ヾ(*´∀`*)ノ感想での指摘有難うございました!
原作のキンコといえば花。花と言えば……
キンコという
しかし、そんなキンコにも許せないことがあった。それは自身の観察対象を害されること。観察対象を害されると、どうしても頭に血が上り、暴力的な気持ちが沸き上がってしまうのだ。
花を踏む者を見て怒り、猫をいじめる者を見て怒り、それらを薙ぎ倒してきた。
だが、暴れ終わった後にふと、いくら相手が悪いとはいえ、やりすぎてしまったのではと後悔することもあった……あの日までは……。
あの日。キンコにとって、今もなお忘れられない出来事。それは月明かりの輝く夜、熱気の伴う風が吹いていた日のこと……。
──────────
とある夏の日の深夜、キンコは気の向くまま、いつもと違う公園に行ってみることにした。
いつもと違う場所では、どんな観察対象があるのかと、心躍らせながら公園に立ち寄る。
その公園には、18歳にも満たない位の少女が居た。とはいえ、そこに居るだけならキンコも気にしなかったのだが、その少女はキンコにとって許しがたい光景を作り出していた。
「ふふっ、綺麗なお花!
なんと、花を摘んでいたのである。花を傷付けているその少女に対し、キンコは怒りが湧き上がるのを感じた。
(いや……まずは話を聞く……反省してるなら許す……それ大事……友達が言っていた……)
キンコは一つ深呼吸をし、少女へ語りかけた。
「お前、花摘むな! 花可哀想!」
キンコの言葉に、少女が振り返る。少女は
「どうして?」
「花、生きている。花、痛い。花に、謝れ!」
キンコは怒りで爆発しそうになる自身を抑え、少女を叱責する。
「ふふふっ、お兄さんは『喰種』のクセに不思議な事を言うんですね? あ、ニオイでわかるかも知れませんけど、私も喰種ですよ?」
「何がおかしい! 喰種、だから、なんだ!!」
まるで謝る気配の無い少女に、キンコの怒りがジワジワと高まっていく。
「……私達喰種は常に命を奪って生きる者。他者の全てを奪い取り、それを養分とし、花になります。 だから、私が花になるために、誰かの花を奪うのは当然なんですよー? たとえそれが、単なる私の娯楽のためだとしても……」
向日葵のマスクをした少女の表情は分からないが、キンコは少女が自分を嘲笑っていると、心から理解できた。
「そして、あなたの大切なモノだったとしても……」
少女は作りかけの花冠を地面に投げ捨てると、スニーカーで踏み潰した。その瞬間、キンコは全身の血液が沸騰せんばかりの怒りに包まれた。
「……許さないッ!」
「ふふふっ、おいでお兄さん。そんなに怒って、よっぽどこの花が大切だったんだね?」
「お前、考え、間違い! お前、花、謝らせるッ!!」
キンコは腰から
「ねぇ、そんなに近付かなきゃ駄目だったの? 赫子はそんなに近付かなくても当たるんだよ? あなたの足みたいにね」
キンコがふと自分の足を見ると、足首から先が綺麗に切断されていた。それを理解した途端、キンコの両足に激痛が走り始める。
「っぐあぁぁぁぁぁぁああっ!!」
「ふふふっ、再生するまで待ってあげるから、もっと頑張って? あなたの声を聞きたいなぁ……」
「……なぜだッ! なぜ、花、いじめるッ! 花、嫌いか!?」
キンコは足首を再生させながら、少女に問いかける。
「花が嫌い……? 違うよ、私は将来お花屋さんになりたいくらいに、花が大好きだよー? そうじゃなきゃ冠を作ろうなんてしないよ。花を育てるのも、愛でるのも、押し花にするのも、摘み取るのも、壊すのもっ! 枯らすのもッ! 私は花の全てを、心から愛しているんだよ。お兄さんは生と死の全てを愛せる?」
「違うッ! それ、傲慢ッ!! 我々関与、するべきでない! ただ見守る、これが真の愛ッ!!」
傷を再生させたキンコは、再び立ち上がった。
「そうだね、お兄さんの言うこともまた真実なのかもね。だけど……ふふふっ……お兄さんは見守ることができてないよね?」
少女は憐れむような、嘲笑うかのような口調でキンコに語りかけている。
「何、言っている……」
「見守るなら、たとえ私に花を摘み取られても、黙って見てなきゃ駄目じゃん。ねぇ、お兄さんは見守りたいの? それとも、積極的に守りたいの?」
キンコの答えは決まっていた。
「おでは守る! お前みたいな、花いじめるヤツから!!」
「ほぇー? でも、それはもっと無理じゃないですか? だってほら……お兄さんにはそれを成すための、腕も、足も無い……」
キンコは自身の四肢が消える感覚を感じた。キンコは思わず下を見るが、ちゃんと手足は付いている。
