私となって現れた男の人、というか。
もう一人のソラちゃんの事は覚えている。
私が活動を始めたばかりの頃だった、かな。
私よりも少し小さな中学生に会ったんだ。
「もし、見てくれるみんなに呼ばれるとしたら何にする!?」
「何って…名前?」
「うん!」
「テキトーでいいんだけど……友人Aとか?」
「じゃあ、えーちゃんだね!」
「うーん。まぁ、出る時なんて本当にないと思うよ。私は基本裏方だから」
「分からないよぉー……!『はっ!』としたら、ホラーゲームやってたりして!」
「うわぁ、やだなぁそれ!やめてほしいけど……」
「面白そう……!」
「あ、嫌な予感しかしないわコレ」
「あっ」
「どうしたの?そら」
「えっと、こんな所にゲームセンターなんてあったっけ?」
「前からあったよ。……ほら、あそこの階段の下に広がってる段差とか、いかにもそらが躓きそうな感じで印象的じゃん」
「…………人違いだと思うなぁ」
「本当にやってたかぁ……否定が欲しかったなー」
「せっかくだし、ちょっと寄り道しようっ!」
「え、ちょっと、そら!?」
「わっ!?ぷぎゃ!」
「……だから注意して、って言おうとしたのに。大丈夫?」
「う……うん……」
ちょっと転んだけど、服に付いた砂とかを払って店内に入る。
そんなことより、可愛いものを見つけたから。
「これは……」
「見て見てえーちゃん!小さいけど、可愛いクマだよぉ!欲しいなぁ……!」
「いや、今えーちゃんっていうのはやめてよ。でも、確かに可愛いね」
「早速やってみよう!」
「頑張れ、そら!」
早速、百円を投入してUFOキャッチャーを動かす。しかし、頼りに見える二つの爪は熊のぬいぐるみとは噛み合わず、少し右に移動しただけに終わる。
「うぅー……取れないよ」
「こういうのってなかなか取れないよね……」
「もう一回だけやろぉ……!」
「待ってそら!それは最後には千円単位で無くなっていく人の考えだよ!?」
「で、でも……欲しい……」
「……分かったから、そんな悲しそうな顔しないで。後三百円までね」
「お母さん……!」
「誰が母さんか。……でも、UFOキャッチャーって簡単な「とりゃー」ものじゃないから、慎重に慎重にボタン操作を「うりゃー!」やった方がいいと思うよ、そら。例えばどの位置止めればいいかとかなら、後ろの背景の色を目印に「んにゃー!!」するとか。後は掴むというより引っ掛けた方が「えーちゃん駄目だったー」……って早くない!?まだ1分もかかってないよ!?」
「難しいね……!コレっ」
「落ち着いてやればよかったのに」
結局取れずにうなだれ、えーちゃんと帰ろうとした時だった。
すれ違った小柄な人がUFOキャッチャーに近づいた。
気付いたら、私はその子を見続けていたんだ。
えーちゃんも気付いたようで、その子の腕前を興味本位で見てた。
小さな子は百円を投入した。
横に進むボタンを迷いなく操作した後、その子はこちらに振り向いて驚いてた。視線を感じて気になってたっぽい。見られる事に慣れてなかったのか、その後は少し緊張気味になってた。
もう一つのボタンを押して、UFOが降りていく。
二つの爪によって、クマが挟まる。
すると、近くにあったもう一つのクマもつられて上がっていった。
これには私たちだけでなく、小さな子も驚いていた。
たまたま、お尻にあったタグに引っかかったようで、そのままぬいぐるみは二つとも仲良く取り口まで落ちていった。
「おぉ……」と唸る小さな子に、私は思わず近づいていたんだ。
「君、すごいね!びっくりしちゃった!あんな取り方があるんだねぇ」
「え!?へ、え、はい!?」
その子も急に話しかけられたからか、すごくタジタジしていたっけ。
「君、名前は?」
「えっと……そら……の……」
「分かった。じゃあ『そらちゃん』だね!私も一緒の名前なの!」
「え、違っ……って、そうなんですか……!それは、えっと、よかったです」
「そら。あまりグイグイ行かないの」
