花屋喰種   作:みぞれアイス

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第48話 Bitter Murmur

 カオリはリオと40人の死体を赫子で運びながら、キジマの隠れ家へと入っていく。

 

「ただいまー」

「お待ちしてましたよ。ささ、ジェイル……っと失礼、フレディくんをこちらに」

 

 カオリはリオを手術台の上に乗せる。意識の混濁が解けた時に暴れないよう、ガッチリとその体には赫子が巻き付いている。

 

「さて、意識が朦朧としてる中で申し訳ありませんが、自己紹介をさせて貰いましょうか……僕は二等捜査官の『旧多二福(ふるたニムラ)』です。フレディ君の願いを叶えつつ、『僕が愉しめる提案』をレザーフェイスさんから受けましてね……まぁ中身を言ってしまえば、僕の敬愛する上司、キジマさんの『人工喰種化実験』です」

「!? ンムゥーッ!! ンンンーー!!」

 

 リオの隣、もうひとつの手術台の上で暴れるキジマを眺めつつ、ニムラは楽しそうに笑う。

 

「キミはジェイルではなく、フレディになる。ならば代わりのジェイルが必要ですよね? そこで、キジマさんがジェイルになってもらう。これが君のお姉さんからの提案です。ね、面白そうでしょ?」

 

 ニムラは強力な麻酔薬が入った注射器を取り出すと、キジマの首筋に突き刺す。キジマは少しだけもがくも、徐々に力尽き、ぐったりと手術台に沈む。

 

「生命維持装置をジョジョイのジョイっと…………さて、これでキジマさんの準備は終わりです。次はフレディ君の赫包(かくほう)を移植するのですが……残念ながらRc抑制剤は貴重なので、あんまり無駄使いできないんですよ。キジマさんは無駄使いしてましたけどねぇ……しかし、こうなると僕ではキミにメスを入れることはできません。なので、ここはレザーフェイスさんにお願いしましょう!」

「はーい」

 

 カオリはゆっくりとリオのそばまで近寄り、そっと顔を撫でた。

 

「ど……うして……どうして……」

「んー? そんなの気にしなくていいんだよ? だってリオちゃんは……ううん、()()()()()()()()()()()()()()

 

 虚ろな目で見つめるリオに、カオリは言葉を紡いでいく。

 

「リオちゃんが目覚めたとき、リオちゃんは本当のフレディになる……ふふふっ、たっぷり書き換えてあげるね? おにーさんの事も、キジマさんの事も、私への憎しみも、私に最初から裏切られていた事も……みんなみーんな夢の果てに消えて、お姉ちゃんが大好きな妹が残る……そうだね、残るのは都合のいい夢物語……さぁ、リオちゃんが見る悪夢はこれで終わり……そして良い夢を……ね?」

 

 カオリはリオの肩に甲赫を突き刺し、赫包の一つをもぎ取った。

 

「ぃぎっ……ぁ……あ……!!」

 

 体を抉られたリオは激痛に体を揺らすも、ガッチリと締め付ける赫子を解くことはできない。

 

「大丈夫、痛みもすぐになくなるよー」

 

 カオリは極細の尾赫を生やすと、リオの耳に、鼻に……あらゆる穴に入れていく……。

 

 ぞぶりと挿入された異物に、リオは全身を痙攣させるが、しばらくすると動かなくなった。

 

「さてと……これから私はリオちゃんの『改造』を始めるから、キジマさんはフルタさんとろーちゃんでよろしくねー」

 

 カオリはリオの耳元でブツブツと呟きながら、体の中を弄り回していく。そんな光景に、ニムラは笑顔が引きつる。

 

「うわっ……何アレ……ガチのモンスターやんけ……クッソ面白くて赫子生えるわ」

「真顔で赫子生やさないでくださいます? というか生えないでしょアナタ……さて旧多二等、アタクシも少しは学習してますので、アシスタント程度ならできましてよ?」

 

 ロウはカオリからリオの赫包を受け取り、ニムラへ視線を向けた。

 

「ええ、宜しくお願いしますね桜野一等」

 

 ニムラはメスを、ロウはナイフ状に展開した赫子を持ち、キジマの体に突き入れていった……。

 

──────────

 

「ちょっと旧多二等! 准特等のバイタルが不安定ですわよ!?」

「おかしいな……僕の理論ではこれで完璧なハズなんだけど……フレディ君の赫包が大喰いの赫包より強すぎるせいかな?」

 

