みんな大好きまどっち&ちゃんヒナ回。
喰種捜査官は人間の身でありながら
また、喰種捜査官には白い鳩のバッチがついているため、喰種達からは『白鳩』『ハト』などと呼ばれている。これは人間が警察を『おかみ』や『サツ』と呼ぶのと同じニュアンスである。
笛口親子があんていくに来る少し前、笛口一家の父『笛口アサキ』が捜査官によって討伐された。そして、笛口アサキの痕跡を辿りながら、20区には笛口親子を追って『
捜査官達の綿密な捜査が功を奏し、20区にて笛口リョーコ及びヒナミが道を歩いて居るところを発見。近くの一般人を迅速に避難させると、笛口親子へ攻撃を開始した。
─────笛口アサキから作られた『クインケ』を使って。
笛口リョーコは、捜査官の使うクインケが自身の夫である『笛口アサキ』のモノであることに動揺し、戦意を喪失した。
しかし、戦意を失いながらも捨て身の突撃を行う事で、捜査官から娘のヒナミを逃がすことに成功した。リョーコ自身の命と引き換えに。
身バレした上に両親を失ったヒナミ。今後、ヒナミが普通の生活を送るのは難しいだろう……。
なお、カオリはここしばらく花屋の仕事が忙しかったため、あんていくに花を届けたら直ぐに店へ帰っていた。ゆえに、カオリにこれらの情報が入ってくる事はなかった。だが、例えその情報が入ってこようとも、カオリは何もしなかったであろう。
そんな多忙な花屋も一段落し、久々に芳村の淹れたコーヒーを飲みたいなぁと思い、業務終了後に20区へ愛用の125ccスクーターを走らせていた。
しかし、『あんていく』へ到着する直前、嗅ぎ慣れたニオイがカオリの鼻腔へと入ってきた。
(……これは喰種の血のニオイ……たぶん霧嶋さんの血かなー? それと……クインケのニオイ! こっそり野次馬しよーっと)
路地裏にスクーターを止め、『狩り用装備』に着替えてからニオイのする場所へ向かう。今日の衣装はハロウィンマスクに黒のツナギ。ブギーマンスタイルである。
ニオイを辿って水路の中へ入っていくと、ヒナミとトーカ、そして初老の男性捜査官を発見した。カオリは物陰に隠れ、様子を伺う。
(うーん、形勢は霧嶋さん達が有利ですねー)
捜査官は右腕を失っており、断面からとめどなく血を流している。トーカは部位欠損こそないが、腹部からかなりの出血がある。
一方、ヒナミは無傷で立っていた。ヒナミは肩甲骨付近から
「もう……やめてよ!! もうお姉ちゃんを傷つけないで!!」
ヒナミは捜査官に向かって叫んだ。
(んー……ヒナミさんの
「おとうさんと……おかあさんを……そんな風にしないでよぉっ!!」
ヒナミから一対の
そのクインケはヒナミの甲赫に良く似ていた。そして、捜査官の足元に落ちている腕には、ヒナミの鱗赫に良く似た蛇腹剣が握られていた。
(あのクインケがヒナミさんのお父さんとお母さん? リョーコさん、いつの間にか死んじゃってたのかー。そうすると、狙いはヒナミさんかな? 霧嶋さんは巻き込まれた感じかなー)
「クハハッ……素晴らしいッ! 凄いぞ!! 両親の赫子の優れた部分だけが見事に引き継がれている!! 良質な赫子だ! 欲しいッ! 貴様の赫子から作るクインケが欲しいッ! ……ええい、これは重い! こっちだ!!」
『防御力が高いが重い甲赫』のクインケを、捜査官は投げ捨た。代わりに『防御力は低いが攻撃力の高い鱗赫』のクインケを拾って振るう。
捜査官の放つ蛇腹剣は空中で起動を変え、変則的な動きでヒナミへ迫る。しかし、捜査官の蛇腹剣はヒナミの甲赫に絡め取られ、ヒナミの鱗赫がガラ空きになった捜査官の左足を切り落とした。
(ん? ヒナミさんの鱗赫って操作性悪いのかなー? 今のは体を真っ二つにすれば終わったのに)
「グァッ! く……フフ……素晴らしいな……絶対に私のクインケにしてやる!! 家族は一緒にいるべきだからなァ!!」
腕と足を失ってなお、捜査官の戦意は衰えない。体を引きずりながらも、取り落とした
「ヒナミっ……! 早くトドメを……!」
「とど……め? わたし……できないよ……」
「アンタの両親の仇なのよ!? 私もこれ以上はもう……っ」
ヒナミは捜査官へトドメを刺す気がなく、かといってトーカは深手を負っているため、これ以上動くことが出来なかった。
「わたしも……考えたんだ。この人に仕返しすれば、このモヤモヤも消えるのかなって……でも違った! 復讐なんてどうでも良かった……!! ……かなしいだけなの……おとうさんとおかあさんに会いたくて……悲しいだけだった……っ!!」
ヒナミの叫びが、哀しく水路内に響き渡る。
「さんにんで……3人で暮らしてた時に戻りたいっ! もどりたいよぉ……!! ひとりは寂しいよ……おとうさんっ、おかあさんっ……!!」
ヒナミの叫びは、トーカと捜査官両方の顔を曇らせた。
「あぁ……そうとも……家族は一緒に居るべきだ……離れ離れになってはいけないんだ……」
捜査官の呟きは、外傷ではない別の痛みを堪えているような声色だった。
「……だから……私のクインケになれぇッ!! それなら家族一緒さァ!!」
捜査官の手が、ついに蛇腹剣へと届いた。
「マズっ! ヒナミ避けて!!」
─────その時、カオリに妙案宿る。
(そうだ、クインケ……使ってみよっかな! じゃあ二人を助けて、お礼にクインケ貰おっと!)
