レザーフェイスが去った後、初めにジューゾーが行動を起こした。
「会いたかったですよ。ママァ!!」
「ジューゾーちゃギャバッ!?」
「くっ、式にゴミが……」
ジューゾーの義足からいくつものナイフ型クインケが飛び出し、ビッグマダムとウタの顔面をハリネズミにする。
ジューゾーの突然の行動に、会場はパニックになった。
「うわあああ!! レザーフェイスが居なくなった途端暴れだしたぞ!!」
「ヤバいぞ!! 俺達じゃ鈴屋に殺されちまう! ビッグマダムは何やってんだ畜生め!」
慌てふためく会場の喰種達に対し、極めて冷静な喰種がいた。それは、ハイセを落札したクロックムッシュである。
「クロックムッシュ様!」
「うん。ほらこの通り」
ハイセが動き出すよりも早く、クロックムッシュは注射器をハイセの眼球に突き刺し、Rc抑制剤を流し込んだ。
「っぎゃぁぁあああああ!!!」
「煩いぞ美食。大人しくしろ!」
110番のカードを持った女は、ハイセの顎を殴り抜く。
頭を揺らされたハイセは、ぐったりとクロックムッシュにもたれ掛かった。
ハイセが気絶した事を確認すると、クロックムッシュ達は大ホールの出口へと走る。
「やべぇ、サッサンが連れてかれた! っこの、離しやがれぇ!!」
「ッアァン!!」
「才子ぉ! 援護するぜ!!」
シラズはオカマの喰種を殴り飛ばすと、才子を捕まえている喰種達に羽赫を撃ち出した。
「ウボァ!」
「モルスァ!」
「ひでぶっ!」
「けほっ……サンクスシラギン! むっちゃんこ! 大丈……ぶ?」
才子がムツキの方を見ると、男装の喰種がトルソーによって突き飛ばされていた。
「トオルゥゥゥウ!! 落札できなかったけど僕は君と一緒だよぉぉ!!」
「うわぁぁああああ!?」
「むっちゃんから離れんか窓シコ野郎ー!!」
才子は咄嗟に拳型の鱗赫を生やし、トルソーを殴り飛ばす。
「ごべぱっ!?」
「トオル! 大丈夫か!」
「う、うん、大丈夫だよシラズくん。才子ちゃんもありがとう。先生を追い掛けよう!!」
シラズ達はハイセを取り戻すために、クロックムッシュを追い掛けるが……。
「シィラギィィン!! 逃がさないわよォ!」
「サイコたんは俺達の嫁にして肉!」
「色んな意味で味わうでござるよ!」
「我等醜い三連星、サイコたんにジェットストリームアタックをかけますぞ!」
「トオルゥゥゥウ!!」
「待て貴様!! ムッチャンは我輩のモノだぞ!!」
「「「うわぁぁぁこっちくんなぁぁあああ!!」」」
6体の喰種達もまた、シラズ達を追い掛けるのであった。
──────────
「クロックムッシュ様、目的地は裏口なのでは?」
「ええ『執事長』。恐らくレザーフェイスは裏口から外へ出ているハズ。ならば捜査官達は全滅しているでしょう。僕達もそこから出ますが、まずは攪乱のために管理棟付近まで行き、そこから裏口へ向かいます」
33番のクロックムッシュこと『月山
なお、実際カナエは執事長ではない。咄嗟の呼び名であった。
「クロックムッシュ様、眼帯は私が運びます」
カナエと共に行動をしていた『松前』が、ハイセを運ぶと申し出るが、ミルモは首を横に振る。
「ふむ……『メイド長』には申し訳ないけど、彼は僕に運ばせてくれるかな? これは習くんのためのプレゼント。パパとして僕の手から届けたいんだ」
「かしこまりました……ところで、後ろから着いてくる者達はいかがしますか?」
松前はチラリと後方を見る。そこには3人のクインクスと、更にその後ろから6人の喰種達が走ってきていた。
「ひとまず経路を遮断しましょうか。メイド長、やってくれるね?」
