無敵系中ボスが過去にしがみつく話   作:竜田竜朗

21 / 63
主人公と中ボス②

Q.対物ライフルから放たれた弾丸を1m先の生身の人間が受けるとどうなるでしょう。

A.死ぬ。

 

例えばそんな問題があったとして、上記の解答をした場合、レ点をつけることはできないだろう。問題文に最低字数の設定はないし、結果だけを明確に記した内容だからだ。「死亡すると書きましょう」などの理由で減点することはできるかもしれないが、本質は何ら変わらない。

それに、どれだけ詳細に記述したとしても、その結果が覆ることはないのだ。回答者が棍棒から衛星レーザーまで幅広く扱う武器商人だろうが、伝説と呼ばれるような歴戦の兵士だろうが、対物ライフルが何かはわからないが銃だと思った一般人だろうが、綴った字数が何万字になろうとも最後にその結果は記される。

 

そして誰かが思った。普通の人はその光景を目の当たりにするとどういう反応をするんだろうと。

 

だから少し前にVR技術を利用したとある心理テストゲームが話題になり削除された。

ゲームをネットにアップロードし、利用者がダウンロードしてプレイできるサイトで無料配布されたのがそのゲームだ。

「心理テスト」とだけ銘打たれたそのゲームを開始すると、無料配布のゲームには珍しく録画機能を使えない、VRモードでのみプレイ可能の注意事項が出てから、自身のアバターのメイキングが始まる。と言っても、顔、体系はプレイヤーのリアルの物と同じになるため、選ぶのは数多用意された服装のみだ。

次にパートナーを選ぶ。性別の選択から始まり、顔や体格を細かく設定する。もちろんあらかじめ用意されたものもあるが、このゲームは自分の理想の相手の作成を推奨していた。

その後に声の設定をする。まずサンプルボイスを選んでからその音声の声色などを細かく調整して自分の好きな声を設定する。そしてそのキャラが自分の名前を呼ぶ。発音、アクセントなどまた細かい設定を経て、本当にその人に自分の名前を呼ばれるようにする。

最後に理想のパートナーの性格を設定。いくつもの五択の質問を繰り返し、その結果がパートナーの性格となる。

キャラメイクだけで何時間もかけた人が出るくらいには細かい設定。ここまで詳しくキャラを設定できるゲームは無料配布されているものの中では稀にもないレベルだ。

 

ゲームを始めると、それはもうただの本格恋愛シミュレーションだった。中学一年の入学式から時間が始まり、パートナーと出会う。恋愛ゲームであれば通常、選択肢は二択や三択が多いが、このゲームでは十択以上の選択肢から選び進めていく。しかもその頻度もかなり多いし、その選択肢ごとで今後の展開もかなり変わる。本当に学生時代に戻り、青春を送っているような、そんな感覚に陥る者も少なくなかったらしい。高度なVR技術のおかげで視覚からの情報があまりにもリアルであるがためだ。

ゲームのレビューは高評価。大手のゲームレビュー会社のブログにも取り上げられた。

「無料配布でこのクオリティはすごい」「心理テストだと思っていたらハイクオリティのギャルゲーだった」「これ金取れるだろう」「理想の嫁と理想の恋愛ができる」

大体そんな感じで多くのユーザーに広がっていった。

 

そのゲームがやっと心理テストだと思い出すのは、何十時間以上もプレイし、パートナーと結ばれ、自分から、もしくはパートナーからプロポーズされゲームがエンディングを迎える時だ。

自分の選んだ選択肢などから心理テストとしての結果を表示する。それはとても正確で、クリアした者たちは認めるしかなかった具合。商品化や追加コンテンツなどが期待されていたのだが、このゲームはそれで終わらなかった。

 

二周目。というものがあった。同じパートナーとまた恋愛シミュレーションをし、ゲームを進める。一周目に選ばなかった選択肢を選んだり、同じ選択肢を選び物思いにふける。どちらも共通して言えることが、もうプレイしている者はそのパートナーをただのキャラクターとして見れていない点だ。

