花屋喰種   作:みぞれアイス

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今回は捜査官編です。なので、喰種は誰一人として出てきませんっ


第37話 神代利世を探して 《Side.CCG》

 11区を根城にしていた喰種集団『アオギリの樹』との戦いから半年の月日が流れ、一等捜査官『亜門鋼太朗(あもんこうたろう)』は上等捜査官に、三等捜査官『鈴屋什造(すずやジューゾー)』は二等捜査官に昇進していた。

 

 亜門は11区の戦いにおいて、Sレートの尾赫(びかく)である『(ビン)兄弟』を倒した功績を評価され、ジューゾーもまた11区の戦いにおいて、鱗赫の半赫者である『ジェイソン』の駆逐が評価されたためである。

 

 そんな彼らは、現在20区の会議室に居た。

 

「それじゃ、報告会を始めようか」

 

 特等捜査官の篠原(しのはら)の合図により、会議は静かに始まった。

 

 

「調査中の『大喰い』だが、明確に結びつく情報はまだ無い。大喰いが残した最後の痕跡を中心に前後1ヶ月……つまり、去年の9月から11月、この時期の資料や記事を洗いざらいチェックしている。私の予想が外れていなければ、いずれ解答が出るはずだが……いかんせん資料が山積みで時間が足りない……まだ進捗は3割程度だから、もうちょっと待ってほしいね。とまぁ、大喰いについてはこんな感じだ。次は『グルメ』について法寺班のタッキーよろしく」

 

 篠原の指示により、法寺(ほうじ)准特等捜査官のパートナーである『滝澤政道(たきざわせいどう)』二等捜査官が立ち上がる。

 

「はい! 我々の担当である『美食家(グルメ)』ですが、最近では20区外での活動が確認されています。主な出没地域は7区(墨田区)、8区(江東区)、18区(荒川区)の3地域で、各支部職員と連携を取りつつ、情報収集をしています」

 

 滝澤の『7区』というワードに、篠原は手を上げる。

 

「7区……明日強制調査する『喰種レストラン』がある地域じゃないか。美食家はなんでこの地域に拘ってるのかねぇ……」

「各区に好みの捕食対象でも居たんでしょうか……?」

 

 篠原の質問に、滝澤は自分の考えを告げるが、別の人物から手が挙がった。

 

「いや、メインディッシュは別の区だな」

 

 その人物はこの会議室の紅一点にして、亜門の新しいパートナーである『真戸暁(まどあきら)』二等捜査官。かつて亜門の上司であった『真戸呉緒(くれお)』の一人娘である。

 

「アキラ、話してくれ」

 

 亜門の催促に、アキラは深く頷いた。

 

「グルメの捕食件数が激減した時期については、なんらかの事故か、あるいは同族の襲撃に遭って養生していたのでしょう。資料によればその後、ヤツによる捕食件数はピーク時に近い数値まで戻りましたが、今年の1月頃を境に再度減少。そして、減少傾向の時期は18区で行われた捕食と時期が一致する……」

「だからなんなんだよ……お得意の直感推理か?」

 

 自身が集めた情報にも関わらず、自身より深く分析をするアカデミーの同期(まどアキラ)に、滝澤は思わずムッとし、嫌みをぶつけた。

 

「フフフ、勘で良ければ聴いていただきたい、滝澤二等? グラフとマップを照らし合わせると、今までの傾向とはまるで異なっている事が分かる。18区、7区、8区、この3地域を往復し、外部での捕食は一切行われて居ない。グルメは20区に拠点を持っていると推測されているが、ヤツは広範囲を渡り歩きながら、気に入った獲物を見定める喰種(グール)だ。だが……ヤツは行動範囲を狭め、食の好みも以前より粗い。滝澤二等が言うように、これは私の勘だが、この地域での食事は単なる間に合わせで、本命は別にあると見ている。おそらく……ここだ」

 

 アキラは地図にある『6区』を指差した。

 

