その後、カオリ達は21区と22区、そして7区の喰種を大雑把に殺戮し、大量の赫包を入手した。
そのうちの殆どはリゼ含む15区の喰種が食べてしまったが、ガンボを含めた全員が一段階上の強さとなっている。
だが、ガンボは強さと引き換えに、完膚無きまでに壊れてしまった。その壊れっぷりはカオリが脳味噌を弄ってなお再起不能。
仕方がないのでガンボの処分をニムラに任せる事にした。押し付けたとも言う。
「まぁ良いんですけどね……僕は便利なニムさんですから……」
「ふふふっ、その分お金は弾むから安心してねー?」
いつもの居酒屋『Helter Skelter』にて、カオリはニムラと談笑していた。
ニムラによるCCG内部情報のリークは、カオリにとって非常に有益なモノであるからだ。
なお、店内には二人を除き誰も居ない……否、さっきまではイトリとニコが居たのだが、カオリによって赫包を少し
「でも困ったなー……CCGがまさか花屋に目を付けてるなんて……」
「そりゃ『神楽坂ヤヨイ』と『フラワーショップ西荻窪の誰か』が花屋で働いてましたからね。しかも
Vの読み通り、カオリは持ち前の資金を使って花屋を開こうとしていた。
花屋開業を保留するなら、代わりに何をするべきか……カオリは少し考えてから、あることを思いつく。
「うーん、ねぇニムちゃん? CCGの『あーるしーげーと』って、カネキさんが通れるのはなんで?」
「Rcゲートですか? それは
共食いにより赫子は変質する。それでもカネキがゲートを通過できるなら……。
「じゃあ共食いで赫子が変わっちゃっても、神代ちゃんの鱗赫やフレディの羽赫が入っていれば大丈夫なんだねっ!」
「あー、もしかして、クインケでも盗むんです? CCGのラボ区画は警備厳重なんでオススメできないですよ?」
カオリはリゼとリオの赫子を持っている事を、ニムラは知っている。カオリならばCCGのゲートを通過する事だって可能だ。
しかし、ラボ区画の警備は極めて厳重であり、ラボ区画を襲撃するならコクリアを襲った方がまだマシだ。
「ううん、捜査官やる。面白そうだし」
「……
身バレを極度に嫌うカオリの、暴挙とも言える発言にニムラは唖然とする。
「だいじょーぶ、顔変えるから。ちなみに健康診断ってどうやって回避してるの?」
「それなら問題ありません。僕がいずれ人工喰種になったとき用の伝手を作ってますので」
健康診断さえ通過できるなら、カオリに恐ろしいモノは何もない。
「そっか! じゃあ面接に15区出身で、キジマ班希望の『
「それならキジマさん経由で推薦枠作っときますよ」
「あ、それならもう一人追加してもらっても良いかな?」
もう一人と聞いて、ニムラが思い浮かぶのはリオだが……。
「……フレディくんは駄目ですよ? キジマさん暴走しますので」
「違うよ? シーナちゃん。シーナちゃんは細工しなくても大丈夫!」
シーナという名前は分からないが、リオ以外に細工不要でゲートに入れる喰種は……後一人しかいない。
「……ま、まさかっ!?」
「ふふふっ、帆糸さんから聞いてるだろうから、15区の新しい仲間が誰か知ってるよね?」
リゼと一緒に仕事ができる……その事実に、ニムラのやる気ゲージがモリモリと上がっていく……!
「帆糸さんから聞いたけど、ニムちゃんはシーナちゃんが大好きなんだよね? だから、ニムちゃんが頑張ったら……シーナちゃんと一緒に仕事ができるよっ!」
「やりましょう! 全力で! それと、僕の純情を勝手にバラしたロマは後でぶん殴ろうと思います」
ニムラとカオリは握手を交わす。リゼと共に歩めるのなら、ニムラにとって多少の苦労は苦労では無いのだ!
