原作より金額がインフレするオークション、始まりますっ!
「それで、ニムちゃんはどんな感じ?」
14区の『Helter Skelter』にて、ブギーマンの恰好をしたカオリはロウへニムラについて尋ねた。
ニムラは『人工喰種化施術』を受けるために、ロウへと預けていたのである。
「仕上がりは今まで以上ですわ。PGとアタクシの知識、そしてアタクシ達の経験を統合し、更に姉様の粉末をこれでもかと使用した最高傑作ですのよ!」
ロウは胸を張る。ニムラの施術は今までにロウが作ってきた人工喰種『カセット』『ディスク』『ブルーレイ』を大きく上回る程の出来栄えであった。
「今は力を付けるために『食事』をさせています。明日のオークションには問題なく参加できますわ」
「よかったー! それじゃニムちゃんには『スクリーム』を指揮して貰う感じで良いかなー?」
「ええ、問題ないかと。それでは『ピエロ』の皆様? 明日の予定について話し合いましょう。何せ色々と変更点がありますので」
ロウは鞄からノートパソコンを取り出すと、オークションの日程表を表示させる。
「ピエロの皆様は当初の手筈通り、オークションの司会進行を行って頂きますわ。本来ならばアタクシ達も最後まで司会進行を行う手筈でしたが、急遽予定が変更になっています」
ロウは画面を切り替えると、そこには地図とCCGの機密文書のコピーが映しだされた。
「この日、CCGによる『クインケ鋼の大規模輸送』が行われる事が判明しましたわ。そして、そこの護衛は『有馬班』である事も判明しています。よって、アタクシ達15区はオークションよりもこちらを優先させていただきますわ」
まるで狙い澄ましたかのようにオークション当日にクインケ鋼輸送作戦が行われる運びとなったため、ロウは急遽作戦の変更を余儀無くされた。
クインケ鋼を奪い取る事で、CCGは新たなクインケを易々と作れなくなるのみならず、15区側でクインケ鋼の研究を進める事ができる。これを逃す手は無い。
「この情報は『アオギリの樹』にも流しているので、恐らくアオギリもやってくるでしょう……そこでまずはアオギリとクインケ鋼護送班を争わせ、護送班の壊滅かアオギリの敗走を確認した後にアタクシ達はこれを強襲します。強襲の参加メンバーはライダーとパーシーを除くアタクシ含めた7区の従業員全て。フレディ、バァル、そして人工喰種達ですわ。アタクシ達は途中からオークションを抜けますし、姉様は更にその後で抜けますわ。ピエロの皆様はくれぐれもお忘れ無く」
ロウはイトリ達へ視線を向ける。
「あたしはヤバそうなら逃げるけどね」
「ふっふっふ……このロマさんにお任せあれ!」
「僕も久しぶりにカネキくんと会いたいからね。そっちこそ、有馬貴将に負けないでね?」
「オカマの魅力、みんなに教えてア・ゲ・ル」
ピエロ側の意気込みは充分。ロウは深く頷いた。
「詳しくは配った資料に目を通しておいて下さい。それでは、また明日お会いしましょう」
─────そして翌日、7区にある『ゼウムホール』にて、オークションは開催された。
ロマ、イトリ、ニコの3人が前座の道化師としてオークション会場を盛り上げ、会場は充分に温まる。
それを確認したウタは、おもむろにマイクを手にし、宣言する。
「紳士淑女の皆様! 大変ながらくお待たせ致しました! 名品珍品の集うオークションは数あれど、人・人・人……人間を扱うオークションは、カルテルと我々喰種の世界特有でございます!」
ウタは良く通る声を会場に響かせ、開幕の合図を始めていく。
「お帰りの際はくれぐれも『
舞台袖からゆっくりと現れたのは2体の喰種。その姿に、客席から悲鳴があがる。
一人は舞踏会用の仮面に青いドレスだが、もう一人は……黄色いエプロンに長靴、そして『白い髪をした男の顔を貼り付けたホッケーマスク』をしていたからだ。
「皆様ご存じ、セレブ界のトップ3に入る喰種であるレディ・ロウこと『ローリー・ストロード』! そして、そんなレディ・ロウを従える15区の喰種『レザーフェイス』ッ!!」
カオリの姿を見て、客の多くは逃げようとするが……。
