インフィニットストラトス 皇族の懐剣(投稿休止 再開日未定)   作:のんびり日和

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5話

真登香を天城家へと保護して数日が経ったある日。奥の部屋で颯馬、そして雪子と部下達が話し合いを行っていた。

 

「では、真登香ちゃんが教えてくれた織斑家の現状を教えてちょうだい」

 

「はっ! 彼女に教えてもらった住所に行きましたら、確かに織斑と言う家がありました」

 

「周辺で聞き込みをしましたが、どうやら本人は2人を養うべくバイトを掛け持ちしながら生活していたようです。ですが…」

 

「なんだ。報告を続けろ」

 

「は、はい。周辺を更に聞き込んだ所、一度も彼女が近くの商店街で買い物をしに来た姿を見た事が無いと言っているんです。逆に幼い一夏君、そして真登香ちゃんの2人がいつも手を繋ぎながら買い物の来ていたとのことです」

 

部下の一人の報告にそれぞれ顰めた顔を浮かべた。

 

「おいおい、自分は金を稼いでおきながら買い物にも行かず一体何処行っているんだ?」

 

「まったくだ。おい、木島。その辺の調査も進んでいるのか?」

 

「はい。2人が買い物に行っている間、姉は家を空け近くにある篠ノ之道場と言う場所で剣道をしているようです」

 

「剣道をだと?」

 

「はい。聞いたところ2人を守る為だと言っているようです。ですがその教え方が酷いらしく、時折織斑家の近所で、部屋からでも聞こえる程鈍い音が響いてその後子供が泣いている声と女の怒声が聞こえていたそうです」

 

その報告を聞いた瞬間多くの部下達から殺気が零れた。

 

「颯馬様、やはりその女消すべきです!」

 

「狭間の言う通りです。あの2人を守る為にも!」

 

部下達は颯馬に暗殺の許可を!と迫るも、颯馬は手を挙げ落ち着かせる。

 

「その者を暗殺するのは容易だ。だがそうなると、我々があの子達を保護するべく何かしたのではと考える者が出るやもしれん」

 

「確かにそうかもしれませんが!」

 

「ならば、奴の暗殺ではなく言葉で説き伏せればいい。そうすれば二人を此方で保護できる上に、奴の動きを封じることもできる」

 

「動きを封じる? どう言う事ですか?」

 

一人の部下が颯馬の言葉に首を傾げていると、敷島が口を開く。

 

「つまり颯馬様。証拠などを奴に突き付けて反論させる前に説き伏せ、2人を保護する。そう言う訳ですか?」

 

「そうだ。今あの子達を保護できるだけの証拠はある。だが証拠を更に増やし奴に反論の余地を無くすべく情報を更に集めよ」

 

「「「御意‼」」」

 

部下達は頭を深々と下げた後足早に部屋から退出し、情報収集に向かった。

 

 

それから数日後、颯馬と雪子、そして数人の部下達が織斑家へとやって来た。颯馬と雪子が車から降り辺りを見渡すと、玄関前には分別がされていないと注意書きが張られたゴミ袋が幾つか転がっており生臭い臭いを出しており、更に庭は雑草で埋め尽くされていた。

 

「酷い感じですね」

 

「全くだな。これは絶対にあの二人を保護せねばな」

 

そう決意を固めた颯馬はインターホンを押した。家の中で音が鳴った後、暫くして扉が開くと其処にはよれよれのシャツにシワの付いたズボンをはいた女性が現れた。

 

「誰だ?」

 

「初めまして、私は天城颯馬と言う」

 

「妻の雪子です」

 

二人はそう名を名乗ると女性は鋭い目線を向け続けた。

 

「失礼だが、君が織斑千冬で良かったかね?」

 

「あぁ、私が織斑千冬だ。それで一体何の用だ?」

 

千冬は不機嫌顔で用件を言えと言いたげだった。

 

「君の弟さんと妹さんの事で話しに来た」

 

「っ!?」

 

颯馬が用件を言うと千冬の目が見開き驚愕の顔を浮かべ、颯馬に近寄ろうとした。すると颯馬の背後にいた部下達が懐に手を入れる。だが

 

「手を懐から出しなさい」

 

雪子の声に部下達は懐に伸ばそうとした手を止め、手を懐から出した。

 

「……貴様ら、一体何者だ?」

 

千冬は先程の近付こうとした瞬間に武器を取り出そうとした黒服の者達。そしてそれを制止した雪子。ただならぬ気配を感じ取り、千冬は警戒心むき出しで問う。

 

「我々は天城家と言う古くからある家の者だ」

 

そう言い颯馬は本題に移ろうと話を替えた。

 

「私達は君の弟さんと妹さんを保護しているんだ」

 

「……だったら何故ここに連れて来ない」

 

「それはこの家の状況を見て分かるはずだが?」

 

颯馬は薄眼でそう問うと、千冬は目元をピクリと動かした。

 

「……それとこれとは関係が「無いとは言わせませんよ。この家の状況は明らかに異常。あの幼い2人を世話をさせるには問題以外ありません」私にもやらなければいけないことがあるんだ! 掃除などする余裕など無い!」