「シーナちゃんを死なせたくなかったら、全力で私達がバレないように頑張ってね? もしバレちゃったら『シーナちゃんを肥料にして開花』するから」
最後に恐ろしい一言を残し、カオリはHelter Skelterから去っていった。
「……ええ、全力でやりましょう。全ては僕の目的のために……」
──────────
「次の人、お入り下さい」
CCG捜査官採用試験の面接室に、金髪の美女が入室した。
「初めまして、私は『
「はい、宜しくお願いします。大坪さんはキジマ准特等からの推薦を受けていますので、詳細は既に伺っていますが、まずは大坪さんが当局を志望した理由を教えてください」
面接官の問いに、カオルはすらすらと答えていく。
「はい。私の住んでいる15区は、喰種が居ない平和な街だと思っていました。ですが、最近のニュースでそれは間違いだと知りました。ですので、私は自分の住む街の平和を守りたいと思い、喰種対策局を志望しました。私と、先に面接を受けたシーナさんは、キジマさんやフルタさんと共に15区の凶悪な喰種を駆逐していきたいと思っています。私は男性にも負けない程の筋肉があると自負していますので、喰種捜査官として必ずやお役に立てると考えます」
面接官は深く頷きながら、手元の書類に何かを記載している。チラリと盗み見たところ……。
(基本はできてる……ってなんだろう?)
「ああ、確かに君の体力試験は見事なモノだな。速力は少し悪いようだが、筋力は男性部門も合わせて一位だぞ。さて、君は特別枠での面接だ。ここからはお決まりの謳い文句なぞ要らん。そもそも、他の受験者と違い、君達についての大まかな内容はキジマ准特等より知らされている……だからあくまでも確認だ。キジマ准特等は過激だぞ? ともすれば有馬特等以上だ。ついていける自信はあるか?」
─────突如、面接官は強烈な殺気を放った。
だが、カオルがその程度の殺気に動じる事はない。
「はい。人間と姿が似ていようと、喰種は喰種です。討伐することに忌避はありません。それに、私やシーナさんは
力強く宣言するカオルに、面接官は少し意地悪そうな顔をする。
「くくく……君もこれを平然と流したか! まぁ
カオルとシーナの面接はすんなりと通った。
キジマの推薦とはそれだけ大きなモノなのである。体力試験が高得点だったこともあるだろう。
なお、カオル最大の難所は筆記試験だったが、持ち前の身体能力の高さを使ったカンニングで、難なく突破していた。
こうして、大坪薫と椎名利沙……またの名を花村カオリと神代リゼ……彼女達は誰にも疑われる事無く、
──────────
4月、カオルとシーナはアカデミーで研修を受けていた。
だがそこにいる生徒は、カオルとシーナのたった二人である。
その理由はキジマの推薦と体力試験、そしてカオル達の志望部署にあった。
体力試験において、カオルは筋力で、シーナは足の速さで平均をかなり上回る数値を叩き出した。
そこにキジマの推薦と、他の地域とは比べ物にならないほど危険で不人気かつ深刻な人手不足の15区への配属希望、更に
高い身体能力、キジマとニムラの推薦、早急に解決したい15区の捜査官不足……これらの要素から、カオル達は非常に珍しい特別待遇の生徒なのである。
もちろん少ない人数と短縮された期間は、過酷な環境といえよう。
だが、逆を返せば教師とほぼマンツーマンに近い状態で学べるともいえる。
「えーっと……はっびゃくななじゅー……さん?」
アカデミーにある体育館の中でカオルは『873』と呟き、教官の首筋目掛けて竹刀を振り下ろす。
「ぐっ……違う馬鹿者、874だ」
教官はなんとかカオルの竹刀を受け流そうとするが、カオリの竹刀による一撃は予想以上に重く、教官の体力はジリジリと減らされている。
「むー、874っ。そしてー……868!」
カオルの強烈な一撃により、ついに教官の手から竹刀が吹き飛び……。
教官の腹部に強烈な薙ぎ払いが直撃した。
「ぐおっ……は、867だ! もうちょっと考えろアホンダラ!! ……ぐうっ……はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと休憩するぞ……このゴリラ女のレベルに合わせてたら肩や腕がイカれちまう……」
教官とカオルがやっていたのは戦闘教練である。
内容は『1000から7を引き続けながら、竹刀で攻撃しあう。防具は教官のみ』というものだ。
本来ならば計算で集中力を欠いたところを、教官の鋭い竹刀捌きで滅多打ちにされるという戦闘教練である。
他者を痛めつける事を好む教官の、趣味と実益を兼ね備えていたハズの教練なのだが、カオルの技量が教官を大きく上回っており、逆に教官が痛めつけられる結果となっていた。
「むー!!
