花屋喰種   作:みぞれアイス

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【小林さんの赫子を鱗赫へ】
小林さんの赫子は尾赫じゃなくて鱗赫じゃね?と指摘して下さった方ありがとうございました。確かに尾赫よりも鱗赫っぽかったです。
小林の赫子変更に伴い、18話の記載を変更しています。



第19話 あんていくの新看板娘

 1ヶ月の月日が流れ、リオの監禁は終わった。

 

「ふふっ、ひさびさの外はどんな気分?」

「そうですね……何年も地下に居た気分ですけど……1ヶ月しか経ってないんですよね……太陽が、眩しいです」

 1ヶ月ぶりの日光は、リオの視界を金色に染めていた。

 

「じゃあ、1ヶ月の調整の結果を試してみよっか。24区に行こうねー」

「はい、()()()!」

 

 

 24区にて、カオリとリオは相対する。

 リオの恰好は縞々セーターにソフト帽の『フレディ』。カオリの恰好はフルフェイスヘルメットに灰色のスーツ。白鳩のバッチがワンポイントの『喰種捜査官』。

 

「では薄汚い喰種よ。私のクインケにしてやろうじゃあないか」

「来い! ()()()()()()()!!」

 Helter Skelterにて、かつてカオリが殺害した捜査官『真戸呉緒(まどくれお)』の情報を得たカオリは、真戸上等捜査官の振る舞いを真似している。

 

「そぉら! 私の『ドクター』を、どう対処する?」

 鱗赫の喰種『笛口アサキ』から作られた蛇腹剣型クインケこと『ドクター』が、風切り音を立てながらリオへ飛来した。

 

「そんな攻撃、避けるだけっ!」

 リオは『ドクター』の飛来する位置を見極め、軽やかなステップで回避する。

 

(体が軽いっ!)

 リオは自身の身体能力が飛躍的に向上している事に気が付いた。それは1ヶ月もの間、体を改造された結果であった。

 

「クハハ! 『ドクター』はただの剣ではない……クインケなのだよ!!」

 回避したはずの蛇腹剣は空中で軌道を変え、再度リオに向かって伸びていく。しかし、飛躍的に身体能力の向上したリオは、舞い踊るかの様に剣戟を躱していく。

 

「ほーう? 薄汚い喰種の分際で、随分とやるじゃあないかね? ならば『ナース』も参加するとしよう」

 甲赫の喰種『笛口リョーコ』から作られた大盾型クインケこと『ナース』。しかし、ただの盾ではない。4枚の(はね)のような形状は、ねじり合わせて突けば槍。薙ぎ払えば4本の剣へと変わる。まさに攻防兼ね備えたクインケだ。

 その代償として、非常に重いクインケであるが、もっと重い甲赫を持つカオリにとって、この程度の重さなど有って無いようなものである。

 

 縦横無尽に『ドクター』が飛び、合間を縫うように『ナース』が突き、薙ぐ。

 

 リオはその嵐のような剣戟を躱しきることが難しくなり、すかさず距離を離した。

 

「ふむ。喰種がヒトに勝る点の一つは、生まれ持った身体機能。ゆえに、距離を取ることは非常に有効な戦術と言えよう。私のように羽赫のクインケを持たぬ捜査官では、距離を離されたら手の打ちようがないからな……だが、貴様の攻撃も届くまい? ならば私は今の内に本局へ増援を依頼……フッ!」

 

 リオは羽赫を展開し、水晶の弾丸をカオリへ射出したが、それらは全て『ナース』に弾かれ、地面へと落ちた。

 

「赫子の相性を教えてやろう。羽赫は鱗赫と同等の威力を持つ遠距離攻撃で、確かに強力な赫子といえよう……だが、距離が開けば開くほど威力は減衰する。ゆえに……甲赫ならば容易に防ぐことができる。ほれ、なれば例え傷を負おうとも、攻めるしかあるまい? 貴様の目指すキジマ氏は、私の更に一つ上の『准特等捜査官』。上等捜査官の私程度にまごつくようでは、貴様の兄はクインケになってしまうなぁ?」

 

「っ……! 僕は、兄さんを助けるんだぁっ!」

 

 リオは走る。飛び交うドクターとナースによる剣戟の嵐が吹き荒れる中、致命的な攻撃だけを躱し、カオリへ突撃した。

 致命的なダメージこそ避けてはいるが、クインケが幾つも体をかすめ、体がガリガリと削られていく。

 

