花屋喰種   作:みぞれアイス

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【アジサイ】
花言葉は、冷酷、高慢、移り気など。


Re:第5話 Hydrangea

 キジマがクインクスからペニーワイズとの邂逅の報告を受けてから1ヶ月、いつの間にかクインクスがトルソーの人相を暴いていた。

 

 また同時期、下口班はトルソー型オナホールをクレジットカードで大量購入した男の住むアパートへ任意聴取を行おうとしており、その男のアパートへ到達した途端、何故か『ラビット』の襲撃を受けたそうなのだが……。

 

「ほぇー、オナホーってアオギリの構成員だったんだ? それにしても、あーちゃんは何がしたかったんだろ? 負けてるし」

 

 下口班のCRcガスを潤沢に使った戦法が上手く作用し、ラビットは這々(ほうほう)の体で逃げ去ったそうだ。

 下口の報告書には『SS級喰種相手に死傷者ゼロを達成する事ができたが、赤い煙で視界が極めて不良であったために喰種が逃げた際追跡する事ができなかった。今後なんらかの対策を設けたい』と記載されていた。

 

 

「証拠隠滅狙いだったとか? 例えば新しいアジトの場所とか」

「あーちゃん、逃げ足だけならあるもんなー。オナホー本人の情報は渡しても、自分たちの情報だけは死守する。みたいな感じかなー? ……まぁ、どうでもいいけどねー」

 

 報告書を見ていたカオルは、ソレを乱雑に投げ捨てる。

 

「でも、これでペニーワイズは再びタクシードライバーとして動けるわね。手頃な個人タクシーにはアタリをつけてるんでしょ?」

 

 シーナはカオルが投げ捨てた資料を拾うと、返却用のボックスに投げ入れる。このボックスに入れておけば後でニムラが資料室へ行くときに戻してくれるのだ。

 

「うん、『田中徹夫』さん。独身の一人暮らし。小林と年も近いから、顔を変えるだけでいいかなー……それよりも、そろそろシーナちゃんの赫包をニムちゃんに移植しないとねー。なにせ……()()()()()()()()()()

 

 カオルはニヤリと嗤いつつ、もう一つの資料を手に取る。

 

「ふふふっ……小林相手に手も足も出せず、『オナホー』を取り逃がして、非戦闘員の西尾さんにすら負ける程度のクインクス……ドイツで雑魚の喰種組織相手に凄まじい数の死者を出した無能の准特等捜査官……私に届きうるかもしれないけど、まだまだ弱いジェイソン……あははっ! みんな随分強気なんだねー。なら……20区の時以上の愉悦(おままごと)を教えてあげないと……ね? 『強奪作戦』の前座にぴったりだよー!」

 

 カオルが手に持つのは、とある合同チームの捜査計画書。

 

 そこには『調査対象:ナッツクラッカー・尾赫・レートA』と記載されていた。

 

──────────

 

 准特等捜査官『鈴屋什造(すずやジューゾー)』率いる鈴屋班と、クインクスを擁する真戸班は、CCG本部の会議室にて捜査会議を行っていた。

 

「では、(わたくし)めが要点のみ説明させていただきます」

 鈴屋班の班員『阿原半兵衛(アバラはんべえ)二等捜査官』が、厳かに語り出す。

 

「我々が捜査する対象の『ナッツクラッカー』は、強い偏食性と嗜虐性を持つ喰種であり、主に男性の睾丸を狙った捕食及び破壊を行います。また、ヤツは人を捕食せず誘拐するケースもあり、これを二課の『和修政(わしゅうマツリ)准特等』は人身売買に関与していると読んでいます」

 

 否、ナッツクラッカーは人身売買を行っていない。ナッツクラッカーこと『マユ』が行っているのは『人工喰種化実験の被験者集め』である。

 

「顔は割れており、極稀の目撃とはいえ、主な出現ポイントは判明しています……が、『更なる巨悪』を釣り上げるために、あえて泳がせている……いえ、泳がせざるを得ないと言いましょうか……」

 

 ハンベエは言いよどむ。それはナッツクラッカーの向こうにいるであろう『更なる巨悪』に対しての恐怖もあるのだろう……。

 

 ハンベエは大きく深呼吸をすると、覚悟を決めて説明を再開する。

 

「……ナッツクラッカーが初めて発見された時、そこにはもう一体の喰種が居ました。その個体名は……『ランサー』です」

 