「えへへ」
そらちゃんはしばらく考え込むようにした後、クマのぬいぐるみを一つ差し出した。
「えっ?」
「欲しかったんですよね?もう一個は妹に渡そうと思ってるので無理ですけど、その……、嬉しかったです。ありがとうございます」
「あっ」
そう言って、私に渡した後、頭を下げて外へ行った。
それ以降、あの子は見ていない。
「あの子、可愛い!」
もちろん、彼を女の子だと勘違いしてたのはあると思う。
でも。
あの時のあの子だったのなら。
『ありがとう』ぐらいは言わせて欲しいんだ。
だから、かな。
重なって見えたんだ。そらちゃんとそらともくんが。
彼は、私が無意識に出してしまったその言葉に反応した。
そして、そのまま消えた。
––––また、私は『ありがとう』と言えなかった事に気付いた。
目覚めは良かったが、自分でも浮かない顔をしているのが分かる。
あの夢のような空間から消える時の、ときのそらちゃんの言葉。
はっきりとは覚えてない。確か2、3年ぐらい前の事だ。何をしたかは覚えていても、何を話したか、とか、どんな顔だったか、は流石に覚えていない。
あのゲーセンも彼女に言われるまで、以前行った事をすっかり忘れてたぐらいだ。
でも、妙な確信はあった。あの時のお姉さんはきっと、ときのそら本人だ。それは間違いない。
……。
なんて事だ。とは思わない。
世間が狭いと分かっただけだ。
彼女が月なら、俺は小さな星の一つだ。
彼女はアイドルで、俺はファン。
決して、彼女に俺だけが見られる事はない。
見てはいけないんだ。
あれが最後なんだ。会えただけでもよかったじゃないか。
不意に、下の階から妹が叫んできた。
「お兄ちゃん!!お兄ちゃん宛になんか来たけど、コレ何ッ!?けっこう重いんだけど!!」
「あ、そういえば今日来るんだったか。悪かった!すぐ行くよ!!」
部屋の扉を開けようとする。
ふと、あん肝が目に入った。
少し悩んだ後、仮留めしていた名札をぬいぐるみから取り、ゴミ箱に捨てて下に降りた。
「えーちゃん、ゲームセンターに行こう」
「急にどうしたの?そら」
昼ご飯を食べている時に、えーちゃんに話を切り出した。
「実は、ちょっと夢を見たの。クマのぬいぐるみをくれた女の子の夢」
「あー、あの子か!?確かあん肝の……」
「夢で会ったら男の子だって言ってたよ!」
「えっ、ホントに!?いや、でも結構中性的な顔立ち……だったような……?ん?夢??」
「出来ればその子に会いたいな。あの時のお礼、まだ言えてないから!」
「……んー、私は今日は行けない。ちょっと、編集作業が遅れててね。取り戻さないと行けない。でも、代わりと言ってはなんだけど、そらの時間はその分あるよ」
「えーちゃん……!」
「早めに帰って来てね。人探しはいいけど、迷惑かけないように」
「お母さん……!」
「だから違うって」
「じゃあ、行ってきまーす!」
「待ってそら!せめてサイフとケータイは持って行ってェェエエッ!!」
「あ、忘れてた」
昼から、休憩を挟みながら彼を探す。
彼はもしかすると外出していないかも知れない。今日が休日だからと言って出掛けるかどうかは分からない。
それでも探す。これはもはや意地の問題になりつつあるかも。
駅前やゲームセンター、近くのショッピングモールでも探してみる。
見つからない。
見つからない。
見つからない。
気がつけば、随分と長い時間歩いて回ったと思う。
既に日は傾き、夕陽が地平線へと降りて行っている。
そろそろ、帰らないと。でも。
意気消沈しながらも、淡い期待を胸に最後にあのゲームセンターに再び訪れる。
彼は、いなかった。
ゲームセンターのベンチで自販機のジュースを飲みながら、がっくり肩を落とす。
出来れば、早く会いたい。
お礼を言いたい。
たったそれだけなのに。
かつてクマのぬいぐるみがあったUFOキャッチャーに目をやる。
確か、あの辺りでそらともくんに……あれ?
