無敵系中ボスが過去にしがみつく話   作:竜田竜朗

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久し振りにギャグ路線。書きたかった。


右腕の代償①

夜の静寂に二つの足音だけが小さく響いていた。会話はない。片方は何を話せばいいか分からず、もう片方はこれから住人をどう説得すればいいかと悩んでいたから。

言うまでもなく、前者が宮里由紀で後者が根本亮だ。

 

「……」

「……」

 

黙々と歩き続けて5分少々。なるようになれとタカをくくった亮がやっと口を開いた。

 

「お前、腕はいいのか?」

「……そういえばさっき、アンタ言ってたわね。血を一滴寄越せ、作ってくっつけるとか。どういう意味よ」

 

質問に質問で返されてしまったが、これは都合がいい。由紀もあの家で生活するのなら、一度自分について知ってもらわなければいけない。

 

「お前の血液を取り込んで俺の体の中でお前の遺伝子情報から右腕を生成して取り出し、くっつける」

「……は?」

 

この反応は当然といえば当然のものだ。

 

「……えと、食パン一枚食べたら体の中で一斤作れるって事かしら?」

「お前それ自分で言ってて意味不明じゃないか?」

「うぐっ……」

 

理解できないことを自分の分かる範囲に落とし込みイメージしやすくするのはいい事だが、今回ばかりは悪化していた。

 

「そもそも、俺自身について説明していなかった。その点では俺に非があるか……」

 

そう呟いた亮の視界左側に、街路樹が入った。ちょうどいいと亮は左手を伸ばす。

ちなみに、街路樹は手の届く場所にはない。およそ10m、それくらい離れた位置にある。普通の人間ならば手を伸ばしたところで宙を掠めるだけだが、魔人は普通の人間ではない。

 

──ゴッ

と、風を切る音と共に、亮の左腕が街路樹へ伸びる。それから植え込みに生えている雑草を掴んで引き寄せた。

 

「……」

 

別にそれくらいで今更驚きはしなくなった由紀。けれど言葉を失っている。頭では何が起こっても不思議じゃないとわかっていても目の前で起これば疑問符くらい頭に浮かぶものだ。

 

「ここに物体があるだろ?」

「……解説のスタートが随分斬新ね」

「まぁな。ンでだ」

 

左手のひらを黒く歪ませ、体内に取り込む。

 

「……」

 

由紀はその様子をじっくりと観察していた。今度は思考を途切れさせない。コレは、ある意味で自分にとって亮を知るチャンスだからだ。由紀は復讐のために組織に加入した。その復讐の対象にはもちろん亮やナナシだって含まれている。いつかその時がくれば亮だって殺る。そのためには亮の弱点を探すことが先決だから。

 

「これで俺はこの雑草を食らった。正確には魔力で分解し魔力にした。だから性質、細胞、記憶はないが植物として受け継がれた本能みたいなもんを手に入れた」

「……意味わかんないけど、それでも砕いて説明してくれてるのよね?」

「あぁ。自分で言うのもなんだが、人間の基準からかけ離れた捕食と考えてくれ」

 

亮の能力を理解するなら常識の枠を取っ払って考える必要があるのを念頭に入れ、再び由紀は亮の言葉に耳を傾ける。

 

「一度食らったものは再構成し、生成、体外に放出できる。こうやってな」

 

再び亮の左手で黒く歪んだかと思えば、消え去ったはずの雑草が、手のひらから生えてきた。

 

「……雑草だと手品みたいね」

 

実はタネと仕掛けがありましたと言われても納得できてしまう。イマイチ亮の言った物とのスケールの乖離が大きかった。

 

「それもそうだな。ンじゃほらよ」

 

ならば次は。そんな気軽さで、亮の腹が黒く歪み、獣の様なものが出てくる。夜の暗さもあってか、それが何なのか由紀は直ぐに理解できない。けれど形がハッキリとしていくにつれ、それはつい最近見たいものだと判明した。

 

「……ウォッチドッグ……死んでるの?」

「もちろんだ」

 

尻尾の辺りだけ未だ亮の体にくっ付いていて、中ぶらりな状態。

 

「……っ……」

 

言葉が出ない。たとえ魔物だとしても、生き物の死骸を体内から取り出す生命の冒涜をどう表現すればいいのか分からない。

そして、浮かんでしまうのは、もう一つの可能性。

 

