キンコ戦は、原作だと喰種レストラン戦よりも後のサブイベントなのですが、本作では先にキンコと戦ってもらいます。
別の日、リオは銀座の街に来ていた。銀座や築地などが有名な2区は人の数が多く、どことなくリオを不安にさせた。
(す、凄い人の数だ……みんな何しに来てるんだろう?)
リオは人混みの中、街を行く人々を観察する。どうやら銀座には買い物をするために来ているようだと分かった。
(僕も何か見ていこうかな?)
リオは人の出入りの多い、大型ショッピングセンターへと入っていった。
(た……高い……なんで時計がこんなに高いんだろう……? 携帯電話があれば時間分かるし、わざわざ要らないんじゃないかな?)
(この服はなんでこんなに値段がするのかな? 姉さんが僕に買ってくれる服は、『ふりる』や『れーす』の作りが複雑だから高いって言ってたけど、この服はただのシャツなのに……?)
(うっ……財布の値段が凄い……姉さんは材質で金額が変わるって言ってたっけ? 材料は何で出来てるんだろう? 喰種の皮で作られてたらやだなぁ……でも喰種の皮って丈夫だし、案外使われてるのかな……?)
喰種社会には喰種社会の見栄があるように、人間社会には人間社会の見栄がある。人間社会に紛れて生きる経験の浅いリオには、まだ分からなかった。
(あ、このブローチいいな。あんまり高くないし、買っちゃおっと)
リオはヒマワリのブローチを購入すると、ショッピングセンターを後にした。
(よしっ、じゃあキンコを探そう。近くの公園はどこにあるのかな……?)
ワンピースの胸部分にヒマワリのブローチを付け、リオは2区の公園を探し始めた。
──────────
銀座から南東へ歩き、幾つもの公園を経由し、2区の最も南にある公園にたどり着いた頃、既に空は薄闇色に変わっていた。だが、リオはついに『キンコ』らしき人物を発見した。
焦茶色の髪をなびかせた、目元に『格子状の傷跡』があるゴリラのような大男。リオの二倍以上はあるその巨躯は身動き一つせず、草花を眺めている。
リオは黄色睡蓮のバイザーマスクを被ると、キンコらしき人物へ向かっていった。
「キンコさん……ですか?」
リオが声をかけると、大男はゆっくりとリオへ振り返った。
「ん……そ、おで……キンコ……おまえ……だれ」
「えっと……『フレディ』です。初めまして」
「おまえ……あいさつ……おでも……あいさつ……はじめ、まして……おで、キンコ……」
キンコはゆっくりとした動きで、リオに挨拶をした。
「キンコさん、あなたは『ジェイル』ですか?」
「ちがう……おで……キンコ……ジェイル、ちがう……」
その後もリオはいくつかキンコに質問をするが、どれも要領をえない回答ばかりであった。
(ダメだ。このままじゃ分からない。キンコさんを怒らせるには、花を踏めばいいんだっけ? でも……花を粗末にすると姉さんに怒られそうだなぁ……そうだ! キンコから取り上げてみよう)
リオは、先程までキンコが見ていた花を摘んだ。
─────その瞬間、キンコの様相が一変する。
「オマエッ! ソレ! ハ、ナッツンダ!! オマエ、ハ、ナッツンダァ!」
キンコの眼が赫眼へと変わり、リオに向かって叫びだした。
「ハ、ナ。ナニ……モ、シテナイノニ!! ハ、ナッツンダァ! ハ、ナッツンダァァッ!! ハッ!! ナッツッ……!! ……もうマヂ無理……」
「あの……キンコさん?」
リオが動かなくなったキンコに声をかけようとした時……。
─────リオの首目掛けて赫子が飛んできた。
「ッ!?」
咄嗟にリオは後ろへ跳び、赫子を躱す。
「
先程までのゆっくりとした喋り方ではなく、流暢に言葉を紡ぐキンコ。腰からは6本の鱗赫が展開されており、その赤紫色の鱗赫は、キンコの体に合わせるが如く、大きく、重厚であった。
リオはマスクに内蔵されているカメラの録画ボタンを押し、戦う構えを取る。
「我、声無き魂の声聴く者。我、声無き魂を助く者。我、汝を
キンコはその巨躯からは信じられない程の速度でリオに迫る。
(四方さん並!? 羽赫、甲赫間に合えッ!!)
