「止まれ! お前等はどこの誰だ」
捜査官の一人が、カオリ達に
「
そんな掛け声と共に、小林の腰から1本の鱗赫が生え、捜査官の胸を串刺しにする。
「あ……あがっ……は……」
捜査官は胸と口から血を吹き出しながら痙攣し、やがて動かなくなった。
小林の蛇腹剣に似た銀色の赫子は、今となっては『ドクター』よりも鋭く、長い。その代わり小回りが利きづらいが、接近されなければどうという事は無い。
「なっ!! 喰種!?」
小林が赫子を使ったことで周りの捜査官達が反応し、カオリ達にクインケを向ける。
「もー、いきなり赫子使ったら変装した意味ないよー! それじゃ、ソレは脱いで良いよー」
「マジィ? これは失礼しました」
小林はCCG特殊作戦服を破り捨てた。そこには派手な衣装を着た道化師の姿……。
「道化師? ……ピエロの生き残りか!」
「違うなぁ、俺は踊る道化師ペニーワイズ! ハァイ、調子良い?
小林はどこからともなく黄色い風船を取り出し、フワフワと浮かべだす。
「総員、目標はペニーワイズと名乗る喰種と、それに従う捜査官のような二体。恐らく女達は変装した喰種だ」
捜査官達はクインケを構え、カオリ達の様子を伺う。クインケを持った正体不明の女……クインケを使うか、赫子を使うかを見極めようと目をこらすが……。
─────突如、小林の持っていた風船が破裂した。
捜査官達が風船に目を取られた一瞬の隙、カオリは即座に行動を開始しており……。
「あ……ぐっ……!」
近接型のクインケを持っていた若い捜査官が膝をつく。
「ふふふっ、私達から赫子が出るかどうかを見てた? クインケを取り出すと思った? それとも、破裂した風船に何か秘密があると思った? ざんねーん! 正解は拳銃でしたー!」
カオリはサイレンサー付きの拳銃をクルクルと回す。カオリが放った銃弾は二発、正確に若い捜査官の両足を撃ち抜いていた。
「防具の隙間を……すみません、足をやられました……」
「でも……本当に赫子が発動するところを見ていたのかなー?」
カオリが呟くと同時、別の捜査官が小林の
「ふふっ、拳銃に目をとられ過ぎたねー? それに、ペニーワイズの赫子が一本だけだと思ったの? それはペニーワイズを舐めすぎだよー。うん、この場所には大した相手はいないみたいだね? ペニーワイズ、先に行ってるよー」
「おーぅ……行ってしまうのですか?」
「できるできる。ペニーワイズ、お世辞じゃなくて本当に強くなってるんだよ? 自信を持って!」
カオリはロウと共に歩き出す。捜査官の一人が行かせまいと、カオリ達に目掛け鞭型のクインケを振るうが……。
「無駄でしてよ?」
ロウがアタッシュケースから『ナース』を展開し、鞭を叩き落とす。
「そのクインケ……まさか……」
ロウの持っていたクインケを目にした捜査官が、ロウ達の正体に気づいたが……。
「
その捜査官は小林の赫子に斬られ、彼の続きは永遠に中断された。
「ふふふっ、そうだよー? 私は上等捜査官の
カオリは振り返ることなく、先へと歩いて行った。
──────────
「本部!! こちら第4隊5班! 『梟』と交戦中である第1隊の元に、15区の喰種と思しき『カミシロリゼ』と『サクラノユウコ』が向かっています! こちらは新手の喰種『ペニーワイズ』と交戦中!! ペニーワイズの推定レートはSからSS! 准特等以上の居ない我々後方部隊では劣勢です!! 応援をお願いします!!」
だが、その願いは叶わない。
『すまない無理だ! そちらに近い部隊へは人工喰種・金木研……いや、SSレート喰種『眼帯』が襲いかかってきた。その対処で手一杯だ!!』
「では救護班を! 負傷者が増す一方です!!」
そして、その願いも叶わない。
『すまんっ! それも無理だ。20区南部に出現したSSSレート喰種『フレディ』によって部隊が壊滅し、救護班はそちらに向かっている! なんとか耐えてくれ。以上だ』
「ヤバいな……どう切り抜ければ良い……」
悩むはこの班の班長である上等捜査官。だが、小林はその時間すら許さない。