「あー、あー、マイクは聞こえてるね。逃げようとしたひとは、今日のオークションに出品するよー! そもそも……ドアから出れると思わないでねー」
カオリが舞台に赫子を突き刺すと……遠く離れた全てのドアに『根の様な赫子』が生える。
退路を失ったことで、多くの喰種が悲鳴をあげるが……。
「皆様っ! ご安心下さい。皆様にとって『レザーフェイス』は恐怖そのものとは存じますが、本日に限っては皆様の味方でございます。これほど心強い味方はいないでしょう。そして、私達ピエロはレザーフェイスに『お客様を食べないでください』と伝えてあります! ……ですが、逃げる方、スポンサーの機嫌を損ねる方はお客様に含まれない事をご理解下さい」
ウタとカオリによる半ば脅しのような説得によって、客は恐る恐る席へと戻る。
─────その時、ホールの一角だけ今も騒がしい事にウタは気が付いた。
「……おや? どうやらこの中には『アオギリ』をボディガードとして雇っている方がいらっしゃるようですね?」
客達が目を向けた先には、白いスーツを着た喰種が仲間に取り押さえられている様子が映っていた。
「念を押しておきますが、そこの白スーツの方が我々に攻撃を仕掛けた場合、『雇い主を含めて』オークションにかけさせていただきますので、くれぐれも雇い主の方はお気をつけ下さい。さて、それでは改めまして、スポンサーからのご挨拶をお願い致します」
カオリは丁寧にお辞儀をすると、マイクに向かって話しだす。
「はじめましてー! レザーフェイスさんですよー! 人間って普通に売ると安くても20億位で売れるんだよねー。だから、みなさんはどんな値段を付けるのか、私は今からとーっても楽しみです! それと、今回はろーちゃんをも仰天させた『至高の美食』を出品しているので、奮ってご参加下さーい」
カオリは会場へ手を振ると、ロウにマイクを手渡す。
「皆様ご機嫌よう。本日は参加者ではなく主催者側として参加致しました。姉様が提供する商品は全部で5つ。どれも至高の逸品ですので、是非お買い求め下さい。また、姉様が出す商品は、値段が非常に高騰されることが予想されますので、お近くの方と資金を共有して頂いても構いません。本日は宜しくお願い致します」
カオリとロウは舞台袖へと引っ込み、ロウは手早くドレスを脱ぎ『ブギーマン』の衣装へと着替える。
「それでは姉様、アタクシ達はクインケ鋼の奪取に向かいます。しばらくしてから姉様もいらして下さい」
「もちろん。出品が終わったらそっちにいくよー」
カオリをオークション会場に残し、ロウ達はひっそりとオークション会場を脱出した。
──────────
「もしもし、こちら六月三等です。本部応答願います……ダメだ、通信が繋がらない……」
ムツキは暗い部屋の中に独り閉じ込められていた。
ムツキはハイセ達と共にナッツクラッカーが運転するワゴンに乗り込んだが、道中でナッツクラッカーにより睡眠ガスを車内に散布され、寝ている間に分断されてしまったのだ。
「私はどうすれ……ッ!?」
突如部屋の中に光が射し込むと同時、ムツキの全身に何かが巻きついた。
「おはよーございまーす」
「なッ!? う、嘘だ……」
声の主を見た時、ムツキには絶望が走る。
黄色いエプロン、人の皮を貼り付けたホッケーマスク。それは紛れもなく……。
「嘘じゃないですよー? レザーフェイスさんですよー!」
SSSレートの喰種『レザーフェイス』だった。
「いきなりだけどちょっと味見するね?」
「へ? ぁぎぃ……ッ!?」
レザーフェイスはムツキの太股を抉ると、その肉を口に入れる。味わうようにゆっくりと咀嚼すると、何かを納得したかのように頷いた。
「なるほどねー、ムツキさんはシラズさんやヨネバヤシさんと同じように、みんな味が結構違うんだねー。
「な、なんで……?」
仲間の名前だけでなく、クインクスであることまでバレている。その事実にムツキは戦慄した。だが、ムツキの驚きは終わらない。
「んー? ライダーちゃん……んっと、そっちの名前だと『なっつくらっかー』だっけ? ライダーちゃんを使ってあなた達をおびき寄せたんだから、知ってるに決まってるじゃん? でも、クインクスだけじゃなくて歯茎さんとジェイソンまで引っかかってたのは嬉しい誤算だったよ? それじゃ、また暗くするね」
