花屋喰種   作:みぞれアイス

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特殊文字は多用すると想定以上に見辛かったので、今回の特殊文字はキャンセルなのです。


Re:第13話 Decisive Strike

 ナッツクラッカーことマユは、才子が攻撃を仕掛けてこない事に首を傾げる。

 

「……ソロ討伐には来ないの? 言っておくけど『ムッチャン』がパーシーを倒して戻ってくることはまず無いよ? パーシーはそんなに弱くないし、それに……」

 

 マユがニヤリと笑うと、天井、壁、床の至る所から無数の赫子が飛び出し、部屋を覆っていく。

 

「ひっ……!?」

「もうここからは逃げられない。貴女はもう、私の『鮮血神殿(ブラッドフォート)』の中に居るのだから」

 

 モニタールームに窓は無いため、出入り口はただ1つ、冴木が破壊した扉だけ。

 その扉があった場所は、今や床から飛び出した赫子がドアに成り代わっていた。

 

「で……出口が塞がれ……」

「フフフ」

 

 マユは一対の甲赫を生やすと、両腕へと巻き付けていく。

 

「まだ甲赫の射程距離増加は全然できないけど、それでも貴女には厳しいハズだよ? だから……私を倒せるものなら倒してみなよ、ハンター!」

 

 マユはふわっと跳躍しながら才子へ近付き、巻き付けていた甲赫を勢い良く突き出した。

 

「ひゃぁっ!?」

「……ふぅん、見た目の割に結構動けるんだ? 凄い凄い。んじゃこれはどうかな?」

 

 甲赫による刺突をギリギリで回避した才子に拍手を送り、マユは姿を消す。

 

「シラギンの時のやつか! なら後ろッ!」

 

 才子は真後ろへハンマーを振り下ろすが、そこには誰もいない。

 

「残念、横でした」

 

 空振りの隙をついたマユは、今度こそ才子の後方へ移動し……股の中央を鋭く蹴り上げた。

 

「か……はっ!?……ぁっ……!!」

「ふふふっ、内臓がぐしゃぐしゃになる痛みはいかが……おっと!」

 

 才子はマユに急所攻撃を受けながらも、鱗赫を全力で後方へ展開したのだが、マユの尾赫によって防がれていた。

 

「ぁ……あかん……しぬ……マジで」

 

 崩れ落ちた才子はポケットにしまっていた小箱から2本の注射器を取り出す。

 

「ふーん、アイテム使う感じ? 鎮痛系のドラッグかな? それともハイになるやつ? 良いよ、使わせてあげる。ドーピングくらいで勝てるワケ無いのにね」

 

 マユが愉しそうに眺める中、才子は躊躇うことなくそれらを自らの腰に注射した。

 

「……お……おおお、これがヤクチュウの世界なんか……! ひょほほほ! まるで痛くないのじゃ!!」

「……キメ過ぎて口調変わってない? のじゃロリは属性盛り過ぎじゃん?」

 

 才子はゆらりと立ち上がる。そこには痛みで悶える様子は無い。

 

「さぁさぁオクスリの効果や如何に?」

「─────ゴムゴムのピストルっ!」

「おっと危ない」

 

 才子は凄まじい勢いで拳状の赫子を作りだしマユめがけて放つが、やはりマユはあっさりと尾赫で受け止める。

 

「モードチェンジ─────砂縛柩(さばくきゅう)からの砂漠葬送(さばくそうそう)ッ!」

 

 しかし、才子の赫子が急速に変形し、マユを包み込むように広がり、徐々にマユを締め上げていく。

 

「ぐっ……急に動きが別人に……!」

「赫子キャンセル─────北斗百裂拳ッ!」

 

 マユは尾赫と甲赫の双方を使って圧殺攻撃を押し返していたが、突如赫子が消える。

 勢い余ってよろめいたマユに、無数の触手による攻撃が突き刺さる。

 

「あががががが……こ、こんのっ……調子に乗るなァ!」

 

 マユは鱗赫を甲赫と尾赫で薙ぎ払い、才子の腹部へ蹴りを見舞う。

 

「ぉべえっ……!!」

 