松前は甲赫の喰種であり、『分離する
「お任せを」
松前は通路に荊を張り巡らせ、後続の経路を遮断する。
経路を遮断された後続の者達は、別の扉へと抜けていった。
「お見事。迂回した彼らと鉢合わせない様に急ぎましょう」
後続を振り切ったクロックムッシュ達は管理棟を目指して走るが、その行き先に立ちふさがる者が現れる。
「行かせません」
それは兜を被った少女。『アオギリの樹幹部・ヨツメ』こと笛口ヒナミであった。
「おや、貴女は150億のレディ。残念ですが、彼は私達が落札しました。これは正当な取引です。淑女たるもの、潔く引いて欲しくはありますが……」
ヒナミは背骨のような蛇腹剣に似た鱗赫を4本展開し、クロックムッシュ達へ叩きつける。
だが、カナエもまた触手型の鱗赫を4本展開し、ヒナミの鱗赫を相殺した。
「でしょうね……自らを悪魔のいけにえにしても彼を助けんとするその自己犠牲。美徳ではありますが、私達にとって些か厄介ですね……」
ヒナミは
しかし、今度は松前が左腕にシールド型の甲赫を展開してヒナミの赫子を防ぎ、右腕に展開したランス型の赫子で突き返した。
「ふむ……その赫子、レザーフェイス氏のクインケと同じ形ですか……そして15区に勧誘される程の逸材……これは僕達が想定する以上の難敵かもしれませんね……執事長、メイド長、油断しないように」
ミルモはハイセを床に下ろし、自らも剣型の甲赫を腕に纏う。
今ここに、月山家主従トリオとヒナミの戦いが……。
「よーぅチャンヒナァ? ピンチかぁ?」
─────始まらないッ! 更に新たな乱入者が現れた。
「オウルさん!? 良かった、協力して下さい!」
「良いゼェ。もぎもぎフルーツにしてやんよ」
ここに、月山家主従トリオとヒナミ&オウルコンビの戦いが始まった。
──────────
「クソッ! 塞がれた……こっちだ!」
荊の赫子によって道を塞がれたシラズ達は別の道へと進み、その扉を蹴破る。
すると、そこには真戸班と鈴屋班のメンバーがいた。
「お前達! 無事だったか!」
「真戸上等! 瓜江も助けに来てくれたんだな!!」
「(佐々木は居ないのか?)シラズ! 米林とムツキも無事か!」
「先生がRc抑制剤を打たれて攫われました! 助けに行かないと!!」
「シラギンもむっちゃんこも違わい! ウチらを追っかけて敵が来てる!!」
才子の言うとおり、すぐさま喰種達かやってくるが……。
「イヤァン!
「オウフ! これは不味いですな?」
「ドプフォ! サイコたんどころの話ではなくなったのですぞ?」
「フォカヌポゥ!? ……ですが拙者達、サイコたんを買うために3000万以上課金した重課金兵。ここで引くわけにはいかぬでござる! でも誰か先に行くでござるよ」
「トオルトオルトオ……ハトォォオオッ!?」
「ええい、黙れオナホーとやら! ムッチャンは我輩のモノだと言っておろうが!!」
─────その珍妙な6人組に、捜査官達は妙な空気に包まれる。
「(ダサい服のやつ3、オカマ1、ゴテゴテしたやつ1、トルソー……なんだこの組み合わせは?)シラズ、こいつらはなんだ?」
「俺達を落札したヤツらとトルソーだ! オカマが俺、ダサい服の三人組が才子、ゴテゴテしたのとトルソーがトオルを狙ってる!」
シラズは瓜江に喰種の説明をするが、それは瓜江が知りたい情報ではなかった。
「(違う、そうじゃない)強さはどのくらいだ?」
「分かんねぇ。サッサンを追いかけてたから戦ってねぇんだ」
「(役立たずが……)ひとまずお前等のクインケを受け取れ。それと、例のモノを人数分だ」
瓜江はシラズ達へアタッシュケースと小箱を放り投げる。