「ほっほ! 俺は15区で最弱のピエロ。踊る道化師ペニーワイズ! 趣味はお菓子作りだ!」
小林が1本の鱗赫を上等捜査官へ突き出した。
「くっ!」
男は刀型のクインケを振るい、小林の蛇腹剣を弾く。
「俺とて上等捜査官。そう易々とやられてたまるかっ!! てか喰種がお菓子作りだと? 喰種に味なんて分かるかよっ!」
距離の縮まった小林めがけ、刀を振り下ろす。それにあわせて他の捜査官達も次々にクインケで攻撃を繰り出すが、3本に増えた小林の鱗赫と、小林が取り出した『
「まだ増えんのかよその赫子は!? クインケまで使いやがって!」
「ほっほっほ! 俺の赫子はまだ増えるぞ! それにだ、喰種の食べれるお菓子を作ればいいの……さッ!!」
小林のスレッジハンマーが女性捜査官の頭に直撃し、その頭部をトマトの様に叩き潰した。
「なっ!!」
「ほらみろ! クリームソースだ! 血液のシャーベットにコレをかけて食べると美味いぞ!」
女の脳味噌を指さし、小林は楽しそうに嗤う。
「この野郎ッ!」
上等捜査官は刀を振るい、小林の鱗赫を一本切り落とすが……。
「っとと危ない危ない。そのクインケ、尾赫だな? 甲赫だと思って油断していたぞ」
小林は追撃をスレッジハンマーで防御し、切られていない鱗赫を突き出す。
「同じ攻撃……いや違う!」
上等捜査官はバックステップで大きく後ろに下がると同時、もう一本の鱗赫が上から地面に突き刺さった。
「ククク……やるじゃないか? だが、お前が下がると死人や怪我人が増えるだけだぞ? お前並に戦える奴はここにいないんだろう?」
そんな小林を、上等捜査官は鼻で笑う。
「ハッ、抜かせクソザコピエロ。すぐにブッ殺してやらぁ」
「
部下の一人が、捜査官の名前を呼ぶ。
─────その時、小林の気配が変わった。
「……何? お前……ショージというのか!? そうか! そうかそうか!!」
上機嫌に笑う小林を、
「だったら何だってんだ?」
「いや、お約束というやつさ……」
小林はショージに接近し、スレッジハンマーを振るう。
「ハァイ、ショージー! クインケ、使ってる?」
ショージは小林のハンマーを刀で受け流し、その刃を小林に叩き込んだ。
「ああ、こんな風にな!」
小林は腹部から血液を撒き散らすも、即座にその傷は塞がっていく。
「おーぅ……痛いじゃないか? この風船あげるから、もう戦うのをやめないかい?」
小林は黄色い風船を手に持つと、ショージに向かって差し出した。
「ハッ、どうせ止める気なんてないんだろ? 騙されんぞ」
ショージは刀で突きを放つ。小林は首を傾ける事で回避したが風船は貫かれてしまい、軽い音を立てて破裂した。
「
小林はしみじみ笑いながら、ショージから距離を取る。その瞬間を狙って他の捜査官が攻撃を繰り返すが、やはり小林の赫子やスレッジハンマーに弾かれ、捜査官たちのクインケは少しずつ壊されていく。
「じゃあ友達になろうショージー! 俺は踊る道化師ペニーワイズ。お前はショージー。ほら、これで自己紹介できたな? 俺達は友達だ」
「ああそうかい。友達なら死んでくれや」
ショージは刀を振り上げ─────
「待てや!?」
「待つかよ」
─────小林めがけて刀を振り下ろすが……。
「
小林を斬ったはずのクインケは、根元からポッキリと折れていた。
「俺のクインケが!?」
「
ニヤニヤと笑う小林だが、ショージの部下がアタッシュケースを投げ渡す。
「使ってください!」
「助かる!」
ショージは新たに槍型のクインケを構えると、即座に小林へ刺突を放つ。ショージの放った槍は小林の胸を貫いていた。
「ぐぶっ……おーぅ……そんなに戦いたいのかい?」
胸を貫かれた小林はバックステップで槍を無理矢理引き抜き、傷を癒す……だが、小林の再生速度は着実には遅くなっている。
小林の
「おほっ、マジ狩るって顔してやがる……だが、その心意気は良いぞぉショージー……凄いぞぉ……」
ショージを誉めながらも、小林は赫子を生やしていく。その数は4本、今の小林にできる最大の数だった。
「だが俺もそろそろヤバいから……」