「狙った獲物に警戒される事を避けていると仮定すれば、この3地域はあくまでも狩り場。この3地域に隣接する6区に本命の食事があり、その近くにグルメは潜んでいると私は考えている」

 

 アキラの意見に、篠原は『ほぉ』と呟いた。

 

「なるほどね、アッキーラの意見は腑に落ちる。法寺班は6区も調べてみてくれ。それじゃ、続いて『ラビット』についての報告宜しく」

 

「はい。ウサギの仮面を付けた羽赫(うかく)の喰種ですが、こちらについては一切の情報がありません。7区周辺で『黒いウサギの仮面を付けた羽赫の喰種』が発見されていますが、同一の個体であるかは不明。7区職員に調査を依頼していますが、羽赫の喰種は赫子痕(かぐねこん)が特定しづらく、情報は依然不足しています」

 

 ラビットの報告が終わり、篠原は次の議題に移ろうとしたが、アキラの報告はこれだけではなかった。

 

「そして、ラビットの情報を集める(かたわ)ら、我々は15区の捜査を行いました。結論から言えば……『レザーフェイス』と呼ばれる個体は、人間も大喰い以上に捕食している可能性が極めて高いです」

 

 大喰いをも超える大喰い。20区担当捜査官である彼らは、その意味を良く理解している。

 

「……続けてくれ」

「はい。ヤツの特徴は『痕跡が残らないこと』と聞いているので、我々は警察に協力を依頼し、『行方不明者』の情報を収集しました。結果として、15区(杉並区)、12区(世田谷区)、13区(渋谷区)、14区(中野区)において、『一世帯まるごと行方不明者』になる事件が、他地域よりも遥かに多く発生していました」

 

「20区では起きていないのか?」

 

 滝澤は疑問を口にする。今アキラが挙げた区域は、15区とその隣接地域。だが、もう一つの隣接地域である20区が挙がらなかった。

 

「あぁ。むしろ20区は他の地域よりも行方不明者が少ないが、原因が分からない……可能性として今考えているのは、20区にはヤツを退けることができるほどの喰種が居る場合だが……かのジェイソンをも蹂躙する相手を退ける喰種……もしもそうならば、20区には我が母を殺した『隻眼の梟』がいるのかもしれんな……」

 

 アキラの母こと『真戸(かすか)』は、かつて隻眼の梟によって殺されている。

 

「アキラ……」

 

 かつての上司と同じ目をするアキラを、亜門は心配そうに見つめていた。

 

──────────

 

 1区にあるクインケラボ(正式名称『CCGラボラトリー区画』)へ、篠原とジューゾーは足を運んでいた。

 

「クインケ作りは高度なバイオテクノロジーの結晶なんだよ。生物学と機械工学の高度な知識、そして兵器として最も威力を発揮させるためのデザインセンス、オリジナルの赫子(かぐね)を凌駕するためには、全ての要素が不可欠なんだ」

 

 ジューゾー達を案内する科学者『地行甲一(ちぎょうこういつ)』は、高らかにクインケの説明をするものの……。

 

「……?」

 

 ジューゾーは全く理解できなかった。

 

「ちなみに、赫子そのものを作るのはできないんだよ? 赫子は喰種の体内から赫包(かくほう)へRc細胞が送られ続けるけど、クインケはそういうわけにも行かないからね。だから、定期的にラボでメンテナンスが必要だし、保存液を使って省エネの運用をする必要があるんだ。その点、『アラタ』や『IXA(イグザ)』は良い線行ってるよね。『アラタ』は所有者からある程度補充してくれるし、『IXA』は元からとんでもなく省エネだったんだ。この二つは高出力が出せる上に、メンテナンスがあまり必要ないんだよね。どのクインケもこれだけのクオリティにできれば良いけど、喰種の素材は千差万別にして千変万化。難しいよねぇ」

 

 地行博士の言葉に、篠原は苦笑する。篠原は『アラタ』という鎧型クインケを持っているが、使う際に()()()()()()()()()()()という恐怖の鎧だ。

 その代償がある分、出力は折り紙付きではあるものの、補食される痛みというのは、いつまでも慣れることのできないものであった。

 