「おおうっ!? これベイマーズが浮浪者のおっさんと戦ったときのハンマーやんけ! 才子は才子にエロ同人しようとしたヲタ共に『縦3』すればええんか!? それに、シラギンはライフル……もといライトボウガン! むっちゃんこは双剣! ウリの赫子は槍っぽいしクインケは太刀やし、ウチらはグールハンターや! 閃光玉と粉塵は任せたぁ!!」
「ありがとう瓜江君!」
「なんだこれ? 俺のは今までの『ツナギ』じゃねぇのか?」
ムツキのクインケは今まで通りのナイフ型の双剣だが、シラズと才子のクインケは今までと違うものであった。
「米林のクインケは『ぼくさつ2号』、見ての通りハンマーだ。シラズのクインケは『ヴァイス・トート』、単発高火力と拡散型の切り替えができる羽赫だ。赫子の合間を縫って撃て。お前の赫子より速度が出……」
「うぉーぉぉぉおおお!!」
瓜江が話している途中だが、才子は巨大な杭のような赫子を展開し……。
「
6体の喰種めがけて撃ち出した。撃ち出された赫子を男装の喰種と女装の喰種は素早く身を躱して回避するが、その後ろに居たブサイクな三人組を貫いていた。
「お……オウフ……痛いでござる……」
「デュ、デュフフ……」
「サイコたんを貫くはずが、拙者達が貫かれたでござる……無念……」
串に刺さった団子三兄弟は悔しそうな顔で生命活動を停止……死んだのだ。
「スゲェ……さすがクインクスの適性ナンバーワン……」
「それにしても……今日の米林は随分やる気だな?(普段からそうしろ米林)」
才子は家庭が貧乏であったために、補助金目当てで親がクインクスを決めたという経緯があり、当人の意欲は極めて低い。
だが、今日の才子はやけにやる気のようだ。
「今日の才子はマジサイコ100! エロいねーちゃんに騙されて捕まって、おっかないテキサスの殺人鬼に殺されかけて情報吐かされて、変態共に買われそうになって……もう限界じゃー!! さっさと終わらせて
それは言わば極度のストレスによる反動であった。だがその結果、才子の脳内にはあらゆる脳内物質が駆け巡り、才子の力を限界まで引き出していたのだ……!
「フン、露払いにもならない俗物共が。おいオカマ、たくさん良い男が居るぞ。男は全部くれてやるから、我輩はムッチャンだけでなく、サイコと金髪の子を狙わせてもらうぞッ!」
男装の喰種は3本の尾赫を生やし、団子三兄弟を赫子で巻き取ると……。
「
意味も無く技名を叫び、その死体を捜査官達に投げつけた。
「ウフッ、技名なんてワタシ持ってないわよォ? そうねぇ……『オカマ真拳奥義・トーピードオブエラストマー』ッ!!」
「……えっ!? ちょっ、ま……!?」
オカマの喰種はトルソーを捜査官達へ投げつけると、
「ワタシは逃げるわよ! シラギン! いつかアナタのヴァージンをぶち抜いてみせるわよぉおおおお!!」
「……は? おい逃げんなオカマァ! 『卑遁・
男装の喰種は逃げるオカマに赫子を巻き付け……。
「ちょっと! ワタシを離しゴルパァッ!?」
─────シラズが放っていたミサイル型赫子の盾にした。
「貴様が逃げるなら我輩が先に逃げるわ! さらば!!」
男装の喰種は振り返ることなく、来た道を全力で走り……。
「あんていっく
窓をぶち破って外へと飛び出した。
「アァン!! か弱いオカマを置いていかないでぇぇえええ!!」
オカマの喰種も即座に立ち直り、割れた窓から逃げ出していった。
「……なんだったんだアイツらは」
珍妙な相手のペースに始終呑まれていたアキラは、唖然としながら呟く。
「……まぁいい、トルソーを確保だ。トルソー、動けば殺す。一切動……ッ!?」
