

『伊丙班です。キジマ班と分断されましたが、こちらは無事です』

 

 その後も報告は続くが、一つの班から連絡がない。

 

 鉢川班からの連絡がないのだ。

 

『鉢川班、応答せよ』

『……鉢川班……100体を、超えるグルメと……交戦……全滅しました……』

 

 息も絶え絶えな声。鉢川の声だ。

 

『人工喰種か?』

『逃げ……グルメの大軍が来…………』

 

 通信機から一際大きなノイズが鳴り、その後返答は無かった。

 

「グルメの大軍だと? 他の班と合流した方が良さそうだ。みんな移動するぞ!」

 

 ミサト達は速やかに移動を開始するが……。

 

 

 

「やぁ」

 

 

 

─────狭い通路で待っていたのは二体の喰種。片方は黄色いエプロンが可愛らしい大人の喰種。もう片方は縞々のセーターが可愛らしい子供の喰種。

 

「……ここでレザーフェイスとフレディのお出ましか……こちら五里班、レザーフェイスとフレディに遭遇。至急救援を乞う」

 

「ふふふっ、キジマさん達が間に合うといいねー? それじゃあ、通信機とパラソルは没収するよ?」

 

 レザーフェイスから無数の赫子が伸び、通信機と『パラソル』の入ったアタッシュケースを奪い取る。赫子の速度はあまりにも速く、ミサト達は何もできずにアタッシュケースを奪われてしまった。

 

 それと同時に、フレディは水晶の弾幕を放つ。炸裂する水晶の雨は、容赦無くミサト達に裂傷を与えていく……。

 

 だが、死ぬことはなかった。手加減されているらしく、ジワジワ体が削られていくが、死には至らない。

 

「ぐぅっ……な、なぜ殺さない!」

 

 レザーフェイスがその気なら、クインケを奪わずとも赫子で刺せばいい。フレディがその気なら、かつての20区の時のように死の雨で皆殺しにすればいい。だが、今のレザーフェイス達は殺さないように手加減している。それがミサトには解せなかった。

 

「勿体無いじゃん。捜査官さんを人工喰種にすれば、子供や老人を使うより動揺を誘えるんじゃないかなー? 考えてみてよ、見知らぬ子供より、見知った顔馴染が襲ってくる方がつらいでしょ? あなたを人工喰種にすれば、少なくとも真戸准特等は動揺するハズだよ? 友達だもんねー?」

 

「ふざけっ……!?」

 

 捜査官達の言葉は続かない。いつの間にか床から大量の赫子が生えており、首を絞め上げていた。

 

「去年は時間が無くてできなかったけど、今年は時間に余裕があるからね。たくさん人工喰種を作ってあげるねっ」

 

 

 

──────────

 

 

 

「佐々木上等、屋上の様子が気になる。先行して偵察を頼みたい」

「分かりました。アキラさん、皆を頼みます!」

 

 宇井は真戸班と合流し、ハイセに指示を出す。ハイセは赫子を器用に使い、ビルの外壁を登っていった。

 

 ビルの屋上には─────。

 

「お前が、名無し(ハイセ)……シウさま……」

 

 ボロボロの恰好をした男装執事のカナエと、グルメがいた。仮面をつけていないグルメ……おそらく本物だ。

 

「あなたは……」

『こちら宇井、屋上の様子はどうだ』

「……偽のグルメ達がいます。15区の喰種や本物のグルメはいないようです」

『わかった。キミは偽のグルメ達を討伐してそこ待機だ』

 

 ハイセは虚偽の申告をした。

 

「上司への虚偽報告……情けのつもりかいMr.佐々木? レディ・ソーヤーから聞いている。投降しろと言いたいのだろう? だが無駄だ。パパ達は有馬貴将達から逃げ切った。今頃はレディ・ソーヤーの花畑に守られて地下を進んでるだろう。僕達もヘリで逃げさせてもらう」

 

「これだけCCGのヘリがあって、逃げられるんですか?」

 

 空にはいくつもの攻撃ヘリが浮かんでいる。その中の一つが、屋上に止まっているヘリ目掛けてミサイルを放った。

 

「カナエ!」

「オマカセを!」

 

 カナエは素早く鱗赫を展開し、ミサイルを叩き落とす。爆風でカナエの衣服はさらにボロボロになるが、ヘリは無傷だ。

 

