花屋喰種   作:みぞれアイス

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第9話 認証破壊アウトソーシング

 自宅にて、カオリはアタッシュケースからクインケを取り出そうとしたが、アタッシュケースのボタンを押してもクインケが出てこない。

 

「これは……たしか『せーたいにんしょー』とか言うんだったかな……? 困りましたねー。クインケはこの箱に入れておかないと劣化して壊れちゃうから、箱を壊すわけにもいかないし……」

 

 その後、針金を使ったピッキングを試すが、開くことはなかった。

 

「うーん……こんな時は『ヘルスケ』かなー?」

 

 カオリは愛用の125ccスクーターに2つのアタッシュケースを載せ、14区へ向かった。

 

 黒いツナギにハロウィンマスクを装備したカオリは、14区にある『Helter Skelter』のドアを開けた。

 

「こんにちはー」

「ちょっと! まだ開店前なん……あー、レザーフェイスさんか……」

 

 出迎えたイトリは、ちょっとバツの悪そうな顔をしている。

 

「ふふふ……ニコさんって()()()()だったんですねー?」

 

 カオリのセリフに、イトリは溜め息を吐いた。

 

「はぁ……やっぱりかぁ……確かにアイツはあたしの仲間だね。そんで、あなたの食事、しかも()()()()()()()を邪魔しちゃったと……アイツはアオギリの情報全部喋ったらしいけど、それだけじゃ駄目? アイツもあなたと鉢合わせたのは事故みたいなもんだし、大目に見てくれると嬉しんだけどなぁ」

 

「んー? 別にイトリさんのせいではないので、責めたりしませんよー? でも、情報を割引してくれるなら嬉しいですねー! それじゃ、さっそく情報を買いましょうかー。これですよー」

 

 カオリはカウンターに2つのアタッシュケースを置いた。

 

「んぁ? それって捜査官(ハト)の使うクインケ? それを売りに来たんなら分かるけど、情報って何をお求めで?」

「私でもこのクインケを使う方法を教えてくださいなー」

「ほほぅ? その情報は確かに持ってるけど……でもクインケなんか使わなくても、レザーフェイスさんの赫子がありゃ充分なんじゃないの?」

 カオリの強さを知るイトリにとって、カオリがクインケを使う必要性を感じられなかった。

 

「……まー、レザーフェイスさんにはレザーフェイスさんなりの考えがあるってことか。そんじゃ、どの方法が良い? あたしに任せるか、自分で解除するか。あたしに任せるならそれなりの料金もかかるし、今回しか使えないけど、ちゃんと使えるようにはするよ? んで、自分で解除するならあたしはやり方を教えるだけ。それで使えるようになるかはレザーフェイスさんの腕次第。料金はどっちを選んでも同じにしといたげる。そだね……料金は……でどうよ?」

 

 イトリはカオリに金額を告げる。その金額はたとえ割引されていたとしても、とても一般人が払えるような金額ではなかった。

 

「それじゃ、イトリさんにお願いしまーす」

 

 しかし、カオリはお金に困っていないため、これを快諾。

 

「まいどありー。それじゃ、ちょっちクインケ預かるよ。すぐ終わるから、てきとーにワインでも飲んでてよ」

 

 イトリはカオリに血酒のボトルを渡し、店の奥へと入っていった。

 

 

「ほいお待ちどさん……うげ、ボトル全部開けたのか。そんだけ飲んで殆ど酔わないってのも凄いのよ? ウチの血酒って結構きっついヤツ揃えてっからねぇ」

 

 カオリがイトリから受け取った血酒を飲み干してしばらく経った頃、イトリがカウンターの奥から帰ってきた。

 

「ほい、これが新しいアタッシュケースね。認証を取っ払ってるから、誰でも使えるようになってるよん。つまり、相手に奪われたらそのまま相手も使えるようになってるからね?」

 

 カオリは新しいアタッシュケースを受け取り、スイッチを押す。

 

「おおっ! ありがとうございますー。これで私も捜査官さんですねー」

 

 その手にはクインケが握られていた。

 

「ちょっ、それ振り回さないでよ? あたしはレザーフェイスさんと違って斬られりゃ死ぬぞ!」

 

 クインケを振り回そうとするカオリを、イトリは慌てて止める。

 

「そうだ! 今ちょうどアオギリ関連でさ、14区の南側にアオギリ来てるっぽいのよ? 来てるのは幹部でも何でもない奴らっぽいんだけど、ほら、喰場荒らされてるよレザーフェイスさん! そのクインケの試し切りはここじゃなくてそいつらでやったら良いんじゃないかな!」

 

 イトリのその言葉に、カオリはクインケをアタッシュケースへ戻した。

 

「それもそうですねー。それじゃ、ちょっと掃除と食事をしてきますねー」

 

 カオリはイトリに見送られ、『Helter Skelter』を後にした。

 

 

「……はぁーっ。なんで店やる前にこんなに疲れてんだろあたし……今日臨時休業にしよっと……これもそれも全部あのオカマのせいね。今度シバくわ」

 

 どこかにいるオカマに怒りを込めつつ、イトリはカウンターに突っ伏した。

 

──────────

 

「ギャハハハハ! 弱ッェェェェエエエ!!! アオギリだっけかぁ? お前らそんなダセェマスクで強者気取ってんのォ? 従えだぁ!? こちとら14区でシノギ削ってんだよォ!! 余所(よそ)じゃテメェも強ェのかもしんねぇけどなぁ、赫子もロクに持続できねぇ雑魚が粋がってんじゃねぇぞッ!」

 

 日が沈んだ頃、路地裏にてドクロのマスクを被った喰種達が、いかにもチンピラ然とした男に暴行を受けていた。

 

 そのニオイを嗅いで来たのか、複数の喰種達がやってきた。

 

「た……助け……」

 

 ドクロのマスクを被った喰種は、やってきた喰種たちに助けを求めるが……

 

「お、喧嘩か?」

「共食いか?」

「俺も仲間に入れてくれよォ!?」

「ヒャッハァー! テメェらみんな死ねやオラァ!」

 

 しかし、彼らは決して助けに来たわけではない。

 ここは共食いの14区。互いがエサの14区。

 

(なんて強さ……これが14区……これでは作戦に支障が……)

 

 アオギリの樹に所属していた喰種は瞬く間に殺され、次なる獲物を求めあって殺し合いが始まった。

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 しかし、彼らとて決して勝利者であり続けるわけではない。

 

 今宵の勝者が持つはクインケ。その血に塗れたクインケは、月明かりで妖しく輝いていた。

 

 




 何 で も 屋 イ ト リ 
イトリさんの所属している組織には喰種捜査官のあの人がいるので、CCGの技術は知ってそうですよね。なら認証回避策も持ってるんじゃないかなぁと。本作では『Helter Skelter』が割とご都合主義な存在だったりします。

Helter Skelterに行けば大体なんとかなるのは、ゲームの【東京喰種JAIL】でもおなじみの展開。
ただし、相応の対価は必要ですけど……
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