 しかし、その捨て身の攻撃の結果、ついにリオは鱗赫の射程圏内まで距離を詰めた。

「甲赫には……鱗赫ッ!!」

 甲赫は鱗赫に弱い。ナース越しにリオは鱗赫の一撃を繰り出した。

 

「確かにナースで貴様の鱗赫を防ぐのは難しかろう……だが、鱗赫を持ってしても貫けぬ甲赫は存在する」

 

 リオの鱗赫は、カオリの甲赫によって防がれていた。

 

 

 

「よーし、お疲れフレディ! 今回は捜査官が私一人だったから何とかなったけど、捜査官はだいたい2人以上で行動する事が多いから、後先考えない捨て身の攻撃ってのは、あんまり良くないよー? キジマにも『フルタ』っていう部下が居るみたいだし。それじゃ、一旦家に帰ろっかー」

 

 カオリは24区の壁を切り裂き、15区へと帰っていった。

 

──────────

 

「赫子の出力はだいぶ良くなったみたいだけど、リオちゃんは私みたいに立ち止まる戦い方よりも、機動力を生かした戦い方の方が良いと思うよー? だからリオちゃんには……喫茶店で働いて貰いまーす!」

 カオリの言動に、リオは首を傾げた。

 

「……どうして喫茶店の仕事が、機動力を生かした戦いの訓練になるんですか? 確かにこの1ヶ月、接客練習もさせられましたけど……」

 地下室での一ヶ月、それはただ体を弄り回されていただけではない。カオリや小林による接客練習、人間の食事を食べるフリをする練習、料理をする練習などといった、人間社会に紛れて生きる術を叩き込まれていた。

 

「ふっふー! 20区に『あんていく』って喫茶店があるんだけど、そこの従業員ってみーんな喰種なんだよ。しかもなんと! 従業員の殆どが羽赫の喰種だよ! 店長さんは羽赫喰種の最高峰みたいな人だし、凄く教養があるんだよねー」

 

 あんていく店長の芳村こと『(フクロウ)』。カオリの知る中で最強の羽赫使いである。

 

 

「それにほら……リオちゃんってさ……この1ヶ月散々体を弄り回した私のせいなんだけど……もう男の子の面影無いくらい女の子じゃん?」

「それは姉さんのせいですよ……」

 

 元々中性的だったリオは、この1ヶ月で、すっかり女性的な体つきへと変えられていた。

 

「それでね、『あんていく』には二人の看板娘が居たんだけど、一人はこの前お店を辞めちゃって、もう一人は『呪剣戦争』? とかいうモノのせいで、お休みの日が多いんだってさ。つまり、看板娘がいなくて困ってるみたいなんだよねー。そこで、リオちゃんを『あんていく』の新看板娘候補として送るから、リオちゃんに羽赫の戦い方や体捌きとかを教えてあげてってお願いしたら、快く受けて貰えたんだ。私じゃ羽赫や体捌きは教えられないし、リオちゃんにとっても悪くないと思うよー?」

 

「分かりました。看板娘、やってみます!」

 

 リオは元気良く返事をした。

 

「それじゃ、明日から働いて貰うねー。勤務地は20区だから、徒歩で行くのは面倒だよ。私のバイクや、小林のタクシーならすぐなんだけど……私はしばらく別行動するし、小林はタクシー運転手の仕事があるから……バスで通って貰うよー」

 

 カオリは携帯電話を取り出し、あんていくへ電話をかけた。

 

──────────

 

 翌朝、リオはカオリと共に最寄りのバス停からバスに乗り、20区へやってきた。

 

「ここが『あんていく』だよー。道は覚えた? 明日は私も仕事だから、明日からは一人で出勤してね?」

「降りるバス停と道は覚えたので、大丈夫だと思います」

 

 

「こんにちはー! リオちゃん連れてきましたよー」

 カオリはあんていくの扉を開ける。

 

「こんにちはカオリちゃん。それと……キミがリオちゃんだね? 私は芳村。ここ『あんていく』の店長をやっている者だよ」

 芳村とリオが挨拶を交わすなか、他にも5人の従業員がやってきた。

 

 店長の『芳村(よしむら)』、裏方担当の『四方(よも)』、古参従業員の『古間(こま)』と『入見(いりみ)』、現役大学生の『西尾錦(にしおニシキ)』の5人と……カオリの知らないもう一人の女性従業員。

 リオは他のメンバーとも自己紹介をしていき、ついに自己紹介は最後の一人。カオリの知らない女性従業員の番となった。

 