私は、つい驚いた。
同じ場所に、今もクマのぬいぐるみがあったから。デザインは私が持っている小さなクマとほぼ一緒だ。でも、かなり大きいサイズになっている。
その前で唸りながらも何回目かのお金を投入した少女がいる。
しかし、すぐに取りこぼしてしまった。
「あぁ、もう!全ッ然取れないじゃん!お兄ちゃんは本当にこれ取れたの!?」
「ちょっと貸して貰っていいかな?」
「え?」
気づいたら、声を掛けていた私がいた。
百円を入れ、任せて、と言い切る。
自分でも、どうしてこう言ったのかはわからない。
横に行くボタンを押して、離す。
ピッタリなところに行けたと思う。
後ろの少女が私を注視してきてちょっと落ち着かない。
そらともくんもこんな気持ちだったのかな。
次に縦に行くボタンを押して、離そうとした。
緊張からか、手が離れない。焦って手を離すが遅く、ぬいぐるみの頭から少し超えたところで止まった。
あ、と声が自分から漏れた。
無情にも下に降りて行くUFO。
後ろからも、「ああっ」という声が聞こえる。
(ダメだった……?)
そう悲観に暮れていた。
その時、奇跡が起きた。クマが持ち上がったんだ。
「「えっ」」
後ろの少女と声が揃う。
なんで、と見ればそこには。偶然タグに引っかかったクマがひっくり返って吊られていた。
まるで、あの子が見せたあの時のように。
景品の拾い口に落ちるクマ。手を出して取り出す。
「はい、どうぞ」
それをそのまま女の子に渡した。
「え、良いんですか!?」
「いいよー。それにこっちこそごめんね?急に割り込んじゃって」
「大丈夫ですよ!あ、そうだお名前なんて言うんですか?」
「え?私はそら。よろしくね!」
「私は空野 朱里っていいます!ありがとうございました!このご恩は忘れませんそらさん!」
「そら……の?」
「はい!……結構、珍しめな苗字……ですよねぇ私。あはは」
「アカリちゃん。もしかして、お兄さんとかいる?」
「え?……いますけど」
『妹に渡そうと思ってるので……』
「その人、『そらとも』って呼ばれてる人かな!?」
「はい、お兄ちゃんは空野 朋樹だから『そらとも』ってあだ名に……」
『そら……の……』
『そらとも』
『本当にこれがあだ名だよ。……』
「今、何処にいるか分かるかな!?」
「へぇ!?なんでですか!?」
興奮気味になった自分を抑えつつ、そらともくんとの経緯を説明する。すると、「あの時の……」とアカリちゃんが漏らしたのが聞こえた。聞くと、そらともくんがぬいぐるみを渡した話はアカリちゃんも知っていたようで、すぐに納得してくれた。
「まさか、お兄ちゃんがやった事が私に帰ってくるとは……。お兄ちゃんの場所ですね?今、近くの川の堤防で『試したい事がある』って言ってなんかやってます。まだやってると思うんで、今から行けば間に合うと思いますよ!」
クマのぬいぐるみを抱きしめて嬉しそうにする妹さんを尻目に、私はトモキくんの方へ走っていった。
重い荷物には、二種類の荷物がある。
それを試すために川の堤防に来た。
ここなら、スポーツ応援の練習だと誤解してくれるだろう。まさかライブ関連のものとは誰も思うまい。
あと、他の場所では迷惑極まりないしな。
そう言って、荷物に入っていたいくつかの棒を繋ぎ合わせ、大きな布と合わせる。
一つ目は、この応援用の横約3メートルと縦約2メートルの大型フラッグ。通称『ときのそら応援旗』である。でかい。
二つ目は、水色基調のデザインをした羽織、『そらとも応援団専用制服』の人数分であった。生地もしっかりしている。
旗を地面に置き、デザインを吟味する。
「オーダー通りだ。ありがたい」
彼はつい最近行われたVtuberの同人誌即売会にて、ほかのそらとも達と意気投合し、『そらとも応援団』なるものを設立。その応援団長となっている。