リオはキンコに向けて橙色の水晶弾をばらまき、水色の大盾を構える。水晶弾はキンコに着弾すると同時に炸裂し、キンコの体から血液が吹き出していく。
しかし、キンコは一切の速度を弛めることなく、リオへ肉薄した。
「
キンコは甲赫の大盾越しに赫子を振るう。キンコの重厚な鱗赫は、リオの甲赫を
「カハァっ……うぶっ……!!」
リオの腹部からは血が流れ出し、逆流した血液が口から溢れだす。
「
キンコはリオに向け、その巨腕を振るう。それは未だ血の流れるリオの腹部へ。
ねちゃりと音を立てながら、傷口を抉るようにその腕は沈んでいく。
「ぎッ……!? おぶっ……!!」
傷口が押し広げられ、吹き出す血液はその量を増していく。
緑溢れる公園が、じわじわと真紅に染まっていった。
「痛み、其は生の証。汝が摘んだ命、最早其を感じること
キンコはトドメの一撃と言わんばかりに、リオの首筋へ向けて鱗赫を放つが……。
─────その鱗赫は、灰色の尾によって砕かれた。
「見事。其の傷で未だ我へ挑むか」
「あは……おぶッ! ……あははははは!!」
大地を紅く染めながらも、リオは纏う赫子を増していく。
「我等
「めちゃクールだねぇ……めっちゃカチカチだよぉ……いひ、いひひひひィッ!!」
リオは無数の水晶をばらまきながら、キンコへ尾赫を叩きつけていく。
「其の赫子は効かぬ。笑止……ヌゥッ!?」
キンコは羽赫を無視し、尾赫のみを対処しようとしたが、リオの羽赫は先程より威力が上がっており、キンコの肉体に激痛として影響を及ぼした。
「グガァッ……!?」
そして、キンコが激痛で怯んだところに、リオの尾赫が叩きつけられた。
頭部を打ち据えられたキンコは、轟音と共に地面にめり込むが、キンコは殺気を感じ、即座に地面から飛び退いた。
「あははぁ……ざんねぇん……♪」
まさに間一髪。キンコの頭部がめり込んでいた場所には、紫色の鱗赫が突き刺さっていた。
「
キンコは再び赫子を展開し、リオへと疾駆する。
「りんかくぅ……兄さん? なら僕もォっ!!」
リオも対抗する様に鱗赫を展開した。その数8本。キンコの鱗赫より2本多いそれは、手数をもってキンコの鱗赫と拮抗した。
だが、リオの赫子は鱗赫だけではない。リオは更に赫子を展開していく。
「ワォっ!」
「ガハアァァッ!?」
リオの右腕に展開された水色の大剣、リオの尾骶骨付近から生える灰色の尾。それら2本の刺突が、キンコへと突き刺さる。
「ついげきぃ? ィヒヒヒイィッ!!」
駄目押しと言わんばかりに羽赫がバラ撒かれ、キンコの足をズタズタに引き裂いた。
「ヌ゛グゥ……ッ!! ム、無念……」
体の2箇所に大穴が空き、足を破壊されたキンコは、遂に地面へと崩れ落ちた。
「ぃ……ひ……ぁ……あはぁ……兄さん……姉さん……ああああああっ!!」
リオは自らの右手で、自らの頬を殴りつけた。
自らの手で自らに攻撃を加えた衝撃により、リオの目に理性が戻ってくる……。
「っく……はぁ、はぁーっ……今度は……戻って、これた……っぁぐぅ!! き……傷がぁ……」
正気を取り戻したリオは、肩で大きく息をしたが、怪我による激痛が全身を蝕んでいた。
─────その時、遠くから捜査官が走ってきた。
「居たぞ! 通報のあった喰種2体だ!」
「っく!? ……逃げ、なきゃッ!!」
激痛で悲鳴を上げる全身に歯を食いしばりつつ、リオはその場から逃走した。
「待てぇ! そこの女喰種ぅぎゃべっ!?」
「我死せずゥッ! 我声無き魂の守護者也ッ!! 懺悔せよッ!! 懺悔セヨォォオオオオッ!!」
「キンコが起き上がったぞ!! 応援を呼べぇええ!!」
捜査官達は倒れ伏したキンコを無視し、リオを追おうとした。だが、突如キンコが起き上がり、捜査官へと殴りかかる。
「我、魂ヲ護るッ! 護ルゥゥゥウウッ!!」
キンコはリオへ攻撃をしかけたつもりでいるが、すでに満身創痍のキンコは、リオと捜査官の区別がついていなかった。
(助かった! 今の内に逃げなきゃ……)
キンコが偶然にも囮の役割を担ったため、リオは逃亡に成功した。
「はぁ……あっぐぅ……小林さんに……電話しなきゃ……」
血痕や血のニオイを消すため、リオは海に隠れていた。
血は海水に流されていくが、海水が傷口に浸蝕し、リオの体を激痛が苛んでいた。
携帯電話が海水に濡れないよう気をつけながら、リオは小林に電話をかける。
『もしもし? リオちゃんかい?』
「小林さん……っぐ……迎えに……はぁっ……迎えに来て貰えませんか……?」
『ど、どうしたんだい!? 今どこにいるんだい?』
「2区……晴海ふ頭公園の……海に隠れています……晴海ふ頭公園まで来てもらえませんか?」
『海? ……分かった。今東京駅でお客さんを降ろしたところでね。晴海ふ頭公園だね? すぐに向かおう』
「お……お願い……します……」
約20分後、小林は2区にある晴海ふ頭公園まで駆け付け、リオをタクシーに乗せる。後部座席には、たくさんのバスタオルが敷かれており、とてもフカフカであった。
「詳しい事は後で聞くけど、ひとまずは花村さんの家で良いかい?」
「は、はい……お願い……します……そうだ……メール、しなきゃ。小林さん……USBあります?」
リオは小林からUSBケーブルを受け取ると、疲労と激痛に震える手でメールを書き始めた。
『きじまへ かれはじぇいる?』
短いメールと共にキンコの動画を添付し、キジマのメールアドレスに向けて送信する。
激痛で意識が飛びそうな中、幸いにもキジマからのメールはすぐに来た。
──
親愛なる情報提供者様
いつもお世話になっております。
CCG准特等捜査官 キジマと申します。
情報提供、深く御礼申し上げます。
誠に恐れ入りますが、この喰種も
赫眼や赫子の形状から判断し、
ジェイルでは無いことを確認致しました。
また、当方からも質問がございます。
脱獄者同士で仲良く遊んでいるのか?
