花屋喰種   作:みぞれアイス

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Re:第32話 王のビレイグ

 有馬の監督下にあるとはいえ、ハイセは殆ど自由行動を許されていた。放置されていると言い換えても良い。

 それを逆手に取り、ハイセは隻眼の梟の正体である小説家『高槻泉(たかつきせん)』の担当編集者である『塩野瞬二(しおのしゅんじ)』を喰種対策法119条『喰種(グール)蔵匿(ぞうとく)又は隠避(いんぴ)』に当たるとして拘束した。

 

 塩野への尋問によって高槻の住居が特定できたため、ハイセは高槻の住居へ侵入。高槻本人は居なかったが、冷蔵庫に人肉が入っている事は確認できた。

 家の中を一通り探ったが、『アオギリの()』に関する情報は一切見つからなかった。

 ハイセは高槻が戻ってきた時のために書き置きを残し、去る。

 

 後日、書き置きを見たのか、高槻がCCG本部に出頭。隻眼の梟が出頭したというビッグニュースに、CCG内は大いに沸騰。アオギリの最強戦力を潰せた事もあり、もうすぐアオギリを殲滅できると喜んだ。

 

 だが、アオギリと双璧をなすもう一つの組織『15区』は依然として何の成果も得られない。

 現状はアオギリの喰種を狩りまくっているフレディが、アオギリがなくなった後はCCGを襲い始めるのではないかという懸念もある。

 また、15区喰種の会話の中にだけ出ていた『チャッキー』や『アマンダ』とは何者なのかさえ分かっていない。

 15区のどこかには居るだろう。だが15区のどこに潜んでいるの見当もつかない。

 

 15区の捜査は、進んでいなかった。

 

──────────

 

 キジマ斑のニムラと、クインクスのシャオが有馬に呼び出された。クインクス達は何でシャオが有馬特等に? と疑問視していた。

 

「キヒヒ! クインクス達には『白日庭(はくびてい)出身者同士の交流会だろう』と伝えたが、恐らくV(ヴィー)関連だろうねぇ。きっと旧多(ふるた)くんは15区の喰種が見付けられていない事をチクチク言われるのだろう。可哀想に、南無南無」

 

 キジマはニヤニヤと嗤いながら、ニムラの冥福を祈った。

 

 

 

 

 CCGの地下。V(ヴィー)を統括する『芥子(カイコ)』の前に、有馬、ニムラ、シャオの三人が立っている。

 

小僧(カネキケン)が隻眼の梟を捕らえたそうだな……貴将(きしょう)、高槻は『王』か?」

 

 カイコが有馬に問う。

 

「可能性は高いかと」

 

 有馬は()()()()()()()()が、敢えて梟が王である可能性が高いと告げる。

 

「まぁ、そこはゆっくり調べていけば良いだろう。CCGの手中にいる以上、ヤツは籠の中の鳥も同然。だが『功善(くぜん)』の娘だ。注意は怠るな」

「承知しました」

 

「……後はリゼと花狂いだ。アレらにこれ以上好き勝手されるのはかなわん。二福(ニムラ)静麗(ジンリー)、15区の捜査はどうなっている?」

 

「フラワーショップ西荻窪で花狂いが使っていた名前が『如月(きさらぎ)カオリ』だと言うことが分かり、如月カオリが使っていたマンションも調べましたが、ヤツに繋がる情報は何も出ませんでした。杉並区役所にも協力を依頼し、全物件のデータベースを確認しましたが、花狂いの偽名と思われる物件は見つかりませんでした」

 

 ニムラは首をすくめ、左右に振る。カイコはその仕草に少しイラッとしたが、何も言わないことにした。

 

「鼻の効く我々クインクスを(もっ)てしても、15区内の物件から喰種のニオイは確認できておらず……」

 

 シャオは悔しそうに語る。ニムラの態度はともかく、ニムラもシャオも真面目に捜査しているようなので、今回の小言は無しにしてやろうとカイコは思った。

 

