黄:軽蔑
紫:気品
白:純愛
赤:敬愛
ジューゾーは義足に仕込んでいた無数のナイフ型クインケ『サソリ』を手に、会場を走る。
かつては最強の飼いビトと呼ばれていたジューゾーの前に、喰種達は為すすべもなく倒れていく。
だが……。
「ぐほ、ほほほほほ!! ジューゾーちゃぁん? ママにおいたをするなんて悪い子ねぇ……? いい子ポイント0点! さぁ、いい子タイムを始めましょうか……!」
ビッグマダムは自身に突き刺さっていたナイフを投げ捨て、大蛇のような尾赫をぬらりと生やした。
ビッグマダムはロウよりも強さで劣るとはいえ、SSレートの上位に位置する喰種。言わば東京23の区という新世界の四皇にあたる。
「そうですねぇ。僕は悪い子になってしまったので、たくさんいい子いい子して下さいねぇ!」
「ハッ! 誰がジューゾーちゃんにその曲芸を仕込んだと思ってるんだい? 私を倒そうなんざ調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
ビッグマダムの巨体が跳躍するが、ジューゾーは素早く身を躱し、ビッグマダムめがけてナイフを投げつけていく。
「僕はもう負けない。でも、流石にキツいですねぇ……なにせ相手はママだけじゃない……!」
ジューゾーは一本のナイフを背後へ投擲する。
「っ痛ェ! でも兄貴が受けた痛みに比べたら屁でもねぇぞ!!」
「この脳筋! いくらヤモリの仇の一人だからって闇雲に突っ込まず連携しろ! 相手はあの鈴屋ジューゾーだ!! というか私達の役目はマダムの護衛だ! 違約金取られるぞ!?」
不意打ちを仕掛けようとしたナキの顔には深々とナイフが刺さり、十字をモチーフにしたヘルムを被った女ことミザが連携の大切さを説き、ナキに従うガギとグゲはオロオロとあたりを見回す。
クインケのナイフが顔に刺さったものの、ナキにとって大きなダメージではないようだ。
「後は150億の子とウサギさんが居たはずですよねぇ? 流石にジェイソン無しだと厳しいです……はんべー、急ぐですよ」
部下達は
幸いにもアオギリの増援は無く、ビッグマダムの付き人達はジューゾーやビッグマダムの攻撃による巻き添えを恐れて近寄らない。
「ちょこまかとォ……良い子にしなさいッ!! そんなチンケなオモチャで私をどうこうできると思ってるのかい! ……おいコラ護衛ィ! ジューゾーちゃんを殺さず生け捕りにしねぇか!! 誰がアンタらを雇ってんのか分かってんだろうなぁ!!」
「ムチャ言うんじゃねぇ! オレはヤモリのアニキみてぇな上手い生け捕りはできねぇよ!」
「やめろバカナキ! 依頼主に暴言を吐くんじゃない!」
是が非でも生け捕りにしたいビッグマダム。生け捕りの苦手なミザとナキ。それぞれが足を引っ張り合い、ジューゾーは着実に時間を稼いでいく。
そしてついに……。
「鈴屋先輩ッ!! お待たせしましたッ!」
鈴屋班の4人が増援としてやってきた。
「
「行くぞナキ、ここで少しでも点を取り返し、報酬を貰おう」
「……おう? テンなんて取られてねぇぞ何言ってんだ? ……良く分かんねぇけど、ここからは殺して良いんだよな! オレのホンチョーハッシだ!」
ナキ達は赫子を構え、鈴屋班へ向かって走るが……。
「
そう呟くのは冷めた目をした金髪の青年……鈴屋班の副班長を務める『
半井は懐から缶を取り出し、ナキ達の近くへと投げる。
それは鈴屋班のクインケに並ぶ主力武器……赫子を抑制するCRcガスだ。
「げえっ!? 赫子が使えなくなる煙!!」
「なんだと!? ……っく、力が入らない……」
ナキはかつて嘉納の地下研究所で亜門とアキラからCRcガスを使われているため、煙を見て即座に下がった。だが、ミザは煙を僅かに吸い込んでしまい、思わず膝を突く。
「ババア! 何やってんだもっと下がれ!!」
「っぐ……わかっている!」
「
半井は背中に括り付けていたをQバレットを構え、ナキ目掛けて引き金を引く。
フルオートで放たれるQバレットは正確にナキへと飛来し……。
─────ナキへ弾丸が届く前に、その射線上へガギとグゲが立ちふさがった。
「ガキ! グゲ! 何やってんだお前らッ!? やめろォ!!」
「ギガガ……ヤ……ヤベライ!!」
「ゴオオ……アニギヲ……バボルゥ!!」
ガギとグゲは決して強い喰種ではない。体こそ大きく筋肉質だが、喰種として肝心の赫子を使うことのできない。その上まともに喋ることすらできない。