カオリは物陰から尾赫を展開し、捜査官に向けて振るう。刃のように薄く鋭い尾赫は、蛇腹剣を振り上げていた捜査官の腕を斬り落とし、返す刃で胴体を切断した。
「グガァッ! ……まだ他にも……
「誰ッ! ……レザーフェイスさん!? なんで20区に……」
物陰から現れた新たな存在に、トーカは警戒を
「20区は助け合いの街。偶然通りかかったので、急いで助けに来たんですよー」
否、カオリは
「糞っ……貴様等に……生きる価値などあるもの……か! まだだ……わたしは……ヤツを! 隻眼の梟を……この手で葬るまでは……」
それは執念か。捜査官は両腕と下半身を失って尚、動く。
隻眼の梟。その言葉にピンと来たカオリは、上半身だけとなった捜査官へ近付き、その耳元で囁く。
「ふふっ……なら良いことを教えてあげます。フクロウさん狙いだったなら『
「……ッ!? ラビットが……フクロウの手下……『
捜査官は生命活動を停止した。その死に顔は苦悶と絶望に満ちている。
「ふふ……ふふふふふっ! とーっても素敵で綺麗な顔ですよー捜査官さん」
カオリが切り落とした捜査官の左腕が、トーカの足元へ落ちてきた。その手を覆う白い手袋は、トーカを無性に苛立たせた。
「糞がっ……こんな手袋なんかしやがって……私らには触るのも嫌かよ!!」
トーカは怒りに任せて手袋をひっぺがす。その薬指には指輪が付いていた。
「あっ……」
苛立ちは急速にクールダウンし、言い様の無い感情がトーカを
──────────
「みんな大丈夫か! ……レザーフェイス!?」
水路の入り口側から、あんていくの古参従業員である『
「四方さん……カネキ……大丈夫です。レザーフェイスさんが助けてくれましたから……」
「レザーフェイスが……? そうか、ならいい。それより、別の捜査官がこちらに向かってきている。死体を運ぶ時間もない。行くぞ」
四方は捜査官の死体やクインケに見向きもせず、ここから去る準備をしている。
「あ……あれー? 本当に何も要らないんですかー? いいんですかー? 全部貰っちゃいますよー?」
「あぁ、こちらでは処理できない。あなたなら問題無いとは思うが、一応気をつけて。みんな走れ!」
カオリを残し、四方達は水路の奥へと走り去っていった。
「さようならー……さて、じゃあ『全部』貰ってしまいましょう!」
捜査官が持っていたアタッシュケースに『
「後は痕跡を消……うーん、この捜査官の顔は食べるのが勿体無いですねー。ここに置いてってあげよっと! こんなに良い表情なんだから!」
カオリはクインケで捜査官の首を切断し、首から下を甲赫で包みこんでいく。
瞬く間に捜査官の体はカオリの赫子に呑み込まれ、姿を消した。
「四方さん達が行った方向に、囮をぽーい!」
カオリは四方達が走って行った方向へ、捜査官の顔を投げた。これで捜査官の増援が来ても、四方達の方へ向かうだろう。
「それじゃ、私は別の道からかーえろっと」
アタッシュケースを両手に持ち、カオリは水路の出口ではなくその逆、下へ下へと向かっていく。
「あった。24区の壁みーっけ!」
カオリは甲赫で壁を切り裂きながら、壁の中へと入っていった。
──────────
「
カオリが地面の下へと逃げた直後、水路にて若い捜査官が叫んでいた。
彼の名は『
作戦決行中に亜門は『眼帯の喰種』と遭遇し、戦闘を行った。しかし、結果として亜門は眼帯の喰種にクインケを破壊され、上司の元へ駆けつけるのが大幅に遅れてしまった。
想定の時間から大きく遅れて合流地点に向かった亜門。そこに上司の姿は無かった。
「む、これは血痕っ! ……真戸さんのか? それとも喰種のか? ひとまずこれを辿ろう」
亜門は点々と水路に付着している血を辿っていき……そして、上司と合流した。
「あ……あぁ……そんな……」
亜門の敬愛する上司は、首だけになっていた。その顔は苦悶と絶望に満ち、上司の嘆きが、無念が、怒りが、亜門へと語りかけてくるようであった。
「許さん……!! 許さんぞッッ……
亜門の慟哭が、轟音と共に水路中へ響き渡る。
それは、トーカ達の耳まで響くほどの嘆きであった。
──────────
「ふっふふー。クインケ手に入れちゃったー! しかも2個ー!! 甲赫の方は私の赫子の簡易版として使えそうかなー! 剣の方は鱗赫なので色々便利そー! 夫婦揃って使ってあげる方がヒナミさんは嬉しいかなー?」
カオリは新しく増えたコレクションを自宅の壁に飾りながら、クインケを愛おしそうに眺めていた。
お い う ち
せっかくのシリアスシーンが主人公のせいで台無しィィイイ!
原作の流れなら、次はグルメ編なのですが……
グルメ編に主人公は介入できないのでまるっとカットです。粉☆バナナ!