そもそもその男はコクリアに居た喰種だ。
私がそんなことすら知らないとでも?
──
「キンコも……違っ……た」
リオはそう呟くと、糸が切れた人形のように、座席へ倒れ込んだ。
「やれやれ、リオちゃんは何をしたのやら……バスタオルを大量に買っておいてよかった……血塗れの座席じゃ、次のお客さんを乗せられないからねぇ……」
大量のバスタオルにくるまれたリオを乗せ、小林のタクシーは15区へと走っていった。
傷 口 に 海 水
HPが半分を下回っていると、受けるダメージが大きくなるぞ!
24話のナキ戦と違い、半赫者による急速修復が行われていないため、傷が治っていません。その代わり精神は無事です。
第一崩壊までなら自分で戻れるようになったリオちゃん。着実に成長はしてるんです!
ちなみにこの第一崩壊とは、いうなれば原作カネキくんの『リゼモード』にあたります。ムカデ状態(暴走半赫者)が第二崩壊。
Q.原作のリオくんより遥かに強くなっているのに、リオちゃん痛めつけられ過ぎじゃね?
A.原作の喰種達は、油断したり、手加減してくれたり、戦闘を途中で止めたりしてくれました。本作の戦闘相手は、そういう優しさが取っ払われてますので仕方ないね。
☆原作JAILと違う点……というかキンコの変更点について
・性格:小さな命を愛するのは変わらないものの、原作では攻撃を受けた時点で攻撃的な性格へ変わる。一方、本作のキンコは攻撃を受けても逃げてしまう。その代わり、小さな命への攻撃を確認した瞬間に覚醒開始。
・喋り方:原作では始終、未開の地に住む蛮族みたいな喋り方をしています。本作も激昂前はそんな感じで喋りますが、激昂後はもはや別人。
・戦闘能力:原作キンコはルチ以上ナキ以下の喰種でしたが、本作のキンコはだいぶ強化されています。喋り方から違いますし。
・覚醒:原作では世紀末のハート様みたいな感じで怒り出し、リオくんに襲いかかる。本作ではわりと有名なコピペ『もうマヂ無理』をモチーフにしたような感じで怒り出す。
INT値低いキャラが突然脳味噌覚醒するのほんとすこ。
(※すみませんッ!『もうマヂ無理』のコピペは、本来もっと難しい言い回しをするのですが、私の頭ではこれが限界です!)
・遭遇タイミング:原作では『喰種レストラン戦』の後にキンコと戦います。しかし、本作では『喰種レストラン戦』よりも前にキンコとの戦いを入れました。
理由としては2つありまして、
1つ目の理由が、次のジェイル候補は『目元に格子状のメイクのある女喰種』だからです。25話の最後にイトリ達が言っている通り、この女喰種は原作よりも大幅に強化されているため、キンコより後に出したかったからです。
2つ目の理由ですが、原作の時系列だと『喰種レストラン戦』の次に『嘉納という医師の家に侵入』が来るのですが、その期間が1ヶ月しか無いんですよね……。
そのため原作の流れ通りにすると、一ヶ月の間に以下のようなスケジュールが発生します。
『喰種レストラン→傷を癒やす→キンコ戦→傷を癒やす→情報収集(ナキリベンジ戦 with 鯱)→傷を癒やす→大乱闘嘉納ハウス』
こんなスケジュールじゃリオちゃんが死ぬぅ!
原作のリオくんが負う怪我は、即死or無傷or軽症。つまり、治療を要する期間が必要無いため過密スケジュールでもなんとかなりますが、本作のリオちゃんは重傷を負ったり、精神汚染で調整が必要になったりと、戦闘後はある程度の日数が要求されます。ここリョナ要素
次回、キンコの過去。