1. 数年前、カオリはジェイソン一門と戦い、ジェイソンを殺さない程度に食べた。
2. ジェイソンの顔の皮膚を剥ぎ取り、マスクを作った。
3. カオリに「レザーフェイス」の異名がついた。
4. カオリは仮装セット『悪魔のいけにえ』『ハロウィン』『IT』『エルム街の悪夢』を手に入れた。
表の商談と裏の雑談が一段落し、カオリは店長が直々に淹れたコーヒーを味わっていた。
「んー、芳村さんのコーヒーは絶品ですねー!
「店長ー! 笛口さん来ましたー!」
ドアの向こうからトーカが声をかける。どうやら来客のようだ。
「あら? 私は帰った方が良いですかー?」
「笛口さん一家とカオリちゃんは顔合わせしてなかったよね? じゃあ顔合わせしておこう。カオリちゃんに食べられちゃ堪らないからね」
「もー、20区のひとたちは食べませんって。芳村さんと私とのお約束じゃないですかー。芳村さんが優しい人なのは知ってますけど、10年前に特等捜査員達を瞬殺して、2区の喰種対策局支部を壊滅させて、23区の『
「なら良いんだけど、私もカオリちゃんとは戦いたくないから、一応ね」
芳村は『
それは芳村が2区で行った戦いの一度のみ。戦いから少し離れた場所にて、カオリはその梟のニオイを覚えた。そのため、カオリは芳村が梟だと認識している。
だが、ここでカオリは勘違いをしている。10年前に世間を騒がした『梟』は1人ではない。芳村は死者を極力出さない『不殺の梟』である。
世間を騒がせ、捜査官を殺し、施設を破壊し暴れまわっていたのは芳村とは別の『隻眼の梟』である。
しかし、芳村や古参のあんていく従業員にとって、カオリが芳村の事を『隻眼の梟』だと誤解しているのは都合が良いため、誰も訂正せず、今に至っている。
「さぁ、どうぞ。いらっしゃい、リョーコさん、ヒナミちゃん」
芳村が扉を開けると、成人女性と幼い少女が入ってきた。
「店長さん、度々すみません。ところで……あの、そちらの方は?」
成人女性はカオリの方を見て、芳村に尋ねる。
「初めましてー。私は
「『
「え? ……あの、えっと……」
「もうヒナミったら、
リョーコはカオリのことを、自身同様に弱い喰種だと誤解したが、ヒナミは生まれつき極めて鼻が効く喰種であった。そのため、カオリが弱い喰種ではない事を
「うぅ……絶対お母さんの勘違いだよ……あの……こんにちは、ヒナミです」
ヒナミはリョーコの背に隠れながら、おずおずと挨拶をする。
その時、カオリは笛口親子から漂う
「笛口リョーコさんにヒナミさんですね。こちらこそよろしくお願いしまーす。ところでー……赫者って感じじゃないですし……お二人ってどちらか『赫子二種持ち』だったりします?」
リョーコは心当たりが無いのか、首を傾げている。
「私は違いますけど……? 甲赫しか出せませんし……」
「おおー、ということはヒナミさんが二種持ちですかー? 私も二種持ちなので、ヒナミさんとはお揃いですねー。いっぱい『
ヒナミが赫者になったらどんな喰種になるのだろうか。などとあれこれ妄想しながら、カオリはフラワーショップ西荻窪への帰路についた。
─────
仕事が休みの日、カオリは映画を見に行く事が多い。4区で上映している映画のスケジュールをインターネットで調べたところ、面白そうな映画を見つけた。
どうやらスプラッター系ホラー映画のようなので、着ていく服もそれらしくすることにした。
普段着の上に濃紺のツナギを着れば、ハロウィンという映画に出てくる殺人鬼『ブギーマン』のできあがり。本当はハロウィンマスクを着けて完成なのだが、不審者丸出しのマスクで電車に乗るわけにも行かないので、映画館に着くまでは我慢することにした。
なお、マスクをしていなくとも男物のツナギを着た成人女性は、充分に変な人である。
「そうだ、せっかくだし『お面屋さん』にも寄っていこうかな?」
カオリは映画を見る前に、4区にある『お面屋さん』へ行くことにした。
「ハロウィンマスクを被って……と。こんにちはー」
新宿駅から少し歩き、馴染みのお面屋『HySy ArtMask Studio』の前に到着する。扉には『CLOSE』と札がしてあるが、気にせず中へ入り声をかける。
カオリは英語に弱い。パソコンを買ってからアルファベットこそ読めるようになったが、英単語となると全くわからない。カオリとって『CLOSE』は『Cぉせ』としか読めないのだ。無論店の名前も全く覚えられないので、カオリは『お面屋』と呼んでいる。
「おや? おかしいな、閉店にしてなかったかな? ……あー、アナタか。アナタならまぁいいよ……追い返そうにもボクじゃ止められないし。いらっしゃい、今接客中だから好きに見てて」
ピアスと刺青をし、色っぽく上着をはだけた奇抜な男が出迎えた。この店唯一の店員である『ウタ』である。
