インフィニットストラトス 皇族の懐剣(投稿休止 再開日未定) 作:のんびり日和
「それじゃあ、教えてくれないかしら。この子の名前と、ご家族の事とか」
真登香をベンチに座らせ、持っていたオレンジジュースの一つを真登香にあげる雪子。少年の隣に座らせられた真登香はチラチラと少年を見たりジュースを見たりと、心配そうな表情を浮かべていた。
少年は優しく笑みを浮かべながら、そっと声を掛けた。
「大丈夫だよ、雪子さんは優しい人だから」
そう言うと真登香は、暫し少年を見つめた後コクリと頷き口を開いた。
「私とお兄ちゃんの家族はお姉ちゃんと3人だけなんです」
「3人だけ? お父さんやお母さんは居ないのかい?」
圭司の問いに真登香は首を横に振った。
「小さい頃からお兄ちゃんと私とお姉ちゃんの3人だけだったんです」
そう言われ次に彩が口を開く。
「親戚とかは? ご両親がいないなら今までどうやって生活してきたの?」
「時々様子を見に来たりするけど、直ぐにお姉ちゃんが追い返してるんです」
真登香の口から出た言葉に圭司と彩は驚き、そして怒りが沸き起こった。
(まだ、こんな小さな子供が居ると言うのに親戚の援助を断っているだと? その姉、一度しっかり話した方が良いな)
(……その姉、ちょっと切り刻もうかしら)
2人がそんな事を考えている中、雪子はある事を真登香に聞く。
「あの真登香ちゃん。この子の腕に出来ている傷。これってもしかしてそのお姉さんがやったの?」
そう言いながら少年の袖を捲り、腕に出来た痣を見せる。それを見た真登香は小さく首を縦に振った。
「『強くなるためだ!』って言って、何時も竹刀とか持たせて、ちょっとでもミスすると叩いていたから、多分…」
真登香の返答に、「……そう」と小さく返す雪子。すると今度は真登香が質問を投げてきた。
「その、どうしてお兄ちゃんの名前を聞くの?」
そう真登香が聞くと、雪子達は辛そうな顔を浮かべ雪子は説明しようとした瞬間
「ごめんね、僕記憶が無くなったんだ」
隣に居た少年が先に話したのだ。それを聞いた真登香はえ?と信じられないと言った表情を浮かべ、涙も浮かべ出した。
「う、嘘だよね? 真登香を驚かそうと嘘を言ってるんだよね、お兄ちゃん?」
真登香は嘘を言っている。そう思い聞くが、少年は首を横に振った。
「そ、そんな、そんなのやだよぉ! 真登香の事忘れないでよぉ! 一人にしないでよぉ!」
真登香は涙声で泣きながら少年の胸にポカポカと叩いた。少年は反抗することなく、そっと真登香を抱きしめた。
「ごめんね。記憶無くしちゃって」
「うわぁーーん!!」
泣き出す真登香。悲痛な面持ちでそれを見守る雪子達。真登香が泣きながら少年にあやされる姿を見て、雪子はある決心をしそっと2人の顔が見える位置に移動する。
「真登香ちゃん、貴女が良ければ
「え? どう言う事?」
涙を浮かべた目で、真登香は雪子に顔を向ける。
「実はね、
そう言われ真登香は困惑の表情を浮かべた。
「ほ、本当にお兄ちゃんと私を保護してくれるの?」
「えぇ、約束するわ」
そう言い雪子は曲げていた膝を伸ばし、立ち上がる。
「さて、そろそろお家に帰りましょう」
真登香は家に帰るという言葉に自分の家に送られると思った。だが
「真登香ちゃんって、お魚とか好き?」
「ふぇ? えっと好き、です」
「そう。それじゃあ今日は鯛のお刺身にしましょうか。煮つけだと、真登香ちゃん達食べづらいかもしれないからね」
そう言われ真登香は送り帰さないのかと疑問した表情を浮かべた。
「あの……「大丈夫、家に送り帰そうとか思ってないわよ。それに今から帰ったら夜遅くになるから危険だしね」あ、ありがとうございます」
真登香はお礼を述べベンチから立ち、雪子の傍に行く。少年も真登香が持っていたカバンを持ちながら傍に付いて行く。
すると雪子は思い出したように顔を真登香の方へと向ける。
「あ、そうだ。話が大分それたから聞いてなかったんだけど、この子の名前教えてくれないかしら?」
「えっと、お兄ちゃんの名前は、一夏って言います。一の夏と書いて一夏」
「そう、一夏って言う名前なのね」
そう言い、雪子は二人に手を差し出すと少年事一夏は照れながら手を握り返し、真登香も記憶を無くす前に一夏によくやって貰ったと思い握り返す。だが一つ違うと思ったのが、その手は一夏と手を握った感じとは違い、大きくて柔らかい手の平で暖かかった。
(まるで本当の親子の様に見えるな)
(……うん。雪子様本当に嬉しそう)
そんな光景を護衛しながら見守る圭司と彩。
次回予告
真登香を天城家へと連れ帰って数日後、颯馬と雪子は数人の護衛達と共に真登香、そして一夏の姉が住んでいる家へと訪れた。其処で2人は予想していた以上の光景を目撃し、改めて一夏、そして真登香を引き取る決心を固め2人の姉に対峙した。
次回
交渉~この様な状況にあの2人を過ごさせるわけにはいかん~