だが次の瞬間、キンコの胴体は地面へと滑り落ちた。
「ね? お兄さんは私の赫子に手足を斬られたことすら見えてない。ほら、また待ってあげるから、何度でも頑張って?」
キンコは激痛に歯を食いしばりながら、手足を再生させていく。
「……確かに私が頑張れって言ったけど、どうしてお兄さんは頑張るの? お兄さんに勝ち目はあるの? もう、諦めたら? そしたら私が美味しく頂いてあげる……ね?」
「諦めないッ!! おで、花、好き。動物、好き。おで、あきらめたらっ、お前、小さな命、殺すッ!! おで、守りたい!!」
キンコの叫びに、少女は心底つまらなそうな溜め息を吐いた。
「はぁー……
少女はキンコへ近付いていく。キンコの再生しかかっていた手足は、再び切り落とされた。
「お兄さんは人間の代わりに、喰種を食べるの。そう、『共食い』ってやつだね。そうするとね……『あーるしー細胞』が活性化して、強くなれるんだ……でもね……ちょっと……理性がもろくなっちゃうんだ……だから……お兄さんで発散させてよぉぉぉおおおおッ!!」
突如、キンコの首に何かが巻き付き、そのまま宙に持ち上げられた。
「お゛っ……い……息……っ!!」
それは絞首台の罪人の如し、必死に息をしようと、キンコは体を揺らす。
「あはははははっ!! 首吊り他殺未遂って感じなのかなー! でも死なないでね? 少しは楽しませてよぉッ!!」
少女はキンコへ接近し、殴る蹴るの暴行を加える。しかし、さほど威力は無いのか、ゆらゆらとキンコが揺れるだけであった。
「おっとォ! 赫子の使用は禁止だよー!?」
反撃しようと、キンコは鱗赫を展開するが、即座に下半身を切断されてしまった。
「はい!切り落としたからこれで赫子は使えないね! あ、上半身だけになって軽くなったから、息がちょっと吸いやすくなったね! なっちゃったよねぇ!? だからもう終わりっ!!」
キンコの首を縛っていた何かはなくなり、キンコは地面へと落ちる。そこに、甲赫の赫子を腕に巻き付けた少女が歩いてきた。
「はい! この赫子は治療用です! お兄さんは首を吊られて顔が真っ赤です! だから血抜きをしましょうねぇ!!」
赫子の先端は薄く尖っており、それはジワジワとキンコに近付いてくる……
そして、キンコの顔へと突き刺さった。
「───ッ!? ───ッッ!?」
先程まで窒息状態だったキンコは、声を発することができない。だが、キンコの表情は、その痛みをハッキリと示していた。
「ふふっ……良い顔だねお兄さん、とっても素敵だよ? そして、これを左右にすぃーっと!!」
キンコの顔、その中央。何度も何度も少女の赫子が行き来し、キンコの顔面は真っ赤に染まっていく……。
「よっし、でーきた! 『ブラックジャック』! ……あれ? なんか違うような……あ、しまったあああああ! ブラックジャックは斜めの傷だったぁ!! ……真横に線を引いちゃった……やっちゃったなぁ……でも、まぁいっか! 普段ならこれから食べちゃうんだけど、お兄さんは私と同じでお花が大好きなんだよね? だから特別に見逃してあげるねっ!! いつかお兄さんが
激痛に叫ぶキンコを背に、少女は公園から去っていった。
その後、なんとか一命を取り留めたキンコは、少女の言葉を思い出していた……。
(『そう、『共食い』ってやつだね。そうするとね……『あーるしー細胞』が活性化して、強くなれるんだ』)
「強く……共……食い……おでは……今度こそ……守るんだ……」
キンコは共食いに明け暮れた。Rc細胞が異常活性し、激痛に見舞われ、少しずつ自身が消えていく感覚を感じても、思うのは常にあの日の自分。無力で、蹂躙されるだけの自分を否定するために、殺し、喰らう。
─────そして、過剰な共食いにより、キンコは自我を消失した。
キンコは花を眺めていた。心がやすらぎ、幸せな気分になる。
「キンコさん、あなたは『ジェイル』ですか?」
知らない誰かがそう問いかけ、何故か突然花を摘み取った。
(コロス……ッ!)
知らない誰かを良く見ると、
(ひまわり、の……女……ッ!! そうだ! おでは今度こそ、守るんだッ!!)
かつて向日葵の面をした少女につけられた傷が、ジクジクと痛んだような気がした。
彼の名はキンコ。心優しき喰種であり、名も知らぬ少女に人生を狂わされた哀しい男である。
だ い た い こ い つ の せ い
3話以来の向日葵マスクです。つまり、まだカオリがレザーフェイスと呼ばれる前の話です。
カオリはキンコという名前に心当たりがありません。だって名乗り合ってないもの。