(ノ)'瓜`(ヾ)ですが二つにわけたせいで、今回ちょっと短めです。
11区には『
しかし、万丈は恵まれた肉体こそ持っているが喰種としては弱く、あまり役に立たない。きっとそんな彼だからこそ『ナハッ! ナハッ!』と笑う誰かに間違われたのだろう……。
そんな万丈は、かつて11区で神代リゼに一目惚れし、11区を離れたリゼを追いかけて20区に来ていた。
ガスマスクをつけた万丈の部下が万丈に問いかける。
「バンジョーさん、本当に
万丈は自信を持って頷く。
「『あんていく』っつー物好きの喰種がやってるコーヒー屋に彼女は興味を持っていた。間違いない、リゼさんはそこに向かったハズだ……おい、見つけたぞ。ここがあんていくだ!」
万丈はガスマスクをつけた3人の部下を引き連れ、あんていくへと入っていく。
「失礼する。店長は居るか?」
万丈は入るなりそう告げる。この時店にいたのはカネキとトーカだけであった。
「すみません、店長は留守でして……ちょっ、トーカちゃんストップ! えっと、何か店長へご用でしたらお伝えしておきましょうか?」
不躾な万丈のせいで不機嫌になるトーカを諫めつつ、カネキは万丈の接客にあたる。
「いや、アンタらにも聞きたい事がある……なぁ、神代リゼさんを知ってるか? リゼさんに危険が迫っているんだ」
二人は、万丈達を奥の部屋に案内した。
そして、カネキから神代リゼのニオイが強く漂ってくる事に気付いた万丈は、カネキがリゼの彼氏だと誤解し、殴りかかったが……万丈はとても弱かった。カネキは万丈の拳を軽くいなし、カウンターパンチを叩き込んだところ、あっけなく万丈はノビてしまった……。
──────────
ここは20区にある廃ビル。
「あの筋肉ダルマ、電話にでねぇ……ったくあのボケ何やってんだよ、使えねぇグズだ。これじゃ『ヤモリ』と『カマ野郎』に先越されちまう……リゼ確保の功績はでけぇんだぞ……」
万丈が所属する組織の上司にあたる『少年』が、電話に出ない万丈へ悪態をついていた。
「ボスは20区出身ですよね? でしたら
少年よりも年上の部下が問う。
「だいぶ前の話だ、今はどうなってんのか分かんねぇよ。当時のことで良けりゃ『店』なら『芳村のジジイ』と『
それともう一人、誰よりも相手にしたくない『エプロンの女』を少年は思い描いたが、アイツが20区に居るわけがないと頭を振り、別人を思い描いた。
「……それと、そーいや『身内』にも平和ボケがいたっけな」
少年の名は『霧嶋アヤト』。11区の喰種集団『アオギリの樹』に所属する喰種であり、20区に住むとある喰種の『弟』である。
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万丈を気絶させてしまったカネキは、万丈を介抱するため事務所に残り、トーカは一人でフロアの接客をしていた。
「あらぁ~。美味しいわぁここのコーヒー」
「だねぇ」
(濃いお客さんだなぁ……)
ヒゲの生えたオカマと、白髪に白スーツな大男の二人組が、のんびりコーヒーを飲むのをトーカは眺めていた。
─────その時、けたたましい音を立ててガラスが砕ける音がフロアに響き渡った。
(上の階! カネキになんかあったのか!?)
「すみませんお客様。様子を見てきますので、少々席を外します」
「いいのよ~。気にしないでちょうだい」
「……」
席を外すトーカをオカマは機嫌良く送り出すが、大男はトーカに目もくれず、ただ上を見ていた……。
──────────
万丈がここに来た目的は、リゼに逃げろと伝える為であることをカネキに伝えた。
「アオギリって組織がよ……ある時、11区になだれ込んできたんだ。俺も最初は戦ったが、数が多すぎた……アオギリの連中は俺達11区の喰種を屈服させると、今度は
確かに怖い組織だけど、それがリゼとなんの関係があるだろうかと、カネキは疑問に思った。
「ここからがさっきの話に繋がる。俺も今やアオギリの下っ端になっちまったが、アオギリのリーダーは恐ろしい奴だ。ソイツが何故かリゼさんを探している……酷い目に合わせるに違いねぇ! ……それによ、近いウチに
15区と聞いてカネキが浮かんだのは『レザーフェイス』。とても強い喰種だと言われている変な
金木は万丈に15区について聞こうとしたが……。
─────破砕音と共に目の前のガラスが粉々になると同時、万丈がカネキの目の前から吹っ飛んだ。
「万丈さんッ!?」
「随分お喋りだな万丈。もっぺん血反吐出し尽くすまでイタぶられてぇのか? あ?」
「ア……アヤト……!!」
あんていくの窓を蹴破って入ってきたのは霧嶋アヤト。万丈の上司にあたる少年だ。
「ひえっ!」
「なんてこった!」
「アヤトさん……なぜここに……」
ガスマスクをつけた部下達が、口々に呟く。
「その
その時、扉が勢い良く開き、トーカが飛び込んでくる。
「ちょっとアンタら何騒いで……あ……アヤト……」
「よぉ、久々だな。馬鹿姉貴」
『霧嶋アヤト』。あんていくで働く現役女子高生・霧嶋トーカの『弟』である。
「どこほっつき歩いてた……馬鹿が」
「社会勉強だよ。平和ボケのお前と違って『
「何が社会勉強だ。ガキが偉そうに」
「ガキはテメェだ馬鹿姉貴。現実見ろタコが」
罵りあう姉と弟。そこに、新たな乱入者がドアから入ってきた。
「あら~ン! おねーさまが居るのは聞いてたンだけど、さっきの店員さんだったのね! 二人揃って美形なんてジェラスだわ~ン」
「やぁ、アヤトくん。待っていたよ」
(……さっきの濃いお客さん達!?)
