インフィニットストラトス 皇族の懐剣(投稿休止 再開日未定) 作:のんびり日和
少年が天城家に保護されて幾日か過ぎたある日。颯馬は屋敷の奥の部屋で部下達から少年に関する報告を聞いていた。
「では、報告を頼む」
「はっ! では真島班から報告をさせていただきます。颯馬様があの少年を見つけられました廃工場に残っていたハイエースのナンバーからどの県から来たのか調べた所、此処から3つ程離れた県の高速道路のカメラに映っていました。ですのでその高速付近の入り口、更にスマートICなどで合致する車両を現在捜索中です」
「続いて狭間班です。警察データベースで行方不明に登録されている十代の男の子で検索しておりましたが、該当する少年は居ませんでした。本来であればとっくに届け出が出されているはずなんですが……」
狭間班班長の狭間源一は信じられないと言った表情を浮かべながら颯馬に報告すると、他の班長達も顔をしかめた。
「届け出が無い? やはり颯馬様の見解通り虐待を受けていたのか?」
「安易に憶測を言うモノではない。しかし、もはや憶測と言う可能性は低くなってきたな」
「だな。颯馬様、やはり早急にあの少年の保護者を見つけ出し、その者達の手から救うべきです。我々調査班だけではなく、隠密班の者達も駆り出すべきです!」
「待て! 隠密班たちは今、海外で諜報活動中だ。隠密班から人員を割くのは不味い」
「だがどうする? 隠密班以外だったら黒衣隊に頼むか?」
ある一人が黒衣隊と言う部隊名を口にすると、部屋に居た颯馬以外の班長は顔を大きくしかめた。
「黒衣隊の者達は主な任務は暗殺等だ。調査には向かんだろ」
班長の一人がそう零すと、他の班長達も同意するように頷く。
「敷島の言う通り黒衣隊の者達は暗殺を主な任務としている。それに、万が一あの少年の保護者がわかった瞬間何をしでかすか分からん。だから君達だけで、苦労を強いるが調査を続けてくれ」
颯馬はそう指示を出すと、隊長達は「御意!」と声を揃えて平伏する。
――商店街『浄苑商店街』
白い着物を着た雪子は護衛の浅間圭司と木島彩、そして少年と共に買い物に出掛けていた。
「さて、今日は何か食べたい物とかある?」
「えっと、僕はその、雪子さんの料理、凄く美味しいので何でもいいです」
少年ははにかみながらも、そう伝え雪子はあら、そう?と嬉しそうな顔で返しながら商店街を歩く。
「いらっしゃいませ、雪子様! 今日は新鮮な魚が入ったんですよ、如何です?」
「あら、確かに新鮮な鯛ね。これだけ新鮮だったら刺身とかがいいかしら?」
「確かにお刺身もいいですね。あとは煮つけとかもいいと思いますよ」
雪子は店員の提案にそれも良いわね。と談笑している中、少年は生きた魚が入っている水槽を眺めていた。
「お魚が好きなのかい?」
圭司は目線を少年と同じ高さに下げながら聞くと、少年はう~ん。と悩んだ声を出す。
「分かりません。けど、なんだか見ていると落ち着くと言うか、面白いとかそんな感じです」
そう言い水槽を眺める。圭司は少年と同じくらいの娘を持っており、この年で記憶を失い、更には虐待を受けていたかもしれないと思うと悲しい思い、そして一人の親として彼の保護者に対して怒りが沸き起こっていた。
その頃雪子は魚屋で鯛と何匹かの魚の切り身を買い、お会計を済ませているところだった。
「そう言えば、雪子様。あの少年は?」
魚屋の主人は今まで見たことが無い少年に首を傾げながら、雪子に聞く。雪子は少し悲しそうな表情を浮かべながら、話した。
「……主人が見つけて来られたの。見つけた時には体中酷いケガとかしててね。それにお医者様からは虐待を受けていたかもしれないって」
そう言うと魚屋の主人は驚いた表情を浮かべ、直ぐに悲しそうな表情を浮かべた。
「そ、そうですか…」
主人はそう呟くと、ふと何かを思いつき店の奥へと行き何かを持ってきた。
「これ、オマケとして持って行ってください」
そう言い差し出したのは甘エビの刺身だった。
「小さい子供とか好きだと思うんで、どうぞ」
「えっ! でも「いいから、いいから。あの子に食べさせてやってください」…分かりました。では頂いていきます」
雪子は店主から差し出された甘エビを買い物袋の中へと入れ礼を述べ、圭司達と共に次の店へと向かった。
色んな店へと足を運び食材など買い終えた雪子達は商店街から程近い公園で休憩をしていた。
「ふぅ~、今日は沢山買い物したわぁ」
「雪子様、買い物袋でしたら私が持ちますが」
「あら、これ位大丈夫よ」
そう言いベンチに座る雪子は隣に座っている少年に目を向ける。少年は公園の隣にあるグランドでサッカーをやっているグループを眺めていた。
「どうかしたの?」
「あ、いえ。その、僕は記憶が無くなる前にお友達は居たんだろうかと思って……」
そう呟くと雪子は少し悲しそうな表情を浮かべ、圭司も同じ表情を浮かべた。彩は無表情ではあったが、少し拳を握りしめていた。
「あ、そうだ。圭司、私飲み物を買ってくるから、この子と一緒に居てあげて」
「分かりました」
「彩、一緒に」
「御意」
短く返事を返した彩は雪子の後ろを付いて行き自販機へと向かった。残った少年と圭司はベンチでジッと戻ってくるのを待った。すると
「……お兄ちゃん?」
そう呟く声が聞こえ、少年と圭司は声がした方へ顔を向けると其処には、女の子には似合わない男の子用の大きめのカバンを背負い、黒髪でちょっと鋭そうな目をした少女が涙目で立って居た。
少年は他の誰かと思い付近を見渡すが、居るのは自分と圭司のみだけだった。
「! もしかしてお嬢ちゃん、この子の事知ってるのかい?」
圭司は少女が少年の事をお兄ちゃんと呼んだという事は、妹もしくは従妹なのではと思い膝を曲げ少女と同じ目線に合わせながら聞く。少女は突然話しかけてきた圭司に、怯えながらも首を小さく縦に振った。
「そうか。「圭司、どうしたのです?」ッ! 雪子様、この子がこの少年の事を知っているそうなんです!」
ジュースを持った雪子と護衛の彩が戻ってくると圭司は興奮気味で報告すると雪子は驚いた表情を浮かべ、圭司の後ろに居た少女へと顔を向ける。少女はまた別の人が来たことに怯え、その場で震えていた。
雪子はそっと少女に近付き、膝を曲げ少女と同じ目線の高さに合わせる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
雪子は優しい笑みを浮かべながら少女に挨拶すると、少女は怯えながらも雪子の顔をチラ見しては外すを繰り返しながら挨拶を返した。
「貴女のお名前を聞いてもいいかしら? 私は天城雪子って言うの」
「……
次回
真登香と言う少女に出会い、少年が何者か話を聞く雪子。
そして少年と真登香の過去を聞いた雪子は2人を連れ家へと戻って来た。
次回
血の繋がった妹~あなた達は絶対、私が守ってあげるからね~