花屋喰種   作:みぞれアイス

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東京喰種JAIL編、開始します。
ざっくり言えば仲間集め編。
そして、原作JAILの主人公ことリオくんが酷い目に合う話です。


花屋喰種 JAIL【THE NIGHTMARE】
第13話 歪み捻れた道標


 翌朝、子供は目を覚ました。

 

「おはよー。15区(ここ)の事はだいぶ広まっちゃったと思ってるんだけど、キミはどうして15区に来たの? ありきたりな力試しとか?」

 カオリが問い掛けるも、子供はオロオロしながら口をつぐんでいる。

 

「……? あ、もしかして何も分かってない? 私も喰種(どうぞく)ですよー。はい、赫子(かぐね)。ちなみにキミは男の子であってるかなー?」

 カオリは甲赫を生やし、ひらひらと振るった。

 

「あ、良かった。喰種だったんですね……ちなみに僕は男です……それで、えっと、喰種収容所(コクリア)で起きた事件を知ってますか……?」

「知ってるよー。テレビでやってたし。で、キミはその逃げてきた囚人さんなのかなー」

 少年はドキリとした。少年はまさにコクリアから脱走した喰種だからである。

 

「……なんでバレたのって顔してるけど、初対面でいきなりその話題は気付かない方が無理だよー?」

 カオリはやれやれと首を振る。少年は赤面しつつも、カオリに事情を告げた。

 

「なるほどねー。キミは『キジマしき』って名前の捜査官さんに、『ジェイル』って喰種と間違われて捕まったと。そんで、キミのおにーさんは『弟はジェイルじゃねぇ!! 俺こそが本当のジェイルだ!』って言って捕まり、だけどそのキジマなる人はおにーさんの話を信じてなくて、真相を吐かせようと拷問してると……うーん……?」

 

 カオリはジェイルという喰種も、キジマという捜査官も知らないので判断がつかないが、基本的な捜査官については知っている。

 喰種対策局は大きな権力をもつにあたり、誤認逮捕が起こらないように最善を尽くしているとカオリは知っているので、この少年がジェイルで合っているのでは? と思った。

 

「キジマは『ジェイル』さえ捕まえれば、それで良いんだと思います……僕がジェイルだと認めれば、兄と交換してもいいとさえ言っていました。だから『本物のジェイル』を捕まえて取引すれば……!」

 

 喰種対策局(CCG)において喰種とは所謂(いわゆる)害獣と同等の扱いである。捜査官がわざわざ取引に応じるなんてカオリにはとても思えなかった。

 

 ……しかしここでカオリに電流走る。

 

(ジェイルって確か英語で『宝石』!! つまり、宝石の様に価値のあるもの。喰種において価値のあるものといえば『赫子=クインケ』! つまり、宝石のように価値のあるクインケが欲しいと考えれば……やっぱり四種持ちという希少種の中の希少種であるこの少年なのでは……!!)

 

 が、駄目……っ!! 宝石は『ジュエル』である……っ! ジェイルとは……『檻』の事……っ!!

 

「あー……うーん取引かー……その方法は難しいというか(キミが多分ジェイルだから)不可能だと思うけどー……でもおにーさんを助けたいんだっけ……?」

「はい、兄さんは今もコクリアで苦しんでいるんです……僕のために自分を差し出した、たった一人の家族なんです……! 僕はキジマに勝てない。そんなキジマを追い詰めたジェイルにも、なおのこと勝てるとは思えない……だけど……! 今度は僕が兄さんを助けたい!」

 

 面倒くさい事情の少年を、カオリは見捨てる事を考えたが、せっかくの『4種持ち(ほうせき)』である、『あーちゃん』に替わる14区(くいば)の新たな管理者に育てるのも悪くないのでは? と考えた。あーちゃんこと霧嶋アヤトが14区から抜けた穴は、良質な食料供給に問題をもたらしていたからである。

 

「じゃあキミが強くなれるように、おねーさんが手伝ってあげましょう! そういえばキミのお名前は? 私は花村カオリ。よろしくねー」

凛央(リオ)です」

「苗字は?」

「……ないです」

 

 カオリは察した。苗字がないということは『人間社会に溶け込んでいない喰種』であるということに。

 

「あちゃー……人間社会を避ける喰種ですかー。しかも捕まってたってことは身バレまでしちゃってるんですよねー……じゃあリオ君! キミは今日から()()()()()です!」

 

 カオリはリオに薄く化粧をし、栗色セミロングのカツラを被せる。そこには可愛らしい少女がいた。

 

「よーし、会心の出来だよー! リオちゃん可愛いー!! キミは今日から私の妹、花村リオだよ。強くなるのと一緒に、人の世で生きていく術を教えるからねー!」

「な、なんでこんな事をするんですか?」

 急な女装に嫌そうな顔をするリオ。

 

「リオちゃん、私は人間社会に紛れて生きる喰種。それで、自分でいうのもなんだけど私はそこそこ強いよー? そんな私の下僕(なかま)として生活するなら、キミも人間社会に溶け込む喰種になってもらわなきゃ困るの。だけどキミは身バレしてる。だから見た目から変えなきゃ駄目だよー? 赫包(かくほう)の基になる『あーるしー細胞』ってのが発達してれば、顔の見た目も少しは弄れるんだけど、リオちゃんはそこまで赫包が発達してるようなニオイはしないからねー」

 

 その後もリオに人間社会に溶け込む必要性を述べていく。やがてリオも納得したのか、女装する事を了承した。

 