 吹き飛ばされた才子は壁に激突し……壁から突如生えてきた赫子に右肩と腹部を貫かれた。

 

「あぎっ……!?」

「私に傷がッ! 美しさのために使うRc細胞が再生に消えていく!! ああああもう! 美味しいご飯の分際でなんてことするのっ!! 貴女が美味しいご飯じゃなきゃ今すぐにでもブチ殺す程度には怒ってるんだからね!!」

 

 腹部と肩から夥しい出血を伴いながら、才子は床へと崩れ落ちる。

 

「……全くもう! ……んで、次はシラギンがかかってくる感じで良いのかな?」

 

 気絶した才子を確認し、マユは後方を振り返る。

 

「……よくも男のシンボル潰してくれやがったな!!」

 

 そこには、復活したシラズが『ヴァイス・トート』を構えて立っていた。

 

「お返しだ!!」

 

 シラズからロケット型赫子とヴァイス・トートによる弾幕が放たれる。無数の弾丸は正確にマユへと到達し……。

 

「大姉様直伝・蕾の型。羽赫の攻撃なんか効かないんだから」

 

─────体に巻き付けた甲赫が全ての攻撃を防いでいた。

 

「クソッタレが! 借りるぜ才子!!」

 

 才子の落とした『ぼくさつ2号』を拾い、右手に持つ。

 

「うぉぉぉおおおおお!!」

「……羽赫が近接とか馬鹿なの?」

 

 シラズは弾幕をバラまきながらマユへ走るが、マユは残念そうに肩を竦め……。

 

─────シラズは床から飛び出した尾赫に貫かれた。

 

「ゴはァ……っ!?」

「そこ、設置済みだから。それにしても……リミッターがかかっているとは聞いてたけど、まさかこれほど弱いなんて……それで良くペニーワイズさんと戦おうと思ったよね? ……さて、貴方達は姉様達の『サウンドカード実験』にとても有用だから、できれば生かしたままにしておきたいんだよね。だからそのまま寝転がってて」

 

 

 シラズを部屋の隅に蹴飛ばし、マユはモニターに顔を向ける。

 

 

「……? あれ、パーシーとムッチャンはどこに……? オナホーとセイバーも居なくなってる……」

 

 マユはモニターを切り替えていくが、映っているべき人物が数人、どこにも映ってない事に気付く。

 

「ハンターは3乙までや……ウチらはまだ2乙しただけ……!」

 

 だが、詳しく探し始める前に、才子が起き上がった。

 

「あれ、まだ2乙だっけ? というか力の差は歴然でしょう……」

「いんや、ウチはアンタが待っててくれてたおかげでヤクが体に馴染んだから、更にパワーアップじゃよ。そんでシラギンも……」

 

 シラズが二本の注射器を投げ捨て、起き上がる。これで2対1の状況になった。

 

「─────ターミネートする」

「ドーピング完了なのじゃ!」

 

 シラズが先程よりも厚い弾幕をバラまき、それと同時に才子が走る。

 

「ゴムゴムのぉ…………ッ!!」

 

 才子は腕型の赫子を生やし、螺旋を描きながら後方へ伸ばしていく。

 

「─────ライフルッ!!」

 

 螺旋の拳は轟音と共にマユへ直撃した。しかし、マユの甲赫と尾赫の入り混じった鎧は砕けない……!

 

「くっ、さっきより重い……でも無駄だよ。蕾の型は貫け……」

「赫子キャンセル! 北斗羅漢撃(らかんげき)ッ!!」

 

 だが才子の攻撃はまだ終わっていない。次は『棘の付いた無数の拳』をマユへ放った。

 

 このままでは赫子の守りが突破される……そう感じたマユだが、シラズの弾幕が次々に飛来するため回避行動に移れない。

 

「くっ……ここにきてシラギンの赫子が鬱陶しい……っ!!」

「まだまだぁ!! 今度はちぇりぉぉぉおおおお!!!」

 

 そんな中で才子はハンマー(ぼくさつ2号)を拳型赫子に装備させ、マユをかち上げたッ!

