花屋喰種   作:みぞれアイス

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とっても平和、とっても短い。
すみません!今回の長さは普段の半分くらいしかないです!


第25話 第二のジェイル候補 《Side.リオ》

 数日後、精神崩壊から戻ったリオは、あんていくでアルバイトをしていた。

 

「おまたせしました。ブレンドコーヒーです」

 リオは慣れた手付きで、客へコーヒーを渡す。あんていくで仕事を始めてだいぶ経った今、立派なウェイトレスとなっていた。

 

「リオっちもすっかり仕事が板についてきましたよね先輩?」

「あぁ、お前よりもな」

「せんぱーい! その言い方はあんまりですよぉ……」

 ニシキの手厳しいツッコミにロマが文句を言うが、ロマは相変わらずおっちょこちょいであり、たびたび皿を割っていた。

 

 

「そういやリオ。ここ数日、あの人から怪我で休みって連絡きてたけどよ、もう大丈夫なのか?」

 

 喰種が何日も治療を必要とするような怪我とは、そこそこ大きめの怪我を意味する。ニシキはぶっきらぼうな言葉遣いでこそあるが、実際は面倒見の良い青年であるため、リオの怪我を心配していた。

 

「はい、もう大丈夫です!」

「なら良いけどよ……なんか危ねぇ事に関わってんのか?」

「そうですね……ニシキさん達は『ジェイル』という喰種を知ってますか?」

 

「いや、知らねぇな」

「あたしも聞いたことないですねぇ~」

「僕はそのジェイルという悪い喰種を探してまして、確かに危険な場所へ行ってます……心配掛けてすみません。でも兄さんを助けるために、必要な事なんです」

 

 リオは、ニシキ達に自身の身の上を語った。

 

「そうか……まぁ、リオは強ぇかもしんねぇけどよ。お前だってもう『あんていく』の仲間なんだぜ? あんまり無茶はすんなよな?」

「そうそう! リオっちが居ないとあたしの仕事が大変だからね~。リオっちの仕事が休みの日に『目元にアザのある喰種』が来たら、バッチリ教えてあげるね!」

 

 ニシキ達の優しさに、リオは少し心が温かくなった。

 

「すみません、ありがとうございます!」

「んまぁ、今は仕事だな。おっし、リオはこのサンドイッチを3番の席な。ロマは皿洗いだが……割るなよ?」

「は~い! お任せ下さいっ!」

 

 その後、やはりロマは皿を割り、ニシキの怒声が洗い場に響くこととなった。

 

──────────

 

 リオはあんていくでの仕事を終えた後に、14区の『Helter Skelter』へ向かっていた。

 

「こんばんはー」

 ドアを開けると、イトリとニコが居た。

 

「おっすリオっち。もしかしてプライヤー持ってきてくれた感じ?」

「はい。ナキという喰種から奪い取ってきました」

「へぇ、やるじゃん? ナキっていったらアオギリの特攻隊長みたいなもんなのにね」

 

 その言葉に、ニコは少しだけ複雑そうな顔をした。

「そう……ナキが来てたのね……意外とアイツも男気あるじゃないの……あの馬鹿にはちょっと可哀想な事しちゃったかしら……でも今は……おかえり、ヤモリ……」

 

 ニコはリオからプライヤーを受け取ると、それを抱きしめた。

 

「ありがとねリオきゅん。それじゃ、最後はキスしてお仕事完了よん」

 ニコの桃色でプリっとした唇を、ゆっくりとリオに近付ける。

 

「ニコ、ちょっと待……」

「んっ」

 イトリの制止は間に合わず、リオの唇は、そっとニコの唇と重なった。

 

 それは、まるで愛し合う恋人の、デートの終わりにするような口付け。

 

 いやらしさは無く、それでいて互いが離れたくないと感じさせるかのような。

 

「うえっ……」

 それは芸術性を感じさせるがゆえに、イトリの背筋に寒いモノが走り、嫌悪感が全身を襲う。

 

「ンフフ……御馳走様」

「お粗末様でした」

 長い口付けを終え、二人はカウンターの席に座ろうとするが……。

 

「アンタら座る前に口濯いでこい!!」

 イトリは洗面所に二人を叩き出した。

 

 

 

 リオが洗面所から戻ると、イトリは一枚の写真を見せた。

 

「コイツは『キンコ』。目元に『格子状の傷跡』がある鱗赫の喰種よ。リオっちと同じコクリアの脱走者。まだ捕まってないらしいから、絶賛逃亡中」

 

 写真には焦茶色(こげちゃいろ)の髪をなびかせた、本当に人間なのかと疑いたくなるほどの大男が写っていた。あまりにも太過ぎるその筋肉は、喰種というよりもゴリラを彷彿とさせた。

 

「ちなみにコイツのレートはS。リオっちが倒したナキと同じレートだけど、多分コイツの方が強さは上ね。コイツは怒らせなければ何もしてこないし、こっちから攻撃しても逃げちゃうんだって。だけど、何らかの拍子(ひょうし)で怒らせたら、手がつけられないみたい。凄まじい破壊力を持ってるみたいで、何人もの捜査官が死んだらしいわ。ナキみたいに好戦的ではない分レートは低めだけど、もしコイツが好戦的だったら、SSレートにはなってたんじゃないかな? 実質SSレートの相手、流石のリオっちでも結構苦戦するんじゃない?」

 

 SSレートの鱗赫。それは同じ鱗赫の小林を凌駕する強さ。リオは一瞬怯むが、すぐに表情を整えた。

 

「いえ、僕が決めた道ですので、キンコを探して、戦ってみます」

 

「ほほーう? それじゃ、そんなリオっちに良いことを教えてあげよう。キンコは2区にある公園を転々としてるって情報があるわ。そして、キンコを怒らせる簡単な方法だけど……花を目の前で踏み潰せば良いわ。良くわかんないけど、花や小動物みたいな小さい生き物を大切にしてるみたいなのよねぇ。だから、キンコの目の前で踏み潰してみ?」

 

 相手の大切なものを踏みにじる。それには少しの抵抗があるが、それしかないならと、リオは覚悟を決めた。

 

「覚悟は決まったみたいね。リオっちの健闘を祈ってるよ!」

 

 リオはイトリ達に一礼し、『Helter Skelter』を後にした。

 

 

 

「ねぇ、イトリ? リオきゅんがキンコを倒し終わったら、次は()()()()を渡すのかしらァ?」

「いやー……いくらリオっちでも、()()()相手は無理っしょ? 流石に別の誰かを紹介するわよ……」

「そうねェ……リオきゅんがあの時の暴走を自在に操れて、ギリギリ互角かどうかってトコなのよねェ……」

 

 イトリが持つ写真には『目元に()()()()()()()をした女性』が写っていた。

 

 




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なおイトリさんにとっては、生理的に無理だった模様

リオはニシキたちに自身の身の上を話しましたが、カオリから受けたあれこれは説明していません。あくまでも『兄がジェイルという喰種に間違われ、キジマに捉えられている。兄と交換するために、本物のジェイルを探している』といった内容のみです。


☆原作JAILと違う点

・キス:リオがニコのキスを拒絶しない。頬じゃなくて口同士。

・プライヤー:原作ではナキに返すため、ニコに「やっぱり返して」と言う。しかし、本作はそのままニコのモノになった


次回、もはや別人レベルのキンコ戦
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