機械仕女《メイロイド》と多異世界《マルチワールド》 作:とある天督
次の日の朝、ニアはやり気ではなかったが新しい制服を身に着けていた。
優真いわく「あ!ちなみに彼女達に教えるときは絶対!!絶対にこの服でお願いしますね!!」と念を押されて頼まれたのだ。
「まぁ・・・、格好悪く無いからよしとするかねぇ」
と、身支度を整え終えて部屋から出ようとドアに手を伸ばした瞬間・・・。
「おっはようございまぁああああす!!!」
ゴスッ!!
いきなり扉が開き、活発な女の子が入ってきた。
「・・・あれ?」
「-------っ!!!」
勢いよく開いた扉はニアの顔面を捉えており、その痛みで悶絶していた。
「あっ、あのー・・・。ニア教官・・・?」
「・・・なっ・・・」
「な・・・?」
「何をすんだいこのアホー!!!」
「ひーっ!!!ごめんなさーーーい!!」
初日の朝からニアは災難に見舞われたのだった・・・。
~数分後~
二人は宿舎と校舎を繋ぐ外廊下を歩いていた。
ニアは顔を氷の入った袋で冷やしながら歩いている。
「全く・・・。もうちょっと乙女らしい行動を心がけたらどうだい?」
と女の子の頭を撫でながら言った。
だが言いつつも頭の中では機械に助言する自分が馬鹿らしいとも思った。
「えへへ・・・、すいません」
頭の後ろに手を置き「てへっ☆」と舌を出して謝る。
「はぁ・・・。えっと?アンタはCタイプ系の・・・火野ヨルカかい」
一冊の本を見ながら顔と写真を見比べる。
優真に渡された生徒名簿もとい個体番号表だ。
「はぁ・・・、本当に機械なんだねぇ・・・」
ニアはこれを渡された時のことを思い出した。
「今は合計で73人、その中の20人をあなたに指導して頂きます」
「20かい。まぁそのくらいなら何とかなるだろう」
名簿と制服、書類道具一式を貰って部屋を出ようとするニアに優真が言った一言。
「良いですか?くれぐれも彼女達をただの機械と思って接しないでください」
ニアはその一言が頭からずっと離れなかった。
「(にしたって外見だけで言えばただの人そのものじゃないか。話し方やしぐさも)ぐおっ!?」
ヨルカを見ながら考えていた時、いきなりヨルカが体当たりをしてきた。
「教官!!危ない!」
突き飛ばされたと同時に先程までニアが居た場所が爆炎に包まれる。
「っんだよヨルカ!邪魔すんのか?!」
その瞬間、屋根の上に一人の学生が現れた。
学生は銃を構えてこちらに射撃する。
ガシッ!ブシュ!!
ヨルカが真顔でその弾丸を掴み潰す。
「ラウこそ馬鹿じゃないか!!この人は私達の教官なんだぞ!」
ニアは何がなんだかわからず唖然としてしまう。
そこへ更にもう一人の学生が走ってやってきた。
「大丈夫っすか?教官さん」
その学生は来るなり守るような位置取りでニアの前に立つ。
「あぁ!?エイもそいつの肩を持つのかよ!!」
ラウが指をさして怒鳴る。
「もー。ラウさんは人間見れば誰でも殺すって言うっすかー?」
「うるせぇ!!良いからそこをどけこのマヌケが!」
学生達が言い争っていると近くで仕事をしていた複数のメイドが駆け寄って来た。
昨日優真に付き添っていたメイド達だ。
「ニア様、急いであちらへ」
一人のメイドがニアの肩を支えて連れ出す。
「あ!?待てゴラァ!」
背を向けたメイドとニアに向けてラウが射撃した。
が、メイドは振り返ることなくその銃弾を切り裂いた。
そして振り返ると形相を変えて学生と他のメイド達に命令した。
「お前達、任務だ!そいつを捕まえて反省室に入れておけ!」