「よく分かりませんが、篠原さんのクインケは凄いんですねぇー」

「……あー、鈴屋っちはアカデミー卒じゃないんだっけ?」

「ハイ、コネ社会の裏口入局してますです」

 

 ニッコリと語るジューゾーに、篠原は『自分で言っちゃいかん』と軽く突っ込みをいれた。

 

「そかそか。それじゃ、赫子について教えてあげよう。赫子はね、赫包から噴出したRc細胞が結合しあう『形成期』。結合しあった細胞が一定時間その形を保つ『定着期』。そして、一定時間後に細胞の結合が解けていく『崩壊期』の3つがあるんだよ。この中で『定着期』が赫子やクインケの基本となる状態だね。赫子はこの3つのサイクルを繰り返していて、甲赫とかはこの定着期が長いから、継続的に赫子を維持できる。甲赫のクインケに槍や剣の形が多いのはこれが理由だね。一方、羽赫なんかは定着期が短いから、消耗も激しいし、弾丸みたいな消耗品として運用する必要があるんだ。定着期の長さは上から順に甲赫、尾赫、鱗赫、羽赫だよ。これから鈴屋っちが渡すクインケは鱗赫だから、そこそこ消耗するんだ。だから、定期的にメンテナンスに来てね?」

 

「……メンテナンスが必要なんですねぇ~」

「すみません、また後で復習させときますので」

 

 ジューゾーにとって、地行博士の説明は難しすぎた。そんなジューゾーに、篠原はもっと勉強をさせようと誓った。

 

「まぁ……ちゃんとメンテナンスに来てくれさえすれば良いよ? 難しい話は僕ら科学者の役割だしね。それじゃ、いよいよ鈴屋っちのクインケに到着です。ほいっと」

 

 地行博士が布を取り去ると、そこには巨大な鎌型クインケがあった。

 

「どう? 凄いでしょ? 瞬間Rc値5000クラスのバケモノだよ。二等捜査官がこれだけのクインケを持てるなんてそうそう無いことだよ? 捕獲した本人だからってのが加味されたんだろうけど、いきなり凄い専用クインケを持つのは、有馬特等以来だねぇ……」

 

 10年以上前に、ここで『槍に変形できる葉のような盾型クインケ』を受け取った若い捜査官の事を、地行博士は思い出していた

 

「この子の名前は『13'sジェイソン(ジューゾーズ・ジェイソン)』にしますです。宜しくです~僕のジェイソンっ。こんな良いクインケの材料を譲ってくれた神代(かみしろ)上等には、ぜひお礼を言いたいですね~。でも、神代なんて捜査官は居ないです? それじゃあ、あの人は誰だったんでしょうねぇ……?」

 

 ジューゾーはできあがったクインケに頬ずりをしつつ、()()を譲ってくれた捜査官に思いを馳せた。

 

「神代リゼ……か。真戸のクインケを持った自称上等捜査官の女……何者なんだろうな……」

 

 そう呟く篠原だが、篠原のデスクに山積みとなった『大喰いに関する可能性のある資料』の中に、その答えはある。

 

 それを知るのは、すぐ後の事であった。

 

 

──────────

 

 亜門達は7区にある喰種レストラン……正確に言えば、その跡地に来ていたが……。

 

「キヒヒヒ! ジェイル……ジェイルぅ! 私の()()()()()()()()()で刻みたい!! 刻みたいなぁっ!!」

「ちょっ……キジマさぁん!? チェーンソー振り回さないで下さいよぉっ! 危ないじゃないですか!」

 

 そこには別地区担当の『キジマ式』准特等捜査官が、チェーンソー型のクインケを振り回し、キジマのパートナーである『旧多二福(ふるたニムラ)』二等捜査官がそれを諫めている光景が待ち構えていた。

 