本来ならば迷い無く捨て駒にされるような存在だが、ナキはそんな彼らであったとしても、仲間は決して見捨てない。
そんなナキの存在は、ガギとグゲにとって、ヤモリよりも大切な存在であった……例え、自らの命を捨てたとしても。
「……チッ、弾切れか。阿原の獲物奪っちまったが……まぁ阿原だし良いか」
半井は撃ち尽くしたQバレットをしまうと、アタッシュケースから双剣型のクインケを取り出す。
「おい、ガギ……グゲ……しっかりしろ!! オレを……一人にすんなよぉ!!」
半井は双剣をナキめがけて振り下ろす。それは確実にナキの首を捉えていたが……。
「チッ、面倒臭ぇ。さっさと死ねば良いものを」
ナキは甲赫を腕に纏い、半井の双剣を防いでいた。
「おりゃあぁ!!」
CRcガスのダメージから回復したミザは半井へ剃刀のような赫子を振るう。
半井がバックステップで大きく距離を離したのを確認すると、ミザはグゲの死体を担いで走り出した。
「ナキ、もう無理だ。ガギは私が運ぶから、お前もグゲを連れて逃げるぞ! ひとまずはアヤトと合流しよう!」
「……クソぉっ!!」
逃げ去ったナキ達を、半井は冷めた目で見送る。
今の半井にとって、対処すべきはあの程度の敵ではなく……。
「さて、御影達が殺しきれていない雑魚をとっとと片付けて、鈴屋さんの援護をするか……」
─────ビッグマダムに他ならない。半井は双剣を構え、ビッグマダムの付き人達へと刃を振り下ろした。
──────────
「今だッ! 鈴屋先輩! あなたのジェイソンです!!」
ビッグマダムがジューゾーから距離をとった隙に、半兵衛はアタッシュケースをジューゾー目掛けて投げる。
「はんべー、ぐっじょぶです。さぁママ、ここからは僕の本気をお見せします。はんべーは皆の援護にいって下さい。それと……例え僕がピンチでも、僕の援護には入らないで下さい」
巨大な鎌型のクインケを構えたジューゾーは、その重さを確かめる様に振り回す。
「……先輩、御武運を!」
「本気ィ……? ハッ、そんなチャチな鎌なんざ持って、一揆でも起こそうってのかい? ジューゾーちゃん……調子に乗るんじゃねぇぞォ!!」
ビッグマダムは激昂しながらも、冷静にジューゾーへ尾赫を叩きつける。
だが、ジューゾーは回避に専念していた今までと違い、ビッグマダムの尾にあわせるようにして、鎌を一閃した……!
「やるじゃない。まさか私の尾赫を切るなんてねぇ……でも……」
即座に生えなおした尾が、ジューゾーの横腹へと叩きつけられた。
「ぐほ、ぐほほほほ!! ジューゾーちゃんのスタミナは後どのくらいかしらァ!? それにねぇ……私はジューゾーちゃんの『今の望み』を知ってるわよ?」
床に叩きつけられたジューゾーへ、ビッグマダムは言葉を紡ぐ。ビッグマダムはジューゾーを捜査官に奪われた後も、ジューゾーの動向を逐一調べていたのだ。
「……そんなんで、ロウのアバズレやレザーフェイスに勝てると思ってんのかい!! その程度しかできないなら捜査官やめちまいな!!」
「……その通りですねママ。この程度の攻撃じゃ僕は倒れない……痛みを無視できるようになれたのは、ママのおかげだから」
ジューゾーはゆっくりと立ち上がる。全身にはいくつもの出血があるが、その目は闘志を失ってはいない。ジューゾーは再び鎌を構え、ビッグマダムへ立ち向かう。
「そう! 限界を超えて立ち上がるのよジューゾーちゃん!! まだまだ行くぞォ!」
マダムの尾が縦横無尽に跳ね回り、ジューゾーを打ち据える。尾赫で床の瓦礫を薙ぎ払い、散弾のような瓦礫がジューゾーを襲う。
だが、ジューゾーは止まらない。ビッグマダムの尾赫を切断し、腕を落とし、体を切り裂く。
「ハァ……ハァ……ジューゾーちゃん! 環境の全てを味方にするのよ!! 立地を、死角を、意表を突けるモノを、相手の油断を!!」
ビッグマダムは喰種である。切られた尾赫も、手足も、傷も再生する。だが、再生のたびに自身のRc細胞は減っていく。
強大なる喰種ビッグマダムにも、ついに再生されない傷ができ始めた。
「そろそろ私もキツいわね……これで終わりにしてあげるわッ!!」
その宣言に応えるかのように、ビッグマダムの尾赫が一回り巨大化した。
それは大蛇を超え、まるで龍の尾……。
「後で治療してあげるから……大人しく寝……」
ジューゾーへと踏み込んだ瞬間、ビッグマダムは宙に浮く。
「……えっ!?」
ビッグマダムが踏み込んだ足下には、水溜まりがあったのだ。