「それは……」

 

聞いてしまっていいのか。それを、口にしていいのか。分からない。

だが聞きたい。思考を止めていたら、多分こんなに心は揺れなかったかもしれない。けれど、決めたから。だから由紀は尋ねようと口を開いて──

 

 

 

 

「生き返らせることもできるし、別段この生き物はダメってのはない。人間だろうとな。だからまぁ遺伝子情報さえあれば腕を作るなんてのも造作ない」

 

先に言われてしまった。だから言葉に詰まる。

 

「っ……」

「別にやってもいい」

 

またしても先回りされる。

 

お母さんを生き返らせてくれるの?

 

その回答をこうもあっさり用意されてしまった。余りにも非人道的で、あってはならない選択肢だ。

 

一度死んでしまった者を生き返らせる。

 

あってはならないがとても素晴らしい手段。誰一人悲しむことのない、完全無欠の最善策。そんな物が、ポンと目の前に用意されてしまった。

 

「一度食らう必要はあるし、流石に死後から時間が経過し過ぎれば記憶も少しは曖昧になるかもしれない。ただ身体機能は全く損なわない様にしよう。介護がどうのとかいう心配は無い。少し記憶に欠落が出るかもしれないってだけだ」

 

取り出したウォッチドッグを再び体内に取り込みつつ、追い打ちをかけるように、亮が事務的に語った。彼の人の生き死に対する価値観が狂ってるのを感じつつも、由紀は戸惑っていた。

 

これは願ってもいないチャンス。なのに、由紀はお願いと素直に言うことが出来なかった。

 

これまでの人生で培ってきた倫理観が邪魔をする。反則の様な最善策を躊躇うことなく選ぶことができない。

命を弄ぶ悪魔との取引に、素直に応じることはできない。

 

「まぁ考えとけ」

 

軽く言って再び亮が先導し歩き始めた。由紀は何となくでその足取りに着いていく。頭の中はゴチャゴチャしていて、冷静にはなれない。そんな様子を察してか、歩いて、前を向きながら再び亮が口を開いた。

 

「……俺の提案をどう取ろうが勝手だが、お前はちゃんと思い出せよ。お前が本当に欲しいものを」

「欲しい……もの?」

「そうだ。倫理観に裏打ちされた理性は社会で生きていくのに必要なもんだが、そんな物のために、自分が心から望んで止まない物を捨てるなよ」

「……ぁ……」

 

と、肩から力が抜けた。なぜ彼が背中を押してくれたのかは分からないが、実感の篭ったその言葉に、冷静さが戻ってくる。

 

「多分……つーか、絶対、死人を生き返らせるのは間違ってるし、復讐するのだって間違ってる。間違った選択しかないが、それでも二者択一だ。宮里紀子を生き返らせるなら、復讐は忘れろ。逆に復讐するなら、宮里紀子の死を受け入れることだ」

 

母親を生き返らせれば、復讐する理由は薄まる。激情が湧いてくるかどうか怪しい物だ。

それでも、母親が生き返るなら、復讐しなくて済むなら、それはたとえ間違っていようが最善。完璧だ、そうすればいい。

 

「…………考えさせて」

 

なのに由紀は、即答できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約30分歩き通して二人は亮の家に辿り着いた。周りには似たようなマンションが立ち並んではいるが、その中でも2フロア分ほど高いそのマンションの前で一度立ち止まり。

 

「ここだ」

 

告げる。

 

「なんていうか、普通のマンションなのね……」

「何を想像してたんだ」

「廃ビルを改造してた、みたいな。よくありがちじゃない?」

 

ありがちな所にあったら、それは新世界の闇の頂点を隠す場所としては不適切なこと間違いない。

 

「期待に添えなくて悪かったな。行くぞ」

 

ホールのロックを解除し、エレベーターで最上階へ向かってから玄関のロックキーに由紀の魔力を登録する。これで由紀もこの家に好き勝手出入りする権利を得た。

試しに由紀に解錠をさせて見ても上手くいったので、まず亮から中に入る。

 

「ただいま」

「え……」

「なんだ?」

「あなたがただいまって、なんか違和感が……」

「失礼な奴だな。家に帰ればただいまって、当たり前の事だろ」

 

