「諸君、私は拷問が好きだ」
15区支部の会議室にて、キジマが告げる。
「何ですか急に」
ニムラの疑問も尤もだ。
「ヨツメに隻眼の梟……アオギリの上位喰種が2体も居るに拘わらず、CCGはアオギリのアジトを聞き出すことができていないのが現状だ。よって、尋問の許可を前々から申請していたんだが、ヨツメも梟も人気でね……キジマ斑が尋問すると
キジマはウキウキとしながら、拷問道具の手入れを行っている。
「で、今日はどっちをズタボロにするんです?」
「両方だとも」
「えっ……両方やるんですか? キジマさんともあろう人が一体あたり勤務時間の半分の拷問時間で良いんですか?」
ニムラの問いに、キジマは不服そうに顔を歪める。
「良いわけないだろう……だが、これを逃すと次がいつになるか分からない……まったく佐々木准特等も面倒な根回しをしてくれたモノだ……仕方が無いので、時間が押してきたらカオルさんの脳弄りに任せるとするよ。さて、時間が惜しい。4人で楽しい拷問の時間を始めるとしよう」
今日は拷問日和。ニムラの運転する公用車に乗って、23区のコクリアへ。
──────────
「時間通りだなシキ。午前がヨツメ、午後が梟と……今日でアオギリのアジトが分かりそうだな。お前達の事だ、間仕切りのある尋問室ではなく、拷問の証拠が残らない牢に直接行くよな? だが良いのか? お前の尋問は時間をかけるんじゃなかったか?」
コクリアにて、監獄長の
「キヒヒ! 今回は時間があまり無いので、時間短縮のためにフッ化水素酸を持ってきているよ。今日は初手お医者さんごっこの気分なんだ」
フッ化水素酸。フッ酸とも呼ばれるソレは、危険な劇物だ。フッ素と間違えて人間の歯に塗ろうものなら、相手を激痛と共に冥界へ叩き落とす恐怖の薬品である。
「ほう、フッ酸か。ヨツメと梟の
キジマ達は灰崎と共にSSレートの収容区画に向かう。そんな中、シーナがふと疑問に思ったことを口にする。
「ところでキジマ特等、ヨツメとナッツクラッカーとペニーワイズが全部同じSSレートっておかしくありません? ヨツメは赫子二種持ちとはいえ、戦闘能力はあまりにも低い。ナッツクラッカーやペニーワイズと比べ、ヨツメがSS扱いって規定とあってますか?」
その疑問には、灰崎が答える。
「
灰崎は一つの床を指差す。
「例えば、そこに収容されている『アップルヘッド』は、強さだけならAレートにも満たない。だが、アップルヘッドはその知略を以てして、社会に大きな影響を与えた。『神父』はアップルヘッドより強いが、コイツも似たようなモノだな」
カオルとシーナは理解した。ネット掲示板とCCGにおけるレートの違いはこれだったのかと。
「じゃあ灰崎さん、15区の喰種達も、社会に与える影響度が考慮されてるん感じですか?」
自分達のレートも、強さ以外の評価がされているかどうか、カオルは気になった。
その疑問に対しては、キジマが答えた。
「いいやカオルさん、実のところ15区の喰種は情報がなさ過ぎて、正確な脅威度が判定できていないんだ。15区で喰種による捕食事件は
キジマの回答に、カオルは満足そうな顔をするが、シーナは不満げな顔をした。
「ちなみに、ヨツメはSSの中でも下位に位置する『SS-』だ。これは半年前に伊丙上等と相打ちになった『松前』や、その雇い主にあたる
カオル達は
(うーん、捜査官さん達は白コートさんが赫者になれることを知らないのかな?)