「……高槻を捕まえた事で、アオギリの樹は近いうちに拠点(アジト)が分かり、消滅するだろう。そうなれば後は15区さえ何とかすれば、我々の支配は揺らぎないモノとなる。私と貴将の寿命がそろそろだ……短期で決めねばならない。そのつもりで職務に励め……話は変わるが、書房からCCGに対して『高槻泉最後の作品』を出版して良いかと聞かれたらしいが、何か知っているか?」

 

 これから発売される本の内容なぞ分かるわけがない。だが、有馬は()()()()()()()()

 

「喰種モノとのことです」

「……まさか暴露本か?」

「噂によれば『隻眼の王』が『花の魔王』を討伐する英雄譚だとか」

「……ふむ。暴露本の可能性が否定できないが、花狂いを呼び寄せるエサとなりうるか……なら暴露本だったとしても、発禁にはしなくても良いか……?」

 

 カイコは悩む。隻眼の王について語っているのであれば、当然V(ヴィー)に関する何かしらが書かれている可能性がある。

 だが、短期決戦を望むカイコとしては、引き籠もりの花狂いを引きずりだせる内容が書いてあるなら、出版を許可した方が良いと判断した。

 

「……分かった。出版を許可する事にしよう」

 

 こうして、高槻泉最後の作品は世に出ることが決定した。

 

──────────

 

 ハイセは高槻と共に外出していた。というのも、なんとCCGから隻眼の梟の外出許可が下りたのだ。

 

「編集部と対策局に便宜を図ってもらい、高槻泉の『最後の作品』について会見を開かせてもらえることになった。だが、私一人では許可が降りない。佐々木准特等、同席してくれないかな? ……そう警戒しなさんな。どちらにせよ、誰かの監視は必要だろう? なら、君に見届けて欲しい」

 

 そうして、ハイセと高槻は二人、出版社の会見会場に来ていた。

 

「こんなにも大勢の前で話をするのは『黒山羊の卵』以来でしょうか……私の最後にして、最も書きたかったもの……この様な場所でその作品を発表できることを深く感謝します。それは文字通り、作家生命……高槻泉個人の命を賭けたものになります。作品の前に()()()()()皆様にお伝えしておきたい事があります……」

 

 高槻は、片目を赫眼(かくがん)へと変化させる。

 

「私は『喰種(グール)』です。最後の作品は私と同じように()()()()()()()()()()血肉を貪る……そんな孤独な同胞たちのために書きました」

 

 高槻泉が喰種……その衝撃に、会場はザワザワとざわめく。

 

「この作品を読んだ人の中で、同胞たちやネット掲示板を見ている人間の皆様は思うでしょう。あれ? このキャラあいつじゃね? と……この作品は()()()()()()()()()()()()()()()。話の中でちょこっと出てくる……そうですね、ネット上で『バードマン』と言われている喰種は私です。実は女ですので、バードウーマンでした。作者特権で少しだけ()()()()()活躍させていますが、許してくださいね」

 

 高槻はその後も少しだけ話を続け、記者質問になる。その中には掲示板の住民をしている記者がおり、彼はこう言った。

 

 バードマンとは見た目が違いすぎる。本当に本人か? と。

 

 それを受けて高槻は特殊な赫子を纏い、ネット上で撮られていたバードマンそのものの姿になった。

 

 会場は一時騒然としたが、記者魂を発揮させた者達はその姿を激写。翌日の新聞は、この話題でもちきりとなるのであった。

 

──────────

 

「CCGが高槻を喰種として確保しているのが広まって、様々な意見が局に届いています。特に首都圏外の番号から掛かってくる抗議の声が凄いですね。隻眼の梟は東京でしか捕食をしてないので、自分達は安全だと思い込んで、安全圏から石を投げる。愚か過ぎて赫子生えますね。東京の人からの電話としては、保護してないで早く屠殺しろという意見が殆どなので、彼女を擁護する声と非難する声は、トータルで半々といったところでしょう。中にはバードマンがどれだけ危険なのかを説教する名人様もいました。CCG(ぼくら)の方が詳しいっちゅうねん」

 

 15区支部の会議室で、ニムラはキジマ達に語りかける。

 

「ところで、キジマさんとリサさんは彼女の新作読みました? 注目度の高さからあまりにも売れすぎて、増版してなお転売ヤーが出てくる始末ですが、手に入りました? ちなみに、たぶん大坪さんは読んでませんよね? 活字は読まないだろうと思ってるので、今ピエロにて漫画化作業中です。完成したら渡しますね」