 その名前に、瓜江は目を見開いた。なにせ1ヶ月前にその『ランサー』の仲間である『ペニーワイズ』と交戦したばかりである。

 ペニーワイズ相手に、シラズとのペアで戦ったが、手も足も出なかった。そして、次はそのペニーワイズより更に強い個体を相手にするかもしれない。その絶大な功績と危険を前に、瓜江は思った。

 

─────フレーム解放の上限をあげておくべきだと……。

 

「……つまり『ナッツクラッカー』は、15区の喰種に関係する可能性が極めて高い個体です……そして、15区の喰種といえばキジマ班なのですが……」

 

 ハンベエは苦い表情を浮かべつつ、ここに居るハズなのに居ない人物たちの事を思い浮かべる。

 

「ナッツクラッカーの捜査最高責任者は和修准特等です。困ったことに、和修准特等とキジマ准特等は極めて仲が悪く……よって、キジマ班はこの捜査から外されています……凶悪な喰種を今年度最も多く駆逐したキジマ班がいればとても心強いのですが、和修のネームバリューの前にはどうしようもできなかったようで……そこで白羽の矢が立ったのが、我々鈴屋班と真戸班というわけです。15区の喰種は各個体のどれもが隻眼の梟と同等かそれ以上とも言われている極めて危険な喰種ですので、常に気を張って捜査していきましょう。それでは、次の議題に移ります……」

 

 真戸班、鈴屋班、どちらも15区の喰種と強い因縁を持つ班長によって結成された班は、着実にナッツクラッカーを追いつめていく。

 

─────それらが全て、15区(てき)に筒抜けだとも知らずに……。

 

──────────

 

 マユは今、顔を隠さずに外を出歩いている。顔が割れてしまっているため、本来ならそれはありえない愚行。だが、これはマユの敬愛する姉『ロウ』の指示によるものだ。

 

 この『作戦』を始める前、ロウはマユにこう言った。

 

「アナタを捜査し、そしてアタクシ達と一戦交えようとする愚かな捜査官(ハト)がいますわ。本来なら雲隠れするのが良いのでしょうけど、アタクシ達はこれを逆に利用しましてよ。マユ、アナタは囮としてハト共を『調理場(ステージ)』まで引きずり出して貰います。これはアタクシ達、そして姉様達15区にとっても危険な賭け……ですが、必ずやり遂げますわよ!」

 

 ロウの指示通り、マユは自らを囮にし、捜査官の注意を引き寄せる。

 

 ハト達に捜査させるためのアパートを借り、ワザとその家を突き止めさせ……その他にも決まったルーチンワークをこなし、自らを捕捉しやすくさせた。

 

 そして今、マユは尾行されている。勿論気付いているが、わざと気付かないフリを続けながら、ゆっくりと喫茶店へと入っていく。

 

 しばらくして、私服に身を包んだ捜査官達が入ってくる気配を感じ取ると、マユはニヤリと笑みをこぼす。

 

「さぁパーシー。早速だけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()について話し合いましょう」

 

 捜査官達に聞かせるよう、ワザと声量をそのままに、マユはパーシーと会話を続けた。

 

─────その日、事態は大きく動く。ナッツクラッカーはランサーのみならず、資産家喰種『ビッグマダム』及び『クロックムッシュ』との繋がりも持っていた事をCCGは知る。

 そして、そんな巨悪達が集う人間オークションが、11月11日に開催されるという情報も掴んだ。

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「お疲れ様マユ、首尾はどうかしら?」

「はい姉様! ハト達は用意した家に侵入しました。わざと置きっぱなしにしていた『リスト』もバッチリです!」

 

 元気良く告げるマユを、ロウは優しく撫でる。

 

「フフッ、良くやりましたわ。これでまた一歩、彼らは自ら食卓へと近付きましたわね」

「はい! 次は『釣り』ですよね?」

 

 リスト。それは『マユが請け負った食材の注文リスト』……のように見せかけたただのダミーだ。実際にそんな注文は無い。なぜなら()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 

「ええ、撒き餌はもう充分ですわ。貴女の美しさを以て、若い女達をかき集めなさいな? そうすれば……」

「囮捜査をする女性捜査官が出るはず……ですよね?」

「ええ。相手側の注目すべき女性捜査官は真戸(まど)六月(ムツキ)米林(よねばやし)……この中の誰か一人でも釣れれば充分。彼らは大切な仲間を取り返すために全力でアタクシ達の口へ飛び込んできますわね」