故に、団長としてその活動を本格的なものにしようとしていた。
それが今日に至るまでの経緯である。
今回は手芸が得意な友人に依頼して作ってもらった物品の試着及び、応援旗を試しに振ってみよう。と言うのが目的である。
手芸が得意な友人とは、学校でつるんでいたあの男である。何故あいつは手芸が得意という女子力が高いことになっているのかが少し気になってはいるが、この時ばかりはありがたかった。
衣装の方も試着してみるかと、そちらの荷物を出してみると手紙がポトリと落ちた。
奥には、頼んだ覚えのない服も入っている。
彼が手紙を読むと、
『やぁ、ちゃんと仕事しといてやったぜぃ。
いい小遣い稼ぎにはなったが二度とやんねぇ。普通に辛かった。
あと、参考までにときのそらの動画だの生放送だの見てたら俺もハマってしまった。どうしてくれる。
悔しいから、応援団長の衣装だけはときのそらの男装バージョンみたいなコンセプトで作ってやった。感謝しろ。
PS.おれはえーちゃん派だ。
友人Bより』
と、書いてあった。
てか、せっかく堤防に来たのに、おれのだけ羽織じゃないんかい。
着替える場所を想定していなかったそらともは少し考え、今日だけは羽織を借りて試着しようと妥協した。
陽が落ち、辺りが暗くなってきた。
羽織制服の方は問題ない。後ろには、『そらとも』と激しく主張されていたり、星マークがワンポイントで胸に付いている。内側のTシャツが白ならば、より『そらとも』として映えるだろうと思うのがこれの感想だ。
次にときのそら応援旗をそれらしく振り回す。
というか振り回すためだけに外に出てきた。
これはイベント用だが、使えば盛り上がる事間違いないだろう。我ながらいい事を思いついたものだ。他の応援団をも驚かせる勢いだろう。
しかし、思ったより風が強くて引っ張られ、何より単純に振るだけで重い。そんなに長い間は振り回せないかもしれない。
絵柄としては裏表で映えるように、文字のない『ときのそらイラスト』にしている。顔と手だけが描かれたデフォルメ絵だ。
なんだこれ。旗持ってる俺、普通にカッコいいわ。
というか、そらちゃん可愛いな、やっぱ。デフォルメしても全然いいわ。
取り敢えず、後のことは家でもやれるし、暗くもなってくる頃だ。
今日は帰ろう。
そう思って応援旗を片付け、身支度をする。
すると、人影が近づいてきた。
ランニングだろうか。いや、違う。明確におれの方に走ってきた。
その人影はおれの手前で止まり、肩を上下させている。
羽織を脱ぐのも忘れて彼女を見て顔を強張らせる。
直感的に感じる。彼女は夢のあの人だと。
夢だったものが、現実になる。
ただでさえ有り得ないと思っていたものが近くに来た衝撃は計り知れない。
彼らは三度、邂逅する。
「ときの……そらちゃん……!」
「久しぶり。そらちゃん。いえ、そらともくん!」
「……昨日ぶり、と言えばいいんすかね……?夢とはいえ、会っていたんですから」
「あっさり認めちゃうんだね」
「そりゃあ、一介のファンが近づき過ぎるのはみんなに悪いと思って、隠したかったですよ。でも、『そらちゃん』って毎回妹にいじられてるんで。流石にバレたってのは分かりますよ」
「うん、妹さんにも話してたんだね。あの時のこと。君の事を話したらすぐに教えてくれたよ」
「あいつ……。いや、これは俺の運が悪かったのかな?」
「違うよ。運なんかじゃなくて、私が会いたかったの」
「え……そらちゃんが……?おれに?」
「うん」
ときのそらが、そらともに近づく。
彼は立ち止まったままであり、必然的に距離は縮まる。
彼女の鼓動が彼にまで響くのではないか。
彼の生唾を飲み込む音は彼女に聞こえるのではないか。