ムツキに巻き付いた赫子は、全身へと広がっていく。
「ま、待っ……!!」
全身を赫子に包まれたムツキは、レザーフェイスの背に生えた木の様な赫子に、『果実』のように吊るされる。
生える果実は全部で5つ。その果実の中でいくら暴れようとも、それが外に伝わる事は無い。
──────────
「はい、それでは40万で落札です! 手早い競りでこちらも助かります。続いては、なんと俳優の『大倉ヨシキ』となります! ドラマ『ブレインボール』の主演でお馴染み、彼の演技に涙した方も会場にいらっしゃるのでは? 1000万からスタートです!」
助けを求めて泣き叫ぶ俳優を横目に、客達は次々に値段をつけていく。
「人間ってこんな値段で取引されるんですねぇ……僕のタクシー時代の何年分だろう」
そんな姿を、ボディガードとして会場にいる『トルソー』こと冴木は興味深そうに見ていた。
「価値は人それぞれだからな。さっき40万で落札された女、あれは『バラ撒き用』でカタログにすら乗ってない安物だ。上流の連中は手を出さないが、そこそこの喰種には手頃な価格帯だ」
同じくボディガードとしてここにいる『霧嶋アヤト』が冴木の問いに答える。
彼らは『アオギリの樹』として三大セレブ喰種の一人である『ビッグマダム』の護衛についているのだ。
『さぁさぁ、現在入札の意思がございますのは1番の方と33番の方! 一騎打ちとなりました!』
「アヤトくん、33番の人は?」
1番のプレートを持っているのは、雇い主であるビッグマダム。冴木はその対戦相手が気になった。
「奴は『クロックムッシュ』って呼ばれている。どうやって稼いでいるのかは知らねーけど、ビッグマダムと同じく三大セレブ喰種の一人だな」
「もう一人のセレブは?」
冴木の質問に、アヤトは小さく舌打ちをする。
「……さっき会場で挨拶した15区の喰種『ランサー』だ。アイツの稼ぎは略奪と人身売買だろうな。かくいう俺達もアオギリの資金源を殆どアイツ等に奪われちまってるから、こっちとしても潰しておきたい相手ではあるんだが……」
「いやいや無理でしょ? レザーフェイスの赫子、後ろのドアまで届いてましたよ? だからさっきナキさんを止めたんですよね? ナキさん程度じゃ勝てるわけが無いから」
会場から下がらせている『ナキ』もとい『旧ヤモリ一門』の喰種はレザーフェイスと深い因縁を持っている。レザーフェイスを見たナキはすぐさま飛びかかろうとしたが、アヤトはナキを押さえつけていたのだ。
「お前、ナキの前でそれ言うなよ? アイツはレザーフェイスを殺すために鍛えてんだからな……つっても今のナキじゃ無理なのは俺も同意だ。そもそもタタラやエトですらダメだったからな……増やした仲間も『フレディ』が殺し回りやがるし……」
『3400万で33番の方が落札! それでは次の商品に移ります!』
どうやら俳優を
「アヤトくん」
「どうしたヒナミ?」
ふとそのとき、アヤトの隣にいたヒナミが声をかける。
「お兄ちゃんの……ニオイがする」
「……なんだと?」
お兄ちゃん。それは死んだハズの『カネキのニオイ』。アヤトは首を傾げるが、その理由はすぐに分かった。
『さぁ皆様!! お待たせしましたぁ!! 本日の目玉イベント!! 東京で最も多くの人間と喰種を食してきたエンプレス・オブ・グルメ! レザーフェイスによる『至高の美食』が出品されます!!』
会場の舞台袖から、ゆっくりとレザーフェイスが歩いてくる。
「うわぁ、なんか木みたいな赫子が生えてる……」
「冴木、油断するな。あれによって殺されてきた奴らを、俺は数多く見てきた」
アヤトは14区に居た頃を思い出す。今近寄れば、間違いなく自身も『果実』の仲間入りをするであろうことも……。
「あの左から2番目の実……お兄ちゃんのニオイ……」
『それでは、ここからのオークショニアはレザーフェイスさん、お願いします!』
『あー、あー。こんにちはー! みんなのオークション、じーっくりと見せて貰ったよー? でもさ、私言わなかったかな?