教官の名は『
これはかつて『ジェイソン』という喰種によってできた傷だ。
「ぜぇ……この程度小学校レベルだぞ馬鹿女……お前学校で何学んできたんだ?」
「はいっ! 学校サボって映画見たり筋トレしたりしてました!」
元気良く馬鹿な事をぬかすカオルに、教官は大きく溜め息を吐いた。
「ったく……シキの推薦した新人は将来有望だねまったく……さてと、俺が限界だからこっからは雑談にするぞ。んで、何が聞きたい? また喰種に効果的な拷問の仕方か?」
教官は普通のアカデミー生相手の訓練なら、始終有利に事を進める程度の力はある。
だが、彼は第一線を退いて長い……第一線級以上の体力を持つ二人組相手では、いつも時間前に体力が尽きてしまう。
プライドを傷付けられた教官は、嫌がらせ目的で『常人なら嫌がる拷問の話』をしたのだが、これがカオル達に大ウケ。
むしろ他のアカデミー生と違い、カオル達は積極的にトカゲ教官へ絡むようになっていた。
「はいはーい! ジェイソンという喰種を拷問したときの話が聞きたいでーす!」
「ちょっとカオル、それはトカゲ教官に悪いと思いなさいよ。教官が大怪我を負った理由なのよ?」
シーナがカオルを諫めるが、教官は楽しそうに笑う。
「クククッ、気にしなくて良いぞ茶髪。あれは俺の油断が招いた単なる失敗だ……そして、その失敗を後発に伝えてこそ教官の価値があるんだ」
アカデミーにおいて、拷問の話を聞こうとする生徒は全く居ない。
だが、コクリアの尋問官であった教官が上手に教える事ができるのは、拷問の方法のみ。
ゆえに、拷問の事を知りたがる希有な生徒は、教官にとって可愛い教え子だ。
「ヤクモの拷問における最大の失敗は、ヤツの付近に『ヤツの肉片』を置きっぱなしにしてしまったことだ……喰種というのはゴキブリみたいにしぶとい生き物でな、切断された自分の体ですら栄養に変えて回復しやがる……ヤクモの指を何度も切断し、その残骸を見せ付けて心を折るのが目的だったんだが、当時の俺は油断していた。ただそれだけの話だ」
教官は遠くを見つめる。その目にはどこか薄暗いモノが混ざっていた。
「とまぁ、油断は禁物ってのが俺からのアドバイスだ。それじゃあ、ここからは俺がヤクモに行った拷問について教えよう。お前等もここを出たらシキの部下になる訳だから、覚えておいて損は無いぞ? まずは肉体的ダメージの拷問だが、喰種は硬い表皮を持つが、粘膜については人間とさほど変わらないのは知ってるよな?」
教官の問いかけに、二人は首を縦に振る。
「もちろんですよー! クインケが無いときは金的や目潰しが有効だとフルタさんも言ってましたし」
「催涙ガスや一酸化炭素による窒息も有効ですよね。後はスタングレネードを使った目眩ましも良いかと思います。とはいえ、最近なら新兵器のCRcガスを使えば良いんでしょうけど……」
シーナ達の意見に、教官はニヤリと笑う。
「おう、お前等は物分かりが良いな。流石シキの推薦入局だけはある。ちなみに茶髪、催涙ガスやスタングレネードは今でも有効だぞ? CRcガスは有効だが貴重だからな。とはいえ、スタングレネードは拷問の時くらいしか使い道がない。理由は……金髪、それくらいは分かるよな?」
教官はカオルをじとっと睨むが、カオルはニンマリと笑う。
カオルは計算や英語が苦手だが、それは教育を受けていないがゆえの弊害であり、決して馬鹿ではないのだ。
「ふっふー、それくらいは分かりますよー? こっちは耳をふさいで目をつむるという隙ができるので、足の早い喰種には逃げられちゃいますし、射程の長い赫子を持つ喰種には攻撃されちゃいます。私達がいずれ対峙する15区の喰種には効かなそうですねー」
事実、カオル達が挙げた武器は、全て15区の喰種達には効かないモノばかりだ。