「はい! 『帆糸(ほいと)ロマ』でぇーす! カネキ様に憧れ、かつてカネキ様がいた空気を感じたくて、隣の19区からここでお仕事をさせて貰ってます!! あたしもまだ働き始めたばっかりですけど、ドーンと頼ってくれて良いよ!」

「なーにが『頼ってくれて良いよー』だ。お前、皿洗い一つ満足(ロク)にできてねぇだろうが」

 ロマの元気な自己紹介を、ニシキが切り捨てる。

 

「帆糸さんは初めましてですねー。私は花村カオリです。リオちゃんのお姉さんですよー? それで、いきなりで申し訳ないですけど、ちょっと一緒に来てもらって良いですかー? 芳村さん、ちょっと帆糸さんをお借りしますねー。それでは皆さん、リオちゃんを宜しくお願いしまーす」

「え? あの、いきなりなんですか!? ちょっとまって下さーい!」

 

 カオリはロマの手を取ると、店の外へと歩いていった。

 

 

「それであのー……あたしに何か用ですか……?」

 

 路地裏へと連れてこられたロマは、怯えたようにカオリを見上げた。

 

「ふふっ、あなた……アオギリの人ですよね?」

「ふぇっ!? ち、違いますよ! むしろあたしはカネキ様と同じ反アオギリですってば!?」

 ロマはパタパタを首を振り、カオリの発言を否定している。

 

「ニオイで分かるんですよー? 2()4()()()()()さん? ここに来た理由が金木さんに憧れ? 神代ちゃんの赫子を埋め込まれただけの人間に? リオちゃんじゃあなたに勝てない。そうすると、私が居ないときにあなたがリオちゃんを無理矢理攫う……なんて事もできちゃうんだよねー? リオちゃんをアオギリに持っていかれると困るから……今ここであなたには行方不明になってもらうね」

 

 カオリは甲赫を展開し、ロマを締め上げていく。

 

「ぐぇっ……!! ちょっ、何コレヤバい死ぬ死ぬ内臓飛び出るっ!! 待って待って!! 言う、言うっすよ!! 確かに私はスパイっすけど、アオギリじゃなくて『Helter Skelter』からのスパイっす!!」

「証拠は?」

 

 馴染みの名前が出たことにより、カオリの甲赫が止まった。

 

「レザーフェイスさんが知ってる人なら、イトリ以外にニコとウタがいるっす! この前ウチに売ってくれた『アオギリの樹幹部・タタラの資金源』の書類は非常に助かりましたあざーす!!」

 

 ロマが言った『書類』とは、池袋にあったマフィアのアジトから奪ったモノであり、イトリにしか見せていないモノだ。ひとまずはロマが『Helter Skelter』の関係者で有ることが分かったので、ロマを赫子から解放した。

 

「ふぃー……ニコから聞いてはいたっすけど、レザーフェイスさんマジ危ないわ……あ、骨砕けてるやん……まぁすぐ治るけど」

「ごめんなさいね帆糸さん。お得意様の関係者なのにひどいことしちゃって」

 

 カオリはロマへ頭を下げた。

 

「別にいいっすよー。これもまた情報収集っす。んじゃ誤解も解けたことですし、戻って良いすか?」

「どうぞー。帆糸さんもリオちゃんと仲良くしてあげて下さいねー。私はもう帰るので、みなさんによろしく伝えておいて下さいねー」

 

 ロマを見送り、カオリは自宅へと帰っていった。

 




 少 女 ( 大 嘘 ) 
この看板娘達、年齢詐欺と性別詐欺だゾ

☆原作JAILと違う点
・リオ:調教済み。もはやただの僕っ娘。

・あんていく:原作より2ヶ月くらい遅く勤務開始。勿論制服は女性用。

・トーカ:原作では割と出勤しているものの、漫画版は受験勉強であまり出勤してないような描写があったため、本作ではほとんど出番なし。

・ロマ:JAILでは一切登場なし。でも漫画版ではこの時期働いているハズなのでロマ登場。つまり、JAIL版トーカのポジションがロマになった感じ。


Q.1ヶ月も監禁しっぱなしで時系列は大丈夫なの?
A.むしろ余裕なんです。コクリア脱獄(2012年12月)から、喰種レストラン戦(2013年6月)の期間は、どれだけ短くても5ヶ月はあり、その間にあるメインシナリオって、第一ジェイル候補戦と、ナキ(もしくは什造)との遭遇しかありません。サブイベント込みでの時間なんでしょうが、本作では序盤のサブイベント殆どスルーなので、時間的に余裕があります。
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