─────刹那、会場全体が揺れる。
「ひっ……!? ア、アヤトくん! 逃げ道を塞がれてる!!」
「落ち着け冴木、慌てたヤツから死ぬ」
会場の壁、壁、壁……いたる壁に黒い根のようなモノが張り付いていた。
『あ、もしかして、私が出す商品のために節約して待っててくれたのかな? ならごめーんねっ』
自己解決したのか、会場に張り付いた根が引いていく。その様子に、会場の喰種達はホッと息をついた。
『それじゃ、さっそくやっていくよー! まずは商品の紹介から!』
レザーフェイスは背中に生えた『果実』を開く。そこには5人の人間が縛り上げられており……。
「お兄ちゃん!!」
「トオルゥ!!?」
「ジューゾーちゃん!?」
ヒナミ、冴木、ビッグマダムが揃って叫び声をあげた。
『さぁさぁ、まずは右から紹介していきましょう! 右から『ムッチャン』『シラギン』『サイコ』! 3人共『隻眼の喰種』です!!』
隻眼の喰種。伝説ともいえる存在に会場は大いに沸き立つ。
「ア、アヤトくん!! トオルを!! 『ムッチャン』を落札して!!」
冴木はムツキに惚れており、それが原因で顔バレに繋がった。
それでもなお、愛しのトオルを手に入れたい冴木だが……。
「馬鹿いうな。さっきのレザーフェイスの話聞いてたのか? 最低でも20億だぞ」
「そ、そんな……トオルが競られちゃう!!」
20億どころか、その1000分の1すら持っていない冴木は、両手を顔に当てながら叫んだ。
『おっとっと、驚くのは早いですよー? 右から4番目の白髪さん、この人こそ至高の美食!! そして! かつて『眼帯』と呼ばれた隻眼の喰種!! 『ハイセ』ッ!! この美味しさを知ってしまえば、何十億ものお金でも端金に思えるでしょー!』
眼帯……かつて6区を拠点にし、共食いを繰り返し行っていた恐ろしい喰種だ。
だが、その肉は21区の
そんな『眼帯の喰種』が出品された。あまりにも大きなネームバリューに、会場のボルテージは最高のテンションを叩き出す。
『しーかーもー! 33番さーん! このハイセはあなたの子供の命を救うよ? さぁ! あなたは自分の子供にっ! いくらの値段をつけるかなー! ふふふっ、それじゃあ次は1番の人が気になっているこの子! この子は喰種じゃないけど、かつてセレブ界を賑わせた伝説の飼いビト! 『ジューゾー』!!』
「ジューゾーちゃーん!! 絶対に落札してあげるからねー!!」
隻眼の喰種、眼帯、伝説の飼いビト。どれも凄まじいラインナップに、会場は15区の凄さを再認識した。
『さてと、今から少し時間を設けますよー? 最低価格は20億からですが、それだと払えない人もいますよねー? 私としては人間を買うのにそれしか持ってきてないのが驚きなんですけどねー。なので! 私の競りに限り、今までオークションで手に入れた人間を落札時に人間一人で10億円分という事にしてあげます! つまり足りない分は『革命的現物払い』ってやつですねー! そして、グループになってもいいですよ! みんなで高値を出してねっ!』
「アヤトくん! お兄ちゃんを買って!」
「アヤトくん! トオルを買って!!」
「ああもう! 無茶言うんじゃねぇよ!! アオギリは資金難だって言ったじゃねぇか!」
アヤトは頭をかきむしる。想い人が絡むと、冴木もヒナミも盲目であった。
──────────
「さぁ、みんな準備はいいかなー? それじゃあまずは羽赫の隻眼! 『シラギン』からいってみよー!」
