スクールランブル 〜みかづき、はじめてのがっこう〜 作:ぐぎゅる2
前の世界の三日月達の事を映像化するのは難し……いや、漫画にしてからアニメ化ならいけるか?とか思う今日この頃。三日月ぎ漫画を描く。……中々シュールだ。
可能なら、昭弘とオルガをちょこっと出したい気持ちもあったり。オルガは幼馴染みみたいなもんだし、昭弘は戦場で共に死んだ繋がりで。
オルフェンズ見て思った事……イオク・クジャンは世界に必要無いバカだった。
三日月の学校生活が始まって、二ヶ月が経った。
二ヶ月、といってもそんな大した事が起きた訳でもなく、至って平和な日々を過ごしていた。強いて言うならば、ごく稀にある三日月と一緒にいない八雲に八回告白があった事ぐらいだ。
勿論、八回一遍にという訳では無い。
八雲はそれを全て断った。八雲は、少しばかり男に対して苦手意識があるのだ。
八雲からこの話を聞いた三日月はこの話に大いに興味を示した。三日月自身、前の世界ではアトラと子を成している。それは好意が無いとしようと思わないし、アトラも三日月に好意以上の感情を持っていたから成り立ったのだ。
八雲が男に苦手意識があると知らないまでも、大して長い付き合いをしている訳でも無い男が八雲に告白する理由が解らなかったのだ。
この新しい疑問に答えはすぐに示された。
「そりゃあ、一目惚れしたからに決まってんじゃん」
天満は自信満々に答えた。
天満には"長い付き合いでもない男が何で女に告白するのか"と聞いたのだが、この答えでは三日月は納得しなかった。
好きであるならば、時間を掛けて好意を伝えるべきではないのか?
いきなり好きだと言っても相手も戸惑うだけだ。それが解らない歳でも無い筈だが、とやはり三日月は首を傾げる。
とはいえ、すぐに答えを出してしまうのもつまらない。一旦この疑問は棚上げにして暇な時にじっくりと考える事にした。
◇
——三匹が斬られる。
日本では有名な時代劇物のテレビ番組である。上様、万石、イカの三人が様々なトラブルに見舞われながらも悪人を成敗する、いわゆる勧善懲悪物である。
老若男女、天満のような女子高生や播磨のような不良まで幅広い人気を誇る。
そんなある日の朝。
「八雲殿、拙者朝餉は遠慮致す」
三日月が起きて今に向かうと、白い道着に赤袴、和弓に矢の入った矢筒と時代錯誤な格好で変な事をのたまっていた。
前日の夜に見ていた三匹が斬られる。その劇中に出た矢文を見て、矢文が情熱あふれるラブレターの出し方だと天満は悟ったのだ。
しかも、更に驚く事をすると八雲に予告してはバタバタと慌ただしく家を出て行った。
「何、あれ」
「さぁ……。取り敢えず、ご飯にしよ」
「うん」
三日月は八雲の対面に座り、手を合わせる。
「いただきます」
すっかり日本人の所作が身に付いた三日月だった。
手早く朝食を済ませて、縁側に座り食休みに入る三日月。この日は日曜日で、特にやる事を決めていなかったので、縁側で寛ぎながら何をやるか考える事にしたのだ。
「三日月、今日はどうするの?」
「まだ決まってない」
「そっか。お茶、淹れたから」
「ありがと」
バイトもこの日はシフトではない。
ふと、思い立ったのは鍛え抜かれた自分の体だった。モビルスーツでの戦い方は覚えているが、今の三日月には持て余すだけだ。ならば、生身で戦える術を覚えるのはどうか。
ここしばらくはとても平和だ。さりとて、いつ自分や周りの人物に危険が訪れるとも限らない。ならば、何かしら格闘技を身につけた方がいいのではないか。
グラスに入った麦茶を一口飲んだところで、家事を済ませた八雲が麦茶が入ったグラス片手に縁側にやって来た。そこで。
「八雲はどんな格闘技が好き?」
と聞いてみたのだ。しかし、八雲は格闘技があまり好きではない。八雲がそれを伝えると、三日月は、そっか、と短く言って話が終わった。
天満がプロレス好きは知っているが、プロレスは三日月のフィーリングに合わなかった。しばらくお茶を飲みながらぼんやりしていると。
「空手、とか……どう?」
そんな提案が八雲から出された。
「うん。……じゃ、ちょっと出掛けてくる」
「どこ行くの?」
「散歩」
麦茶を飲み干し、グラスを洗って片付ける。 服は着ていた黒の袖なしシャツに適当にGパンと簡単なものにした。
