機械仕女《メイロイド》と多異世界《マルチワールド》 作:とある天督
窓のない小さな部屋。
目を覚ました優真は渋々布団から出てテレビを付けた。
しかし、画面にはノイズしか入らない。
「あ・・・そうか、映らないんだっけ・・・。毎朝の癖でつい付けちゃった」
ぼーっとテレビの画面を見つめる。
暫くして立ち上がり、ポッドの電源を入れてお湯を沸かす。
顔を洗って、着替えたていたところで丁度お湯が沸いたのでコーヒーを入れる。
「ふぅ・・・にがっ」
ビビビビビビ!!
ゆったりコーヒーを飲んでいると呼び鈴が鳴る。
「マスター、お迎えに上がりました」
スピーカーからは女性の声が聞こえる。
「わかった。今行く」
扉を開けるとそこには数名のメイドと兵士が並んでいた。
「「おはようございます、マスター」」
「「おはようございます!!艦長!」」
メイドからはマスター、兵士からは艦長と呼ばれるこの男。
名前は火野優真。彼がこの物語の主人公だ。
そして、これから数々の伝説を生む英雄達のリーダーなのである。
~数年前~
とある戦争地域の森の中。
そこに狭い森の中を走る兵士達の姿があった。
「はぁ・・・はぁ・・・急げ!」
複数人の兵士達がボロボロになりながら走っていた。
「ちょっと!!奴ら、あの新型を使ってたわ!」
走って逃げる兵士たちの一人。
赤髪の女性兵士、ニアが負傷兵を抱えて走る兵士に話しかけた。
「あぁ!俺もこいつが隣で撃たれたのを見てやっとわかったよ!」
作戦中に本隊と逸れてしまい、敵に攻撃されて逃げているところだった。
「破裂する砲弾・・・連合の奴らあんなものをどうやって・・・」
走って逃げる兵士達。
ドドォーン!!
するとそこにどこからか砲撃音が響いてくる。
「・・・!?まずい!逃げろ!!!!」
負傷兵を抱えた兵士が上を見て叫ぶ。
同じく上を見た兵士達は凍り付いた。
無数の砲弾が自分達へ落ちてきていたのだ。
「!?リック!!」
そして直後。
ニアが叫んだ瞬間、負傷兵を抱えた兵士の体が2つに裂けた。
砲弾が直撃したのだ。
「ぐあぁあああ!!!」
「ぎゃぁあああああ!!」
ニアや他の兵士にも砲弾が降ってくる。
「!?あぁぁぁぁ!!」
ニアは直前で砲弾にきづくが、両足が爆発に巻き込まれてしまった。
「っ----!!」
想像を絶する痛みに声にならない悲鳴が出る。
「うあぁ・・・・・・」
「た・・・助け・・・て・・・」
そこはまさに地獄絵図と化した。
するとそこに戦場とは不釣り合いな格好をした、メイド姿の女達が現れた。
「(あ・・・あいつらは・・・?)」
遠のく意識の中、ニアは女達に気づいた。
女達は兵士達に近づくと何かを確認するような動きをする。
「・・・?」
一人のメイドがニアに気づき近づいていく。
しかし、ここでニアは視界が暗くなる。
「(くっ・・・これで私も・・・)」
その光景を最後に瞼を閉じた。
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「・・・ここは?」
ニアはいつの間にか意識を取り戻し、起きた場所は見慣れぬ部屋のベッドの上だった。
「・・・」
周りを見回すと、ベッドの隣に気を失う間際に近づいてきたメイドが座っていた。
「(なんだい?寝てる?)」
しかしメイドは目を閉じて動かない。
「う・・・よっこら・・・」
とりあえず体を起こした。
「起きましたか。体調はどうですか?」
体を起こした瞬間、メイドはニアに問いかけた。
「えっ・・・と?」
「???」
ニアは色々な状況を飲み込めずにいた。
自分達は森の中で本隊と逸れ孤立。
敵の攻撃を受け敗走し、その最中に部隊は壊滅。
自分は目の前のメイドによって殺された。
そう思っていたのだ。
「なぁ、なんで私を助けたんだい?」
とりあえず一番の疑問をメイドに聞いてみた。
「私にはお答えできません。全てはマスターのお考えですので」
メイドは頭を下げながら答えた。
「マスター?・・・会えないのかい?」
「会えます。ついてきてください」
するとメイドはドアを開けてどこかへ行こうとする、それを慌てて呼び止める。