そしてそれは、製作者の意向だった。前回と同じようにエンディングを迎え、結ばれた二人のラストエピソードとして、二人は一周目の最初にデートをした場所へ行く。二周目のパートナーが覚えているはずのない、その時の思い出話や、これからのこと。そして、パートナーからプレイヤーへ想いを伝えたとき、画面が一度ブラックアウトし、機械的な女性の音声が流れる。

 

 

「今から目の前で衝撃的な事案が発生します。発生から20秒の間のあなたの反応で診断します」

 

 

直後。画面が元に戻り、パートナーが目の前でテロリストらしき人物から対物ライフルで撃たれ、胴に風穴が開く。

 

 

ともかくプレイヤーの反応をみて20秒後に心理テストの結果が出る。

 

それがそのゲームが削除された理由だった。

最初にそのエンディングを迎えた人は、「僕の彼女が死んだから生きていられない」と遺して自殺したらしい。当時はそのゲームが原因とは考えられていなかったが、何人もがそのエンディングに辿り着き、その者らは一斉に評価を下げ、運営に削除呼びかけをする。

これは人の心を壊すゲームだと。

 

当然運営もそれを受けてゲームの配信を停止し、プレイしないことを呼びかけた。が、未だに一部の熱心なファンはプレイしている。何周も、何十周も。ゲームの作者も顔を出し、自ら命を絶つまで追い詰められた者、その遺族、そして世間からの圧力に耐えられなくなり、遺書を残し自殺。それでこの心理テストゲーム騒動は幕を閉じた。

 

ちなみに最後のシーンで最も多かった反応が沈黙からの発狂だ。人間、理解できない状況や、思考容量の限界を突破するとそうなるらしい。

ちなみに深淵、根本愛菜は二周目のそのシーンでこう感想を漏らした。

 

「え、で?それだけ?もーちょいこう、スプラッターな方がリアリティあると思うなぁ」

 

プレイした者は多かったが、ここまで冷静に感想を漏らしたのは彼女だけである。

ついで、そのゲームが削除されたときに制作者はこう言った。

 

「ンー、マジか。やっぱダメか。面白いと思ったんだけどな」

 

言うまでもなく。人の尊厳やら気持ちを試すような真似ばかりするのは魔人である。遺書を残し自殺したのはとうの昔に食われた彼の中の誰かだと言うのは極少数のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり何が言いたいかというと、そのゲームのような光景が今、目の前で起きたのだ。

 

「ふ……たみ……?」

 

鈴木数馬の目の前で、大事な友人が吹き飛んだ。もしこれがさっきから乱射されているライフル当たりならもう少し冷静になっていたかもしれない。だが当たったものは7.62x39mm弾ではなく12.7x108mm弾だった。彼に弾の口径などわからないし、ワンフロア下の入り口にいる大男が両手で抱えて発砲している大型の銃がなんなのかはわからない。

 

だが、左胸に穴を空けた人間が死ぬのはわかる。

 

「……え」

 

言葉にならない。万年赤点の頭の処理速度ではこの事実を受け止めることができなかった。実際、万年満点だろうと大概の人間は受け止められないものだが、ある程度場数を踏んだ万年赤点は寧音の遺体を引き摺りテナントの奥へ。

 

「おい!おい双海!!くっそ……誰か!治癒術を使える人!!」

 

開いた胸から流れる赤黒い血が止まらない。もはや上位の治癒術だろうが治せるレベルにないが、それでも僅かにもない希望に賭けて声を上げる。が、それはデパート中に響き渡る悲鳴と銃声にかき消された。

 

「っ、そうだ!七尾さん、彼女ならどうにかできるはずだ!」

 

鼻歌交じりで時を止め、死者を生き返らせ物理法則を捻じ曲げた神。そんな存在が自分とすり替えた彼女なら何かできるはずだと考える。今日は詳しく教えてはくれなかったが、優衣からは微かにあの神のような、優しい圧力を感じた。きっと神の位の魔術を使えるのかもしれない。

人頼みなことこの上ないが、もはや形振り構っていられる場合ではない。自分の身近な人が助かるのならば、それに越したことはないのだから。

 

「待っててくれ、すぐに連れてくる!」

 