「……確かにな。20区戦の時に現れた喰種共には効果が薄いだろう。っと、話がズレたな……俺はまず、ヤクモの眼球に注射器を突き刺し、Rc抑制剤を流し込んだ。これはシキも使う基本的な尋問方法だな」
教官は楽しそうに笑うと、自身の記憶を辿っていく。
常人なら聞くだけで精神に異常をきたしそうな話が次々に紡ぎ出されていくが、カオル達は真剣に、そして楽しそうに耳を傾ける。
他のアカデミー生は怯えるか嫌そうな顔をする
気分の乗った教官は、時間を忘れて当時の思い出を語っていく。
「すみませーん……戸影さん、交代の時間なんですけどー……」
だが、楽しい思い出話は第三者の介入によって打ち切られる。
そこに現れたのは、白髪と黒髪の入り混じった若い青年だった。
「おやおや佐々木二等、もうそんな時間だったかな……またなお前達、お前達と比べる価値すらない悪い馬鹿どもに教練の時間だ」
「お疲れさまでしたー!」
「ありがとうございました。また明日も宜しくお願いします」
教官はゆっくり立ち上がると、体育館を後にした。
後に残ったのは、佐々木と呼ばれた青年とカオル達のみ。
「……えーっと、初めまして。まずは自己紹介からだね。僕は二等捜査官の『佐々木ハイセ』です。クインケ操術を担当しているよ」
ハイセにとっては『初めまして』だが……カオル達はハイセの事を知っている。
「こんにちはー。私は『大坪カオル』ですよー。クインケは甲赫のハンマーや大剣がいいなぁー」
「私は『椎名リサ』です。カオル共々宜しくお願いしますね? 私達の方が年上ですけど、遠慮せずに指導してくださいね? 私は羽赫の射程が長いクインケを希望します」
二人はハイセへ軟らかく微笑む。
─────ならなかった。
「……っ」
むしろ感じるのは強烈な悪寒……っ! ハイセは背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。
「佐々木さーん? どうしましたー?」
「佐々木二等? 顔色が悪いみたいですけど、気分が悪いなら医務室へ行きますか?」
カオルとシーナはハイセを心配するように振る舞うが、二人はおおよその理由に見当がついていた。
(シーナちゃんのせいだね。佐々木さんが人工喰種になった原因だし。私達のニオイは完璧に消してるから、多分第六感ってやつかなー?)
(カオルのせいね。記憶を無くしたとしても、体はレストランの一件がトラウマとして残っているんだわ。でもニオイはしないはずだから……多分カオルの雰囲気かしら?)
なお、互いが互いのせいだと断じたが、実際の原因は両方共である。
「ご、ごめんね……なんか急に寒気がして……もう大丈夫。クインケ繰術だけど、オーソドックスな『ツナギ』を使うよ。形状は尾赫の刀だから、二人の希望には応えられないけど……アカデミーにはこれしか無いからね?」
ハイセはカオル達にアタッシュケースを手渡すと、二人は手馴れた手付きでクインケを取り出す。
「……? 認証してないんですねー。不用心じゃないですかー?」
取り出したクインケは何の変哲もない刀だが、カオルは取り出した刀型クインケを不思議そうに見つめた。
「アハハ、厳重に管理されてるから大丈夫だよ」
「なるほどー! それじゃあ、これで佐々木さんに切りかかれば良いですかー?」
カオルとシーナは好き勝手な構えを取り、ハイセと対峙する……が、二人とも片手で刀を持っていた。
「あ、あれ……? 今回は型だけの予定だったんだけど……それに『ツナギ』は片手で持つにはキツいハズ……戸影さんの教練で疲れてると思ったんだけどな……?」
「これ、そんなに重くないですよー?」
「ええ。私でも片手で充分です」
戸影教官の戦闘教練は、本来ならヘロヘロになるレベルのモノだ。
だが、喰種の中でも上位に位置するカオル達にとって、余力を残して終える程度の訓練でしかない。