下のフロアでコーヒーを飲んでいたオカマと、白スーツの大男であった。
「良くここが分かったじゃねーか、ヤモリ」
アヤトは白スーツの大男を『ヤモリ』と呼んだ。
「全部『ニコ』のおかげ。鼻が利くんだ」
「そうよォ! ニオイを辿ればイッパツよん!」
オカマの『ニコ』。鼻の利く喰種である。
「な……なんで二人まで……!? リゼさんはここには居ねぇ! あんた方が来ても意味は……」
アヤトを含めた幹部3人の登場に、万丈は動揺を隠せない。それを見たヤモリはニヤリと笑う。
「合っているよ万丈くん。捕獲対象は『リゼ本人』または『リゼのニオイがする奴』」
「そう、彼でビ・ン・ゴ! さっさと連れ帰っちゃいましょう。ところでアヤトちゃん、おねーさまも連れてく?」
「要らねえ。足手まといだ」
「連れ帰るだの要らねえだの、何勝手なこと……」
そうトーカが呟いた刹那、ヤモリの拳がトーカを吹き飛ばした。激しい音と共にトーカが床に叩きつけられる。
「勝手? 勝手を振舞えるのは強者の権利だよ」
トーカを吹き飛ばしたヤモリは、返す刀で金木を殴打。骨のひしゃげる音と共に、金木は壁へとめり込む。
壁からカネキを引きずり出すと、そのまま床へ叩きつけた。
「立つ? 寝る? どっち? 大人しくしていたら『今だけは』痛い目を……おや、隻眼? 『彼』の言うとおりだ……」
床に叩きつけられた金木は、起き上がってヤモリを睨む。その眼は片方のみが赫眼であった。金木はヤモリに一撃入れようと拳を振り上げたが、ヤモリが消えた。
「消え……ぐぶ……っ!」
一瞬で金木の背後に回り込んだヤモリは、
「カネキっ! テメェッ……!」
トーカはヤモリに攻撃を仕掛けようとするが、そこにアヤトが立ちふさがる。
「どけ! アヤトッ!」
「フン」
アヤトの拳はトーカの拳よりも数段速く、トーカは為す術もなく殴り倒された。
「弱いなトーカ、親父とダブるよ。弱い奴に何が守れる。誰が救える。力が無きゃ奪われるばっかりだ」
「違う! 父さんはあたしらを守るために戦ったッ! お前は何も分かってない!!」
立ち上がるトーカは
しかし、赫子の強さもアヤトが上であった。アヤトも羽赫を展開し、トーカの羽赫とせめぎ合い、あっという間にトーカが押し負けた。
トーカはアヤトの羽赫に全身を切られ、床に倒れ伏す。
「お前の羽じゃどこにも跳べねぇ。お前は地面に這い蹲ってろ」
ヤモリ・アヤトVSカネキ・トーカの戦いは、ヤモリ・アヤトの勝利に終わった。
「だが俺は違う! 喰種が人間より……」
アヤトは倒れ伏すトーカに向けて、勝利の決め台詞を言おうとした。
─────だが、戦いは終わらない。
扉が開く。
「ふふふ……ふふふふふ……!」
扉の向こうから、黄色いエプロンをかけた女が顔をのぞかせた。
その女は長靴を履き、人の皮を貼り付けたホッケーマスクを被っていた。
キ ン カ ン ポ ン カ ン
ナハッ!ナハッ!と笑うだけのテディベアも、