 初めての人工喰種化手術……ニムラ達はバタバタと慌てながらも、少しずつオペを進めていた……。

 

「というかですよ桜野一等、貴女の真後ろで催眠ボイス放ってる花のモンスターのせいで気が散るんですよォ!」

 

 ニムラはロウの後ろを指差す。そこには……。

 

「……リオちゃんにいるのはお姉ちゃんだけ……お兄ちゃんなんて居ない……お兄ちゃんなんていない……さぁ、もっと私の声に耳を傾けて……リオちゃんはお姉ちゃんが好き……リオちゃんは可愛い可愛い私の妹……お兄ちゃんなんていない……」

 

─────脳味噌を弄りながらリオへ催眠を行うカオリの姿が。

 

「ほらァ! こんな状況じゃ笑いで手が震えるよォ!!」

「……そのくらい耐えなさいな。姉様、肉と粉の追加をお願いします」

 

 カオリはリオに話し掛けつつも、ロウへ『(ヴィー)の肉』と『粉末状になったカオリの尾赫』を手渡す。

 

「ありがとうございます。おそらく原因は人間の体から喰種の体に変わったことだと思うので……こうしますわ」

 

 ロウはカオリから受け取ったソレらを、キジマの喉へ無理矢理詰め込む。

 

 すると、キジマのバイタルは少しずつ正常値へと変わっていった。

 

「へぇ、捕食で回復……キジマさんは無事喰種になれたと考えて良いのかな?」

「さぁ……嘉納の資料にある『フロッピー』なるモノの場合もありましてよ?」

「多分大丈夫じゃない? レザーフェイスさんならフロッピーだろうとブルーレイに変えれるでしょ? ブルーレイ版テキサスチェーンソー・ザ・ビギニング! ってね!」

 

 おどけたニムラの様子に、ロウは穏やかに微笑む。

 

 ニムラとロウ、彼等の顔には確かな達成感が浮かんでいた。

 

 

 

「……そして、数字がゼロになったら……リオちゃんは眠りに落ち……もう、私に逆らわない……3……2……1……ぜろ……おやすみ、リオちゃん」

 

 どうやらカオリもリオの処置が終わったようで、赫子をリオから引き抜いていた。

 

「っく……アッハハハハハ!!」

 

 その時、ニムラは大きく笑い出した。

 

「ひーっ、ひっー! なんですか『リオちゃんはキジマさんが好きになる』って!! ひーお腹痛い。マジ赫子生える。この後の展開が予想できるよぉ! ……あ、ちなみに僕もいずれは喰種化手術する予定なので、将来的にはマジで赫子生える予定です。くくくっ、それじゃ次はキジマさんを洗脳ですか?」

 

 ニムラの問いかけに、カオリは曖昧に頷いた。

 

「んー、キジマさんは喰種としてすぐに順応できるような改造をするから、ちょっと大きめに壊すよー。ついでに……リオちゃんへの殺意を『嗜虐心』に変えよっかなー」

 

 

 カオリは残った肉を全て使い、キジマを改造していく。滴る血液を飲ませ、肉を食わせ、脳髄を内外から溶かしていく。

 

 

「……さぁ……もっと意識の奥へ……微睡みの中……暗闇の中だからこそ、私の声しか聞こえない……届かない……」

 

 それは甘く、そして妖しく……くちゃくちゃとなる音は、キジマの口にある肉の音か、あるいはカオリの赫子が脳味噌を掻き混ぜる音か……。

 

「好きなものは?」

「ちー……ず……」

「……ううん、チーズじゃない。キジマさんが好きなのは人の肉……ほら、口に集中してみて。これが人の味……美味しい、美味しいね?」

 

 脳味噌を弄り回す洗脳は、少しずつキジマを壊していく。

 

「好きなものは?」

「ヒトの……肉……」

 

 キジマの趣味が、少しずつ変わっていく。

 

「ふふふっ……良い子だね……リオちゃんは?」

「リ……オ……ジェイル……殺……」

「……違うよ。リオちゃんは……殺すモノじゃない……いたぶる為のもの……」

「…………」

 

 キジマの意志が、少しずつ狂っていく

 

「嫌いだから殺すのはつまらない……想像して……嫌いなら……犯してみよう……」

「おか……す」

 

 キジマの価値観が少しずつ壊れていく。

 

「そう、すがりついて泣くリオちゃんを、キジマさんは虐待するの……股間を削ぐのも良いよね……あるいは、肉と肉がとろけあうまで交わり続けるのも良いよね……大丈夫……リオちゃんはもう……貴方を傷付けない……リオちゃんはキジマさんが好き、でもキジマさんはリオちゃんが嫌い……なら……めちゃくちゃにしちゃおうよ……」