そりゃそうなのだが、人間ではないと自分で言ってのけた者が、人間ですら忘れてしまう様な常識に従っている事に違和感がある。しかし戸惑い続けるわけにもいかない。家主がまともならば相応の挨拶というものがあると思考を切り替え。

 

「お邪魔します」

 

と告げ。間髪開けずに廊下の奥から住人がやって来た。

 

「「……」」

 

我先にと飛び出してきた八代と愛菜の二人は玄関を見るなり膠着し、少し遅れてから二人の間を通って優衣が出る。

 

「おかえりなさい、義兄さんと……ん、いらっしゃい、宮里さん」

 

少し驚いていたが、何かを察したのか、優衣はいつもの様に小さく微笑んで亮と由紀を迎え入れた。

 

「えっと、確か、七尾さん?……なんでここに……っていうか根本さんも……」

 

対して由紀も、顔を見知りが二人もこの場に居るとは全く思っていなかったようだ。

 

「お前ら二人はどうした?何呆けてんだ」

「いや呆けたくもなるじゃろうて……あれじゃよ、ツッコミが渋滞してるんじゃ。そりゃもうGWのデパートの駐車場待ち並に」

「分かりにくい」

 

一心同体となれる八代はもう回復した様だ。最も、何があっても不思議じゃないという諦めに近い感覚を持っているからこそだが。しかし聞かぬ訳にもいかないので、玄関だろうと質問はする。

 

「主……なんで女の子連れて帰って来てるん?拉致?誘拐?」

「俺も連れて帰りたかったわけじゃない」

「……百歩譲って良いてして、なんでその娘は右腕ないのじゃ?」

「そら切り落とされたからだろ」

「あーわかった、妾が悪かったのじゃ。後で説明をたのむぞ主」

「ン、もちろんだ」

 

片腕を失った女の子を連れて帰って来たというぶっ飛んだ展開の説明を玄関先で行うわけにはいかない。その考えは伝わったらしい。

 

「愛菜ちゃん、義兄さん帰ってきたよ?……んー?」

 

愛菜の前で手を振って正気に戻れと優衣が声を掛けている。その甲斐あってか、放心していた愛菜の瞳に力が戻り──

 

「んんんもおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

と、雄叫びを上げた。優衣は慄き、愛菜から距離をとる。

 

「うるせえよ落ち着け」

「これっ!がっ!おちっ!ついて!いられる!かっ!」

 

言葉のリズムに合わせてナイフが飛んでくる。避けることなく甘んじて受けている。十本ほど体に刺さったところでようやく愛菜が手を止めた。

 

「なんでぇっ!?半年経たずに住人が三人も増えるの!?」

 

出てきたのは切実な言葉だった。全くもってその通りであるので咎められる者はいない。

 

「……元々八代は居た」

「優衣ちゃんは!」

「大歓迎だよな」

「宮里さんっ!」

「……仕事の一環でナナシにしばらく頼むと言われた」

「これだよっ!!」

 

だからと言って何か理由があるのは愛菜にも分かるので、今すぐ返して来いとも言えなかった。だからまぁ、これはちょっとした癇癪だ。心を落ち着けるのに必要な行為。二人きりの時間を返せーという愛情表現の裏返し。

 

「宮里さんに分かる?自分の事を育ててくれた大切な人が大体月一で女の子を連れて帰ってくるこの気持ち!!」

 

その矛先は次に由紀へと向かった。

 

「……わ、分からないわ」

「は?いや、そうじゃないでしょ?」

「えっ……あの……ご、ごめんなさい」

 

状況的に、由紀も強く言い返せず、何より由紀の知る限り敬語を崩してここまで気持ちを露わにしている愛菜を見たことがなく、そのギャップに戸惑っていた。

 

「ん……いいけどさ。宮里さんにも何かあったみたいだしね」

 

愛菜の視線は、途中で切断されている由紀の右腕に行った。

 

「……ありがとう、愛菜ちゃん」

「ええんやで」

「(ええんやで……?)」

 

困惑は深まるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第42回家族会議いいいー!!」

 

定員ギリギリのソファに全員腰を降ろしたのを確認して、愛菜が盛大に開会の宣言をした。

 

「いえええい!なのじゃ!!」

「わーい!」

 