カオルの体感としては、タタラと梟は同じくらいの強さだ。だが、それは炎や飛行が弱点のレザーフェイス視点での話であり、捜査官の目線からすれば、タタラは中華人民共和国の捜査官達から逃げ出した逃亡者でしかなく、強さは低く見積もられていた。日本においてタタラは
「着いたぞ。時間の許す限り、存分に尋問をするといい」
牢獄が床からせり上がり、扉が現れる。灰崎は扉のロックを解除し、キジマ達4人は中へと入っていった。
──────────
「ごきげんようヨツメ。それともヒナミ嬢と呼んだ方が良いかな?」
キジマ達が入ってきた事で、ヒナミは一瞬だけ怯えを含んだ表情となったが、すぐに真顔へと戻った。
「……王のビレイグはクインクスの米林さんから差し入れて貰ったので、私も読みました……貴方達は花屋さんの手先なんですよね? 花屋さんの手先なら知ってるでしょうけど、もう花屋さんやリオちゃんとは何年も会ってません。私から花屋さんやリオちゃんに繋がる情報は、もう何も持ってませんよ」
ヒナミは無表情に語る。事実として、ヒナミから15区に繋がる情報など無いことを知っている。
「キヒヒ! そんな事を私達が
15区の仲間であることをあっさり話した。その事にヒナミは内心驚くが、直ぐに気付く……この話を信じてくれる人はもういない。
人工喰種のことをやたら詳しく聞いてきた真戸アキラ……ヒナミの両親を殺した人の娘なら信じてくれるかもしれない。だが、アキラはもう尋問に来ない。聞きたいことは全て聞いたので、もう用はないだろう。
「ヒナミ嬢、キミに話して欲しいのはただ一つ。アオギリの本当のアジトはどこにあるんだい? おっと、今までに他の捜査官へ話した事を蒸し返さないでおくれよ? アジトは定期的に上層部が変えているからもう分からない? 面白い冗談を言う。日本に詳しくないタタラがそんな頻繁に隠れ家を確保できるわけなかろう。マフィアの伝手? それはない。中韓のマフィアはあの方が粗方食材に変えてしまい、もう殆ど残っていない。ロシアのマフィアはアオギリに手は貸さないだろうし、他に拠点を確保としたら隻眼の梟だろうが、ヤツも捕まっている。キミの知る全てと梟の答えを照らし合わせれば、自ずとアジトは明らかになるだろうね」
キジマの話はよく分からない。だが、キジマはヒナミが本当のアジトの場所を知っていると確信しているようだ。
「そして何より、人工喰種について私達は知っている。人工喰種を作るには大掛かりな設備が必要だ。一度設置したら動かすのは難しいだろうねぇ……あるんだろう?
カオリ達は人工喰種を作るようになったことで、人工喰種を作るにはある程度の場所が必要となり、一度機材を設置したら簡単には動かせないことを理解した。だからこそ分かる。嘉納の研究拠点は動かせない事を……。
「痛い目に遭いたくなければ話すと良い。いや、私としてはむしろ黙ってくれてもいい。その方が楽しい尋問ができるというものだ」
キジマはニヤニヤと笑いながら、カバンから拷問道具を取り出していく。
「ああ、キミが嘉納の研究拠点を知らないという可能性は考慮していない。キミは真戸准特等に対し、
ヒナミは何も言わない。黙秘を選択するようだ。
「ヒヒヒヒヒ! 私を前に強気の喰種は久々だ。せいぜい楽しませてくれたまえ。それではカオルさん。ヒナミ嬢の口を固定してくれるかな?」
カオルはヒナミの後ろに回ると、ヒナミの口に両手を突っ込み、無理矢理こじ開けていく。
喰種特有の強靱な顎でカオルの指を噛み千切ろうとするが、口を閉じることができない。ヒナミの顎の力より、カオルの力の方が上回っているようだ。
「あ……あが、っ……!」
「カオルさんの力は誰よりも強いからねぇ。食い千切るのは無理だろうとも。さぁ、まずは歯医者さんごっこといこう。まずはこのフッ酸を……」
キジマはフッ酸のビンを開け……。
「─────こうするのさッ!」
ヒナミの口に捻じ込んだ。
薬液がとくとくと口内に注がれ……すぐに激痛となってヒナミを襲う!