それは、ジューゾーの血液による紅黒い水溜まり……通常の水よりも様々な成分を含んだ水溜まりは、ビッグマダムの巨体を滑らせるのに充分であった。
「環境を味方にしましたよ、ママ」
「ぐ……ぐほ……ッ!」
当然その隙を見逃すジューゾーではない。ビッグマダムは腹を起点とし、体が上下に分離していた。
「ああ……赫包は下半身の方……もう再生はできない。ジューゾーちゃん、アナタの勝ちよ……いい子ポイント……60点ね……まぁ、今更良い子ポイントなんて……ジューゾーちゃんは私を憎んでるんでしょうけどね……」
ビッグマダムは急速に命を失いつつも、ジューゾーへ優しく語りかける。
しかし、ジューゾーは首を横に振った。
「ママ……傷だけが、あなたから貰った何かでした。傷だけが懐かしい……」
ジューゾーの脳裏に、かつての記憶が流れていく。その殆どは拷問の記憶であったが……。
『ジューゾーちゃん、これがキリンよ。世界で一番ツブツブな生き物なの』
それは、ジューゾーに絵本を読み聞かせるビッグマダム。僅かだが、優しい記憶も混ざっていた。
「周りの誰が、あなたをどう言おうと……ぼくは、あなたを恨んだことなんてない。これは、仕事です」
周りの付き人達を全滅させた半井達もまた、ジューゾーの独白に耳を傾ける。
「ッ!! ……ぐほ、ぐほほほほ!! そう、ならジューゾーちゃん、あなたにお願いがあるの……」
ビッグマダムは大きく笑うと、自らの分断された下半身を指差した。
「私の赫子でできたクインケで……ジューゾーちゃんは……ロウとレザーフェイスをブチ殺して頂戴……この私をナメ腐り、私を足蹴にして、私の富を奪う憎いアイツ等を……良いわよねぇ? ……だってジューゾーちゃんも……アイツ等が憎いのでしょう?」
その時、ジューゾーはビッグマダムの真意に気付いた。
「……ママは最初から……そのつもりだったのですか?」
この戦いにおいて、ビッグマダムは明らかに不自然……そう、ビッグマダムはまるで
「さぁ……どうかしらね……」
「ふふふ、ママはいつもそうです……はい、必ず。僕はママのクインケで15区の喰種達を殺します」
強く頷いたジューゾーへ、ビッグマダムは弱々しく笑いかえす。もう命の灯は風前であった。
「ぐほほ……期待しているわよ……いい子ポイント……100……て……ん……」
最後に優しくジューゾーを撫でると、ビッグマダムは静かに眠りへとついた。決して覚めることのない、深き眠りへと……。
「おやすみなさい、ママ……サヨナラ、おとうさん」
ビッグマダム……本当の性別はまさかの男。3区に君臨し、その資金力は全盛期の頃ならクロックムッシュに匹敵するとも。人間に対して影響力を持つクロックムッシュと違い、多くの喰種に影響力を持っていたビッグマダムは……この日、舞台から消えた。
この日を境に、東京に存在する喰種達のパワーバランスは大きく崩れる事になる。
─────なにせ、今日消えるのはビッグマダムだけではないのだから。
綺 麗 な マ ダ ム
本作ではlieではなく、真実を告げたマダム。
本作では3区の主ということにしていますが、原作における実際の支配領域がどこだったのかは不明です。
でも3区が一番似合うんですよねビッグマダム。何せ3区は搾取する街『新橋』があり、富める者が集う青山や白金台とかがありますし
ビッグマダムが四皇なの?って思ったそこのあなた。別に名前繋がりってだけじゃないんですよ?
ビッグマダムはちゃんと『富、名声、力』持っていたんです。途中からカオリに略奪されてますが……
■ワンピース風キャラ紹介・東京の四皇
芥子「まぁ店長が店長……それも仕方ねぇか。所詮功善は先の時代の……『敗北者』じゃけぇ」
ミルモ「ええ総理、感謝します。─────ある喰種について話が……」
ビッグマダム「ハ~ハハハ!ママママ……血、肉、臓物、コーヒー豆……殺して奪え!お茶会の素材は厳選しないとねぇ?」
エト「うまくやったよ……功善のジジイは……」
・15区ver
カオリ「56人殺したのさ。てめぇのように『生意気な奴ら』をな」
リゼ「おーおー(私の赫子で)好き勝手やりなさる……」
ロウ「強き者よ……淑女たる礼儀をもって、世界最強の赤槍で沈めてやろう」
リオ「ゼハハハハ!僕の赫子は引力!全てを引きずり込む力!」
小林「ハデにYou float too!」
カオリの元ネタが分からない?60皇で検索だっ!