なんだかんだ初参加の八代と優衣は少々テンション高め。八代の時はすんなりいって、優衣の時は家族会議というか家族戦争が勃発してしまっていたからだ。

 

「い、いえーい……?」

 

同じく初参加ではあるが、つい二時間前にこの家に足を踏み入れたばかりで、かつ学校ではクール&キューティー(可愛い系の女の子が敢えてクールなの良いよね)の称号を欲しいままにしている愛菜のハイテンションに戸惑いを隠せない由紀。

 

「4回もサバ読むな。38回だ」

 

そして、ソファが定員ギリギリで二つあるうち片方がギュウギュウに敷き詰められてしまうのをいい事に八代ではなく大好きな人の妹(創作物)を膝に乗せつつも冷静なツッコミを入れる新世界の闇の頂点、魔人亮。拗らせに拗らせた愛ゆえのスキンシップだが初めて見る者からしたら控えめに言って気持ち悪いだろう。

 

「……多いことには変わりないと思うのだけど……ていうかあの、あなたのイメージが粉々にぶっ壊れるから悪いことは言わないわ七尾さんの位置変えましょ?」

「ンで、何を会議するんだ」

 

由紀の提案を無視し、優衣の長い髪に隠れた亮が冷静に尋ねた。

 

「お仕事だから由紀ちゃんが居るのは仕方ないとして……ほら、この家に住むならいくつも必要なことあるでしょ」

「私のための会議っていうなら少し私の話を聞いてくれてもいいんじゃないかしら!?」

 

なんだか由紀は馴染んできた様だ。ツッコミとしての適性が高いのだろう。ボケが渋滞するこの家庭において有難い戦力である。

 

それはさておき、愛菜が言いたいのはまず由紀の状況の説明。次に家のルールを教え込むことと、後は由紀の生活用品の事とかだろう。確かにこの家には彼女が生活していくために必要な物が不足している。「住む」というのは滞在することとは訳が違う。

 

「はいっ!まずは宮里由紀さん、なんでうちに住むことなったのか、お答えください!」

 

ビシッと愛菜が由紀に指を指した。

 

「は、はい!えーと、私の……私のお母さんを殺害した奴に復讐したくて、一人敵陣に乗り込んだ結果、敗北。捕まったところ彼に助けられ、その流れで外界遠征の総司令官から組織に来いと誘われ、承諾したところ、住む家が必要だろうとこの家に招待頂きました!」

「長いっ!だいたい分かったけどもちっと簡潔にまとめるように!!」

「は、す、すいません!」

 

ぶっちゃけ今回の件をこれだけ短くまとめただけでも頑張った方ではある。

 

「ふむ、では妾から質問……よろしいかな?」

「は、はいっ!」

「八代ちゃんそれどういうキャラよ」

「や、黒いのがなんか詰問役っぽいから妾はどこまでも平等なキャラを演じようかと思うての」

「向いてないと思うなぁ」

「げふん!それでじゃ、好きな色は何色じゃ?」

 

会話の流れをぶった切った質問だった。

 

「し、強いて言うなら青色です!」

 

しかしそんなんでいいのかと割り込む勇気が由紀には無かった。このテンションに着いていくのにやっとである。

 

「んじゃお主は青いのじゃの」

「青いの…………?」

 

なんだか馬鹿にされてる気分になった。

 

「はいそれじゃ次、由紀ちゃんから何か質問は?」

 

……それで終わりかと由紀は少し拍子抜けする。どんな敵と戦ったかとか、今はどういう心情かとか、踏み込んで聞かれると思っていた。だがまぁ自分から掘り返すことは無いので、疑問を口にする。

 

「愛菜ちゃんの話は総司令から聞いたし、さっきも少し言っていたけれど、ここにずっと住んでいるの?」

「そだよ」

 

だから何?と続けられそうなくらい間髪開けずに返された。

 

「……このへんた………………彼とずっと?」

 

優衣の髪に顔を埋める亮と、顔を赤くして微動だにしない優衣の二人を一瞬視界に入れたがために思わず罵倒が出てきてしまったが、視界から外し頑張ってシリアス路線に持ち込む。

 

「んー、ずっとってわけじゃないけど、まっ、概ね」

 

少なくとも、生まれてから数年はあの場所で過ごしてきた。間違いではない。

 

「……だから、ね」

 