 

「……なるほど、自分は忙しいから家事は全部あの2人に押し付けた、ねぇ」

 

千冬が自身が忙しいと言う理由で二人に家の家事のほとんどを押し付けている事に颯馬達は真顔を浮かべ、鋭い視線を送る。

 

「忙しくても少しは家事を手伝えばいいものを、貴様はそれを押し付けた。それに貴様はやってはならん事をしていたではないか」

 

「や、やってはいけない事だと? 私は何も悪い事などしておらん!」

 

「……本気で言っているのかしら、貴女?」

 

冷たい声が玄関で響き、千冬はその声の主である雪子の方へと向く。其処には殺意を秘めた目線で睨む雪子が居り、その手には何時の間にか短刀が握られていた。

 

「力をつける為だと言って、まだ幼いあの子達に手を挙げた事。どれほど許せないと思ったか」

 

そう言いながら千冬に近付く雪子。千冬は今まで浴びた事が無い殺気に呑まれ、後ろにたじろぎ尻もちをつく。

 

「今此処であの子達に受けた傷、貴女に味合わせる事だって「よさんか、雪子」……御免なさい、あなた」

 

雪子が暴走しそうとになったのを颯馬は寸でで止め、尻もちをついている千冬に片膝をつきながら目線を合わせる。

 

 

「雪子が言った通り、私達はお前があの子達に手を挙げている証拠を掴んでいる。一夏君の痣、そして真登香ちゃんの証言。他にもいくつか証拠を揃えている」

 

「……わ、わたしを脅迫する気か?」

 

「脅迫? そんなものをする為だけにこんなところに来たりしないわ。私達の目的はただ一つ、あの子達の保護だけよ」

 

そう宣言する雪子。颯馬は後ろに控えている部下から一枚の紙を受け取り、それを千冬の目の前に差し出す。

 

「あの子達を我々が保護する事を了承すれば、貴様があの子達に暴力を振るっていた事などは黙っていよう。だが、断ったらどうなるか、容易に分かるな?」

 

そう言われ千冬は、もはや脅迫の様な条件に悩まされた。承諾すれば一夏達とは離れ離れになる。逆に断れば自分は強くする為だと思いやって来た剣道の指導が世間から幼い弟達を暴行したと広められる。

 

しばしの沈黙が流れた後、千冬の口が開いた。

 

「……いけ」

 

「ん? なんだ?」

 

「連れて行けと言ったんだ! だが、約束を忘れるなよ!」

 

そう叫んだ後颯馬の手から紙をひったくり、自分の名を署名をして颯馬に押し付け扉を開け、荒々しく扉を閉めた。

 

 

「……目的は済んだ。さっさと帰るぞ」

 

「はい」

 

颯馬はそう言い雪子と部下達を連れ織斑家を後にした。

 

 

 

颯馬達が去って行った後、玄関先で佇む千冬は拳を握りしめ壁を殴っていた。

 

「クソォ、クソォ、クソォ!」

 

千冬は手の甲から血が流れるまで殴り続けた。

彼女は一夏が行方不明になったのは、親戚たちが結託して連れて行ったのだと思っていたからだ。何度も家に訪問して来ては、子供だけでは生活していくには厳しいと言ってきた親戚に千冬は、奪わせない。私の大切なモノに近付くなと言わんばかりに親戚たちを追い返していたのだ。

だが、暫く来なくなったと思え諦めたと思っていた所で一夏が行方不明となった。千冬は片っ端に親戚たちに電話を掛けるも、返ってくる言葉は知らないと言う言葉と

 

『一夏君が行方不明になった原因はお前にあるんじゃないのか?』

 

『どうしてちゃんと見ていなかったの!』

 

『お前が何処かに一夏君を置いてきたんじゃないのか?』

 

と、千冬を責める言葉やあらぬ疑いの言葉を投げられた。

それから暫くして今度は真登香が居なくなり、一夏の旅行用のカバンが無くなっており、自分が居ない隙に真登香を迎えに行き服などをそのかばんに入れて連れて行った。そう考え親戚たちにまた電話を掛けるも、一夏の時と同じ、知らない。お前がまた何処かに捨てたんじゃないのか?と言われ、千冬は知らないと白を切る親戚たちに直接問いただそうと家を出る支度をしていた所で颯馬達がやって来たのだ。

 

そして自分が2人を強くするためにやらせていた剣道の仕方が、虐待だと言いそして2人を保護すると言ってきた。勿論反論をしようとするも他にも証拠などはあると脅され、結果千冬は仕方なく2人を手放した。

 

 

「クソォ。私は、私はただ家族を守る為にやってきただけだと言うのに!」

 

そう呟き苦渋に満ちた顔を浮かべながら千冬は、ただ怨み言を吐き出す事しかできなかった。




次回予告
織斑家から保護された一夏と真登香。今後天城家で生活していくために新しい名前を考えようとする颯馬。そんな時2人の客人がやって来た。

次回
新しい家族
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