 

 ロウとマユは血酒を片手に笑う。今のところは、全てロウ達の思い通りに事は進んでいた。

 

──────────

 

「この食材リストの写しだけど、極端に難易度の高いものもあれば、低いものもある。例えばこれ、10代から20代後半の女性が相当数注文されているよね? これは多分『人間オークション』の前座商品だ……これにチェックが付いてないってことは、ナッツクラッカーはまだこのノルマが達成できてないハズだ。僕達はここを突く」

 

 ロウの狙い通り、クインクスは『若い女性による囮捜査』が有効だと判断した。

 

 

「だから……僕らは女になる」

 

 

 そうハイセが宣言した通り、ハイセ、シラズ、そして性別を男として申告しているムツキは綺麗なメイクと女物の衣装に身を包み、元から女である『米林才子(よねばやしさいこ)三等捜査官』は普段着ている服に身を包み、13区にあるクラブハウスへとやってきた。

 

 才子は鱗赫のクインケを内包されたクインクスであり、四人いるクインクスの中で最も赫子適性のある女性捜査官だ。

 しかし、本人のやる気は全くない。

 

 才子の家は酒場を営んでおり、シングルマザーである才子の母は経営難に苦しんでいた。

 才子はそんな母の元、学費が安いという理由でジュニアアカデミーに入学させられ、恒久的に補助金が出るという理由でクインクスにさせられた。そこに才子の意思は無い。

 ゆえに、アカデミーを卒業してクインクスになってからこの半年、才子はひたすら宿舎(シャトー)に引きこもり、自堕落な生活をしていた。

 

 そんな彼女が今ここにいるのは、瓜江が『このまま何も成果を出さなければ、お前の補助金は打ち切られ、宿舎から追放される』と脅しをかけたからである。これは当然嘘なのだが、才子はそれに気付くことは無かった。

 なお、言った本人たる瓜江は、現在『内包しているクインケの出力を上げる手術』のため欠席である。

 

 

「なぁ……オレだけ違和感ねぇか?」

 

 クラブハウスの入口で、シラズがぼやく。背の高いシラズにとって、女装はやや無理があった。

 

「いやいや可愛……ぶほっ! マジで赫子生えますわ」

 

 シラズのメイクを担当した才子は、シラズの面白すぎる姿に吹き出していた。

 

「シーちゃん、言葉遣いには気をつけて?」

「てーかトオルとサッサンは自分でやったんだよな!? どうしてそんなに上手く行くんだよ!」

 

 そう叫ぶシラズの言うとおり、ムツキとハイセはまさしくレディにしか見えない。

 

 尤も、ムツキの本当の性別は女であるため、レディにしか見えないのは仕方がない。むしろ戻ったともいえる。

 そして、小柄なハイセもまた、メイクによって化けていた。

 

「いやいやシラギン……じゃなかったシーちゃん。シーちゃんは長身ギャルってヤツよ。よっ、デルモ!」

 

 才子が囃したてるように、シラズはモデルの女性に見えなくもないが……やはり無理があった。

 

 

 だが、例え無理があったとしても……。

 

「こんばんは、皆さんお綺麗ですね」

 

 ナッツクラッカーは声をかけてきた。

 

「っ……!」

「あやや! そんなに警戒しないでください。別に宗教やマルチの勧誘でもないですのでっ! 私はこういう者です」

 

 ナッツクラッカーは4枚の名刺を取り出すと、ハイセ達へと配る。

 

「えーっと……宴会補助エージェントの『Mayu』さん?」

「はい、私ですよ!……さて、そこな愛らしいお嬢さん3人と、クールビューティーなイケてるオネェのアナタ。貴女達のような美人限定で紹介できる、とっても収入の良い仕事があるんですけど、興味ありませんか?」

 

 ハイセ達は顔を見合わせる。まさかいきなり相手が食い付いてくるとは思わなかったからだ。

 

「おっとと、大丈夫ですよ。ちょっとしたお金持ちやお偉いさんに接待するだけです。もちろん性的なモノは一切ありませんよ? なにせこのパーティーの主催者は私の敬愛する姉様『ローリー・ストロード』です。性的な接待なんてさせたら、姉様の肩書きが傷付きますからねっ。ちなみに、基本給はこの金額で、ここから更にチップで荒稼ぎです!」