確かワンフロア上のアクセサリーショップで愛菜とプレゼント用の小物を選んでいたと思い返す。

状況を整理する。テロリストは一階の入口から堂々と侵入してきた。屋台の的当て感覚で適当に銃を放って大勢を殺害しながら中央、東、西のエスカレーターを目指して歩いていた。数馬がいるのは二階フロアの北側のエスカレーター付近。このまま走って駆け上がればすぐに二人がいる一個上の三階フロアに行けるのだが。

 

「出遅れた……」

 

北側のエスカレーターはテロリストたちの動きを察知した人たちの行列が出来上がっていた。とっても危険な人の山々だ。我先にと逃げる者たちが、今のところテロリストたちから最も遠い北エスカレーターに、デパート内の人々が駆け込んでいる。我先にと他人を蹴落とすような勢いで。

まさしく安全を求めた凶器の状態。見れば、エスカレーターには押されたのか倒れた人がいる。それを、後ろから多くの人が人を踏み抜いていく。安全を求めるがあまり、人が人を踏んでいく。

 

「くっ……」

 

見るに堪えない。助けたいとも思うが、もうこれは自分一人でどうにかできる状況ではない。

 

「どうにか上に行く方法は……」

 

辺りを見渡す。おそらく目に見える移動手段は全部使えないだろう。非常事態に置いては目に見える日常的な手段に頼ってしまうものだ。非常階段が使えるのに止まったエスカレーターに殺到している今がいい例である。

ならば普段使えない方法。アニメや、子供が妄想するような、常識では絶対にやらない手法がいい。そこまで考えて、やっと見つける。

それは一階フロアから伸びている大きな木。どこから持ってきたのかは知らないが、その大木はかなり上のフロアまで伸びているはずだ。ならば。

 

「うおおおおっ!!」

 

走って、跳ねて、手すりを蹴って、大木にしがみつく。

 

「くっ……あっぶねえ……」

 

下位術師ではあるが一応は身体能力強化を扱う身。普段の測定では大したものにはなっていないが、こういう時くらいはこれくらいできるものだと安堵する。が、今は達成感に浸っている場合ではない。大木をよじ登っていく。観賞用のせいか、目に見えて大きなでっぱりが少ない。足をかけるスペースがほぼないがため、必然的に腕の力を頼っていく形になる。

 

「高い……落ちたらケガじゃ済まないやつだ。なるべく下は見ないようにと」

 

そうやって考えていたその時。

 

『死んだ奴はご臨床様。生きてる奴はおめでとう。これから君たちは人質だ』

 

放送が流れた。テロリストたちだろう。

 

『我々の要求を無能な王へ通すため、死んでもらったり交渉の材料にさせてもらう。聞こえているものは今すぐ二階のフロアへ来い。五分だ。五分以内にここへ来れば人質として丁寧に扱おう。来なかった者は発見次第殺す。さぁ、カウント開始だ』

 

とりあえずまずい。二階のどの場所かはわからないが、もし寧音を見つけた場合、仮に優衣を連れて行っても治せないかもしれない。それはそうだ、明らかに死亡している人を、大勢の目の前で治せるわけがない。

 

「(でも、まずは二人を見つけないと)」

 

話はそこからだ。そう心に言い聞かせてから、より一層力を込めて木を登る。登ってるところをテロリストや他の人に見つかり、騒がれる心配もあったが、そんなことはなく、なんとか三階フロアまで来た。

三階フロアの少し上まで登り、腕を伸ばして着地点を見据える。まさか創作世界で見るような事をする羽目になるとは思わなかったが、覚悟を決めて膝を曲げる。

 

「よっ!」

 

思い切り木を蹴る。体を伸ばして少しでも距離を稼ぐ。その回あったが、大の字のまま上半身はフロアの方に入ってる。そう、上半身は。

 

「おうふっ……」

 

下半身は微妙なラインだったがため、股間を手すりに強打した。男性特有の激痛と引き換えに無事、三階フロアに入れたわけだ。

 

「……なんか、締まりませんね」

 

激痛に耐えていた数馬に声をかけたのは、根本愛菜だった。

 

「ね、根本さん……」

「や、私にはその痛みはわからんで気安い言葉はかけませんが、落ちるよりからマシということにしましょ」

 