小林はスレッジハンマーを振り上げながら、ショージへと跳んだ。
「死にやがれぇッ!!」
「
互いの攻撃が繰り出され、二人は交叉する。
「ぐ……おぶっ……」
ショージは血を吐きながら、自身の体を見つめる。
ショージの心臓は、小林の赫子によって貫かれていた……。
「ショージーは死ん……ガバァッッ!?」
勝ちを宣言した小林だが、自身の胸元もまた、ショージによって深く抉られていた。
「東海林上等!! 貴様ァ!!」
残った捜査官達が、小林目掛けて殺到するが……。
「そこまでですわ」
どこからともなく飛来した槍が、全てのクインケを捜査官ごと薙ぎ払った。
「迎えに来ましたわよペニーワイズ。露払いご苦労様でしたわ」
赫子の槍と『
「これはブギーマンさん……ありがとうございます」
「レディ・ソーヤーがお呼びですわ。私の背に掴まりなさいな」
小林はいそいそとロウの背中にしがみつく。
「では皆様、ご機嫌よう」
ロウは強靭な脚力で地を蹴りながら、瞬く間にその場を走り去っていった。
残った捜査官達は、ショージという旗頭を失い……。
「……あぁ! 東海林さん!! 東海林さぁあああああん!!」
この場で真っ先に指示を出すべき人物が、ショージの亡骸を前に泣きわめく。
彼等にとって、ショージの存在は大きかったのだ……柱を失った第5班は、各々が傷の治療をする烏合の衆と化してしまっていた。
──────────
カオリは芳村が戦闘している場所へ向かうが、芳村が少しずつ戦う場所を変えていることに気付いた。
「んー……桜野一等、ここの屋上に行こう。多分こっちくると思う」
「わかりましたわ」
カオリ達は赫子を使い、マンションの壁をスルスルと登っていく。
「うん、梟さんは少しずつ戦う場所を移してるねー。もうすぐここに来るんじゃないかなー?」
カオリの予想通り、マンションの屋上に芳村は現れた。
「ゼェ……ゼェ……」
「だいじょーぶ? フクロウさん?」
芳村は突如かかった声に驚くが、カオリ達だと分かると胸をなで下ろした。
「!? やぁ、カオ……」
「今は本名禁止ですよー! 私はレザーフェイスもしくはババ・ソーヤー。神代リゼ上等捜査官でも良いですよー? こっちはブギーマンもしくはマイケル・マイヤーズでお願いしまーす」
「初めまして『本物の梟』さん。ちなみにアタクシはランサーでも桜野裕子一等捜査官でも構いませんわ」
ひらひらと手を振るカオリに、芳村は仮面の下で少し笑った。
「……レザーフェイスちゃん、どうしてここに?」
「あなたの再勧誘ですよ、フクロウさん? でもその前に……」
カオリは『ドクター』を芳村の後ろへ向けて振るう。
「およっ!? 防がれてしまいましたぁ?」
中性的な若い捜査官が、芳村に向けて鎌型のクインケによる一撃を放っていたが、カオリのクインケに阻まれた。
「お久しぶりです鈴屋三等。夢街二等から聞いてますけど、私が譲ったヤクモちゃんは、ちゃんと活躍しているようで何よりですねー」
「今は昇進して
カオリは肩を竦める。せっかくの変装が一瞬でバレてしまったことに、少しばかり残念なようだ。
「むー、バレてるみたいなので、どう呼んでも良いですよー。さてと……他の捜査官さん達が来る前に、蘇った『ジェイソン』の力を見せて貰いましょう!!」
カオリはドクターを真っ直ぐ突いた。その蛇腹剣は槍のようにまっすぐ飛ぶが、ジューゾーは軽やかに身を躱す。
「おっ!? っとと!!」
だが、蛇腹剣は突如空中で軌道を変え、ジューゾーを追尾する。それを咄嗟に鎌で受け流し、ジューゾーは更にカオリとの距離を詰める。
「貰いっ!」
ジューゾーはそこから更に跳躍し、カオリ目掛けて鎌を振り下ろすが……。
─────カオリの体は傷一つ付かなかった。
「クインケになって蘇ったとはいえ、ヤクモちゃんの赫子なんて効きませんよー? 折角の攻撃だったのに、
それどころか、ジューゾーは右足を切断されていた……片足を失ったジューゾーは着地に失敗し、屋上の床を転がる。
「それじゃ、新しいジェイソンをちょっと味見するよー!」