 

 ナッツクラッカーは手渡した名刺の裏面を見せる。

 

「い、一日だけで20万!?」

 

 シラズが驚くのも無理は無い。それはあまりにも胡散臭い……だが……。

 

「私達4人。参加させて貰うわよ!」

 

 ハイセは力強く、そして可愛らしく宣言した。

 

「まいどっ! それじゃあ当日は名刺の裏に書いてある場所で待ってますからね! あ、可愛い子が他にもいるなら、飛び込み参加も良いですよ! ホールの子はいればいるだけ華ですからねっ!」

 

 ナッツクラッカーはそう告げると、クラブの人混みの中へ消えていった。

 

「あはは、まさかこんなにもあっさり上手くいくなんてね……って才子ちゃん、どうしたの?」

 

 ふとハイセが才子を見ると、その顔は真っ青になっていた。

 

「あんな、ママン……才子『ローリー・ストロード』って知ってるねん……ローリーは映画『ハロウィン』に出てくる主人公兼ヒロインで、15区の喰種はみんなホラー映画に出てくるキャラの名前を名乗ってる……20区戦の資料を見たとき、ランサーが20区戦でしてた恰好はローリーの兄貴『ブギーマン』のコスプレ……ならローリーも多分15区の喰種……怖くないわけないやろが……アオギリよりもヤバい喰種集団ぞ? しかもな……才子、この作戦が初めてのお仕事なんよ? 初仕事でいきなりラスボス……しかも『レインボーメガネ』のせいでお助けキャラの『ベイマーズ』は来ないかもしれんとか……もう今から引き籠もりたい所存……」

 

 才子はナッツクラッカーに手渡された名刺を眺める。紙でできているハズのそれは、鉛の様に重く感じていた。

 

「大丈夫、僕がみんなを守るから……それと、和修准特等やキジマ班の人達をそんな呼び方しちゃ駄目だよ?」

 

 そう言い聞かせるハイセだが……ハイセもまた、内心では大きな不安を抱えていた。

 

──────────

 

 准特等捜査官の『和修政(わしゅうマツリ)』。CCG局長である『和修吉時(わしゅうよしとき)』の息子であり、ドイツの喰種対策局で腕を磨いたエリート捜査官だ。

 

 その功績の一つ、ドイツに存在した喰種一族『ロゼヴァルトファミリー』の駆逐は有名である。

 

 激化する『アオギリの樹』による被害、神出鬼没に各地を荒らし回る『15区』といった問題を鑑み、CCG局長の吉時がドイツから呼び戻したのだが……。

 

─────15区担当捜査官であるキジマと、壊滅的な程に仲が悪かった。

 

 

「良く来た。座れ」

 

 そんなマツリは、自身の執務室にジューゾーとハイセを呼び出していた。

 

「鈴屋准特等らが捜査を進めている『ナッツクラッカー』が、セレブ気取りの喰種共が集う『オークション』に関係しているのは間違い無いんだな?」

「リストから見ても間違いないですねぇ。次のオークションの日にちまで分かりましたです」

 

 ジューゾーはそう告げながら、マツリへ報告書を手渡す。

 

「11月11日……約2週間後だな」

「佐々木一等らクインクス達が囮捜査をしてくれたおかげです」

「ふーむ、クインクスか……」

 

 マツリはクインクスの存在に否定的な立場をとっている。

 その理由として、マツリは戦力を『数』として計算する。その徹底的なまでに人を数字としてしか判断しない姿勢は、最大の成果と犠牲を出す。

 

 ゆえに『質』が大きく左右するクインクスは、自身の計略において邪魔でしかない。

 そして……数ではなく質で判断するキジマ班と反りの合わない最大の理由である。

 

「まぁ良いだろう。ナッツクラッカーと約束を取り付けたのは佐々木、不知(シラズ)六月(ムツキ)、米林の4人か……ではこの4名はそのまま商品としてオークションに参加して貰おう」

「あ、あの……ナッツクラッカーは『飛び入り参加も歓迎』との事だったのですが……」

 

 ハイセにとって、複数のSSSレート喰種が現れるかもしれない場所にたった四人で潜入するのは不安がある。ゆえに、もう何人か人が欲しかったのだが……。

 