だが、トルソーにも救援が現れる。猛スピードで突っ込んできた何者かに、トルソーを奪われたのだ。
「ヤツは……ラビット!!」
黒いウサギのマスク。それはトルソーの自宅で下口班を急襲したSSレートの喰種『ラビット』であった。
「私と瓜江はラビットを追う! シラズは米林とムツキを連れてハイセを追え」
「了解!」
「おっと、我々鈴屋班は鈴屋先輩に『ジェイソン』をお届けせねばならないので、これにて御免」
アキラと瓜江はラビットを追って東棟方面へ、シラズ達はハイセを追って管理棟方面へ、鈴屋班はジューゾーが居るであろう大ホールへ、それぞれの目的を目指して走り出した。
──────────
「ニコが会場から逃げたわよ。クインクス落札しといて情けない……アイツふざけ過ぎじゃないの? ……あ、ごめん、あたしも逃げるわ。向こうから平子班来てる」
「おっけー! 後はこのロマさんにお任せ!」
「またね……ふぅん、平子さんか」
イトリが走り去ると、ウタ達の元へ平子達がやってきた。
「やぁ平子さん、久し振りだね」
「下口上等がまさかのダークホースだったとは! うろたんビックリだぁ! んで、そっちは2人撤退してるし、たった4人で私達に勝てるのカナー?」
悠然と佇むウタに、ケラケラと嗤うロマ。
「タケさん、アイツ等はまさか」
「ああ、ピエロの残党だ。男の名は『ノーフェイス』。女の方はコクリアのSSレートに収容されていた『ジプシー』。どちらも強さはオロチより上だ」
ノーフェイスとは、かつて何十人もの捜査官を殺害した凶悪な喰種であり、有馬貴将の出撃が要請された程の強者だが、ここ10年近くはナリを潜めていた存在である。
そんな喰種の大胆な出現に、平子は15区の喰種達との関連性を考えるが……。
(いや、俺が考えることではないな。今俺がやるべきことは、人命の救助だ)
敵側に情報が漏れており、平子班の4人、真戸班、鈴屋班以外の正面突入組は全滅。迂回した大芝班とも連絡が取れないため、平子は大芝班も全滅したのだろうと考えた。
当初の十分の一にも満たない戦力となった今、和修准特等がなんとゴネようがオークション掃討戦は失敗だ。だが、例え作戦が失敗しようと、オークションの商品にさせられた被害者の救出をしなくてはならない。
真戸班も鈴屋班も、喰種を倒す事に重きを置きがちであるがゆえに、平子班は人命の救助を優先して動いているのだが……。
「平子さん、僕達が主催者だよ。15区のみんなはもう居ないし、受け渡しは有耶無耶になっちゃったから、僕達が商品の扱いを自由に決めれるんだ。だから……遊ぼうよ? 遊んでくれないと商品を殺しちゃうよ?」
人命救助を優先する平子にとって、回避不可能な戦いの火蓋が切って落とされた。
団 子 三 兄 弟
■原作との大きな変更点
・原作では才子が最後だけやる気を出す
→現時点からやる気
・原作ではシラズがツナギ<プレーン>を装備
→ヴァイス・トートを装備
・無し
→本作でクインクス達はラボに黙って『とあるモノ』をこっそり持ち出している。
※なお、これ全部対ピクハゲ戦とナッツクラッカー戦用の変更点です。ここまでしないと勝負にならねぇです。
■ぼつねた
「フハハ!我輩はプリンスレッド!」
「デュフフ!ヲタブルー!」
「拙者、ガリグリーン!」
「フォカヌボゥ! ピザイエローでござる!」
「えっと、エラストマーピンク!」
「ウフッ、オカマレインボーよ!」
『我ら6人、喰種戦隊……』
「鮮血騎士団!」
「「「ヲタレンジャー!」」」
「アオギリの樹!」
「ピエロ!」
「(名乗りくらい合わせろ)なんだこいつら……」