「ぎゃぁぁあああああ゛あ゛あ゛っっ!!?」
あまりの激痛に、ヒナミの体は異常な力を発揮する。カオルを力尽くで払いのけ、床にのたうち回る。
口の中が灼ける。水が欲しい。だが洗面台までは手が届かない。
「おおー! 凄い凄い! あーるしー抑制剤が効いているのに、赫子出しちゃった!」
ヒナミの脳味噌のリミッターは即座に吹き飛び、赫子を滅茶苦茶に振り回す。
荒れ狂う赫子に対し、カオルも無数の尾赫を展開。ヒナミの赫子を絡め取っていく。
流石にカオルの赫子には勝てなかったのか、赫子の動きは押さえつけられてしまう。だが、体は狂ったようにビチビチと飛び跳ねる。
止まない絶叫。止まらない体の反応。気絶する事すら許さない激痛は、歯から歯茎、そして骨へと浸透していき、顔がグズグズと溶けていく。
ヒナミの絶叫をバックミュージックにしながら、キジマ達は次の拷問の準備に取りかかり始めていた。
──────────
グチャグチャになったヒナミの眼球に、シーナは注射器を突き立てる。
ヒナミの絶叫が更にボリュームを上げるが、気にせず薬液を注ぎ込んでいく。
「本来コクリアに収監されている喰種に対して『Rc促進剤』を使うのは危険なのだが、我々は例え喰種が暴れようが問題ないからねぇ」
薬液の中身はRc促進剤だ。グズグズに溶けた顔はジワジワと修復され始め、痛みも少しずつ引いていく。
「やぁヒナミ嬢。そろそろ我々の声が聞こえるくらいに痛みが引いてきたかな? それでどうだろうか? もうギブアップする気になってしまったかな? それとも、フッ酸のお替わりを御所望かな?」
ヒナミは拷問に慣れていない。カネキの元でも、アオギリの元でも、痛めつけられた事は無い。CCGに捕まってからも、怒鳴られた事はたくさんあったが、拷問は今までされなかった。
そんなヒナミにとって、フッ酸という存在は今までのどんなモノよりもトラウマを植え付けるのに充分過ぎた。
「……もう酷いことしないで……全部話します……」
ヒナミの心はあっさりと折れ、泣きながら嘉納の研究拠点である『
調書を書き始めたニムラ。キジマとカオルはがっくりと肩を落とした。
「おや、あっさり話してしまうのか。こっそり作った拷問用クインケ『ひぐらし』を試そうと思っていたのにね……これは隻眼の梟に使うとしよう」
「むー、海外の通販で頑張って翻訳機にかけながら『苦悩の梨』を買ったのになー。まぁいいや、小説家さんに使おっと」
「午後まで時間が余るわね……隻眼の梟への尋問を早められないか監獄長に聞いてきますね」
ニムラが調書を書き終えると、キジマ達は部屋を出て行……こうとするが、カオルがあることに気付いて足を止める。
「そうだ。折角あーるしー促進剤が効いてるんだから、キジマさんと私は赫胞ちょっと貰おうよ」
カオルは甲赫をナイフ状に展開し、ヒナミへ近付いていく。
「……こ、今度は何する気ですか?」
「ほら、私とキジマさんは、リオちゃんの赫子を埋め込まれた人工喰種だから、他人の赫胞を食べると、その力を得ることができるんだよねー。でも、ヒナミさんは赫胞が少ないみたいだね。丸ごと抉り出したら死んじゃうねー。じゃあちょっとだけ削るから、痛みは我慢してね?」
カオルはそう告げると、ヒナミの肩甲骨と腰に赫子のナイフを突き入れていく。
「リオちゃんの人工喰種!? あ、ちょっと待……ぁ……ぎ、ぃい……っ!?」
命そのものをゴリゴリと削り取られていく感覚と痛みに、ヒナミの視界は明滅する。
僅かな時間でカオルは赫胞を削り取り、小さなカケラを2つずつ取り出す。
カオルとキジマはそれを口にした。
「よーし、これでキジマさんと私はドクターとナースの力を手に入れたねっ! ナースの耐火性、げっとだぜ! じゃあ次は小説家さんの所に行こっか!」
用件を済ませたカオル達は、今度こそヒナミの牢獄を去っていく。去り際にぐったりとしたヒナミ目掛けてCRcガスを投げ入れ、Rc促進剤の効果を打ち消す事を忘れはしなかった。
ま ろ や か 拷 問
東京喰種のアイドルちゃんヒナに過剰な拷問は可哀想だからね。本番は次回なのじゃ。
ひぐらし+拷問といえば目明し編のアレです。次回をお楽しみに!
カオリが通販で買った苦悩の梨はR15で描写できないので、詳細はカットでございますわよ!