 

 キジマの全てが、ジワジワと変容していく……。

 

 

 語ること数十分。カオリはキジマの洗脳を終える。

 

 

「ふぃー。おわったー! ……あれ? フルタさんは?」

「叩き出しましたわ。笑い出してうるさいので」

「そっかー。それじゃ、呼んできていいよー」

 

 その後、ニムラを含めた三人はキジマ達が目覚めるのを待った。

 

 

──────────

 

「んぅ……」

 

 カオリがキジマの施術を終えた約1時間後、リオは目を覚ました。

 

「おはよ、リオちゃん」

「ご機嫌よう、()()

「どうもおはようございます、リオさん」

 

 リオはぼんやりした目で、カオリ達を見ている。

 

「おはよぅ『お姉ちゃん』。『ろー(ねぇ)』もおはよー。それと……えーっと……誰?」

「アハハ! そういえば()()()()()()……僕は『旧多二福(ふるたニムラ)』。()()()()()()()()()()

 

 ニムラはあえてキジマの部下と名乗ったが、リオはニッコリとお辞儀をした。

 

()()()()()の部下なんですね。僕はリオです。宜しくお願いします」

「くっ、くくくくくっっ!! ええ、こちらこそ」

 

 真実を知るニムラは、愉悦に顔を歪める。

 

 その時、キジマもまたベッドから起き上がった。

 

「……ァあ……頭が痛い……私は一体……」

「キジマさん! 無事だったんですね!」

「キミは……旧多くんか? 違うような気もするが……ぁあ……それにしてもキミは美味しそうなニオイだねぇ……」

「おっと、申し訳ないが捕食はNGでお願いしますよ?」

 

 人格の大幅な改変により、キジマの意識は大きく混濁している。

 

「キジマさん、おはようございます」

 

 と、そんな中、リオがキジマに声を掛けた……掛けてしまった。

 

「おや、キミは……貴様……ジェイル……いや、ジェイル……は私だ……ァア、リオくンか……ふ、フフフ……(しき)が男の名前で何で悪いんだッ!! 俺は男だよッ!!」

 

 キジマは突如豹変し、両足の義足で華麗にステップを踏みながらリオに掴みかかる。

 

「ひっ、キ……キジマさん……?」

「…………ス」

「……キジマさん?」

「……す……ックス…………セックス!!」

「ひぅ……っ」

 

 興奮状態となったキジマの片目には赫眼(かくがん)が揺らめいており、目の周りには格子状のアザが浮かび上がる……。

 

「やめないか!」

 

─────ニムラはそんなキジマの顔をひっぱたいた。

 

「あ……すみません。なんか叩かなきゃって思って」

 

 だが、キジマの暴走は止まらない。

 

「……いずれはCCG中の捜査官も参加させてやる! 善人面した和修(わしゅう)家共もだ! 例えそれが親子であろうと、兄弟であろうと、女同士だろうと、男同士だろうと! ……セックス……セックス……セックスッ!!」

「やめないか! ってやっぱやめなくて良いわ。これ面白っ」

 

 ニムラは再び平手打ちをしようとするが、放っておいた方が面白そうだと判断する。

 

「確か僕には服従なんでしたよね? なら、レッツゴー! リオっちを本能のままにブチ犯してどうぞ」

 

 ニムラは上司の望みを叶えることにした。

 

 

     ♂

 

 

 ベチャベチャになったリオを横目に、ニムラは楽しそうに嗤う。

 

「いやー、今日は(おぞ)ましくも面白いショーが見れました! ではキジマさんは僕の方でしっかり使えるようにしとくんで、お疲れ様でぇーす。さぁキジマさん、帰りますよ?」

 

 キジマの肩を支えながら、ニムラは隠れ家を後にする。

 

「……なんと言いますか……ペニーワイズといいキジマといい……」

「ふふふっ、まーそんな事もあるよね? じゃあ帰ろっかー」

 

 カオリはぐったりしたリオを抱えると、小林との合流地点へと歩いていった。

 

 

──────────

 

 

「Vの40人は全滅か……旧多二等……なぜ君は生き残れた?」

 

 CCG局長『和修吉時(わしゅうよしとき)』は、局長室にてニムラの報告を受けていた。

 