不意に、彼女の口から放たれた。
「あなたに、ずっとお礼を言いたかった」
「夢の中で話し相手になってくれてありがとう」
「あの時に私に感謝を伝えてくれてありがとう」
「ぬいぐるみを貰った時に言えなかった、ありがとう」
「あなただけに、伝えたかったんだ。えへへ」
ベンチに誘って彼女を座らせた彼の顔は、目に見えて安堵していた事だろう。
結局、彼が彼女を避けた理由とは、自分みたいな人間に恋をしていて、これによって本来の活動に支障が出ることにあった。
実際は、そんな事はなかった。
彼女を通じて見たものは、ただの幻想だった。
彼女は自分の気持ちを伝えたかっただけなのだから。
夢の中での俺と同じように。
喜ばしい事だ。ちょっとだけ複雑でも、喜ぶべき事だ。
それとは別に、本人からの直接の感謝には照れまくっていたが。
正直、家に帰ればベッドの上で悶絶ものである。今、平静を保っているのが既に奇跡だとそらともは思った。
しばらくして、気まずい状況に嵌ったことに気づいた二人は頭を抱えていた。
そらともは顔が赤く、何を言えばいいか分からない。
ときのそらも先程の自分を思い出し、少し照れながらも何を言えばいいか考えがまとまっていない。
要するに、何もせずにベンチに座っているだけである。
それなのに、どこか二人とも照れくさい。
流れる静けさに、お互いがドギマギとした。
「あ、あの!」
「は、はぁい!?」
勇気を持って動いたのは、彼女だった。
それに対し、甲高い声を出しながらも応えるそらとも。
とにかく、話題を。
そう思ったのだろう。
気遣いから始まった彼女の行動は。
「えっと、月が綺麗だね!(?)」
結果的に爆弾を投下する羽目になった。
「え?……あぁ。……ファッ!?」
胃が締め付けられるように痛みが再発生する。
彼は、なぜさっき過ぎ去ったはずの心労が戻ってきたのか。その疑問によって、さらに頭が混沌と化してしまう。
つまり……。
そらともは、よく考え。よく悩み。頭を抱え。
絞り出した。
「まだ…………死にたくはないかな」
「ええっ!?なんでそうなるの!?」
「えっ?」
「えっ?」
しばらくして、二人揃って吹き出した。
彼は大声で笑った。
彼女は口を手で押さえながらも笑った。
固かったものがほぐれた気がした。
「なんで、月なんて言い出したんだよ」
「ほら、夢の中でそらともくんが最後に言ってたじゃん!それが今、急に出て来たの」
「あれは……。まぁ、いっか。……そらちゃん、止まるんじゃねぇぞ?」
「止まらねぇぞー!」
「あはは、なんてな。ずっと応援してるよ」
ときのそらのポケットからバイブが鳴る。
ケータイのメッセージには『そろそろ帰ってきて!』と来ていた。
彼女はベンチから立ち上がると、彼も立ち上がった。
駅の方まで送るよ、と言ってくれたので甘えさせてもらった。
「送ってくれるなら、家の方まで来ちゃう?」
「ありがたく遠慮しておこう。あらゆる人間に刺されかねん」
「?」
「あっ。見て、そらともくん!あの時みたいな綺麗な夜空!」
「ああ、夢の……。確かに、あの時の空も綺麗だったな」
「え?ねぇ!それってどっち!?」
「え?どっちって……?ああ、なるほどね。どっちだろうね」
「ああ!いじわるー!」
その後は、そらちゃん……いや、ときのそらちゃんを送って、俺も家に帰ろうと……して、荷物を忘れたのを思い出して走って取りに行った。
その日の寝る前に、いつの間に交換してたのか。妹経由で伝わった電話番号によってかかった電話にて、『月が綺麗ですね』の意味を知ったそらちゃんが「そういう意味じゃなくて!……」などの弁明をしばらく聞いた。
その時の心情は、言い表す事が出来ない程の虚無を味わった、と言えば伝わるだろうか。