『20億1514万1520円!』
「おっと! 240番の人、買った人間と手持ちの全資金かなー? 他にはー?」
『21億!』
『30億30万3500!』
「人間払いを許可したせいか、みなさん懐があったかいですねー! どんどんいこー!」
『40億!』
『50億10万5000!!』
『50億6300万!』
「さぁさぁ、隻眼のシラギンは50億6300万! 60億出す人はいますかー? いませんかー? なら50億6300万で115番のオカマさんが落札ー! 続いては鱗赫の『サイコ』! 『眼帯』の次に美味しい彼女はいくらになるのか! まずは20億から!」
『20億1514万1520円!』
『40億12万1642円!』
「また出たー! 240番の初手全資金投入! だが433番も全投入!! もし落札できちゃった時、帰りのお金はどうするんですかねー」
『50億1万3000円!!』
「ここで安物を買いあさっていた522番も参戦! どうなるサイコ! いくらになるのかー!」
『60億!』
『60億300万!』
『60億6000万!!』
「さてー? 60億6000万。それ以上出せる人はいるかなー? 居ないなら365、366、367番の三人組がサイコを落札ー! ちゃんと分けあって食べるんだぞー? 美味しさに魅了されて仲間割れするなよー! それじゃー次は尾赫の『ムッチャン』!! っとその前に……おーい! そこのフードのおにーさーん!!」
カオリが手を振る先には、冴木の姿。
「え? 僕!?」
「オナホー! ムッチャンを落札したいかー!!」
カオリの呼びかけに、冴木の言葉はただ一つ。
「落゛札゛じ゛た゛い゛っ゛!!」
「よしよーし! なら貴方の持ち金は、そこの兜を被った女の子の150億でどうかなー! あ、男の子の方を追加で50億! あわせて200億でどうかなー?」
冴木は血走った目でアヤトとヒナミを見つめる。
「ね、ねぇ、トオルのためだから……良いよね?」
「ふっざけんな!! 俺とヒナミを殺す気か!!」
「んー、兜の子は殺さないよー? その子は15区の新たなメンバーになれるだけの才能があるんだよー! でも、男の子の方はアオギリ幹部だとか、SSレートのラビットだとか言われてるみたいだけど、私にとっては綿埃程度にも価値がないよ? だから50億はバラバラにした各部位の総額としての値段だよー!」
カオリの放った一言に、アヤトの心は大きく痛む。かつて14区で受けた屈辱の日々が、アヤトの心に蘇っていく。
「いつまでも……綿埃扱いするんじゃ……」
「私、150億でいいです!!」
「ヒナミっ!?」
「でも、私の代金でお兄ちゃんを……『眼帯』を助けて!」
ヒナミにとって、誰かがカネキを落札した場合、生き残れる確率は殆どない。至高の美食であるカネキは、間違いなく食されるからだ。
「素晴らしい兄弟愛! オナホーはどんまい! 『ハイセ』は150億からのスタートになります!! それではムッチャンの競りに移りましょう! フードのお兄さんの掛け金『50億』からスタートです!」
「ハァッ!? 俺は自分を売るなんて言ってねぇぞ!!」
アヤトの叫びは無視され、オークションは続く。
ムツキは60億2500万で落札された。冴木は後二人、安い人間を買えていればと後悔した。
「255番のオナベさんが60億2500万で落札ー! あーちゃんは命拾いして良かったねー? それじゃあ次にいってみよー! ついにお待ちかね至高の美食『ハイセ』のオークション開始!! 兄を想う健気な少女による150億、ついでにあーちゃんの命を合わせて200億からのスタートです! さぁ、誰かいるかなー?」