 

「がは……っ!!」

 

 ハンマーの一撃はマユの甲赫鎧を周囲にぶちまけた。ついにマユの全身に纏わりつく赫子を破壊した才子は、すかさず追撃の大技を放つ。

 

「赫子キャンセル! 転輪する勝利の剣(エクスカリバーガラティーン)!!」

 

 巨大な大剣状に赫子を再生成し、空中へと飛ばされていたマユを薙ぎ払った……!

 

「まずっ……ッアアアアアアアッ!?」

 

 才子の必殺技とシラズの弾幕が直撃し、マユの体は腰から真っ二つになる。

 そのままベチャリとマユのパーツが力無く落下したとき、才子達は勝利を確信する……。

 

 

 

 

─────マユの上半身と下半身から赫子の様なナニカが伸び、再び体を繋ぎ合わせるまでは。

 

 

 

 

「ひょほほ……時間切れ……じゃ」

 

 才子はどろりと血を吐きながら崩れ落ちる。

 才子は赫子適性こそ凄まじいが、持久力は極めて低い。本来であれば()()()()()使()()()()()()()()()()()の実力しか無いのだ。

 今回はまさに例外。狭いコンテナの中でレザーフェイスと二人きりでお話しするという命の危険に遭遇し、変態3人組による貞操の危機に遭遇した結果、脳内麻薬が暴走……損耗を脳内麻薬と赫子適性でごまかしながら戦っていた……!

 そんな限界を超えて動いていた才子は、その上強力な鎮痛剤とRc促進剤でドーピングを施し、更に体を酷使した。

 そして最後の連続攻撃……あまりにも連続した赫子の使用により、とうとう体が耐えきれなくなり崩壊したのだ……!

 

「やってくれたじゃん……! こんなに損傷が……再生にどれだけのRc細胞がッ!! 私の美の源が零れ落ちていく……ッ!! フ、フフフフフ……頭に来た」

 

 マユは再び赫子を纏い、シラズの弾幕を無効化する。

 才子が倒れた今、甲赫の守りを貫く術は無い。

 

「撃ち合いが好きなら蜂の巣にしてあげるよシラギン……!!」

 

 マユは壁際まで移動し、尾赫を壁に突き刺す。

 すると、壁からいくつもの尾赫が生え、シラズへ次々と射出され始めた!

 

「来い! このクリスマスツリー!」

「フフフ、貴男に死をプレゼントしてあげる!」

 

 しかし、シラズの赫子とクインケは共に羽赫。マユの尾赫とは相性が良い。

 次々に射出される赫子の砲弾を、難なく撃ち落としていく。

 

「羽赫相手だと千日手になっちゃうか……ならっ!」

 

 マユは射出を一度止め……。

 

─────シラズの足元から尾赫を射出した。

 

「ぁが……ッ!!」

「フフフ、下から攻撃」

 

 シラズの睾丸を再び破壊しながら串刺しにし、マユはシラズの動きを停止させ……。

 

 

「それじゃあシラギンには死んごふっ……!?」

 

 

─────視界外から放たれた銃弾に撃ち抜かれた。

 

 

 

「……ぁ、え?」

「Rc抑制弾、対象ナッツクラッカーに着弾を確認」

 

 赫子で覆われた入り口、その赫子の隙間から、ライフルの銃口が覗く……CRc狙撃銃だ。

 

「突入する!」

SRZ(シラズ)くん! SIK(さいこ)ちゃん!!」

 

 赫子の壁は『背骨の様な蛇腹剣』によって切り裂かれ、その奥からアキラとムツキが到着した。

 

「あぐっ、セイバー……ならこの痛みはCRc狙撃銃か……!」

 

 真戸アキラは『15区製捜査官リスト』に載っている危険人物。マユはすぐさま『特殊な赫子』を纏っていくが……。

 

「くっ、赫子が不安定に……!? これじゃ赫者になれないっ……!」

 

 特殊な赫子は途中で霧散し、下半身を纏うのみに終わる。

 

「本部、こちら真戸。ナッツクラッカーは尾赫だけでなく甲赫も持っており、赫者への変身も可能。レートは最低でもSSへの引き上げと増援を要請します」

『こちら和修。レザーフェイスと同じか! ならばレートをSSに引き上げる。増援は向かわせているが時間を要する。可能であればそこにいる人員だけで討伐しろ。以上』

「本部、こちらMTK(ムツキ)三等捜査官です! YNBYS(よねばやし)三等が重体です! SRZ(シラズ)三等もかなりの出血があります! 至急救護班を派遣してください。なんでもしますから!」

