花屋喰種   作:みぞれアイス

38 / 117
ヾ(*´∀`*)ノ大変長らくおまたせしましたッ!
もはや忘れられていそうな花屋要素の少ない花屋喰種、久しぶりに更新再開なのです!


第38話 カオリの弱点

 梅雨が明け、夏の蒸し暑い風が吹く夜、カオリ達は『嘉納』という医者が所有する個人研究所に来ていた。

 

「監視カメラですわ、神代(かみしろ)上等」

 CCG特殊作戦服に身を包んだロウが、監視カメラを紅い長槍で破壊する。

 

「こっちもあったよー。桜野(さくらの)一等」

 灰色のスーツに身を包んだ神代上等捜査官ことカオリも、大盾型クインケ『ナース』を槍状に変え、監視カメラを破壊した。

 

「監視カメラはあっても、人は誰もいない……ですね……」

 CCG特殊作戦服に身を包み、蛇腹剣型クインケ『ドクター』を持ったリオは、誰も居ない嘉納の屋敷を不思議そうに見回している。

 

「ふっふっふ、夢街(ゆめまち)二等は気付かない?」

 

 夢街二等捜査官ことリオは周囲を見回すものの、特に怪しい場所は見つからなかった。

 

「見ただけだと分かりづらいよねー。では答えを教えましょう! ここの壁、表面だけは普通の壁だけど、()()()()()と同じニオイがするんだよー。桜野一等、試しにここの壁壊してみて?」

 

 桜野一等捜査官ことロウは、紅い槍で壁を切り裂いていく。すると、もぞもぞと蠢動しながら再生しようとする肉の壁が現れる。

 

「んー……? ゴミ捨て場の壁より()()()()()のかなー? これなら素手でも壊せたねー……まぁいいや、進もっか!」

 

 カオリ達は壁の中を進んでいくが……。

 

「うーん、どっちの方角に行けば良いのか分かんないなー……よっし、面倒だから全方位掘削しよーっと」

 

 カオリはズボンの裾から無数の尾赫を展開する。植物の根のような赫子の先端には、牙がびっしりと生えており、次々に壁を貪り喰らっていく。

 

 壁を貪っていくと、その向こうに空洞を発見した。

 

「隠し通路みっけ、斜め下方向だねー」

 

 

 カオリ達は斜め下へと進んでいき。隠し通路に降り立った。

 

 

「神代上等、『嘉納のニオイ』はどちらからしますの?」

 

 ロウの問いかけに、カオリは首を横に振る。

 

「嘉納さんのニオイが分かれば楽なんだけど、私はその人のニオイ知らないからなぁ……人間のニオイはたくさんするよ、多分隻眼にする前の材料かなー? ……うーん、分かんないから喰種のニオイがする方に行ってみよっか?」

 

 カオリ達はニオイのする方向へと進んでいくと、ホールのような場所へと着いたが……。

 

「あちゃー……嘉納さんはアオギリのメンバーだったかー……捜査官のフリとかしてる場合じゃないね。ちょっと本気で戦わなきゃだめかも……」

 

 ホールの更に向こうから歩いてくる人物達を見たカオリは、がっくりと肩を落とす。その中の一部に、リオの知っている顔があった。

 

「あれは……ナキさんにガギとグケ……以前僕が倒したアオギリのメンバーですね……他の3人は一体……?」

 

 向こうから歩いて来るのは6人の喰種。彼らはアオギリの樹の構成員達である。リオはその中の3人を知っていたが、残りのメンバーは知らなかった。

 

「半裸の男はSSレートの格闘家『(シャチ)』ですわね。基本的な攻撃手段は近接格闘なので、神代上等なら無傷で倒せる相手ですわ。コクリアにいたはずなのですが、脱獄していたようですわね」

 

 槍を使った武術を会得しているロウは、素手という違いこそあれど、武術を会得した喰種である鯱を知っている。鯱の攻撃方法が、カオリに対して全くの無力である事も……。

 

「白スーツの三人組は夢街二等が倒せる程度の相手で、鯱はアタクシと同等かそれ以下……にもかかわらず神代上等が本気を出す必要があるということは……残りの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、そんなに厄介な喰種なんですの?」