「敗北主義の喰種達を、街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらないッ! 泣き叫ぶクズ達が、私の振り下ろした手の平と共に、金切り声を上げるこのロッテンフォロウにバタバタと薙ぎ倒されるのも最高だッ!!」

「変なこと言ってないで止めましょうよぉ!! 誰かに当たったらどうするんですかぁ! ってうわ危なッ!?」

 

 端から見ればコントのような光景に、亜門達は唖然としつつも、7区の担当捜査官に話しかける。

 

富良(ふら)上等……彼らは一体何を……?」

 

 亜門は、7区を担当している富良上等捜査官に尋ねるが、富良は首を横に振った。

 

「なんでもキジマ准特等が追ってる喰種の赫子痕(かぐねこん)があったみたいで、ああやってハシャいでるみたいだわ……」

 

 赫子痕とは、赫子による損壊痕のようなものであり、これらは喰種によって異なる。ゆえに赫子痕があれば、喰種を特定する事ができる。

 

「……正直邪魔なんだが、上等捜査官の俺が准特等相手に文句言うわけにもなぁ……」

 

 准特等捜査官とは、上等捜査官の一つ上の階級である。富良にとって階級も年齢も実績も上のキジマへ文句を言うのは、なかなかに難しいことであった。

 

「まぁ、あの人らはほっといて……お前等にも説明するぞ? 俺達突入チームは、久々のでけぇヤマだから気合い入れてたんだが、突入したらこのザマよ」

 

 喰種レストランには、ところどころ血痕があり、内装に激しい損壊があるものの、死体や()()などは何一つ無かった。

 

「喰種の片付けすらねぇ。分かんのは、ここで何かデケェ戦闘があったのと、一部の血痕を残して喰種共が影も残らず消えてるって事くらいだな……」

 

「……今現在分かっている事は?」

「壊れた内装にはほとんど赫子痕が無ぇ。だが、一部の内装には赫子痕があった。そこから分かった喰種は全部で4体。『ランサー』『ジェイル』『グルメ』それと『大喰い』だ」

 

「SSレート1体にSレート2体……それと、今し方キジマ准特等が叫んでいた喰種の名前ですか……」

 

 亜門の呟きに、富良は軽く頷いた。

 

「まず赫子痕があった場所だが、『ランサー』と『ジェイル』の赫子痕はこの廊下だな。ホールにこいつらの痕跡は一切無い。痕跡の付き方的に、こいつらはこの廊下で交戦したと考えられる。ちなみにこの『ジェイル』って喰種だが、俺は詳しく知らねえ。キジマ准特等はジェイルって名前があるってことしか教えてくれねぇんだ……他の捜査官に教えたくないくらいコイツに執着してるみたいだから、お前が聞いても無駄だぞ?」

 

 富良は『もっと協力しあえば良いのにな。野球だってソロプレー厳禁なのによ……』と呟いていた。

 

「では、『大喰い』と『美食家(グルメ)』については?」

「あぁ、お前等はそっち追ってたんだよな……一応見せるが、あまり期待はできねぇぞ?」

 

 富良は亜門達を連れ、レストランのホールへと入っていく。

 

「まずは『グルメ』だな、赫子痕があったのはここだ」

 

 富良が指差した場所は、レストラン最下層にあるステージ……にある乾いた血溜まりであった。

 

「この血溜まりらしき場所に、グルメのモノと思われる赫子痕があった。何があったか分かんねぇが、俺はグルメがここで公開処刑でもされたんじゃねぇかと思ってる……そして大食いだが……これも似たような感じだ。客席にも幾つか血溜まりがあるんだが、そっちはグルメじゃなくて『大喰い』の赫子痕があった。つまりは……だ。大喰いとグルメは、ここで致死量に近い傷を負ったって事になる。んで、下手人はわからねえ」

 

 あまりにも不可解な事件に、亜門は首を傾げたが、アキラが小声で何やら呟いているのが聞こえてきた。

 