『こちら和修。瓜江二等の元へ救護班を向かわせている。救護班はその中から向かわせる。貴君等の健闘を祈る。以上』

 

 マユが赫子の形成に苦戦している間、アキラ達は本部へ連絡を入れる。増援はすぐに来れないようだ。

 それもそのハズ、戦える人員は殆ど負傷しており、残り僅かな人員はオークション客の制圧に駆り出されているのだから。

 

「……やってくれるじゃんセイバー。貴女は殺す。それに、貴女が持ってる『ドクター』は返して貰うよッ!!」

 

 マユは尾赫を生やし、床へ突き刺す。

 

「……っく、設置の制御も不安定に……」

「逃がしはしない、ここが貴様の死に場所だ」

 

 アキラはモニタールームの出入り口に陣取り、フエグチ改を盾にCRc狙撃銃を構えた。

 

「俺も仲間に入れてくれよ~」

 

 そして、ここにはムツキもいる。

 

「くっ……状況は不利……」

 

 Rc細胞をしっかり回せばRc抑制剤を打ち消せる……そうレザーフェイスは言っていたが、体内は極めて不安定な状況であり、回復にはまだ時間を要する。

 

 ゆえに活路は一つのみ。

 

「それでも……ッ! 私は成し遂げるッ!!」

 

 マユは壁まで飛び退き、尾赫砲の準備に入った。

 

 

 マユは形のやや崩れた尾赫を生やし、壁と床へ突き刺していく。

 

 現在マユが行っているのは、地雷の様に尾赫を壁や床などに仕掛ける作業だ。

 本来であればマユの意思で自在に飛び出すのだが、Rc抑制弾によって赫子の出力が激減した今、ちょっとした感圧……例えば破裂音や自身の行動でも反応してしまう性能の地雷になってしまっている。

 マユの分離尾赫は元々音に反応して対象へ飛び出す赫子であったため、かつての性能に退化してしまった形だ。

 

「戦闘続行可能……ッつー、ようやく体に馴染んで来たぜ……! ここからは俺も反撃開始だナッツクラッカー!!」

 

 動きを止めていたシラズも動き出す。これで3対1。

 

「雑魚が寄って集って……! カラドボルグ全弾斉射ァ!!」

 

 壁や床から捻れた尾赫が伸び、三人へ飛来する。

 アキラは翅の盾で防ぎ、ムツキはアキラの後ろへ隠れる。赫子の螺旋槍はフエグチ改によって防がれ、アキラ達は無傷だ。

 そんな中、シラズは飛来する赫子の迎撃に専念している。そこを見逃すマユではない。

 

「もっぺん潰れろッ!!」

 

 マユは高速でシラズの背後へ周り、シラズの股を蹴り上げた。バチュンという音が鳴り響き、シラズの白子が三度目の死を迎える。

 

「かはぁッ……なーんてな!!」

 

 だが、シラズは倒れる事無く、マユの足を掴んだ。強力な鎮痛剤が効いている今、シラズに痛みは無い……!

 

「なんでっ!? ならこうだ!!」

 

 マユはシラズの腹部に赫子を突き刺した。だがシラズはダメージに怯むことなくマユの足を掴み続ける。

 

「ノープロブレムだ。今の俺に痛みは効かない!」

 

 シラズは背後にいるマユめがけて、いくつものロケット型赫子を撃ち込んでいく。

 

「くっ、こんな煙と風を撒き散らすだけのっ!!」

 

 マユはもう片方の足でシラズを蹴り飛ばすと、マユは距離を離すために壁側へと跳躍し……。

 

 自身が壁面へ設置していた尾赫に貫かれた。

 

「─────がふっ!! し、しまった!?」

 

 本来であればマユの意思によって動く赫子。だが音感地雷に劣化している今、マユがいつもの感覚で行動してしまえばマユ自身も赫子に貫かれるのだ……!