テロ現場とは思えないやりとりだった。

 

「……と、痛がってる場合じゃない。七尾さんは?」

「優衣ちゃんならそこですよ」

 

愛菜が指差した先は女性物の洋服売り場。

 

「双海が撃たれた。七尾さんならどうにかならないか」

「……撃たれたって」

「胸を……なんか馬鹿でかい銃で」

 

対物ライフルの方かと愛菜は理解する。テロリストの武装は見ていてある程度を把握していたからだ。しかしそれだと重傷ではなく誰の目から見てもわかる絶命のレベル。

確かに重傷だろうが絶命だろうが七尾優衣にかかれば等しく治る。だが問題はなぜそれを彼が知っているのかだ。

 

「ならこっち」

 

とりあえず、優衣の元へ数馬を連れて行く。今ここでその辺りを尋ねてもいいが、さっきの放送が流れた以上、あまりグズグズしていると治すに治せない状況になる。

 

「鈴木君……無事だったんだね」

「七尾さん、頼む、双海が撃たれた。治せないか。前みたいに、なんかよくわかんないけどすごい力で」

 

縋る。常人では理解できないような、神の力に。

 

「……双海さんは?」

 

優衣が居場所を尋ねる。できないとは言わない。目の前の彼はその力を見た事あるし、一度それに助けられた事を知っているからだ。

神が、自分が姉と呼ぶ存在がそれを見せたということは、自分が使えることを彼に見せても問題ない。そう判断した。

 

「二階、この真下だ」

「わかった。すぐに行こう」

 

下はテロリスト達と人質が集まっているはず。ここからは気が抜けない。それに、彼らが定めた五分はすでに経過している。見つかれば発砲されるのは間違いないだろう。

 

「仕方ないですね。友達のために一肌脱ぎますか」

 

と、愛菜も言う。この場に魔人が居れば鼻で笑っただろう。

 

「ごめん、力を貸してくれ、根本さん」

 

極術使いが仲間にいれば心強い。このメンバーならきっと双海の元にたどり着き、彼女を助けられる。

 

「よし、行こう」

 

そんな光景を、魔人は四階の管理室で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公が仲間と共に立ち上がる前。人質希望の八代を放って四階の管理室に向かった。優衣を探すならば監視カメラの映像を見て、居場所を知ってから向かうのが一番手っ取り早いと思ったからだ。

 

「(邪魔くせぇ)」

 

銃声を聞いて逃げ惑う人々。押し退けるのは簡単だが、視界が効かないのが面倒。なので姿を透明化させてから天井に飛び張り付き、天井を歩く。

 

「(大丈夫だと思って目を離したらこれだもんな。まったく)」

 

そのまま愛菜や優衣を追っていたのならば、多少「神聖」を失ってでも聖移を使って帰宅したのに。とも思うが、こうなってしまった以上仕方ない。

 

とりあえず五階フロアから飛び降りて四階フロアに移動する。またこちらでも人の波が凄いのでもう一度天井を歩く。管理室がどこか分からないので虱潰しに「関係者以外立ち入り禁止」を見て行くしかないのが面倒なところだ。

そうして移動を始めた時。

 

「(……なんだあの猿)」

 

気をよじ登る人を発見した。恐怖でおかしくなる人は結構いるが、そういう奇行もあるんだなと変な関心をしてすぐにまた移動を始める。

そうして直ぐに四階の非常階段から出てきた、覆面のテロリスト三人を発見。

彼らが管理室まで案内してくれるだろうと踏み、彼らの頭上からついて行く。その移動途中。

 

「くらええええ!」

 

その三人に対して誰かが魔術を撃ち込んだ。雷球で威力は上位ほど。当たればかなりのダメージになるのは間違いない。これは思わぬ反撃かと思った。が。

雷球はテロリストに当たることはなく、当たる寸前に消滅した。

 

「えっ……」

 

撃った本人は軽く放心状態に陥る。射程範囲内だと思っていた。なのになぜ。そうこう考えているうちに発砲されて頭を撃ち抜かれ絶命した。

 

「(ンー、エーテルの分散か」

 