「……犯人は『レザーフェイス』? ……そして、『ジェイル』もしくは『ランサー』が仲間にいる……いや、両方仲間じゃない可能性もあるのか……?」

「アキラ、何か思い当たるなら話してくれ? 纏まってなくても良い。お前の勘を聞かせてくれ」

 

 亜門の問いかけに、アキラは考えつつ、ゆっくりと意見を述べる。

 

「……あくまでも勘だが、少なすぎる赫子痕に、血痕を残し消えた死体……これは資料で読んだ『15区血溜まりビル』の一件と酷似している……ならレザーフェイスがこの場に居た可能性がある……そう考えると、恐らくグルメがこのレストランの主催者で、大喰いは客。そこにレザーフェイスが強襲をかけた……ランサーとジェイルだが……どちらかはホールにいた喰種を逃がさないための仲間じゃないかと考えたが、レザーフェイスが仲間を作るとは考えづらい。むしろランサーとジェイルはレザーフェイスから逃げようとして、廊下で追い付かれ、やむなく交戦したという可能性の方がありそうだ……これが今の所思いついたことだが、そもそも本当にレザーフェイスが居たかどうかすら分からないぞ?」

 

 羽赫のように赫子痕が特定しづらいのではなく、無い。居るかどうかすらわからない相手についての考察……アキラは会議の時とはうって変わり、自信のない表情であった。

 

 だが、そんなアキラに富良は『いい考えだ』と告げた。

 

「真戸二等の考えに俺も同意だな。これがアオギリみたいな喰種組織の犯行なら、もっと赫子痕が多いはずだ。まぁ、ランサーならこの状況を単独で作ることもできるかもしれねぇが、それなら廊下みたいに抉れた赫子痕が残ってないのは不自然だからな……だが、もしレザーフェイスが本当にいたなら、グルメ・大喰い、ランサー、それとジェイルとかいう喰種も死んだ事になるんだが……キジマ准特等が言うには、ランサーとジェイルはまだ生きてるらしいんだよなぁ……ハァ……調査が難航しそうだ……家族サービスする時間が減っちまうなぁ……」

 

 富良は愛する家族の姿を思い浮かべ、溜め息を吐いた。

 

(レザーフェイス……あの時出会った『神代リゼ』と名乗る女なのか……? せめてフエグチの赫子痕さえ見つかれば……!)

 

 亜門達は、カオリの持つ『ドクター』『ナース』ことフエグチの赫子痕を探すが、それらは見つかることは無かった。

 

 

──────────

 

 別の日、CCG20区支部の執務室に篠原が入ってきた。

 

「すまん、特に亜門達は聞いてくれ。『大喰い』に繋がる情報を調べていたら、とんでもないモノを見つけちまった」

 

 篠原は抱えていた資料を、テーブルに広げた。

 

「まず最初に、大喰いが痕跡を絶った去年の10月頃に起こった事件や事故を虱潰しに調べていたんだが……この鉄骨落下事件だ」

 

 篠原が見せた記事は、亜門達も記憶に残っている事件だった。

 

「確か……重傷を負った男性に、死亡した女性の臓器を無断で移植した事で、医師がバッシングにあった件ですね」

 

 亜門の答えに、篠原は頷く。

 

「そう……そして話はここからだ。この執刀した『嘉納(かのう)』という医者なんだが……元CCGの解剖医だ。そして、この件について話を聞きに行ったら……行方をくらましていた。さらに、この手術を受けた青年は、上井大学に通う大学生の『金木研(かねきけん)』と言うんだが……彼も行方不明だ。上井大学に問い合わせたところ、半年ほど前から大学へ来ていない事が分かった……手術を施したヤツも施されたヤツも行方不明。これだけでもニオう案件だが……一番の問題は死んだ女だった。これを見てくれ」

 

 篠原は死体安置所で撮影されたであろう女の写真と、そこに記載されている名前を見せる。

 

 そこに書いてある名前に、亜門とアキラは目を見開いた。

 

「……神代リゼっ!?」

 

 紫の髪をした女の死体には、『神代利世』と書かれていた。

 

