2:女子高生の喰種相手に喰場争いで敗北
3:死にかけの素人喰種相手に半赫者化を使ってなお敗北
だーれだ!
13区は渋谷や原宿といった服飾店が多く、また15区の南東に位置するため、カオリの行動圏内である。
カオリが13区へ
喰種にとって身バレは即ち死を意味する。顔が割れてしまえば喰種対策局の捜査官が自宅や職場に押し寄せてしまうからだ。身バレしないように顔を隠し、露出の少ない装飾をするのは、喰種の基本的な身嗜みである。
それが赫者のニオイであると思い至ったカオリは、集団の先頭にいる『大柄なホッケーマスクをつけた男』に狙いを定め、ゆっくりと歩いていった。
「ホッケーマスクな大男……ジェイソンみたい。しかもここは13区……ふふっ、今日は金曜日じゃないけどね……」
カオリは知らなかったが、その男は実際に喰種対策局から『ジェイソン』の異名を持つ喰種であった。
半赫者の強者であるジェイソンは、単騎でお粗末な喧嘩をしかけてきた
手始めにジェイソンの部下達がカオリを迎撃せんと襲いかかるが、カオリのローブの
仲間を粗雑に扱われたジェイソンは怒り、自らも
しかし、必殺の一撃をもって放たれたジェイソンの赫子は、新たにローブの
いつの間にか蔓の先端には牙が生えていたため、ジェイソンは肉を食いちぎられた。
同じ様な事をジェイソンは数度繰り返したのち、半赫者化せねば対応できぬ程の強さがあると理解した。
赫者化および半赫者化とは、通常の赫子とは異なる『特殊な赫子』を展開する事である。
消耗は通常の赫子よりも激しく、赫者化は理性の低下や凶暴化などの欠点もあるが、その欠点を補って余りある程に強さと堅さを増す。
半赫者のジェイソンは、上半身のみしか赫者化できないが、それでも倒すには充分過ぎると思っていた。
しかし……ジェイソンに相対したカオリは半赫者を通り越した『赫者』であった。
半赫者化しかできないジェイソンを嗤うかのように、カオリは全身に特殊な赫子を纏う。
カオリが纏う赫子はみるみる大きくなり、カオリが見えなくなった。
カオリを包み込みながら肥大化した赫子は、やがて一つの化物を形どる。
姿は高さ2メートルほどで四足歩行。カエルとトカゲを足したような姿に、びっしりと生えた牙。その背にはその巨体に相応しい巨大な花が生えている。
黒い体には真紅の
真紅の花からはガス状の赫子が花粉のように立ち込めている。
もしもこの場にゲームでよく遊ぶ者がいたら、きっとこういうであろう。
─────コイツ、色こそ黒いけど『
赫者化した
部下達などまるで居ないかのように、ゆっくりとジェイソンだけを目指して進む『
半赫者は再生能力が通常の喰種以上に高い。それを知ってか、花の化物は一息にジェイソンを捕食せず、殺さぬようにじわりじわりと喰らっていった。
「……マァマァ美味シイネー。タダノぐーるヨリ不味イケドネー……」
その声は重低音が加わり、まるで響くよう。
幾度も肉を食い千切られるジェイソン、鬱陶しい羽虫を払うように蔓や根で吹き飛ばされていく部下達。
やがてジェイソンは心が折れた。敵とさえ思われてなく、単なる玩具とでもいわんばかりの振る舞いに、ジェイソンはかつて喰種対策局の捜査官から受けたトラウマがフラッシュバック、泣き叫んだ。
されど、カオリは捕食をやめることはない。ニワトリやブタなどの食用動物が泣こうが叫ぼうが命乞いをしようが、人間が食用動物に手心を加えるであろうか。
再生力の高い
腕を落とし、食べる。
足を落とし、食べる。
耳を落とし、食べる。
生えてきたら、また食べる。
付いてる汚れは血で洗い、食べる、食べる、食べる。
遠くへ弾き飛ばした
「邪魔ヲシナイ方ガ良イ。今ハでぃなーノ時間。オヤツ二用ハナイ。次ハ首ヲ落トス」
足を斬られ動けなくなった部下達が、ジェイソンを助けんとばかりに声を張り上げるが、捕食者はそれを無視し、食事を続行する。
やがてジェイソンの再生能力に限界が来たのか、ジェイソンが再生しなくなった。
「……881……874……867……」
うわごとのように数字を呟くジェイソン。カオリには何の事だか分からない。
「何ソノ数字ハ? 良ク分カラナイカナー。ダけど、マぁいいや。ワたしは満足。御馳走様でした」
不思議花は形を失い収縮する。収縮が収まると、そこには両手を合わせたカオリがいた。
普段ならトドメを差して、保存用にするところだが、せっかく再生するご馳走を、このまま食べ尽くしてしまうのは勿体ないと感じたカオリは、ジェイソンを生かす事にした。