「いってくるね」
「いってらっしゃい」
黒のスニーカーを履き、八雲に軽く手を振って家を出た。
三日月が厄介になっている塚本家周辺の地理は既に把握している。何かあった時の為だが、今のところ活用はされていない。
始業式には暖かい程度だった気温は、六月に入って暑いと感じるまでに上がっていた。八雲に勉強を教えてもらった時に日本には四季があると知った三日月。まだ冬を経験していない三日月だが、今日の気温の高さに。
「……夏より春の方が良い」
と思わず呟く程だった。
それはさておき、三日月が向かったのは本屋。空手の事を知る為に空手の入門書を買いにきたのだ。
空手と一口に言っても様々な流派がある。しかし、三日月にとって流派はどうでもよく適当に入門書を選び購入した。
そして、近くの公園に行き入門書を見る。
「……正拳突きに上段、中段、下段蹴り、踵落とし……」
本を見ながら見様見真似で型をなぞる。
だが、上手く出来ているかが全く判らない。やはり経験者に見てもらうのが一番いいと三日月は判断した。
判断したのはいいが、三日月の知る限りこの辺りに空手道場は無かった。
「遠出しないとダメかな」
入門書片手に歩いていると、一つの道場を見つける。
矢神道場と看板が掲げられるその道場からは何かが叩き付けられる音や、複数の人の声が聞こえる。何かしらの格闘技の訓練場である事は容易に想像出来た。
三日月が道場に近付くと、不意に声を掛けられた。
「あれ、三日月?」
「美琴?」
声の主は道着姿の美琴だった。二人の疑問は共通して、何故ここにいるのか、だった。
三日月が道場に入ろうとした理由を話すと美琴は納得したように笑みを浮かべた。美琴は幼馴染みの家の道場の門下生だと言う。三日月が視線を彷徨わせると、周防工務店の看板のある家が見えた。
美琴によれば、道場では少林寺拳法を主に教えており他にも空手や柔道などを教えているらしい。そして、入門者大募集中らしい。
どうやら、美琴は三日月の持つ空手の入門書を目敏く見つけていらしく、三日月から見ても断らせる雰囲気は無いようだった。
「じゃ、ちょっと覗いてみる」
「まいどー、一名様ご案内〜」
道場だよな、とやや胡散臭げに美琴を見ながら後を付いて行く三日月。それを後悔するのはすぐだった。
「遅かったな周防……って、貴様は!」
1-Dに押しかけ三日月に襲い掛かった花井がいたのだ。
因みに、花井春樹は周防美琴の幼馴染みである。
「道場見学したいんだってさ。だから襲い掛かんなよ」
「うぐっ……わ、わかっている!」
「……あたしがいなかったらやってたなこのヤロー」
取り敢えず、三日月は道場の壁際で見学する事になった。
基本的な型の稽古から一対一の実践的な稽古まで幅広く行う。聞けば、たまに対外試合で空手の有段者と試合をする事もあるらしい。故に指導者が空手に詳しいのだと。
門下生には女性の姿もちらほらと見てとれ、その一番の実力者が美琴なのだそうだ。つまり、美琴よりも強くなれば何かあってもみんなを守れる、三日月はそう思った。
実は花井の方が実力としては上なのだが、ぶん殴って以降三日月は気付いていない。
「どうだ三日月、やってみる気はあるか?」
「うん。当面の目標は美琴にする」
「あはは、そいつは嬉しいけど目標なら花井の方がいいぜ」
「む、呼んだか?」
美琴が言うのならば確かなのだろうが、三日月としては妙に花井が信用出来なかった。
「そういえば自己紹介がまだだったな。僕は花井春樹。好きな言葉は"義を見てせざるは勇無きなり"だ。よろしく」
「三日月・オーガス。三日月でいいよ。よろしく、春樹」
学校でのファーストコンタクトは最悪だったが、取り敢えず自己紹介を済ませて二人は握手を交わした。
「……なるほど、中々に鍛え抜かれているな」
「そうかな?」
握手でそこまで見抜く花井に、侮れない奴と三日月は評価を上げた。
「とはいえ、我々は学生の身分だ時間は限られる。放課後、時間がある時は一言言ってくれれば僕か周防が稽古してやる」
「わかった」
こうして、三日月は矢神道場の一門となった。因みに、月謝は五千円だった。