 

「今だ皆ァ!!」

「イグゾォォォオオオオ!!」

「了解」

 

 ムツキは雄叫びをあげながら無数のナイフ型クインケを投擲し、蠍の様な尾赫をマユの頭へ突き刺す。

 そして、アキラは再びRc抑制弾を撃ち込んだ。

 

「落ちろ! 落ちたな」

「Rc抑制弾、第二射着弾確認」

 

 勝利を確信したシラズ達だが……。

 

「……ぁぎ、き、貴様らぁああああ!! クインクス風情にッ!! 偉大な姉様達の妹である私がやられてたまるかぁぁああああ!!」

 

 自らを貫く赫子を甲赫で破壊し、マユは戦闘態勢をとった。

 

 

「嘘だろ!? なんで死なねえんだ!!」

SRZ(シラズ)くん! ナッツクラッカーの傷は癒えてない! もう少しだよ!!」

 

 先程まですぐに回復していたマユの傷は、今では治る事無く血を外へ垂れ流し続けている。

 

「それがどうしたのっ!! 確かに半赫者すらできなくなった! でも、甲赫も尾赫もまだ使えるんだからぁぁああああ!!」

 

 マユは再び床に赫子を突き刺す。するとマユの背後にある壁からゆっくりと赫子が現れ、螺旋を描くように捻れていく。

 

 そして……。

 

「これが『ライダー』の全力だああああっ!!」

 

─────シラズ達めがけ、空気を切り裂きながら螺旋状の赫子が飛来し……マユはその赫子に飛び乗った!

 

「まずは貴様だムッチャン!!」

「ンアッ─────!?」

 

 高速飛翔する尾赫の突撃と、甲赫のブレードによる斬撃のコンボ攻撃。ムツキは為す術もなく直撃し、獣のような悲鳴を上げながら吹き飛んだ……!

 

「まだまだぁ! もう一回『騎英の手綱(ペルレフォーン)』ッ!!!!」

 

 反対側の壁まで飛んだマユは、その壁から出てきた螺旋状の尾赫に飛び移り、今度はシラズ目掛けて飛翔。

 高速で飛来する尾赫に、満身創痍のシラズは回避する余裕がない。ゆえに、シラズは防ぐ術を考える。

 

 尾赫に相性が良いのは羽赫だが、先程までの尾赫弾幕と違い、射出されている赫子は今までとはケタの違うサイズだ。シラズの攻撃で止められるかといえば、ほぼ火力的に不可能と言うほかない。

 そして今、偶然にも才子の持っていた甲赫のクインケ『ぼくさつ2号』が足元に落ちている。

 

 よって、シラズが取れる選択肢はたった一つ……!

 

「また借りるぜ才子ォォォオオオッ!!!」

 

 掟破りのハンマーガード……! ぼくさつ2号で尾赫の赫子を受け流そうとするが、マユの攻撃はその程度で止められるほど弱くはない。シラズの腕はミチミチと音を立て、骨諸共崩壊していく。

 

 そしてついにはクインケも砕け散る。だが、両腕とクインケを犠牲にした結果、シラズは致命傷を避けることに成功した。

 

「くっ、なら次で仕留めるだけ!!」

 

 マユは壁際まで飛び退き、新たに壁から尾赫を生やしていく。

 だが、生成に時間がかかるのか、少しの間だけ猶予が生まれた。

 

「─────隙有りだな」

 

 そこを見逃すアキラではない。アキラはフエグチ改を一閃……蛇腹剣はマユの胴体を真っ二つにした。

 

「あがっ!? せ、セイバー……ッ!!」

「今だ! シラズ!!」

「ウォォォォオオオオッ!!!!」

 

 シラズは落ちていたマユの赫子……ハンマーで受け流した螺旋の巨大槍を拾いあげ……。

 

「危険度の高ェ喰種の駆逐は、賞金が出る。最高危険度を持つ15区の喰種……テメェの賞金はいくらだ?」

 

─────マユの胸部へと突き刺した。

 

「っぐぁ……!! わ……私はッ! お前達程度の相手に負けてたまるか!!」

 

 胸部を縫いつけられ、もはや満足に赫子すら出せない状況だが、マユはなおも戦意を失わない。

 シラズもマユの胸部へ突き刺した赫子が外されないように馬乗りになり、全力で赫子を押し込んでいく。

 