『205億』
「でたー!! 33番と110番! 愛する一人息子を救う為に、少女の祈りをぶち壊したー!! これが愛と愛のぶつかり合いか! 205億! 数人しかオークションで買っていないこの二人組、ほとんど現金一括払いだー!! 私も150億円の価値があるあの子と、ついでにおまけが手に入らなくて残念だー!! でも数百億円の現物は純粋にうれしー!」
ヒナミは崩れ落ちる。自身が落札できなかったということは、カネキを救う手立てはほぼ失ったと見ていい。
その傍ら、アヤトは胸をなでおろす。カオリの恐ろしさを良く知るアヤトにとって、自身が換金されれば逃げられない死が確定していたのだから……。
その後、33番と110番……つまり月山家当主と使用人コンビを超える金額を提示できる者はおらず、ハイセは205億で落札された。
「それじゃあ、最後の箸休め。伝説の飼いビト『ジューゾー』の競りだけど……この子も200億からスタートさせて貰うね? 私としても、美味しさはともかくこの子にはそれだけの価値があるからねー」
『222億4500万!!』
「おー、1番の御婦人! オークションで買った全部を手放したー! それほどまでにかつての飼いビトを取り戻したいかー! 落札!」
最後の二人は最上流喰種の独壇場になってしまったが、オークションは最高潮で幕を閉じた。
仲 間 に 売 ら れ る ア ヤ ト
「ちくしょう……お前等いつか駆逐してやる!!一匹残らず!!」
「ご、ごめんねアヤトくん?でもお兄ちゃんを助けたくて……」
「ごめんね?僕の宝物、ぷにあなSPDXあげるからさ。元気だしてよ……」
「うるせぇ!!」
■オークション会場の愉快なお客達
・1番「隻眼は惜しいけどやっぱりジューゾーちゃんよね!というかレザーフェイスの野郎……こっちで雇った護衛を勝手に賭けやがって!あああああああ!!罠師をあの時ブッ殺しておくんだったッ!!」
・33番「習くんのため、彼は私達が頂きます」
・110番「全ては習サマのために……でも、お金は大丈夫なんだろうか? 今月給料払われるかな?」
・115番「ンフッ……シラギン……たっぷり愛してア・ゲ・ル♪」
・240番「くそっ!残りの1500万で、もうちょっち買っておくんだった!」
・255番「レザーフェイス……なんで我輩が女だと分かったんだ?だが、フフフ……ムッチャンはキレイだなぁ……」
・365番「デュフフwww同志達と一緒にサイコたん買ったお!!」
・366番「オウフwwwぷにぷにでカワユスなぁ!!」
・367番「コポォwwwレザフェ氏の言う通り、しっかり分け合うでござるよwww拙者お尻キボンヌwwww」
・433番「むしろ落札できなくて良かったかもな。帰りの金無くなるところだったし……俺は4人の安物で充分さ」
・522番「3人に勝てるわけないだろ! 俺も誰か仲間を作っておくべきだったか……サイコちゃん食べたかったなぁ……」
※なお、クインクス達の商品名については、米林才子三等捜査官が付けたあだ名になっています。
つまり、米林さんは暗いコンテナの中二人っきりでカオリから尋問されたことを意味します。
怪我こそ負ってませんが、SSSレートの一番やべーやつに脅されながら尋問されたという状況は相当な精神ダメージになっているようです。