「何を言っている? 人員の追加なぞするわけがなかろう。そもそも、オークションの商品として出品されるのならば、クインケは持ち込めない。こういう時のクインクスなのではないのかな? 持ち前の内蔵赫子を使い、内部から喰種どもを……」

「あのー? 僕もオークションに参加していいです?」

 

 そんなマツリの意見を遮るかのように、ジューゾーはその追加人員になりたいと告げる。

 

「じゅ、ジューゾーくん!?」

「……ほぅ、どういうつもりで?」

「15区の喰種が現れるかもしれない今回の潜入は、ハイセ……佐々木一等と新人のクインクスだけだと荷が重いのです。それと……僕が()()()()()()()()()()()来るかもしれませんです」

 

 そう語るジューゾーの目は、恋い焦がれた相手を思う恋人のようでもあり、獲物を食いちぎらんとする猛獣のようでもあった。

 

「……良いだろう。鈴屋准特等の参加を認める」

「ありがとうございますです」

「フン。ではこれより平子、真戸、下口。これら3名の上等捜査官を加え、『オークション掃討作戦』の概要を説明する。10分後に……ん?」

 

 その時、執務室の扉が開かれ……。

 

「やぁ。私達と協力するのではなく、除け者にする准特等殿」

 

 呼んでいないハズのキジマが入ってきた。

 

「チッ……なんの用だ」

 

 挨拶と共に放たれる挑発。マツリは鋭くキジマを睨みつけるが、キジマはニヤニヤと嗤っている。

 

「ヒヒヒヒヒ!! まさか私が何の用も無くキミの所に来るわけがないだろう? オークションの事だ。おっと、何故私がオークションについて知っているかは自分の頭で考えたまえよ? 仮にもキミは対策二課なのだからね」

「……さっさと用件を話して消えろ」

「あぁ、11月7日から15日……つまり土曜日から一週間後の日曜まで。私は旧多くんと新人2人を連れて大分の温泉地へ遊びに行かせてもらうよ。ゆえに、例えキミの指揮する部隊が壊滅したとしても我々キジマ班が助けに行くことは絶対にない。安心して公務に励むと良い」

 

 オークション掃討作戦から除け者にされているキジマ達は、当て付けの様に有給申請を出した。本来であれば、凄まじい功績を挙げているキジマ班が居ない状態での作戦は極めて危険……だが、局長は実子であるマツリを選び、キジマ達の有給申請を認めた。

 

「そうか。好きにすれば良かろう」

「キヒヒヒ!! ドイツから()()()()()、これから日本でも失敗するキミは、いったいどこへ行くんだろうねぇ……?」

 

 キジマの言葉にジューゾーとハイセは首を傾げる。マツリは『有能だから日本に戻された』と聞いているためだ。

 

「おや? 鈴屋准特等と佐々木一等は知らないようだね……和修准特等はドイツのCCGにあたる組織を壊滅させた程に()()でね。ドイツの喰種捜査官達から『破壊工作員』『カミカゼジャップ』『ロゼヴァルトと対立する喰種組織のスパイ』『スターリンとヒトラーの悪いところだけを受け継いだ猿』『犬死にの天才』……ドイツで多くの死者と更に多くの離職者を出す人物にふさわしい、なんともまぁ素晴らしい異名を持っておられる。きっと今回の作戦も多くの死人がでるだろうねぇ……」

「黙れ。今すぐに消え失せろ」

「消えるともさ。尤も、私達が温泉巡りから帰ってきた時、消えているのはキミかもしれないがね。せいぜいクビにならないよう局長と総議長に泣きつくといい。ヒヒヒヒヒ!!」

 

 キジマはマツリを嗤いながら部屋を後にした。

 

「……すまないが、集合は30分後に変更してくれ」

 

 怒りで真っ赤な顔をしながら俯くマツリは、震えた声でハイセ達に告げる。

 

 30分後の執務室には、先程まであった花瓶や椅子など、備品のいくつかがなくなっていた。

 




 有 給 申 請 
クインケ鋼輸送作戦はこの時点でも機密情報なので、対外的にはオークション掃討作戦しかありません。
なので、有給を拒否るための理由を上は出せないのです。
キジマさんと新人二人は素行が良くないので、漏洩リスクを考えるとクインケ鋼輸送作戦の事は話せません。
……まぁ、ニムラさんがVにいるので、もうすぐクインケ鋼輸送作戦の日程はバレるんですけどね!
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