「姉様の妹としてっ、恥ずかしいマネはできない!!」

『お兄ちゃんの妹として、恥ずかしいことはできないよね?』

 

─────ふいに、マユの言葉がシラズの妹の言葉と重なった。

 

「っ……大人しく死ねよ!!」

 

 シラズはヴァイス・トートを片手に、マユへと撃ち込んでいく。引き金を引く度、砕けた指から血が噴き出すがお構いなしだ。

 

「ぁぐ……やめっ!!」

 

 マユはヴァイス・トートを破壊しようと、その銃口へ右腕を突っ込む。

 だが間に合わない。銃身の中で炸裂した弾丸は、マユの右腕を砕け散らせた。

 

「諦めて死ね!! 左腕だけになったテメェに勝ち筋はねぇ……!!」

「私が……負ける……? 嘘だ嘘だ嘘だぁぁああああああああ!!!」

 

 マユは残った左拳をシラズへ叩き込む。

 

─────だが、それはあまりにも弱々しかった……もはや体を動かすだけの力が残っていないのだ。

 

「ま……まだだ……私は、まだ……姉様達のように美しくなれていない……!」

 

 ゆえに、シラズを退かすことはもはや叶わない。マユは、自らがここで死ぬことをハッキリと理解してしまった。

 

 はらりと、マユの瞳から涙が零れる。

 

「ごめんなさい……姉様……こんな出来損ないの妹でごめんなさい……」

『ごめんね……お兄ちゃん……こんな出来損ないの妹でごめんねっ……』

 

 マユの姿が、自身の妹と重なる。

 

「地獄に落ちろ! ベイビー!!」

 

 シラズはマユを黙らせるべく、突き刺した螺旋の槍をグリグリと動かし、ヴァイス・トートの引き金を引く。

 

(にんげん)みたいな事……言ってんじゃねぇぇええええッ!!」

 

「キレイに……なりたかったな……」

『キレイに……なりたかったな……』

 

 マユはゆっくりと目を閉じた。

 

「やめろォ! 敵として死ねェェエエエエ!!」

 

 

 

 シラズはいつまでも引き金を引き続けた。薬の効果が切れ、血を吐いて気絶するまで……。

 

 

 

──────────

 

「おい、シラズ! ムツキ! 米林! しっかりしろ!! 本部、こちら真戸! ナッツクラッカーは討伐した! 管理棟に向かう医療班を増員してくれ! 管理棟は制圧した!!」

『こちら和修、ナッツクラッカーを倒したのか!?』

 

 仲間の心配よりも功績を優先するマツリに、アキラはギリリと歯を食いしばるが……アキラはキジマと違い、マツリに喧嘩を売るつもりはない。

 

「ナッツクラッカーはシラズ達クインクスによって駆逐されました。管理棟に喰種はもう居ません」

『素晴らしい! では至急医療班を向かわせよう。ところで、佐々木一等が大ホールでアオギリの喰種と交戦中だ。簡易的な応急処置を済ませたら佐々木一等の援護に向かえ』

「……了解、すぐ向かいます」

 

 可能であれば医療班が来るまで治療に専念したい……その心に蓋をし、アキラは三人に応急処置とRc抑制剤を施してからハイセの居る大ホールへと走った。




 後 は 消 化 試 合 
いやぁマユちゃんは強敵でしたね!ハイセさんを一撃で倒すRc抑制弾を2発も食らって動いてるんですから。
なおマユちゃんが最初から赫者だったら負けてた模様。

ちなみに、瓜江さんと違い他のクインクスはフレーム解放手術を受けてないため、精神汚染度は低め。時折変な語録が出てくるくらいです。

もうオークションで残ってるのはオウルVSハイセとウタロマVS平子しかないので、次回でサラッと終わらせ、その次からは本作の独自エピソード『クインケ鋼強奪作戦』を開始します。

Q.鎮痛剤とか使ってるのに、前回や今回のタイトルにレナリが入ってないやん!
A.アドレナリンよりやべぇ薬使ってるからですっ。後は話の流れ的に『弱音はナシだ』や『決死の一撃』の方があってるかと……。
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