「うん、じゃあまずは……マスク(おめん)が必要かな。私と一緒に狩りする時は『フレディ』を貸してあげるけど、リオちゃん一人の時もあるだろうから、今からお面買いに4区行こっか!」

 

──────────

 

「こんにちはー」

 

 新宿駅から少し歩き、馴染みのお面屋『HySy ArtMask Studio』の扉を開ける。今日はウタ以外誰もいないようだ。

 

「いらっしゃい。おや、初めて見る子だね。ボクはウタ。ここでマスクを作ったり売ったりしてるよ」

「こ、こんにちは。リオ……です」

「リオちゃん用のお面を1つお願いしまーす。私はその間商品見てますねー」

 

 リオをウタに預け、カオリは店内を見て回り始めた。

 

 

「キミ、女の子じゃないよね?」

 ウタは強者に位置する喰種である。リオの性別を見抜くこともまた容易であった。

「はい……僕はハトに顔が割れてしまっているので……」

「ふーん。キミって20区の子?」

「いえ、20区ではないです。今の僕はカオリさんに拾われたので、15区になるんでしょうか……?」

 

 へぇ、15区。とウタは呟く。リオは15区に住むという意味を理解してないが、ウタはあの共食い狂のレザーフェイスがリオを生かしている事に驚いた。

 

「キミ、凄いんだね。あの人が15区に来た喰種を生かしてるなんて初めてじゃないかな。あの人に気に入られる程のキミの秘密、気になるね……。ところで、ライオンとゾウ。もしも飼うならどっちが良い?」

「ゾウでしょうか……。ライオンは危ないですし。ところで、カオリさんって強いんですか? カオリさんは『自分はそこそこ強い』って言ってましたけど、あまりそんな風には見えなくて……」

 

 人間社会に溶け込まず、その上喰種同士のコミュニティーにも属していなかったリオは、カオリもとい15区について何も知らなかった。

 

「キミが直接見れば良いんじゃないかな? まぁ、あの人の庇護下なら間違いなく安全だよ。あの人に殺されなければ……だけどね」

 

 何か嫌な予感がしたリオは、これ以上カオリについて聞くのを止めることにした。その後はウタの良く分からない質問が続き、後日マスクを取りに行くことになった。

 

「このお面下さいなー。リオちゃんの分も合わせていくら?」

 カオリはいくつかのマスクを買い、店を出た。

 

 

「カオリさん、家に帰るんですか?」

「違うよ? 今日は4区(ここ)で食事をしてから帰ろうかなって。リオちゃんって収容所を脱走()てからまだ食べてないでしょ?」

 

 確かにリオはコクリアを脱走してから捕食していない。逃げた後は近場の服屋から服を盗み、その後キジマに追われ続けていたからである。

 

「確かに食べてないですけど……ここってカオリさんの喰場(くいば)があるんですか?」

 

 喰場とは特定の喰種による縄張りのようなモノである。余所の喰種が入り込むだけで、喰場の主に殺されるといった事もある。

 

「無いけど、むしろ誰かの喰場の方が良いじゃん? ご飯が向こうから来てくれるんだし」

「……!? まさかカオリさん……『共食い』するんですか?」

 喰種の肉はとても不味い上に人よりも狩るのが大変である。好き好んで共食いをする喰種を、リオは知らなかった。

 

「そうだよー。今日は人間も食べるけど、リオちゃんも喰種を食べてねー。いきなり強い赫包(かくほう)を食べると体が壊れちゃうから、弱い喰種から食べようねー?」

 

 喰種の赫包を食べることによって、自らのRc細胞を強化するのが共食いの真骨頂だが、自身の身の丈にあわない程の赫包を摂取するのは危険である。

 

 例えばだが、リオにカオリの赫包を食べさせた場合、リオを即座に強くする事が可能である。ただし、代償としてその精神はカオリの赫包に染まり、正常な喰種ではなくなる。

 

 だが、弱い喰種ばかりを食べたとしても、精神に異常は起こる。カオリやヤモリといった、共食いをした喰種は多かれ少なかれ精神や肉体に異常をきたしている。例外はあんていく店長の芳村くらいだろう。

 

「ついでに、大金の稼ぎかたも教えてあげるね。まずは夜になるまで映画でも見よっかー」

 

 

 カオリはリオを連れ、映画館へと入っていった。今日の映画は吸血鬼モノであり、どことなくガチムチな雰囲気の漂う吸血鬼の目まぐるしい格闘に、映画を初めて見るリオは感動を覚えた。

 

「映画凄かったです! 人ってこんな楽しい生活をしてたんですね……」

「でしょー? 喰種達の文化はどうしても『食』ばっかりに偏ってるからねー。ではリオちゃん、今日のご飯はここ4区で行います。まずリオちゃんはご飯をどのように選びますか?」

 

 リオは今までの生活を振り返り、答えを述べる。

 

「ひとりで、人目につかないところを歩いてる人……ですね」

「うーん、普通の喰種はそうなんだよねー。リオちゃん一人ならそれが正解かもねー。だけど、一人で路地裏を歩いてる人って、捜査官さんの囮捜査ってことも多いので、私はあんまりお勧めしないですよー?」

 

 とはいえ、他の方法は思い浮かばないリオであった。

 

「今日のご飯はただ人を食べるだけじゃなくて、その人からお金を頂きますよー。なので、まずは『お金のニオイ』を探します。ちなみにもう下調べは終わっているので、ついてきてねー!」

 

 カオリ達は路地裏を進んで行き、人気の無い場所へ到着した。

 




 女 装 少 年 

次回、観察と虐待
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