「おそらく(わたくし)とキジマ准特等は、ジェイル改め『フレディ・クルーガー』と対峙していたからだと思います。『元花狂い・現レザーフェイス』はあくまでもフレディとキジマ准特等の戦いに邪魔が入らないようにしていただけかと……とはいえ正直、なぜキジマ准特等と(わたくし)が生かされたのかは分からないです」

 

 ニムラの報告に、吉時は深くため息を吐いた。

 

「そうか……嘉納の研究所にて『リゼの名を名乗った植物型喰種』を、篠原特等はレザーフェイスだと考えているが、君の意見を聞かせてくれ」

「おそらく間違いないかと。山羊の被り物をした女喰種は『桜野裕子』と呼ばれていましたので」

「……するとフレディが『夢街凛』か……夢街は性別不明との報告があったが、男ということだな……その三体を相手にしたとして、『貴将(きしょう)』なら勝てるか?」

 

 吉時の質問に、ニムラは首を横に振る。

 

「有馬特等も一対一なら何とかなるかもしれませんが、相手は三体とも赫者である可能性が高いです。フレディはかつて総議長が討伐した『オバQ』のような異形へ変身しました。二等捜査官を名乗っていたフレディがそれなら、一等捜査官を名乗った桜野裕子および上等捜査官を名乗ったレザーフェイスは……更に上を行く可能性があると考えることができます……」

 

 吉時は頭を抱えた。

 

「SSSクラスが三体だと……? 15区に職員を大量派遣……いや、駄目か。高円寺の時のように雲隠れするだけだ……それに芥子(かいこ)功善(くぜん)を見つけた今、『功善(フクロウ)討伐作戦』が控えている……両方を追うのは……無理か……」

「局長、レザーフェイスについては後発が育つまで待つしか無いのではと考えます。有馬特等が万一敗北した際、連中を止める術がありません」

 

 後発。その言葉に吉時はあることを思い出す。

 

「後発……そういえばラボから面白い提案があったな……確か、クインケを内包する兵士『Q's(クインクス)』……世論的に難しいため却下したが……『白日庭(はくびてい)』の候補生が育つまでにもう少し時間がかかる……クインクス計画は前向きに検討した方が良さそうか……? 後で総議長に掛け合ってみよう。旧多二等、報告御苦労だった。キジマ准尉特等の見舞いにでも行ってくると良い」

「はい。失礼致します」

 

 ニムラは吉時から見えないように、そっと口元を歪めながら退室した。

 

「くくく、ばぁーか……さて、と。入院したことになってるキジマさんにお勉強を教えてあげなきゃなぁ。今のキジマさん、マジで原作レザーフェイス並みの知能だし……あ、Rcゲートも弄っておかないと。キジマさんが討伐されちゃうよぉ」

 

 ニムラはこれから始まる催し物(ショー)に、一人心を躍らせていた。

 




 や め な い か ! 
これまたブームの去ったカミーユ精神崩壊シリーズネタ。もう削除されちゃってますが、ドレミ○ァロンドのMADが本当に好きでした。

(ノ)'瓜`(ヾ)コックカワサキのネタもどこかで使いたかったのですが……意外と使い勝手が……。

■催眠音声について
音声ファイルで人の声を聴く。これ、ある意味ではアカペラ楽曲と同じ括りと言えますよね?
なら……詳細には書けねぇ! 歌詞だから!!
完全オリジナルの催眠音声歌詞なんて書ける気がしないですし……。

■調整内容
・リオちゃん:
呼び方変更→お姉ちゃん・ろー姉。
高感度変更→キジマさんへの悪感情を好感情へ
記憶の改変→兄についてを抹消。兄への感情をカオリに上乗せ。
赫子の出力→さらに大幅強化。最終回死堪を超越。
覚醒→他者を害する事への抵抗が消滅。思う存分力を振るえる。

リオちゃんが真に『妹』となったので、ロウがボウヤ呼びからリオ呼びに変更。

・キジマさん:
好感度操作→リオちゃんへの殺意を『嗜虐心』へ
主従関係→カオリ、ニムラには服従。
記憶の改変→人格を人間から喰種として即座に適応させるため、大規模な記憶改竄。そのせいで大半の記憶が欠落。大幅な教育が必要であり、教育はニムラさんにおまかせ。
足の義足→リオちゃんにもう片方の足も奪われてしまったので、両足とも義足に。
でもだんだん再生していくため、今の義足のような鉄芯タイプじゃなく、鉄靴型の義足をニムラにて製作予定。

次回、地下研究所から今までの振り返り(CCG視点)
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