 

「うん、かなり厄介かなー。情報によれば、あの二人はアオギリの最高戦力らしいねー……逆を言えば、あの二人さえ居なければ、以前戦った『口だけ仮面の人』を除いて雑魚しか居ないはずだよ? あー、でもその『シャチ』って人みたいに収容所(コクリア)から補充してる人がいたら分かんないけど……」

 

 口だけ仮面の人とは、かつてカオリが11区で戦った『ノロ』という喰種である。

 

「うーん……まぁ『口だけ仮面の人』がここに居るかは分かんないし、居たとしても桜野一等なら単独で何とかできると思う。だから……桜野一等は夢街二等から『ドクター』を受け取って、私が合図したらそのまま走り抜けてね。アオギリの相手は私達がするから、嘉納さん探しは桜野一等に任せるよー」

 

「わかりました。『美食の提供者(カノウ)』をアオギリから奪ってみせますわ」

 

 カオリ達は嘉納をアオギリのメンバーと断定したが、嘉納は()()アオギリのメンバーではない。アオギリもまたカオリ達と同様、今まさに嘉納を勧誘しに来たのである。

 

「夢街二等は白髪さんを宜しく。残りは全部私が引き受けるから、なるべく白髪さんを私から引き離してね。私が白髪さんを相手にすると()()()()()()()()()()()()()()()……」

「……えっ!?」

「神代上等が負ける……?」

 

 カオリが負けるかもしれない相手。リオやロウにとって、その様な相手が居ることが信じられなかった。

 

「む……無理ですよ!? ねぇさ……神代上等が勝てない相手を僕がするんですか!?」

「大丈夫。夢街二等ならなんとかなるよー! だって白髪さんは()()()()()()()で、強さ自体は『包帯さん』の方が上だから」

 

「相性……? まさかあの男の赫子は……」

 カオリの言葉に、ロウは思い当たる節があった。

 

「そう。白髪さんは『タタラ』って名前で『()()()()を持つ喰種』なんだよー……」

 

 

 カオリの赫子は異常な程に高い防御力を持つ。油断や慢心無く赫子を纏っている時、ロウですら貫けない程に堅く、並の喰種では傷一つ付かない。

 

「……炎……ですか?」

「そういえば……夢街二等には言ってなかったねー。私の赫子ってさ……」

 

 

 しかし、無敵ともいえるその防御には、致命的な弱点がある。

 

 

「急激な温度変化を伴う攻撃……つまり、氷や炎にとっても弱いんだよね……」

 

 

 カオリやノロのような『捕食する赫子』。あんていくで働く四方のような『電撃を放つ赫子』。赫子は喰種によって様々な特徴があり、その中には炎や冷気を放つ喰種もいる。

 

「『アオギリの最高幹部に炎の赫子を持つ喰種がいる』って情報があったから、私は仲間が要るって考えた。でも、白髪さんへぶつけるにはただの雑魚じゃ話にならない。桜野一等は独立してて連絡先も無かったから、いつも使える戦力として数えることはできなかった。そんなとき、()()()()()()()()()()()()()()()が15区に来た……そう、夢街二等が味わった、地獄のような共食いも、天国のような調整も、今日この時のため……さぁ、始めようか。準備は良い? ここから私と夢街二等は『レザーフェイス』と『フレディ』に変更するよー! フレディは捜査官の服を脱いで、ドクターを桜野一等へ」

 

 

 アオギリメンバーがこちらへ向かってくる中、ロウはクインケを受け取り、リオとカオリは着替えを始めた。それは着ているCCGの衣装を脱ぐ、ほんの僅かな時間だけなのだが……。

 

 

─────3人とも、彼らから目を逸らしてしまった。

 

 

「姉様! フレディ!!」

 

 真っ先に気付いたのは、着替える必要の無かったロウ。ロウの叫びと共に着替え終わったカオリ達だが、ソレはあまりにも遅く……。

 

「キャハハハハハ!!」

 

 

─────巨大な四足歩行のモンスターが、カオリ達の眼前に迫っていた。

 

「このっ!!」

 

 ロウは咄嗟に赫子の槍を振るうが、モンスターはふわりと浮かび上がり、槍を躱す。

 

