(ノ)'瓜`(ヾ)元ネタ、もう消えてるんですけどね
外は生憎の雨であったため、カオリはレインコートを羽織り、手にはビニールで覆った花束を持ちながら、家へと向かう。
この花は業務終了間際に買ったもので、未だ瑞々しさを保っている。
その時、突如強風が吹いた。
「しまった、私の花束が!?」
花束はカオリの手を離れ、雨に濡れた道を滑っていく。
赫子を使えばすぐに取れるが、ここは人がいつ来てもおかしくない場所。今は人の気配が無くとも、不用意な行動はできない。
カオリは花束を追い掛けた。だが、カオリの足は遅い。花とカオリの距離はなかなか縮まらず、花束は側溝へと落ちていく。
「ちょっ!? 仕方ない、ここはこっそり赫子を……いや、そこにいるのは誰かなー?」
カオリは側溝の奥に、何者かが潜んでいるニオイを嗅ぎ当てていた。
「ハァイ、調子良い?」
すると、側溝の奥からカオリの知っている声が聞こえてきた。
「ニオイで分かってたけど、やっぱりペニーワイズが居たんだねー。そうしてると映画の序盤そっくりだよー! 私が相手でもペニーワイズっぽく話してね!」
そこに居たのは小林であった。道化師の恰好をした彼は、まさにペニーワイズそのものである。
カオリの意見に応え、小林は砕けた口調で話し始めた。
「
小林の問い掛けに、カオリは首を横に振る。
「おーぅ、面白いのに……試しに読んでみないかい?」
小林は黄色いビニールに包まれた一冊の本を取り出した。
しかし、カオリは表情をしかめる。
「高槻って敵の偽梟だし、それ活字じゃん。騙されないよ?」
「著者の敵味方は置いといて、確かに吊し人のマクガフィンは活字だけど、死刑囚達がぶち込まれた監獄マンションでの日々を綴る作品なんだ。喰種の作者が書いた死刑囚の監獄、コクリアっぽくて面白いよ」
小林の言葉に、カオリはニッコリと笑うが……。
「面白そうだねー。家帰って吹き替え映画見るわ」
「待って!?」
とりつく島もなく帰ろうとするカオリを、慌てて小林は呼び止めた。
「そもそもこれをお探しでは無かったかな?」
小林は本をしまうと、カオリが落とした花束を取り出した。
「私の花束!」
「
小林はカオリの花束を、カオリがギリギリ届かない位置に構えた。
「これ返すから読んでみない? どう?」
その言葉に、カオリは露骨に嫌な顔をした。
「おーぅ……そんなに活字は嫌い? おっほ、素で引いてる……」
カオリは文字を読むのが苦手なため、漫画すら読まない。より難易度の高い小説なんて読めたモノではないのだ。
「でも高槻作品は本当にオススメだよ。しかも今作はいかにも喰種然としたキャラが多くて、喰種にとって読みやすい作品なんだ」
小林のアピールに、カオリは少し心動かされるも……。
「難しい字とか使ってない?」
「えっ……うん……」
小林は真顔で嘘をついた。
高槻泉の表向きは普通の小説家であり、絵本作家ではない。難しい字はふんだんに使われている。
「高槻作品は良いぞ……深いぞぉ……」
小林はどこか陶酔の混ざった笑みを浮かべ、ゆっくりと花束をカオリへ向けていく……。
「引き込まれる作品だから……」
カオリも、ゆっくりと花束に手を伸ばす。
「活字も読むんだよ!!」
小林は突如カオリの手をつかみ、その手に本を手渡した。
「
カオリと小林は死んだ。高槻作品は漢字にルビが殆どなかっため、読めない漢字の群れにカオリの頭が耐えられなかったのだ。
怒ったカオリは小林に強制共食いを実施し、小林はRc細胞異常活性の痛みで死んだのである。
そして、怒りの余波で特に理由の無い破壊と殺戮が24区最下層を襲い、特に理由の無い略奪がアオギリの下部組織を襲った。
なお、最終的に吊し人のマクガフィンはリオの手に渡り、リオはゆっくりと読み進めていった……。
リオ曰く、普通に良い作品とのことだ。
──────────
あんていくでの仕事を終え、リオは最寄りのバス停を降りた。今日は雨が降っているため、レインコートを着ての帰り道である。
リオは途中にある自販機でコーヒーを買おうとしたが、うっかり財布を滑り落としてしまった。
「あっ、財布が!? ……待ってぇえええ!!」
財布は水に乗ってみるみる流れていき、側溝へと落ちていった。
「しまった……ここは赫子で……」
リオが側溝を覗き込んだところ、その奥に突如何者かの眼光が揺らめく。
「誰ッ!?」
その時、リオの知っている声が側溝から聞こえてきた。
「ハァイ、調子良い?」
側溝の隙間から、ゆっくりと小林の顔が現れた。
「こば……ペニーワイズさんか……狩りの最中ですか?