「あぁ、11区で真戸のクインケを持ってた女の名前だ。ジューゾーの話だと、ジェイソンを瀕死に追いやった張本人でもあるらしい……だが、この女はもう死んでる……と思ったんだが、生きてるかもしれん」

 

 篠原の言葉に、周りは首を傾げた。

 

「この神代リゼという女だが、調査の結果……どこにも埋葬されたデータがなかった。その上、戸籍は滅茶苦茶で、明らかに偽造されたモノだった。つまり……喰種の可能性がある。人間にとっては致命傷だったとしても、喰種なら生きているからな……そうなるとクサいのは嘉納という男だ。神代リゼが喰種だった場合、こいつが分からないハズがないからな。それで、こいつについて調べた資料がこれだ」

 

 篠原はいくつかの紙を取り出し、机に並べる。それは経歴、不動産、資産状況といった、嘉納のあらゆる情報だ。

 

 そして、亜門が手に取った不動産の資料の一つに、不可解な物件があった。

 

「なんだこれは……この建物、地下室まであるぞ……」

 

「それは他人名義で購入した物件だそうだ。他の物件と比べ、明らかに異質……嘉納が隠れ潜んでいる……もしくはこの件に大きく関わる何かを隠している可能性があると睨んでいる。神代リゼの正体、金木研という大学生の行方、分からないことだらけだが、ここを調べれば何か見つかる糸口が掴めるハズだ。近いうちにここの強制捜査を行うつもりだから、各自準備をしておいてくれ。また、神代リゼが人間ではなく喰種だった場合、ここに神代リゼがいる可能性もある。こいつが大喰いかレザーフェイスか、はたまた自分を喰種捜査官だと思いこんでいる異常者かは分からないが、少なくともジェイソンを無傷で瀕死に追い込むだけの実力はあると見ていいだろう。装備も万全にしておいてくれ」

 

 篠原の宣言に、全員が強く頷いた。

 




 ス ル ー さ れ る カ ネ キ 
そりゃ死体の名前が『神代リゼ』だもの。真戸呉緒殺害事件の重要参考個体だもの。

ただし、カネキくんの調査はあくまでも後回しにされるだけです。


Q.ロッテンフォロウって何?金切り声を上げるのはシュマイザーじゃないの?
A.ロッテンフォロウとは、キジマさんの持つチェーンソー型クインケです。キジマさんは少佐殿と声が一緒だし体型も似てるけど、サイボーグではありません。


☆原作と違う点

・地行のパーフェクト赫子教室:IXAというクインケに関する話題を追加。ジューゾーに原作よりもちょっとだけ噛み砕いて教えてあげる。

・レストラン跡に現れるキジマ:本作はJAIL編を含みつつストーリーを進行させているため、キジマさんが少し情報を分けてくれます。

・旧多:原作では一等捜査官、でもそれは2年後。この時期ならまだ二等くらい?という解釈です。

・富良:原作だと死体の片付けを頑張る。本作では死体なんて残ってないです。その分現場検証の手間が減り、赫子痕を見つける。

・亜門班:亜門達はラビットが捜査官殺しをする危険な個体であると認識はしているものの、かつてジェイソンをも退けた凄腕クインケ使いである真戸呉緒を倒せるほどの喰種だとは思っていない。むしろラビットよりもレザーフェイスに殺された可能性が高いと考えているため、ラビットの調査よりも15区捜査を重視。でもラビット調査は業務指示なのでちゃんとやります。

・篠原班:原作ではざっくり言うなれば以下の流れです。
『鉄骨落下事件→行方不明の嘉納と金木→怪しい→二人を調査→もっと怪しい!』
しかし、本作では以下のような流れです。
『鉄骨落下事件→死んだ女の名前……神代リゼェ!?→リゼを調査→こいつ喰種じゃね?→喰種だと知ってるはずの元CCG解剖医は怪しすぎる』
金木を経由せず、一気に嘉納へ。永近くんの出番は犠牲になったのだ……。


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