「それと佐々木二等、剣の型なんてやらなくて良いのでは? 少なくとも、私やカオルはアカデミー卒業後に刀で戦う気はありませんよ? 私は遠距離、カオルはスレッジハンマーか大剣予定ですので」
多くの捜査官は刀剣型のクインケを愛用する。
その理由として、クインケの運用に剣術を用いる事ができるのは勿論だが、CCGには熟達した剣術の担い手が多数居る。
そして何より『刀』にはロマンがあると感じている者が多いことが理由であった。
ゆえにクインケ操術は、基本的に刀の扱い方を学ぶ事になる。
だが、カオル達は刀を使う気など全く無い。
それはトカゲ教官も知っており、ゆえに教官は好き勝手に打ち込みをさせていた。
「うーん、カリキュラム上必須なんだよね……でも二人が意欲的にやってくれないと困るなぁ……」
とはいえ、カリキュラムで規定されている以上、ハイセが甘やかすわけにはいかない。
「それじゃあ……戸影さんの戦闘教練に近くなっちゃうけど、竹刀で簡単に打ち合ってみる? 型の必要性が分かると思うよ?」
ハイセは二等捜査官であれども、クインケ繰術の講師としてアカデミーに顔を出せる程には、クインケの扱いに長けている。
型を知らない初心者に敗北を与えることで、型の大切さを知り、積極的な学習に取り組んで貰おうと思っての提案だが……。
「はーい」
「カオル、まずは私からで良いかしら?」
「いいよー!」
カオル達はクインケを仕舞うと、竹刀を手に取る。
そして、シーナは
「あれ? 防具は?」
「……?」
ハイセの行う戦闘教練では、必ず防具を付ける。
だが、カオル達はトカゲ教官からの戦闘教練しか受けていないため、他の教官が行う戦闘教練では、皆防具を付けている事を知らない。
「防具型クインケって、特等専用装備ですよね? 私達に支給されるんですか?」
「えーっと、戸影さんは防具付けさせなかったの?」
戸影教官は『防具は無し、生身で戦う訓練だ。そもそも、鎧型クインケなんて貴重なモンを、15区の死にたがりに支給するわけないだろう。あれは特等専用装備だ』と告げ、防具の着用を認めなかった。
「佐々木二等、私達は防具無しで構いません。その方がより実戦に近い訓練になりますので。それと、私達は戸影教官から教わったやり方で戦いますので、気分を害されたらすみません」
竹刀をだらりと構え、シーナはハイセと対峙する。
ハイセはその姿に何か恐ろしいモノを感じ、ハイセは慌てて竹刀を構えた。
「では行きます。『
シーナの言葉に、ハイセの背筋にぞわりとしたナニカが走る。
─────ハイセには『紫色の髪をした見知らぬ女』と、シーナの姿が重なって見えた。
「……佐々木二等? チェックメイトですよ?」
「……え?」
ハイセが気付いた時、シーナはハイセの首筋に竹刀を押し当てていた。
「あ、あれ……? さっきのは……?」
「……?」
自身を殺そうとする謎の女の幻影は消え、そこにはシーナが立っている。
「やはり佐々木二等は調子が悪いみたいですね。今日は休まれては?」
「ごめんね……なんか体調が良くないみたいだ……一旦大坪さんと椎名さんで戦ってみてくれるかな?」
ハイセはフラフラと歩き、体育館の壁にもたれかかった。
「はーい! それじゃシーナちゃん……先手必勝っ!」
カオルは竹刀を横薙ぎ振るう。
それは如何ほどの力か、大きな風切り音を立てながらシーナへ迫るが……。
「カオルは先手必勝よりも、
「うーん、なんとなく?」
シーナは消えたと見紛うほどの速度で後ろに下がり、距離を取る。
たった一振りの攻防だが、ハイセはカオルの腕力とシーナの脚力に目を見開いた。
「これがキジマ准特等の推薦する捜査官候補生……人間業とは思えないな。有馬さんみたいだ……」
「むー、佐々木さーん? 私はれっきとした人間ですよー? 脳筋金髪メスゴリラじゃないですからねー?」
「佐々木二等、驚くほどの事ですか? 私達より凄い人なんて