カオリとCCGの全面衝突。それはリオにとって広範囲の殺戮と破壊を生む恐ろしい光景を容易に想像できる事象である。
「もちろんだともさ。ところでリオ君は共食いしてるかい」
小林の問い掛けに、リオは首を傾げた。
「小林さんも見てたじゃないですか」
リオの答えに、小林も首を傾げる。
「自発的にやってないのかい? せっかくの素質が勿体ないよ?」
リオは思わず苦笑いをした。
「だって……すっごく痛いんですよ?」
赫子を4種類持つリオにとって、共食いの痛みは通常以上のモノとなるが……。
「マジィ?」
小林にとって、その素質を伸ばさないことこそ信じられなかった。
「自発的になんてやってたら死んじゃいますよ……」
「じゃあ、私と共食いしに行かないかい? 良い場所を知ってるんだ」
小林はリオを共食いに誘うが、リオは曖昧な笑みを浮かべたまま答えない。
「沈黙は肯定と捉えて良いのかな?」
「嫌ですよ……」
リオは共食いどころか、自発的に誰かを害する事すら苦手である。小林の誘いには頷けなかった。
「おまっ……でも悪いことばかりじゃないんだよ? 自発的に共食いすれば、花村さんは私達に強制共食いさせないかもしれない。自分で痛みを調整できる。良いことずくめだろう?」
小林の提案に、リオは思わず目を輝かせたが……。
「まぁ、どの道強制共食いはさせられるんだけどね」
リオは目を伏せた。全く嬉しくない事実を聞いてしまったためである。
「それ、痛みが増えるだけじゃないですか……」
否定的なリオの意見に小林は首を横に振る。
「強くなれるさ。それに、リオ君は共食いした喰種の赫子を取り込んで、更に強くなれるんだろう? 赫子にはいろんな種類があるよね? 脆いけど攻撃力の高い鱗赫、重いけど攻守手堅い甲赫、満遍なく戦える尾赫。それから……」
「羽赫ですね」
「そう、羽赫!! 私も羽赫が欲しかった。遠距離は良いよね。バンバン! バンバンバンって!!」
軽快に語る小林に、リオもつられて楽しそうに笑うが……。
「…………」
小林は突如赫眼を輝かせながら無言になる。
「あ、あの……」
「…………」
無言でリオを睨む小林には、明らかな嫉妬の感情が宿っている。
「……ご、ごめんなさい。でも鱗赫だって強いじゃないですか」
怯えるリオに、小林は慌てて赫眼を解除した。
「おっとごめんよ、妬むのは良くなかったね。そんなに怯えないでくれ、ほら、財布も拾っておいたよ?」
小林は取り繕ったように、財布をリオの近くへ伸ばす。
「財布を返してあげるから、受け取って」
リオはゆっくりと財布に手を伸ばす。
ゆっくりと、ゆっくりとリオの手と小林の手が近付き……。
─────突如小林の鱗赫が、リオの両足に絡みついた。
「うわぁぁぁああああ!?」
そのまま小林はリオを赫子で拘束し、側溝へと引き吊り込んでいく。
「助けて姉さぁぁあああああん!!」
だが、人の気配が無い雨の街。リオの声は誰にも届かなかった。
小林は死んだ。小林は共食いによって強さを日に日に増しているとはいえ、リオはそれを超える勢いで強くなる。
リオはあっさりと小林の拘束を打ち破り、小林を尾赫で殴りつけたのだ。
後程小林から話を聞いたカオリは爆笑し、リオに強制共食いを実施。その時にロウと小林の赫包も食べさせた。
共食いの痛みでリオも死んでしまったが、カオリが脳味噌を弄り回し、無事復活した。
──────────
雨の日、ロウはうっかり側溝にモノを落とした。
「ハァイ、ちょゥヴォアッ!?」
小林は死んだ。ロウにとって『
なお現実の事件において、『側溝に潜り込んで通行人のパンツを覗いた』という事件が存在する。
みんなも側溝に潜んで誰かへオススメをする時は、変態に間違われないように気をつけよう。
普 通 に 良 い モ ノ
高槻作品は名作らしいですよっ!
共食いは……ナオキです。
Q.マジで死んだの?
A.安心(?)してください。ちゃんと生きてますよ。
Q.小林にギリギリまで気付かないって、カオリの嗅覚衰えてない?
A.最初から気付いてますよっ。そうじゃなきゃ小林さん死んじゃいますし。
■リオちゃんが今までに食べた素材
・槍喰種の背甲 New!
・溝喰種の鱗 New!
・梟喰種の刃翼
・戦喰種の尾
・その他多数