カオリはヘルメットのバイザーと、その中にあるホッケーマスクをずらし、ジューゾーの右足を咀嚼する。
「んむ……うん! あなたの肉はかなり美味しいよぉ鈴屋二等! ……人の肉はね、人生という調味料が振られるんだよ。鈴屋二等の人生にはきっと色々あったんだねー? そして、これからもっと美味しくなると良いね! だから─────」
カオリはビシっとジューゾーを指差し……。
「足を失くしたくらいで諦めるな『ジェイソン』っ!! クリスタルレイクから再び蘇って見せてよッ!! ヤクモちゃんだって顔と赫包を失ってなお、私相手には駄目だったけど立ち上がった!! さぁ、さぁさぁさぁ!! あんよがじょうず! なくなってもじょうず!!」
カオリはリズム良く手を叩きながら、ジューゾーを応援する。ジューゾーは倒れたままの姿勢でナイフ型のクインケを投げつけるが……。
─────ナイフはカオリの体に当たるも、硬質な音と共に弾かれた。
「そんなもの効かないよ? ほらほら、フクロウさんがぼーっとしてる今がまさに勝機だよ!!」
その様子を芳村は唖然と見ていた。芳村にとって、ジューゾーのクインケは自らに傷を負わせる事のできるクインケである。それを無傷で弾き返すカオリが、全く信じられなかった。
そして、芳村は動かないのではなく
だが、そのテンションはすぐ元に戻った。
「んー……マイケル、ペニーワイズがちょっと危なそうだから連れてきちゃって」
カオリは小林が負傷したことを感知すると、ロウへ小林を連れてくる事を命じる。ロウは静かに頷き、マンションから飛び降りていった。
ロウがマンションから飛び降りてすぐ、特等捜査官の篠原を先頭に、CCGの主力達が駆けつけてくる。右足から血を流すジューゾーの姿に、捜査官達が小さく悲鳴を上げた。
「ジューゾーっ!!」
「鈴屋くん……足が……!」
鈴屋の上司である篠原と、鈴屋と仲の良い捜査官である『宇井』が、鈴屋に走り寄る。篠原はジューゾーを抱き寄せると、静かに涙を流した。
「篠原さん……僕は平気です。痛くないです。だから、泣いてないで戦ってください」
「すまん、私のせいだ……すまない……本当にすまない……」
満身創痍のジューゾーに篠原と宇井は簡単な応急処置を施す。
まさに今こそ絶好の攻撃チャンスだが、カオリはあえて見逃した。むしろその場に座り込み、のんびりと篠原達の手当を見物する。
そんな挑発としか言い様のない所作に、篠原以外の捜査官達は殺気立つも、『フルフェイスの女捜査官』の正体に心当たりがある彼らは、静かに出方を伺うのみにとどまった。
「本部! 鈴屋二等が負傷した! 大至急搬送の頼む! それと……神代利世が現れた……応援を……」
「篠原特等ー! ちょっと待ってー!」
篠原の言葉をカオリが遮る。
「んしょっと……私だけじゃないですよー?」
カオリがのんびりと立ち上がるのと同時、マンションの壁から小林を背負ったロウが登ってきた。
そして、空からはゆっくりとリオが降りてくる。
15区のSSSレート喰種3体、謎のピエロ。そして芳村……ピエロの喰種はともかくとして、この場には4体のSSSレート喰種が存在している。その現実に、捜査官達は血の気が引いていく。
「訂正する。神代利世、桜野裕子、フレディ、謎のピエロの4体が現れた……第0隊を全部こっちに回してくれないか?」
有馬班無しに、この局面を乗り切ることは不可能と即座に判断した篠原は、CCG最強の部隊である『有馬貴将』がいる第0隊の要請を依頼した。
や っ ぱ り 嘘 字 幕 パ ロ デ ィ
戦闘中ですらオススメを欠かさないペニーワイズの鑑。
とはいえ、今回は嘘字幕より本字幕をパロディしてる部分も多いんですけどね……。
■原作と異なる点
・カオリ達の参戦
→原作には居ないので言わずもがな。リオちゃんも原作JAIL編と違い、直接芳村さんの元へ。
・ジューゾーの負傷原因
→芳村さんではなくカオリによる負傷へ。
・小林の赫子
→1本ではなく4本に。わーい既に三枚刃さんより強いぞー
次回、カネキくん視点