会話しながらも嵐のような攻撃を繰り出し続けるカオルと、それを避け続けるシーナ。
だが、段々とシーナは疲労してきたのか、先程よりも速度が落ちつつある。
「っ……ストップストップ! 反撃する暇が無いじゃない!」
「ふっふー! 近接戦闘で負けるつもりはないからねー? それで、どうでしたか佐々木さん? こんな感じなので、私は重量のある近接クインケが欲しくて、シーナちゃんがそれを補助する遠距離のクインケが欲しいって感じです」
カオル達の竹刀捌きはメチャクチャだ。しかし、それを補って余りある身体能力が、型の必要性を無くしていた。
「あーうん……確かに二人には剣の型は要らないかもね……でも、卒業に必要だからちゃんと学んでね?」
「はーい」
「分かりました。主席を目指す気はないですし、刀を使う気はありませんけど、今後は真面目に取り組みますね」
アカデミーの教官達すら恐れる戸影教官と親しく、有馬特等から直々にクインケ繰術を学んでいるハイセをも納得させる強さ。
カオルとシーナのアカデミー生活は、畏怖と羨望の中で始まった。
獅 子 身 中 の 虫
まさかニムラさんどころかキジマさんが裏切ってるなんて、上層部は思ってないでしょう。
■Q&Aコーナー
Q1.佐々木『二等』?
A1.はい。現時点は20区戦から一年後の話です。20区戦から二年後に一等捜査官になっているのなら、今は二等捜査官かなぁと。
Q2.戸影さんフレンドリー過ぎない?というか原作にキジマさんと仲良かった描写あった?
A2.戸影さんは原作でも六月さんと一緒に仲良く動物解体してましたし、同類にはフレンドリーだと思っています。
キジマさんと戸影さんは元コクリア尋問官同士ですし、拷問大好きですし、きっと仲は良かったんじゃないでしょうか。
Q3.身体能力的そんな高くてに大丈夫?疑われない?
A3.検査結果は人間(偽装済み)。そして身体能力はブッ飛んでこそいるけど、特等捜査官も同じような身体能力をしているので、『ああ、たまに居るよね』で済まされちゃう。なお、これでも力は抑えている。幽遊白書に例えるなら戸愚呂20%
■おまけSS
・1:ミサカさんの教え子達
豪「ゥチとシキとシンチャンゎ……」
式「ズッ友だょ……!!」
深「……えっ!?」
・2:ポジティブマッチョとネガティブマッチョ
武「准特等の推薦で年上の凄い後輩が入ってきたぞ!絶対に人を褒めないトカゲ教官すら絶賛しているほどだ!しかも捜査官正式デビューの日は俺達と一緒らしい!俺達も負けないように頑張らないとな!」
瓜「(くたばれコネ入局のアバズレ共)……そうだな」
・3:親の心子知らず
豪「俺がこの前から担当してる大坪と椎名って女が居るんだがな、そいつらちょっとイカれてるが良い奴だぞ。お前も会っておくと良い、きっと心が晴れる」
六「考えておきます(……この人が『ちょっとイカれてる』って言うことは『凄くイカれてる人』だよな……? やめとこう……)」
・4:アカデミーに行きたい!
ニ「アカデミーの教官やらせてください! リゼさんに会いに行きたいんです!!」
式「残念だけど枠が埋まっているようだよ。佐々木二等が良く頑張ってくれているから、クインケ操術の講師はもう充分だそうだ」
ニ「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」
■見た目について
・大坪薫
画像検索で『東京喰種 大坪薫』で検索すると出てきます。原作では15区担当をしていた『噂の美人捜査官』
なお、本作のカオルさんは原作と違いメガネをしていません。
雰囲気は原作のカオルさんよりも柔らかめだゾ。INT値が下がっているとも言う。
……本物のカオルさんは何処かって?24区の壁の中ですよ。
・椎名利沙
リゼさんの体をベースに、まゆしぃ(シュタインズゲート)の頭部を混ぜ、茶髪にしたような感じと考えていただければ。