ちなみに、「あの時の『死にたくない』とかなんとかって、どういう意味があったの?」と言われたので、何でもないよ、と返しておいた。
意味を知られたら、ヘタレとしか思われないから。
この日を境に、会うどころか、連絡も来ない。
彼女も忙しくなったのだろう。嬉しい限りだ。無茶さえしなければ俺は心から応援しよう。
二人だけのあの夢も見ない。俺が取ったクマのぬいぐるみは妹が取ったものと一緒に、妹のベッドの中だ。
今にして思えば、お互いのあん肝が繋がりあって……なんて考えもしたが、今となっては必要ない。
そして、もう少しだけ時は過ぎて––––。
今日。
「団長ぉ……」
「どうした?緊張でもしたのか?」
「はいぃ。解ける方法ないですかね?」
「任せろ。全員、集合だ!」
号令をかける。俺たちも随分大規模な応援団になってしまった。最初はそれっぽい馴れ合いのつもりがどうしてこうなったのか。……まぁ、今は置いておこう。
大きく息を吸って、思いっきり叫ぶ。
「諸君ッ!!我々は何者かッ!!」
「「「ときのそらを見守る、そらとも応援団です!!」」」
ほかのメンバーも負けじと叫ぶ。
「いいかッ!ときのそら様のためならば命を懸けろッ!」
「「「応ッ!!」」」
待って。「応っ!!」の圧が強くない?
「全てはそら様を御心のままに!全てを女神に捧げるのだッ!!」
「「「応ッ!!」」」
こうなったらヤケだ。最後までやりきろう。
「この『ときのそら応援旗』の下、全力を尽くしてエールを送るぞぉ!!」
「「「突撃ぃ〜ッ!!!」」」
「「Aちゃぁぁあんッッ!!!」」
周りからクスクスと声が聞こえる。見ると、並んでいる赤いメッシュの女性に至ってはお腹を抱えて笑っていた。そんなに面白かったかこんちくしょう。
まぁ、迷惑に思われてなかったらいいか。笑ってくれるなら構うまい。
今日は全Vtuber総出演のなんでもありなライブ。
楽しまなけりゃ損なのだから。
白のシャツに水色のベスト、同じく水色のズボンを身に纏い、赤のネクタイに星型のネクタイピンがアクセントとなった衣装。
通称、そらとも応援団長の制服。
ときのそら衣装(旧モデル)を男性用に改造したかの様な装束だ。
もしそらちゃんが俺を見つけたら、驚くだろうか。喜ぶだろうか。
見つけたならその時はこの旗を思いっきり振ってやろう。
「ずっとここに俺はいるぞ、なんてな」
この話は、ただの偶然というか。
奇跡のようなもので。
でも決して。
鮮やかな冒険の旅ではなく。
英雄になる物語でもなく。
ただ、救われた事を感謝する。
二人にとっては、それだけの話だったんだ。
『時の空を見る空の友』
終わり。
この作品は妄想から生まれた作品のため、
・独自設定、独自解釈
・本人のキャラが似ていない
・そもそも夢で出会うとかいう不思議な力
などが含まれます。
苦手な方はプラウザバックを推奨します。(手遅れ)
読んでいただきありがとうございます。
Vtuber作品二つ目でございます。
ファンアートの様なものとして作らせていただきました!
実は今回、一作目の『ぜったい天使と大魔王』と掠る程度のクロスがされており、そらともこと、空野くんも実はいるんです。マジです。ある程度暗躍もしております。
逆に、一作目のキャラが本編にほんのちょっぴり出ています。ゲスト出演レベルの目立たなさ。
よければ、作者の名前から作品一覧に来て頂き、読んでもらい、ついでに評価と感想を書いてくれると嬉しいな!
と、思ってます。
最後に、ときのそら様。
笑顔の絶えない動画や生放送、いつもありがとうございます。
作中の彼のようにアクティブには出来ませんが、陰ながら応援しております!
こちら、作らせてもらいましたので、喜んでくれたら幸いです!
それでは、またどこかで!