 

 カオリは映画をよく見るが、漫画はそこまで多く読んでるわけではない。だが、漫画なら読もうかな? と思った。

 

「ええ、キジマ特等も私も読んだわ。高槻泉の10作目……『王のビレイグ』。ビレイグとは北欧神話のオーディンの別称で、意味は『片目を欠く者』……つまり、隻眼の王を指していると考えられるわ。主人公である隻眼の喰種『名無き』が王として喰種を率いて、喰種を弾圧する世界に対し反旗を翻し、最後は世界の全てを陰から支配する巨悪『花の魔王』を倒して終わる英雄譚……フィクションとして読めば普通に面白いけど……ねぇ?」

 

 リゼは溜息を吐いた。

 

「キヒヒ! 喰種である高槻が書いたとなれば、これがフィクションではなく、今までのCCGと、これから先のCCGを描いた予言書だと分かるだろう。(もっと)も……」

 

「この『名無き』。かなり分かりにくいけど、モデルが金木さんっぽいのよね。名前もハイセ(名無し)だし……でも佐々木准特等が花の魔王(レザーフェイス)を倒す? 奇跡が起こっても無理でしょ?」

 

「それよりも困った事がある。王のビレイグでは人工喰種についての記述もある。その中で私達キジマ斑をモデルにしたであろうキャラクターが、『花の魔王に付き従う人工喰種』であると書かれてしまったことだね。不幸なことにクインクスの存在が世間に不完全な形で出回ってしまっているため、キジマ斑全員が花の魔王の手下なのではないかという電話が来てしまっているのが問題だ。これについて、近いうちにCCG広報部からクインクスについての会見を開く予定だが、最も困るのが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろうねぇ……」

 

 王のビレイグでは、CCGにあたる組織の上層部の事を『真の姿は、喰種および喰種の協力者』として書いてある。書籍を読んだ一般捜査官たちは。CCG随一の功労斑であるキジマ斑と、上層部が喰種によって支配されているのではないかという疑念に駆られ、不安がっていた。

 

「そうなんですよねぇ……王のビレイグには『花の魔王がCCGをモデルにした組織の上層部を暗殺して一掃し、自身の傀儡である人工喰種をトップに据える』といった内容が書いてあります……つまり僕らが和修家を皆殺しにした後で僕が局長になり、総議長にキジマさんを据えて、それぞれの補佐に大坪さんとリサさんを置く……って展開がバレてるんですよねぇ……」

 

 ニムラが溜息を吐く。自分が局長になったとき、どうやってこの疑念(事実)を払拭しようかと悩んでいた。

 

「……話読んでないから分かんないけど、別にいいんじゃない? 『捜査官の殆どを洗脳済み人工喰種に置き換える』って言うのは書かれてたとしても止められないでしょ? そろそろアオギリの本拠地が割れるだろうから、その時に今まで捕まえてた捜査官さん達を全部援軍として仕込んで、そのまま()()を使って捜査官に復帰。捜査官さんの半数近くが私達の人工喰種になるから、多数決で私達の勝ち。人狼ゲームでいうとこの『ぴーぴー』ってやつだねー」

 

 カオリはそう楽観的に告げた。

 

「……それもそうですね。じゃ、予定通りアオギリ殲滅のタイミングで和修家には滅んで貰うということで。編成はどうします? 和修家は鱗赫ばっかりなので、有利取れるのは尾赫が使えるレザーフェイスかフレディですけど」

 

「じゃあリオちゃんにやって貰うよ。和修家の強さは昔のシーナちゃんを少し強くしたくらいみたいだし、リオちゃんなら余裕かなー」

 

「一応雑用としてイトリやウタ達も付ける予定なんで、活用してやって下さい」

 

 こうして、カオリ達の企みは着々と進行していくのであった……。




 ク マ を 殺 す な 
安全圏にいる連中が抗議と言う名の石を投げる。いつもの民衆だな!
今回では首都圏が投げつけられる側です。いい気味だな!
首都圏もクマの恐怖を味わえ(暴論)

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