「そういえばさ、日本だとジェイソンのイメージってなんでか知らないけどチェーンソーだよね? でもさ、チェーンソーってレザーフェイスなんだよねー」
ジェイソンは答えない。答える元気すら残っていないのだ。
「うーん……もしかして『悪魔のいけにえ』を知らないのかな? 私は映画で文字や言葉を覚えたんだけど、あなたは違うのかな? まぁいいや、ジェイソンさん、あなたのお名前は? 教えてくれたら助けてあげる」
ジェイソンは朦朧としつつも助かりたい一心で、『おおもりやくも』と口にした。
「うーん、最初ちょっと聞こえなかったけど……ヤクモさんだね! それじゃ、仲良しの印としてホッケーマスク貰うね!」
カオリはジェイソンからホッケーマスクを取り外す。そこには血や涙で汚れ、苦悶の表情を浮かべているものの、『綺麗な顔』があった。
「むー! これは良くないなぁジェイソンさん! これじゃあ5作目の人じゃん! ……うん、私が手伝ってあげるね!」
カオリは袖から
そして蔓のナイフを……。
─────ジェイソンの顔に突き刺し、顔の皮膚を剥がし始めた。
再び奏で始めたジェイソンの絶叫を背景に、カオリはジェイソンの皮膚を剥ぎ取り続ける。
「よーし! 剥がし終わったー! すぐにつけてあげるから、ちょっと待っててね!」
ジェイソンの部下達は、脚を斬られて転がされたまま、カオリの凶行を見ていた。
兄貴を助けたい。しかしあの化け物に自分ができることは何もない。怒りと悔しさで部下達の顔は歪み、目は滲む。
そんな部下達の中、カオリの一番近くで倒れていた
首だけになった部下の顔面にナイフを突き立て、乱雑に皮を剥いでいく。
「うん、できた! ちょっと雑になっちゃったけど許してね。それじゃこれをジェイソンさんにくっつけたら……レザーフェイスなジェイソンさんの完成! すごいよ最高にかっこいいよジェイソンさん! 世界一チェーンソーが似合うね! そんなかっこいいレザーフェイスさんにプレゼントです!」
首のなくなったジェイソンの部下を、カオリは赫子で微塵切りにし、ジェイソンの口の中に詰め込んだ。
「ごはん食べれば治るから、またご馳走してね! あ、やっぱり最後にもう一口摘まみ食いしていい?」
ジェイソンは全力で逃げた。仲間の肉を無理矢理食べさせられた事で、活力が僅かに戻ったためである。
しかし、まだ再生できるほど戻ってはいない。脚を斬られ、腕を斬られ、よちよちとしたフォームながらも、ジェイソンは全力で逃げた。
─────しかしその速度は、意外にも速かった。
「ぶふっ!! ゴキブリみたい! すっごく面白いから摘まみ食いはまた今度にしよっと! ……うーん、でもジェイソンにもレザーフェイスにも相応しくないな……よし! あの子の呼び名は『ヤクモちゃん』にしよっと! ヤクモちゃぁーーん! また遊ぼうねえーー!!」
カオリはジェイソンが見えなくなるまで手を振った。
「……あ、君たちももう帰って良いよ? 今回は珍しい赫者に夢中で遊べなかったけど、今度会った時はヤクモちゃんと一緒に遊ぼうね! ばいばーい!!」
脚の治療が終わっていないジェイソンの部下達にカオリは別れを告げ、15区へと満足そうに帰っていった。
部下の前で情けなく敗走したジェイソン。されど、その姿を見て見限る部下は誰も居なかった。
ボスが残酷に摘まみ食いされても、仲間の1人が目の前で『おふざけ』のためだけに殺されても、ただ見ることしかできなかった自責の念はもちろんだが、それ以上にカオリの正体が分かったからだ。
ジェイソン達が花の化物と戦ったのは13区北西部。そして、化け物は更に北西へと帰っていった。ここから北西に向かう存在など、一つしかないのだから……。
─────そこは15区。
さっきの女は……御伽噺としか思えない15区の主。
御伽噺のような噂を信じていなかった彼等は、これから15区に入り、食事をする予定を立てていた。
15区内であの化物に出会っていたら、きっと皆殺しにされていた。助かった。13区内で良かったと、彼らは心から安堵してしまった。安堵してしまった己を恥じた。
そして、ついに我慢の限界を迎えた男がいた。