魔術除去装置を小型化したものかと思ったが、それだとそもそも魔術が発動できないという結果になる。ついでテロリストに近づいてエーテルが分散したのだから、範囲内のエーテルを分散させる何かと考えるのが自然だ。

よくもまぁ、絶対に失敗する計画にここまで国を動かせる切り札を使うものだ。最近の若い者が考えることは理解できない。なんてジジくさいことを考えて、大人しく彼らに着いていく。

 

「……こちらJ。管理室の制圧を開始する」

 

彼らは管理室と思われる場所へ侵入。最新のロックシステムであるエーテル認証をどういうわけか正常に通して中へ入り、ご丁寧に鍵を締める。

 

「(……ン。どうすっかな)」

 

恐らく、この件は表向きでは正常に解決される。それは間違いない。この場には愛菜も居るし、警察部隊も集まり出している。だが、それだけで全ては解決しないだろう。今回は闇に葬られるべき物が多くある。彼らの装備、先ほどのエーテル認証、この手際の良さ、彼らの存在そのもの。本来こんな大々的に出てきていい者たちではない。

 

つまり、今晩は出勤になる。

 

だから彼らを取り込んでおくべきかの悩みだ。メリットは仕事が楽になる。デメリットは事後に警察の捜査でおかしな点が現れるというところ。五秒ほど費やしてメリットデメリットを計算し、答えを出す。

とりあえずは中に侵入。ということで、体を透明なまま液体化。中へ入る。

先に入っていたテロリスト達は端末を弄り、全てのドアを塞ごうとクラッキングを試みていた。全て終えればシャッターが降りて、ここの建物から出る方法が非常階段のみになるだろう。それから警察達に移動用のヘリやらを用意させれば無事脱出だ。もっとも、その後の保証はないが。

 

「あと二分ほどで完了します」

 

と、無線で誰かに伝えていたが。

それがそのまま遺言となる。液体化していた体を元の女性ではなく、普段の姿へと戻し、三人まとめて見えない手で首を絞める。

死なない程度に窒息、気絶させて監視カメラの映像を目で追った。

 

「大丈夫そうだな」

 

愛菜、優衣、数馬。三人が戦いの舞台へと向かうところだった。

 

ここからは主人公の舞台。魔人の出る幕ではなく、彼が、仲間と共に奇跡やらその辺を起こして解決されるべき事件。なので、亮は。

 

二階フロアで目を輝かせながら縛られている八代をどうするか考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利を掴み取った。

 

途中何度もアクシデントがあったり、脚を撃たれたり、腕を撃たれたり。水流に押されて溺れかけた事もあった。

でも、それでも鈴木数馬はテロリストの親玉を殴り飛ばし、人質を解放して、双海を生き返らせた。皆で笑い合い、人質だった者に感謝され、死に逝った者達の遺族に優衣の力を教えることができない事を悔やみ、それでも仲間達と共に元の生活に戻ることができた。

 

そして、最後の最後。

 

「あ、亮」

 

それは普通に二階フロアに現れた。

 

「無事か。なんか大変そうだったな」

「や、どこ居たの?」

「喫煙所」

 

周りの声が煩くて愛菜と亮の会話は聞き取れない。だが、数馬は今まで感じたことのない気味の悪さを彼から感じた。

 

「ほら、八代、帰るぞ。愛菜と優衣は学友と遊んでけ」

 

人質だった女の子と共にデパートを去ろうとする。何か、今何かを彼にしなきゃいけない。数馬はそんな衝動に駆られていて、思わず。

 

「あ、あの!」

 

と、声をかけてしまった。

彼は顔を動かし、声を発した数馬の方を見る。そして目と目が合う。その瞬間、数馬が抱いていた気味の悪さの正体が分かった。

 

「ン?なんか用か」

「あぁ……いや、なんでもありません」

「そうか」

 

一言言って歩き去る。もう止める気にもならなかった。なぜなら彼は、前に自分が好きになった女の子が愛していると言った恋敵だったから。

 

そして、自分の家族を皆殺しにした男だったから。




遅くなる投稿。抗えないネタ切れ。滲み出る語彙力不足。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。