「落ちろ『()()()()』ッ!!」

 

 浮かび上がったモンスターへ、カオリは無数の赫子を放つ。幾百のソレは、まさに迫り来る死神の群れ。目で追うことすら難しい刃は、面制圧の如くモンスターへ迫る。

 

「ケヒャヒャヒャァッ!!」

 

 しかし、モンスターは縦横無尽に、かつ恐ろしい速度で宙を駆けた。

 

「アバヨォ!!」

 

 ロウとカオリの攻撃を躱すというある種の偉業を成し遂げたモンスターは、そのままカオリ達とすれ違い、カオリ達が来た方へと消えていった。

 

「うわぁぁぁああああ!!」

 

─────その前足にリオを掴んで……。

 

 

「姉様、フレディが!!」

「……作戦は続けるよー! 桜野一等は嘉納さん探しへ!!」

「白髪男の相手はどうなさるので!?」

 

 先程のモンスターは、本来はカオリが相手をするハズだった『包帯娘』が赫者となった姿である。包帯娘にリオが連れて行かれた以上、タタラの相手をする者がいない。

 

「まぁ、なんとかするよー」

「ですが……」

「うっさいッ! 早く行け!!」

「っ……御武運を!!」

 

 ロウは、カオリの豹変とも言える怒鳴り声に一瞬怯むも、即座に持ち直し、リオが消えた方向とは逆……つまりアオギリメンバーのいる方に走り出した。

 

「ッ! させぬッ!!」

 

 だが、それは残るアオギリメンバーがいる方向。ロウの進行を止めるべく、鯱が立ちふさがる。

 

「邪魔ですわ!」

(フン)ッ!!」

 

 ロウの槍と鯱の尾赫。音すらも置き去りにした両者の攻撃は、轟音と共にぶつかり合う。

 

「ブースト感謝ですわ。ごきげんよう!!」

 だが、ロウはその衝撃を活かし、通路の向こうへと吹き飛んでいった。

 

()ゥッ……! 行かせんッ!!」

「待て鯱」

 

 走り去るロウを、鯱は追いかけようとするが、それをタタラが止める。

 

「……何故止める」

「行かせていい。ランサーを相手にしながら、『アレ』と戦うわけにはいかない」

 

 

 タタラが指差した先に居るカオリは、全身が甲赫と尾赫で覆われ、更にその上から『特殊な赫子を纏った尾赫』が包み込んでいた。

 

 頭部は大きな白い花、全身は蔓とも根とも呼べるような黒いモノで構成され、足のあった場所には無数の根が生え、密集した根が足の代わりになっている。

 

 そこには尾赫の赫者が咲いていた。

 

 手のような部分に『大盾(ナース)』を構えて……。

 

 

「なぁ……あれってよォ……」

 

 カオリの姿に、ナキの声が震える。

 

 それは恐怖ではなく……怒り。

 

「そうだ。あの女がヤモリの顔を剥がし、そして殺した『レザーフェイス』だ」

「……アイツが……アニキの顔を剥がして……ウドを遊びみてェに殺して……アニキにウドの顔を貼り付けて……そして殺した……ッ!! ああああああああの女がァッ!! 殺スッ!! アニキとウドにかわって、ドチャグソにするッ!!」

 

 かつての仲間を思い浮かべたナキは、とめどなく涙を流しつつも右腕に甲赫を纏わせていく。

 そのままカオリへ向かって走り出そうとするが、タタラがナキの腕を掴んで引き止めた。

 

「タタラァ! 止めんな!!」

「突っ走っても死ぬだけだ。お前はヤモリより強いのか?」

「ふざけんな!! オレが神アニキより強いわけねぇだろうがッ!!」

「……なら俺の指示に従え。俺は今から赫者になる。お前らを気遣う暇は無い。俺の攻撃に巻き込まれないように戦え」

 

 タタラの赫者。その危険性を理解しているナキは、渋々従うことにした。

 

「トドメはオレだかんな!!」

「……あぁ」

 

 タタラはコートを脱ぎながら、全身に『特殊な赫子』を纏っていく。

 

「ガ……めガ……メが……」

 