「もしもここが15区だったら、多分俺達は全殺しだった……神兄貴が助かったのも、オレ達が生きてるのも、ここがあの怪物の縄張りじゃなかったからだ……だけどよ……っ!! オレは悔しいっ……! 神兄貴を支えることすらできねぇ自分が情けねぇ……っ!! なぁ兄弟!! すぐ隣町の、たった1匹の女相手にビビってるようじゃ、神兄貴を慕うオレ達の名折れだと思わねぇか!? オレはやってやるぞ! オレはアイツより強くなって、神兄貴を支えるんだ!!」
涙を流し叫ぶ仲間の一人。その熱意に、部下達の心は一つになった。
この一件で、ジェイソンと部下達はより強い結束を手に入れた。
また奪われないように、もう貶められないように、ジェイソン一門は強さを求め、より好戦的な集団へと姿を変えていった。
そして、いつも部下達の中心には、ジェイソンを神兄貴と呼び慕う小柄な男がいた。この男は誰よりも強さを求め、やがてはジェイソンと並び高レートの
脚を斬られた部下達だが、綺麗に斬られていたため、繋ぐことで再び歩けるようになり、後遺症もなかった。
そしてジェイソンは身体中を貪られたが、半赫者ゆえか高い再生能力を持っていたため、欠損部位を再生することができたが、代償もあった。
再生にかなりの力を使ってしまったため、
その後ジェイソンは数年かけ、半赫者になるまでの力こそ取り戻したが、かつてのように上半身全てを覆う程ではなかった。
「よーっし、できたぁ『レザーフェイソン』!! ヤクモちゃんとお揃ーい! 今度ヘルスケ行くときに着けて行こっと!」
13区の男達が打倒カオリに向け再起する傍ら、カオリは西荻窪の自宅でマスクを自作していた。防腐処理を施したジェイソンの皮膚をホッケーマスクに縫い付けたソレは、世にも
『ジェイソン』。本名を
そして過去、喰種捜査官に髪の色素が落ちるほど拷問されようとも、15区の怪物にプライドをへし折られようとも、太守八雲は立ち上がって高みを目指す
カオリはそんなジェイソンをジェイソンらしくないからと、『ヤクモちゃん』と呼び、見下す。
……されど、諦めずに何度でも蘇る。それはまさに『ジェイソン』ではないだろうか。
そして、14区にある酒場『ヘルスケ』にてその
また、これを機にカオリはホラー映画の殺人鬼と同じ姿をすることがマイブームとなり、レザーフェイスの衣装の他に『ハロウィン』『エルム街の悪夢』『IT』を始めとした映画に出てきた殺人鬼達の衣装を購入していった。
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人間達にとって他より平和な15区と20区。
しかし、
・15区の主に見つかってはならない。
・15区の主と戦おうとしてはいけない。
・15区の主にもしも見つかってしまったら、全力で逃げろ。足が速けりゃ生き延びる。
・互いがエサの14区、オレらがエサの15区。
そんな噂は誰かが流したデマだと断じ、15区を縄張りにしようとする者たちは一定数存在した。
しかし、15区に向かった者達は誰も帰ってこなかった。
ある時、数十人の
生き残った最後の一人は、決して強い
生き残りは酷く錯乱しており、逃げるように東京から去って行った。
───化け物が来る、骨すら残らない。と叫んで……。
命が大事な者達は、決して15区へ近寄らない。
俺以外の誰かが15区を調査してくれないだろうか……。と思いを馳せるくらいである。
そこに住まうは花村カオリ27歳。15区西荻窪の花屋。
15区の主という化物がいることを知る『ひと』は何人もいる。
花村カオリという存在を知る『ひと』は何人かいる。
されど、花村カオリこそが
弄 ば れ る 獲 物
ジェイソンさんが原作より若干強化(半赫者化範囲が増加)されていますが、主人公に捕食されて弱体化し、時間をかけて原作と同じ強さに戻ります。
なので、カネキくんが辿る運命に変わりはありません。
ジェイソンさんのトラウマ対象が1人増えたくらいです。
ちなみに、レザーフェイスって何よ? って人は、レンタルビデオ屋なりアマゾンプライムなりで「悪魔のいけにえ」を見ましょう。コミカルな動きで残酷なレザーフェイスさん可愛い。フランクリンに苛ついてはいけない。
でも、顔の皮膚を剥ぎ取る描写なら「テキサス・チェーンソー・ビギニング」の方が良いかも? こっちのレザーフェイスさんはカッコいいレザーフェイスさんです。
ちなみに、今年の5/12。つまり約二週間前に悪魔のいけにえ最新作が出ましたよ! 私も見に行きたいのですが、今上映してる映画館は遠すぎてむりぽ。近場とは言えずとも、せめて同じ県の映画館で上映されるのを待ちます……。