確かにウタのファッションは奇抜だが、今のカオリはツナギにハロウィンマスクをつけた男装ブギーマンであるため、奇抜差はこちらの方が上かもしれない。
どうやらウタに接客されている人物は、カオリの良く知る人物『金木研』と『霧嶋トーカ』であったようだ。
「ウタさん、この変な奴は何? 強盗?」
怪しすぎる乱入者を前に、トーカは戦う構えに入るが、ウタがトーカを制止する。
「大丈夫、この人はキミらに何もしないよ。それに、こっちから突っかからない方が良いよ? 死ぬだけだから……それに多分、この人はキミらの事知ってるよ」
「まだ『お面』の無い金木さん用でしょ? 霧嶋さんは付き添いってところだよねー?」
マスクによってカオリの声が変わっている上に、普段と服装が違うため、カネキ達はブギーマンの正体を判断することができなかった。
「……チッ、マスク越しじゃ誰かわかんねぇ」
「まぁ、この人の事は気にしなくていいんじゃないかな……そうだ、彼が20区は平和には思えないって言ってるんだけど、アナタからも何か教えてあげてよ」
ウタはカネキを指差しながら、カオリに20区の安全性を話すように依頼する。どうやらカネキは20区が大人しい地区であることに疑問を抱いているようだ。
「んー? 20区はとっても平和だよ? 金木さんも知っての通り、あなたのとこの店長さんが居るからねー。あ、でも20区の南にある15区はもっと平和だよ? 私は15区に住んでるけど、とっても平和で快適だよー!」
「……
15区、喰種による捕食被害がここ数年で激減した地域である。
「ねぇ……ウタさん。そのひと『15区』って言った……? あそこは
トーカはカオリの正体に心当たりがあるのか、その名を口にする。
「まさか……この人が『レザーフェイス』!?」
「はーい、15区のレザーフェイスさんですよー。今日はブギーマンだけどねー」
「マジかよやべェ……っ!」
トーカは顔を青くして後ずさるが、カネキは首を傾げている。
「あのー……レザーフェイス? 15区? 何のことですか……? 15区ってさっきウタさんが言ってた絶対に住みたくない場所ですよね? そんなに危険なんですか?」
「カネキ……私が言うよ。15区は『たったひとりの喰種の喰場』なんだ。そのたったひとりの喰種が、アタシ達の目の前にいる『レザーフェイス』……そして、レザーフェイスは人間よりも喰種を食べる……」
自分達もまた捕食対象であると理解したカネキは、思わずウタの方へ振り向く。ウタは頷いて肯定し、カネキも後ずさった。
「さっきウタさんが言ってたよな? 13区は血の気が多くて住みたくないって……その原因の大部分がこの人だ……13区には『ジェイソン』ってSレートの喰種がいるんだけど……数年前、ジェイソンを遊び半分で食い散らかした上に、顔の皮を剥がして、その皮を自分のマスクにした……それで、ジェイソンはレザーフェイスに復讐する力をつけるために13区で暴れてる……つまり、この人にとってSレートですら遊び半分なんだよ。少なくとも私やカネキじゃ勝ち目なんて欠片もない」
「若い君達にボクから補足するとね。レザーフェイスは15区の中じゃ一度も
「そういうことだよー。20区で狩りはしないし、あんていくの人と戦う気もないから安心してね。あ、このお面買うから値段教えて」
カオリはいくつかのマスクを抱えながら、ウタに値段を問い掛ける。
「そうだね……2万でいいよ。本当はもうちょっとするんだけどサービスだ。その代わり、あんまり
「ありがとー! でもこの前、なるべく14区でご飯するように言われてるから、わざわざこっちまで来る気はないよ? ここは捜査官より警察が厄介だからね! んじゃ、そろそろ映画の時間だからみんなバイバーイ!」
トーカとカネキが恐怖の混ざった視線をカオリに向ける中、カオリはマイペースにマスクを買い、店を出た。
店を出てから少し歩き、誰もいない事を確認してからハロウィンマスクを外し、映画館へ向かう。
今日の映画は楽しめたようで、ルンルンと鼻歌を奏でながら中央線に乗って家へと帰った。
簡 単 な 英 語 す ら わ か ん な ー い
当初はリョーコさん&ヒナミちゃんを仲間に加えようかと思っていたんですが、ヒナミちゃんが15区陣営入り(=カネキ陣営から消滅)するプロットを組んでいくと、ざっくり言えば以下の問題が起こりました。
1. かなり先の話になりますが、24区でトーカちゃんが死にます。
2. 15区陣営へ加入が確定しているキャラの関係で、3年後に現れるオナホールマニアが、スーパーオナホールマニア究極体へと変態するため、クインクスが死にます。
3. あんていく決戦の時点で、ちゃんヒナがヨツメ改へと進化しているため、筋トレが大好きな喰種捜査官と、その上司の娘が死にます。