そして、天満はなぜか銀行強盗犯を捕まえたと新聞に載り、三日月と八雲を文字通り驚かせた。
◇
「そう、花井先輩の道場に」
「うん。これから少し帰りが遅くなるかもしれないから」
「わかった、その時は言ってね」
授業を終え、帰宅中に八雲に矢神道場の一門になった旨を伝えた三日月。この日は二人ともバイトのシフトはいった無く、三日月も翌日から矢神道場に行く事になっている。
更に、この日は天満が親友三人とお泊まり会をすると言うので、余分に買い物をする為三日月が荷物持ちとして同行しているのだ。
因みに三日月は料理の腕もそこそこになっていたりする。三日月はいわゆる"天才肌"で八雲に教わった事は大体そつなくこなすのだ。
八雲の帰りが遅い時は三日月が天満の夕飯を作り、三日月は八雲が帰ってから一緒に食べるようにしている。
今回は八雲のサポートとして出汁巻を作る予定だ。
因みに、三日月は出汁が入ったものよりも塩が入ったものが好みである。
◇
「たっだいまー!」
「「「おじゃましまーす」」」
空が暗闇に包まれる少し前に天満が親友三人を連れて帰宅。すぐさま四人で風呂に直行した。
八雲が天満の着替えを風呂に持っていく為、台所を三日月に任せて部屋に向かう。今夜のメニューは、焼きおにぎり二つに肉じゃが、揚げ出し豆腐に出汁巻の四品。
八雲が戻るまでに肉じゃがの野菜の下拵えを進めていく。
女子という生き物はとかく風呂が長い。特に、複数で入る時は尚更だ。時折小さく聞こえるはしゃぎ声。普通の男子ならば悶々と想像するのだが。
「何してんだろうね、みんな」
三日月はあっけらかんと気にせずに聞いてしまう。そこに下心が全く無いので。
「姉さん、変な事してなきゃいいんだけど」
八雲も普通に返してしまうのだ。
◇
さて、風呂から上がった四人。天満が麦茶を配り乾杯したタイミングで三日月が大きなお盆を持って四人のいる部屋に訪れた。
「八雲が良かったらって。一応俺も手伝ったし」
「わぁ、ありがとう三日月君」
「じゃ、八雲と勉強してるから」
そう言って三日月が部屋を後にしてすぐに、三人が天満に詰め寄った。
「なぁなぁ、三日月と八雲ちゃんってどうなんだよ」
「どうって?」
「付き合ってるかどうかよ」
「うーん……仲は良いけど付き合ってるとは違うような気がするんだよねえ」
「そうなんだー?」
とはいえ、恋なんて互いの気持ちの天秤が傾けば勝手に始まるものだ。これから先の展開に期待を寄せながら四人は用意されていた食事に箸を進める。
「……てかさ」
「なぁに、美琴」
「この食事、二人の手作りだよな」
「だから何よ」
「普通に共同作業じゃね? 新婚さんによくある」
四人の箸がピタリと止まる。
「まぁ、当事者は全く気にしてないだろうけど」
晶の言葉に、他の三人は苦笑いしながら納得した。
「というか、普通に美味しいよね」
「八雲ちゃんはともかく、三日月も料理の才能あったんだなー」
「うん、ちょっと前から八雲に教わってるよー」
「……ちょっと前でこれかよ」
「センスの塊ね」
「そーなんだよー。八雲が教える事ぜーんぶ吸収して自分のものにしちゃうんだから」
三日月君に勉強教えてもらってるしねー。
こんな天満の言葉に親友三人は大丈夫か、コイツ。と思ったり思わなかったり。
◇
いつもは寝床にしている部屋を天満たち四人に明け渡した三日月は、八雲との勉強を済ませ、居間で本を読んでいた。最近の好みは辞典やミステリー小説である。
しかし、今読んでいるのは恋愛マンガ。天満にシツコク勧められたので取り敢えず読んでいるのだ。
「……面白い?」
「まぁ、そこそこかな」
面白いは面白いのだが、好きな相手に意気揚々と弁当を作り渡す時には"アンタの為に作ったんじゃないんだからね! 偶々材料が余ったから作ったのよ!"と言い出すのだ。
三日月からしたら素直に言えば良いのに、と思わざるを得ないのだ。
勿論、三日月がツンデレを知っている訳も無いので仕方ないのだが。一応、八雲はツンデレを知っていたので三日月に説明するのだが。
「何それ、バカなんじゃない?」
ツンデレの意味を知っても納得するかどうかは三日月次第な訳で。
取り敢えず、恋愛マンガを閉じた三日月は寝る事にした。
因みに、天満たちのお泊まり会は深夜まで盛り上がった。