「ちょっと待ちな!この足では歩けないでしょ!」
気を失う前、足が爆発で吹き飛んだことを覚えていた。
当然足がなくては歩けない。
「歩けない?つまりその足は飾りですか?」
「何を言っているんだい?私の足は爆発で・・・・・・・」
そう言って自分の足をベッドから出した。
だが足を見た瞬間、ニアは絶句した。
爆発で吹き飛んだはずの足があるのだ。
「なっ!?確かにあの爆発で!」
激痛を伴って無くなったはずの足が確かについていたのだ。
感覚や意識、五感の違いに混乱する。
「・・・!静かに」
メイドが混乱するニアを何かに気づいて止める。
直後、ドアの向こうから人が現れた。
「おはようございます、ニアさん。よく眠れましたか?」
現れたのは子供だった。10~12歳程度だろうか。
「(なんで子供が・・・)」
疑問に思っているとメイドから驚きの言葉が出た。
「おはようございます、マスター」
なんと年端もいかないこの子供、この子供が先程からメイドが口に出していたマスターだったのだ。
当然、そんなことなど予想する訳がない。
「なっ!?この子供がお前達のマスターかい!?」
当たり前の反応をするニア。
だが次の瞬間、ニアの喉元にナイフが突きつけられる。
「貴様、マスターの侮辱は許さんぞ」
自分の主を馬鹿にされたメイドが目にもとまらぬ速さでニアの後ろに回り込み、ナイフを突き付けたのだ。
「いいよサチ、当然の反応だよ。それに教官を殺しちゃったらみんなに戦闘を教える人が居なくなっちゃうよ」
「はい、申し訳ありません」
子供の命令でメイドはナイフをしまって隣へと戻る。
「ちょいと待ちな。私が教官?」
「はい。ニアさんには僕の子達に戦闘を教えて欲しいんです」
なんと、いきなりさらった挙句に教官になれと言ってきた。
この状況でこんなことを急に言われても普通はイエスなど間違いなく出ないだろう。
だが、そんなことは予想済みと言わんばかりに一枚の紙をニアに差し出す。
「あ、ちゃんと給料も出しますよ!このくらいの額でどうでしょうか?」
怪しいとも思ったが見るくらいならと紙を受け取る。
「ん?・・・・はあ!?」
そこには額の桁が2つ3つ違うんじゃないかという金額が提示されていた。
低賃金の軍部勤めからしたら願ってもない話だった。
「・・・いいだろう、ただし条件がある」
断る理由もないので受けることにした。
「なんでしょう?」
ニアは条件と題して初歩的な質問をした。
「まずあんたの名前はなに?私はニア。ニア・レノンよ。ニアと呼んで頂戴な」
「僕は火野優真です。えーっと・・・日本人です」
「じゃあ次。なぜ私なの?」
「前に僕の子があなたの指導を受けたので・・・、それに同性だったのでそれで」
「そう・・・。」
スムーズに受け答えがなされる。
そんな中、疑問に思ったことがあったので聞いてみた。
「ねぇ、さっきから僕の子達とか僕の子って言うのは誰のことなんだい?」
ニアが質問すると優真は目の色を変えた。
「あ、それはですね」
優真が隣のメイドに視線で合図を送る。
「かしこまりました」
返事をしてしばらくしたとき、ドアがノックされる。
「サチさん。全員を集めてまいりました」
すると複数のメイドが入ってきて整列する。
そして整列したメイドを指して言った。
「彼女達は人ではありません。機械なのです」
あまりの現実の無さにしばし思考が停止する。
「・・・え?いやいや、機械があんな人みたいな動きをするわけないでしょ?」
苦笑いしながら言った。
「本当です。彼女達は僕が独自に作り上げた自己自立型メイドタイプロボット。略してメイロイドです。彼女達は自分で学ぶことができますが僕は戦闘に関しては知識がありません。なので戦闘専門のあなたに彼女達を教育して欲しいのです」
その説明の現実の無さにニアは頭を押さえる。
頭を押さえながらニアは一番疑問に思っていた質問をする。
「・・・お前は一体何が目的なんだい?」
質問すると優真は「待ってました!!」と言わんばかりに目を輝かせて言い放つ。
「この世界を救うためです!」