どこか由紀は納得したように頷いた。愛菜が見せるあの冷たい瞳の正体。それは彼と共に生活しているからなのだろう。裏付けるように、この場にいる愛菜にはあの瞳を持っていない。その真逆、花が咲くように明るい、無邪気な子供のような暖かい瞳がある。

 

「えっと、次に八代……ちゃん?」

「ちゃんを選ぶ辺り妾の凄さを理解できとらんようじゃの」

「…………ごめんなさい」

 

銀髪の幼い子供が狐の耳と一本の尻尾を生やしている絵面は確かに凄まじいものがある。コレを強要させている人物がいるのだとしたら相当やべえ奴であり、由紀は十中八九これは亮の仕業だと考えていた。自分のことを主と呼ばせているのが決定的だ。

 

「(……もしかして私はとんでもない所に来てしまったんじゃ……)」

 

特殊な危機感に襲われる。新世界の闇の業の深さが垣間見えた気がした。気の所為である。

 

「まぁ仕方あるまい、所詮は高々新世界のトップの内の一人、魔物の頂点たる妾を理解することなどできはしまい」

「……魔物の頂点……?」

 

ここに来て、驚愕の事実が判明する。

 

「そじゃよ!青いのが産まれてくるはるか昔に九之枝の一枝と魔物に崇められ人々から恐れられ、それでも魔物と人との共存を目指し神聖を手に入れたありがたーい」

「ストップ!ストップ!情報量が多い!」

 

そんなノンストップで自分の知っている常識とかけ離れた事を言われても困るのが当たり前だ。九之枝だの神聖だのは由紀の知るところではない。

 

「主から事前に聞いとらんのか?」

「えぇ、一言も」

「ぬぅ……まぁ確かにこちら側の者に一から説明するのはかなり手間じゃの……」

 

神やら信仰やらを一から十まで説明するのは簡単な話じゃない。何せ新世界は神が空想上の存在であると思われているからだ。価値観というより世界観の違い。これを口で説明するのは余りにも難しい。

 

「まっ、それはおいおい語るとするかの」

「……何が何だかわからないけれど、お願いするわ」

 

それから生活用品等は明日買いに行くという事で落ち着き、後はこの家のルールについて教えてもらった。

 

行く時はいってきます。送る時はいってらっしゃい。帰ってきたらただいま。迎える時はおかえりなさい。

食事に自分の好きな物を食べたい時は買い物に付き添うこと。トイレに入る時は鍵を閉める。

なんて、どれもこれも当たり前といえば当たり前のようなルール。マナーじゃなくて、ルールだ。礼儀じゃなくて規則だと言われた。きっとこの家ではこれが大切なんだろう。由紀にはまだ実感は無いが、ルールだと言われた以上、破る気は無い。

 

一応、ここで家族会議はお開きになる。まだ優衣と亮の話は聞けていないが、それは少しずつでいいか。なんて思って。

 

──グゥ〜

と、由紀の腹が鳴った。

 

「(…………そういえば、何も食べてなかった……)」

 

冷静に思い返してみれば食事は今朝……というか昨日の朝に食べた病院食が最後だった。

 

「……ちょっと待ってろ」

 

腹の音を聞いた亮が立ち上がった。少し多めに作ったコロッケが余っている。それを温めて、お米は冷凍の物を使おうと台所へ向かう。

 

優衣を抱き抱えたまま。

 

「ぴゃぁ〜」

 

優衣の悲鳴は台所へと消えていった。

 

「出荷じゃー……おやすみなさい」

 

なんて言いながら八代は自分の部屋へと入っていき。

 

「そんなー……おやすみなさい」

 

同じ様に愛菜も自室へ入っていった。

 

二人の背中に強い哀愁を覚えたのはきっと気の所為ではないのだろう。二人も自分と同じく理不尽な運命を背負っているのだと分かった。別にこんなことで分かりたくは無かったが。

 

「…………この家の事もよくわかった気がするわ」

 

慣れるまでにはかなりの時間を要するだろうが、この場の居心地は悪くない。

そう感じたのだった。




もーそろそろアンケート機能なるものを使ってみたいのですが何をアンケートすればいいのか

誤字報告してくれている方、助かってますorz
誤字脱字のオンパレードなのは分かっているのですが中々治らず……お恥ずかしい限りです
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