命令を聞いた学生達は体の前へ手を伸ばした。
するとその手から次々と光が浮かび。
「「「展開!」」」
その言葉を発した瞬間、光が形を変えて武器へと変わる。
そして学生達はそれを手に取り構えた。
同時にメイド達も無詠唱で武器を展開する。
この魔法は完全会得すれば詠唱無しで展開が可能なのだ。
「八ッ!雑魚がいくら増えようがオレは止められねぇ!展開!!」
武器を再展開したと同時に屋根に居たはずのラウがメイドの後ろに移動した。
「なっ!?瞬時移動!?」
「ッシャァ!」
驚いているメイドに向かってラウが大剣を振りぬく。
その衝撃波で二人のメイドが宙に舞う。
「オラぁ!!」
もう一人のメイドに向かって振り上げるが、メイドも同じような大剣でそれを止める。
「ダメですね。そんな大雑把な振り方では力が分散してしまっていますよラウ」
「うっせぇ!先輩にもこれは止めらんねぇだろ!!」
そう言うとラウの大剣が赤いオーラに包まれる。
「!?それはまさかっ!」
即座にメイドは防御態勢に入る。
そして赤いオーラが剣に凝縮されて一体化する。
「古呪《レイスペル》!!地獄の断焔斬《ベルフェバステイル》!!」
剣を振りかざすと衝撃波がラウの周りを覆う。
学生と多くのメイドがこの衝撃波で飛ばされる。
そして振り下ろすと真紅の斬撃が防御体制のメイドを襲う。
「ぐっ!」
間一髪で避けるが斬撃が後ろの校舎へと向かう。
「まずい!校舎が!!」
叫んだ次の瞬間。
突然斬撃の前に一人のメイドが現れた。
そして手を構えると斬撃を素手で受け止め粉砕した。
「八ァ!?オレの古呪を素手っグフっ!!?」
そして瞬く間に距離を詰め、ラウの腹部に激痛が走る。
「なっ、嘘・・・だ・・・ろ」
ラウが地面へと倒れる。
音すら無く瞬時に移動したメイドがラウの腹部へ拳を入れたのだ。
そして斬撃を避けたメイドが立ち上がり謝辞を述べる。
「ありがとうございますサチさん!しかし今日は王都で護衛任務のはずでは?」
「はい。只ならぬ魔力を感じて戻ってきました。もちろん、これからすぐに戻らなくてはいけません。後はお願いします」
そう言うとサチは音も起こさずその場から消えた。
そして任されたメイドは指示を出す。
「学生の子達はここの後片づけをお願いします。メルさんは地面の修復を。残りは私とラウさんの拘束、移動を」
指示を受けたそれぞれが返事をして仕事に取り掛かる。
メイド達はラウを抱えて校舎へと向かい、学生達は近くに散らばった瓦礫などを一か所に集め始める。
その最中ヨルカが感想を口にした。
「にしても!まさかラウが古呪を会得しているなんてビックリだったよー!」
箒を振り回しながら言うヨルカにエイが同意する。
「そうっすねー。確かにラウさんは強かったっすけど、まさか古呪とは・・・」
「この学校じゃ古呪はメイドでも数人しか居ないんだよね?」
質問するがエイは頭を横に振る。
「それよりあの斬撃を素手で粉砕したサチさんにも驚きっすけどねー」
すると魔法で地面を直すメイドが答えた。
「サチさんは私たちの中で一番長く生きてますから、あれでも七百は越えてるんですよ?それにサチ様っ・・・サチさんは機械じゃなくて唯一の生身ですから」
「「えぇ!?」」
その言葉に二人は驚愕した。
見た目こそ二十前後の女性だが、見た目に反してかなりの歳なのだ。
なのに本人自身はメイロイドとは違う生身なのだ。
「こらそこ!!口ばっかりじゃなくて手を動かしなさい!!」
道を修復するメイドが怒鳴ると学生達が急いで作業に戻る。
「「「はいー!!!!」」」