 肩から石柱のような腕が新たに生え、(クチバシ)のように変形した顔からは炎が噴き出す。

 

「ぎゅ……ぎゅる……ギュルギュル……」

 

 尾赫の喰種であることを象徴するかの様に、燃え盛る巨大な尾は、熱で白く輝く。

 

「ころ……こロす……コロス……」

 

 それはいかほどの熱量か……床材を溶かしながら佇むその姿は、さながら業火の怪物であった。

 

「準備完了。速攻で終わらせるよー!!」

 

 だが、相対する存在もまた怪物である。花の怪物から噴き出すは幾つもの根、葉、蔓。部屋を埋め尽くす物量が、銃弾の如き速度で押し寄せる。

 

 それは確定された死。どれだけ素早い喰種であろうとも、室内の空間全てへの攻撃を防ぐ術は無い。

 

 

─────ただし、それはこの場にタタラではなく、包帯娘がいた場合の話である。

 

 

「ボワオォォォオオオ!!!」

 

 タタラから噴き出すのは高温の炎。紅を通り越し、白く輝く炎の赫子が、カオリの赫子とぶつかり合い……。

 

─────カオリの赫子が、水蒸気のように蒸発した。

 

「やばっ……思った以上に温度が高い!?」

 

 タタラの炎は4000℃にも及ぶ程の熱量を持っている。放出する過程で温度は急速に下がるものの、それは紛れもなく、万物を焼き払う。

 

()ゥゥ……ッ!!」

「ギャアアアア!! あっちぃぃ!! 食らってねぇのにあちぃぃぃ!!」

「ガギギゴォァアアア!!」

「ゴバァァアアアッッ!!」

 

 ナキ達が痛みに悶え苦しむ。直接炎に触れずとも、その炎により熱せられた空気ですら喰種の表皮をも容易く蝕むのだ……!

 

「下がれナキ! 焼け死ぬぞ!!」

 

 鯱達は(たま)らず、タタラの後方に位置する通路へと逃げ出した。

 だが、標的であるカオリは逃げることができない。

 

「まずいまずいまずいよー!!」

 

 カオリは焦ったように、次々と赫子を繰り出す。

 だが、それは攻撃ではなく防御に。

 防火扉のごとく、巨大な赫子が次々に(そび)えるが……。

 

「……くっ……!!」

 

 それは確かに炎の侵攻を緩めたものの、炎に弱いその赫子は、少しずつ……しかし確実に防御を突き破っていく……。

 

 

 ナキはカオリにトドメを刺すことを望んでいたが、カオリへトドメを刺したいのはタタラも同じであった。

 アオギリの樹を表立って運営するタタラにとって、カオリは15区への進出を阻止する厄介者のみならず、12区や13区に派遣した構成員を捕食し、タタラが手塩にかけた資金源を強奪する存在。

 

 そして、とある計画最大の邪魔者(イレギュラー)

 

(……主要メンバーのヤモリと()()()()()、アヤトはレザーフェイスに怯えて使い物にならない。ヤモリより強いのは、俺とエトとノロ……そして鯱くらいだ……レザーフェイスの仲間はランサー、そして()()()()()()()()()()()……どちらもアオギリの幹部に迎え入れたい程の強者……混戦ならば勝ち目は薄い。ゆえに……レザーフェイスただ独りの今、確実に俺が殺す!)

 

 そう、タタラはこの炎の一撃に全てを賭けていた。

 

 出力限界全力の炎。そんな炎だからこそ……。

 

 

「……あっ」

 

 カオリの赫子……その全てを、タタラの炎が包み込んだ。

 




 く さ タ イ プ 
炎や氷ほどじゃないけど、毒(Rc抑制剤)、飛行(羽赫特有の超高速移動)もちょっと苦手。

■原作と違う点
カオリチーム参戦に伴い、アオギリはタタラさん増員。

■カオリ達の捜査官ネーム
カオリ:神代利世(かみしろりぜ)
 →死者の名前を勝手に使っているだけ
ロウ:桜野祐子(さくらのユーコ)
 →桜野くりむ+相生祐子。中の人つながり。
リオ:夢街凛(ゆめまちリン)
 →エルム『街』の悪『夢』+『凛』央
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。