「確かに月山グループはここで終わる。多くの従業員達が死に、財産は奪われるだろう。だが、僕らは終わらない。そもそも、君達捜査官(ハト)が15区の彼女達に勝てるのかい?」

 

 ハイセは言葉に詰まる。キジマ班とて無敵ではない。レザーフェイスに勝てると言われているが、本当に勝てるかどうかは分からない。

 

「それに、君の記憶には無いだろうが、全盛期の君でさえ、レディ・ソーヤーには傷一つ付ける事はできなかった。そんな彼女が今、リトル・フレディを連れてここに来ている。バァルやペニーワイズ氏は来ているか分からないが」

 

 山羊頭の赤い悪魔が脳裏に浮かぶ。失くした記憶の断片が、嗤いかけてくる。

 

「……さて、どうやら僕の友人と、招かれざるお客様が来たようだね」

 

─────刹那、ルナ・エクリプスの周囲を飛び回っていたCCGのヘリが全て爆発した。

 

「お待たせしました。月山さん」

 

 現れたのは縞々セーター姿のフレディと……。

 

「やァやァ佐々木の琲世クン。ご機嫌いかがかな?」

 

 隻眼の梟……だが、素顔を晒している。

 

「……小説家さん、マスクはしなくて良いんですか?」

「色々理由があるのさリオくん。詳しくは言えないけどね……っと、まぁ待ちたまえ。今回は15区(キミたち)と殺し合う気は無いんだ。用があるのは佐々木クンとカナエチャンだけでね。キミは御曹司を安全に避難させてあげれば良いさね」

「そうですか。では月山さん、僕に掴まっていて下さい。そこの執事さん用にヘリは残しておきますね」

 

 リオは赫者へと姿を変え、グルメを抱える。

 

─────そして、空へと飛び去った。

 

 

──────────

 

 伊丙班と富良班は、散発的に現れる偽グルメや月山グループの喰種達を倒しながら、順調に階を進めていた。

 

「なぁ伊丙上等、キジマ特等達と合流する事をメインにしないか?」

「嫌ですよ。あの人達と一緒だと手柄取られちゃいますし」

「だがレザーフェイスやフレディが出てきた時、俺達だけじゃキツイぞ」

 

 ハイルはかつてユウマをキジマに持っていかれた事を根に持っており、できるならこのまま進みたいと思っている。

 だが、富良は15区の喰種と遭遇してしまった場合を考慮し、キジマ達と合流する事を勧める。

 

「私が倒しますので心配要りませんよ?」

「伊丙上等もクインケ鋼輸送作戦に参加してたよな? あの時のアレを見てそこまで言えるのは大したもんだよホント。まぁ、この狭いビルの中でアレが出てくる事は無さそうだが……」

 

 敵の気配も無く、出てくる敵は雑魚ばかり。紛れもなく油断していた。

 それ故に、壁の異変に気付くのが遅れた。

 

「ッ!? 伏せろお前等!!」

 

 富良が叫ぶが、遅過ぎた。壁からは無数の赫子が飛び出し、捜査官達を貫いていく。

 

 無事だったのは、富良とハイルのみ……。

 

「二人逃しましたか。流石は15区のリストに載っている捜査官(ハト)と言ったところでしょうか」

 

 曲がり角から現れるは月山家のエース『松前』。そしてお伴の喰種が1体。

 

「なぁ伊丙上等、レザーフェイスに遭遇する前に、ほぼ全滅したぞ」

「でもキジマ特等が聞き出した話では、アレが月山家の最高戦力らしいですよ?アレさえ倒せば後は余裕ですね。私が個体名『松前』の相手をしますので、富良上等はもう片方の相手をお願いします!」

「はいよ!」

 

 富良達はそれぞれ2つのクインケを構え、敵へ走る。

 

「マイロ、貴方の相手は13区の支配者『ランタン』を倒した強敵です。無理に戦わず時間稼ぎを優先して下さい。有馬貴将の弟子を倒したら加勢します」

「分かった。健闘を祈る!」

 

 今ここに、2対2の戦いが始まる……!

 

 

 

「ふふふっ、頑張ってね。松前さん」

 

 

 

─────隠れたもう一人が居ることに誰も気付かぬまま……。




 作 戦 失 敗 

グルメもミルモも取り逃してるので、作戦は紛れもなく失敗です。

ストックがもう残り少ないので、一週間おきの投稿に変更します。
ストックが切れたらまたその時まで。
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